April 03, 2008

[購入]08065/オトノハコ/岩岡ヒサエ/講談社/\619

4063754596オトノハコ (KCデラックス)
岩岡 ヒサエ
講談社 2008-03-31

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初岩岡ヒサエ。廃部寸前の弱小合唱部の高校生がいろいろ頑張るお話。オーケストラや吹奏楽関連のエンタメ作品(小説にしても映画、ドラマにしてもね)はそれなりに数があるのに、まともに合唱を扱ったマンガってのはとにかく存在そのものが無かったので(※1)、これは本当に貴重。合唱ヲタとしては必読である。久々にツボったので本気でプッシュしちゃうぞ。

既刊『花ボーロ』収録の短編作品をベースとして続編として書かれた模様。こちらも買わなくてはなるまい。連載誌は講談社の「Beth」。連載されていることは前から知っていたものの、単行本が出るのをずっと待っていたのだ。ちなみに、「Beth」本誌はvol.8で休刊となってしまっており、終盤部分は書き下ろしとなっている。

花ボーロ (IKKI COMICS)花ボーロ (IKKI COMICS)
岩岡 ヒサエ

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作者経歴(c.f.wikipedia)
岩岡 ヒサエ(1976年7月17日)は日本の女性漫画家。千葉県出身。

略歴
女子美術大学卒業後、コンピュータ関係の会社に在籍中、「月刊アフタヌーン」に投稿、『ゆめの底』でアフタヌーン四季賞佳作入選しデビュー。その後、「月刊IKKI」で第7回イキマンを受賞。
代表作『しろいくも』で平成17年度(第9回)文化庁メディア芸術祭最終選考候補に。翌年、平成18年度(第10回)にも『ゆめの底』が最終選考候補にまで選ばれた。ぬいぐるみ、イラストなど多彩な才能を発揮している。

本人公式サイト
インタビュー記事
関連記事
『合唱ができるまで』も見ていたらしい
去年のNコン全国大会も見に行っていたらしい
4/5に池袋のジュンク堂でサイン会があるらしい

感想リンク
活字中毒オンナの読書感想文
猫の本棚
狭間の広場
日々思うか思わないこと
積ん読記
おぼえがき
Dionysus


絵柄はカバー絵をみてもらえば判ると思うけど、ほんわかとした柔らかいタッチで、これがまず好印象。ゆったり、まったりとした文化部的なゆるい雰囲気が巧く表現出来ていた。東京都内にあるさくら高校の合唱部は総勢でなんと六名。三年生(変人)1、二年生(いい人)1、一年生(経験者1、素質はいい子1、普通の子2)。パートバランス的には、ソプラノ2、メゾ3、アルト1というきわめてバランスの悪い状態。当然、まともな練習場も無く、来年には同好会への格下げが決まっている。練習する場所を確保するために、空き教室を探して転々とする合唱部の面々。屋上で歌ったり、川原で歌ったり、昇降口で歌ったりとジプシー状態なのがわびしくも楽しい。

作中で歌われている木下牧子(合唱界の菅野よう子的な位置づけだと思って欲しい)作曲『地平線のかなたに』から「春に」。女声三部版は見つからなかったので混声四部で許して。クラス合唱でも歌われる有名曲なので知っている人も多いかと思う。

それから「方舟」は同じく木下牧子作曲、合唱組曲『方舟』の終曲。作曲されて二十数年を経て未だ色褪せない名曲中の名曲。女声合唱版は無い筈なので、混声版を探したのだけど、こんなのしか見つからなかった。メチャ音質が悪くて残念。音割れまくりなので、ボリュームを下げて聞いて、感じだけでも掴んで欲しい。

作者は大学時代に合唱サークルに四年間在籍していたようなので、合唱に関しての描写は非常に正確で共感の持てるシーンが多かった。中学からそれなりにやってきた合唱経験者のいらだちとか、高校から初めて本格的に合唱を始める初心者故の不安とか、それあるある!ってエピソードが豊富に盛り込まれていて、とても懐かしい気持ちにさせられた。
車座になって、同じ音を順番に隣の人へ渡していく練習は映画『合唱の出来るまで』でも出てきていたけど、これやったやった!って思った経験者は多いのではないだろうか。声を遠くへ遠くへと飛ばしていく感覚。揃わなかった音程や、声質が次第に揃っていく快感。心から満足のいく演奏が出来たときの、この時間が終わって欲しくないと切に願う祈りにも似た気持ち。うーん、なんだか目から水が出てきそう。

合唱ができるまで合唱ができるまで
ドキュメンタリー映画

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全国大会何それ?って、レベルの弱小合唱部に居た人には、無闇に泣ける話だと思う。新歓コンサート(場所は昇降口でのゲリラ開催)なんて歌うの二人だぜ二人!部員不足で二年生の時にはコンクールに出られなかった部長が、最後の三年生になって、やっともう一度舞台に立てた。コンクール終了後、ホール前の広場での反省会(これもコンクール経験者には懐かしい光景だと思う)で、思わずボロ泣きしてしまう部長の姿にとうとう涙腺が決壊した(笑)。林さん良かったね。

余計なツッコミとして、Nコン(高校生が出られる合唱の三大コンクールの一つ)の課題曲が「春に」なのもどうかと思うが、自由曲に「方舟」を選ぶのはどうなのよ。女声版の『方舟』って無かったような気が……。そもそも六人でどうにかなるような曲ではないのではないかと。よっぽど作者的に思い入れがあったのだろうか。ちなみにわたしも『方舟』は大好き。
そして終盤の展開がものすごい駆け足になってしまっているのも残念。掲載媒体が休刊になっていなければもっと続いていたのだろうか。まともな指導者も無しに、高校生だけでラスト、あのレベルまで行くのはちょっと無理がある。都大会ナメンな!って突っ込みたいところだけど、誌面が少なかったから仕方無いのかな。
歴代の部長を主役にしながら何年も続くような合唱マンガを本当は読みたいのだけど、やっぱり売れないかな。野球マンガで例えると『キャプテン』みたいな感じ。ダメダメなところから、ちょっとずつ上手になっていくところが見たかった。 空白の二年間の話をどこかで書いてくれないかなあ。

大ラス。コンクール全国大会のステージに上がる直前、暗い舞台袖、反響版の隙間から明るいステージが見えるシーン。個人的に、この日常と非日常の境目の空間が大好きだったりするので、ラストにこの絵を持ってきたことに大満足(※2)。

※1
二十年近く前に『われら混線合唱団』という作品が存在している。お話の質は別として、合唱の扱いに関しては、合唱ヲタ的にとうてい満足出来るレベルのお話では無かったのだ。
※2
余談ながら、ジャンルは違うけど高校演劇をテーマにした吉田秋生の名作『桜の園』にもこういうシーンがあって、あっちも好きだったな。これは中原俊監督の映画版もお奨め。

櫻の園櫻の園
中島ひろ子 つみきみほ 中原俊

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投稿者 nununi : April 3, 2008 12:17 AM
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