[芥川賞に川上未映子さん 直木賞は桜庭一樹さん/asahi.com]
候補作が文春から出ている時点でかなり濃厚かと思っていたけどホントに直木賞取ってしまうとは。恐るべし桜庭一樹。恩田陸ですらまだ取ってないのに〜。候補二回目であっさり受賞か。宮部みゆきや東野圭吾でも六回目でやっと取ったのに。
ということで、過去何人かいるラノベ畑出身の作家を振り返りつつ桜庭一樹の特長というか位置づけについてなんとなくまとめてみた。作家名(生年)、直木賞受賞時の年齢、キャリア何年目での受賞か、二行目以降はデビューの経緯から、ラノベ作家としての履歴、一般作執筆への移行経緯をごくごく大雑把にまとめている。
ちなみに、恥ずかしながら桜庭作品は受賞作はおろか『砂糖菓子〜』も『GOSICK』も未読だったりして、過去作品で既読は僅かに五冊。ファンの人スミマセン、認識間違いなどあったら石でも投げて欲しい。
◆桐野夏生(1955年生) 47歳9ヵ月で受賞 デビューから15年で受賞
・第2回サンリオロマンス賞佳作『愛のゆくえ』(1984年)
※ロマンス小説(非ラノベ)
・MOE文庫スイートハート『恋したら危機(クライシス)! 』(1988年)
※MOE文庫スイートハート等、野原野枝実名義で16作(〜1994年)
・第39回江戸川乱歩賞『顔に降りかかる雨』(1993年)
・第51回日本推理作家協会賞『OUT』(1998年)
・第121回直木賞『柔らかな頬』(1999年)
まずはパイオニア桐野夏生。この人はもともとはロマンス小説でデビューして、その後今は亡きMOE文庫スイートハートを中心に野原野枝実の名義で活躍。コバルトでも二作書いている。この間も非ラノベ作品は書き続けていたようだが、『顔に降りかかる雨』の乱歩賞受賞を契機として一般作品に完全にシフトしている。
◆山本文緒(1962年生) 38歳2ヵ月で受賞 デビューから14年で受賞
・コバルト・ノベル大賞『プレミアム・プールの日々』(1987年)
・集英社コバルト文庫『きらきら星をあげよう』(1988年)
※集英社コバルト文庫で14作(〜1991年)
・『パイナップルの彼方』(1992年)
・第124回直木賞『プラナリア』(2001年)
続いて山本文緒。この人はコバルト出身。コバルト文庫で四年の間に14作出している。が、1992年の『パイナップルの彼方』以降は完全に一般作品オンリー。ラノベ(少女小説)作家の時期と、一般作家の時期との区切りがくっきり出ているタイプ。
◆唯川恵(1955年生) 46歳11ヶ月で受賞 デビューから17年で受賞
・集英社コバルト・ノベル大賞『海色の午後』(1984年)
・集英社コバルト文庫『青春クロスピア』(1985年)
※集英社コバルト文庫で26冊(〜1992年)
・エッセイ『OL10年やりました』(1990年)
・第126回直木賞『肩ごしの恋人』(2002年)
三人目は唯川恵。この人もコバルト出身。ラノベ作家と言うよりは、やっぱり少女小説の書き手という認識の方が強いかな。八年間に26作もの作品をコバルト文庫から出している。一般作品へのシフトは1991年頃の模様。
◆村山由佳(1964生) 39歳0ヶ月で受賞 デビューから12年で受賞
・環境童話コンクール大賞『いのちのうた』(1991年)
・ジャンプJノベル大賞『もう一度デジャ・ヴ』(1991年)
・第6回小説すばる新人賞『天使の卵;エンジェルス・エッグ』(1993年)
・第129回直木賞『星々の舟』(2003年)
四人目は村山由佳。デビュー作の『もう一度デジャ・ヴ』はジャンプジェイノベルから出ているものの、出世作『天使の卵;エンジェルス・エッグ』が1993年とかなり早い時期に出ていて、以後ほとんどの作品が一般小説。作家の入り口こそラノベ系だったけど、正直ラノベ作家と呼ぶのは違和感がある。
ただ、この人の場合、『おいしいコーヒーのいれ方』という不思議なシリーズがあって、ジャンプジェイノベルで1994年から始まったシリーズが、2007年に至っても新作が出続けている。未読なので、推測で判断しちゃうけど、これは最初に出たのがジャンプジェイノベルだったから、ってことで同じレーベルから出続けているだけのような気がする。みんな後々集英社文庫入りしているしね。
◆角田光代(1967年生) 37歳10ヶ月で受賞 デビューから17年で受賞
・集英社コバルト・ノベル大賞『お子様ランチ・ロックソース』(1988年)
・集英社コバルト文庫『胸にほおばる、蛍草』(1988年)
※彩河杏名義で集英社コバルト文庫7作(〜1990年)
※以降は角田光代名義
・海燕新人文学賞『幸福な遊戯』(1990年)
・第108回芥川賞候補『ゆうべの神様』(1993年)
・第109回芥川賞候補『ピンク・バス』(1993年)
・第110回芥川賞候補『もう一つの扉』(1994年)
・第128回直木賞候補『空中庭園』(2003年)
・第132回直木賞『対岸の彼女』(2005年)
五人目は角田光代。この人もコバルトデビュー組で彩河杏名義で三年間に7作書いている。その後は純文作品も書き、児童文学も書き、一般小説も書くという多才ぶりを発揮。
ここまでの五人全て女性。時代的にラノベというよりは、少女小説の書き手がほとんど。あ、よく見ると全員集英社絡みだ。
◆桜庭一樹(1971年生) 36歳5ヶ月 デビューから9年で受賞
・山田桜丸名義でノベライズ数作(1996〜)
・ファミ通エンタテインメント大賞『夜空に、満天の星』(1999年)
※ファミ通文庫、富士見ミステリー文庫中心に著作10数作(〜2007年)
・富士見ミステリー文庫『GOSICK』(2003年)
・富士見ミステリー文庫『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』(2004年)
・『少女には向かない職業』(2005年)
・日本推理作家協会賞『赤朽葉家の伝説』(2007年)
・第138回直木賞『私の男』(2008年)
そして六人目が桜庭一樹になる。山田桜丸名義でのノベライズ作品が数作あり、その後ファミ通エンタテインメント大賞を受賞して桜庭一樹名義で作品を書くようになる。一般作品への進出は判断が難しいけど、内容でなくレーベルで判断すると『少女には向かない職業』あたりからだろうか。
で、ラノベ畑出身の直木賞作家桜庭一樹の特徴だけど、先行の五人とまず違うところはその若さ。歴代直木賞作家としては別段若い方ではないけれど、ラノベ畑出身作家に限ると受賞時の年齢は一番若い。受賞時年齢の若さに加えて、デビューしてから9年での受賞(山田桜丸時代を入れても12年)というスピードも特筆すべきだろう。
また、これまでの五人がラノベ(少女小説)作家から脱却して、一般小説作家となり5年〜10年の活動期間を経た後に直木賞を受賞しているのに対して、桜庭一樹の場合、ラノベ作家を脱却することなく、その上一般小説を書き始めて僅か3年で賞を取ってしまった。いわゆる「越境」現象の象徴の一人として、うまく流れに乗れてしまったきらいはあるにしてもこれは本当に驚きだ。
今回の受賞は本人の実力もさることながら、出版界の期待値も込みなのかもしれない。過去にライトノベルを書いていた作家が直木賞を取ったのではなく、現在もライトノベルを書いている作家が受賞したという事実は今後の選考にも影響を与えそうだ。既に「越境」を果たしている有川浩や橋本紡なんかに続いて、これからもラノベ⇒一般小説への流れは更に加速してくだろう。あれ、これってラノベ読みにはあんまり嬉しく無いことのような気が……。
今後の関心事は、桜庭一樹がこれからもラノベを書き続けてくれるかどうか。これまでの恩義があるだろうから、既存シリーズにはなんらかのフォローがあると思うけど、おそらく既に各社からのオファーが殺到している筈。果たしてどうなることやら。同じ数が売れるならばハードカバーで出せる方がいいに決まっているわけで(文庫落ちで二毛作も出来る)、これからは桜庭作品の新刊がラノベで出たとしても、有川浩よろしくどれもハードカバーだったりして。
※参考にしたのは、wikipediaとAmazon、それから直木賞のすべて、各作家の公式サイト、ありさとの蔵のコバルト文庫全点目録、逝川堂本舗のMOE文庫スイートハート暫定版リストあたり。三時間で書いたエントリなのでツッコミ所多いかもしれません。なにかあればご指摘を!