日本刀は武士の魂。馬上で振るわれる白刃。しかし刀による華々しい白兵戦というイメージは後世に作られた幻想だった。合戦場の本来の主役は弓(後に鉄砲)と槍。その中で刀の果たした役割を首取りという特異な習慣を元に解き明かす。
確かに少し考えるとわかりそうなもので、刀というのは少し打ち合うとすぐ刃こぼれがするし、下手すると簡単に曲がってしまう。曲がってしまった刀は鞘に戻らないわけで、携行にものすごく不便だ。こう考えると、なるほど刀は実際の合戦においてあまり使い勝手の良い武器ではなかったことが判ってくる。戦国時代を通じて「弓」の重要度が高かったのも意外といえば意外。[2000/05]
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果しなき流れの果に
[小松左京] ★★★ 角川春樹事務所 ハルキ文庫 (\800) [Amazon]
N大学理論物理学研究所の助手を務める野々村は研究所の大泉教授から「永遠に砂が落ち続ける」不思議な砂時計を見せられる。しかもそれは白亜紀の地層か出土したものだというのだ。謎を解くべく発掘現場に向かう野々村だったが、やがて宇宙創世にかかわる壮絶な戦いに巻き込まれていく。幾億もの時空を越えて野々村が流れついたその場所は……
角川春樹事務所は言わずとしれたあの角川(兄)の会社。「ハルキ文庫」とはいかにもあやしげな名前ですが、国内の古典SFを次々と復刊してくれるのはありがたい限り。ちと高いけどね。
ヲタクな人々(わたしもそうだが)には某アニメの最終回サブタイトルとしての方が良く知られている超有名作品。ようやく読めて嬉しい限り。確かに名作と言っていいでしょう。なんか理屈っぽくて今読むといささか難解ですが、SF的な壮大さにはしびれます。[2000/05]
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美濃牛 [殊能将之] ★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\1,300) [Amazon]
岐阜県暮枝村。取材で辺鄙な山里を訪れた主人公。そこには万病を治す奇跡の泉があるのだという。そこに突如出現した首無し死体。暮枝きっての名門一族が、童唄の見立て通りに次々と命を落としていく。
前作『ハサミ男』 [Amazon] のスマッシュヒットで一躍注目を浴びた作者の最新作。第二作は地方の旧家での童歌連続見立て殺人という、オーソドックススタイルで勝負。全く作風を変えてくるのはとても潔くて良いのですが、やったら長いわりに、つまらん作中人物のうだうだにつきあわされるのが不愉快。エッセンスだけ掬いとって純化した方が引き締まったような。
しかしあの魅力のかけらも無い探偵がつらい。この探偵でシリーズ化するのはやめといた方がいいと思うなあ。[2000/05]
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パロの苦悶 グインサーガ72
[栗本薫] ★★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\520) [Amazon]
叛乱の兵をあげたアルド・ナリスは序盤の劣勢を挽回せんと、その才智の限りを尽くした権某術数を繰り広げる。首都クリスタルには激しい衝撃が駆け抜け、ナリス派の市民たちが大挙してアルカンドロス広場に殺到する。一触即発の緊張が漂う中、遂に国王派の兵が市民鎮圧に投入される。
パロ編続いております。囚われのヴァレリウスを意外にも本気で心配してしまうナリス様にそちらの向きの方は大喜びなのではないでしょうか。わりと早めに竜頭兵をだしてきた国王一派ですが、これだと国民みんなびびってしまうのでは?今回の表紙はリギアさま。凛々しくも美しく◎。やはり末弥キャラはいいなあ。[2000/05] ⇒次巻
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夢・出逢い・魔性 [森博嗣] ★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\820) [Amazon]
TVのクイズ番組の公録に参加するため上京した阿漕荘の面々。局の密室の中で事件は起きた。銃声は1発。しかし発見された死体には2箇所の傷が。殺害されたN放送のプロデューサー柳川は20年以上も前に死んだ恋人の悪夢に脅えていたという。果たして柳川は亡霊にとり殺されたのか?
瀬在丸紅子シリーズもはやくも4作目。いつもの連中が例によって好き放題であります。犯人当て以外に、もう1つお楽しみのサプライズが仕掛けられていたのが面白かったかな。なんとなく想像はついたけど、犯人との対比の妙が美しいぞ。
キャラとして引きが弱いと思っていたこの連中もさすがに馴れてきた。小鳥遊クンはいい味が出てきたかも。相変わらず紅子センセは好きになれませんが。舞台が那古野で無くなったおかげで、例の三角関係のどろどろを見ずにすんだのは良かった。[2000/05] ⇒次巻
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ラグナロク6 黄金領域
[安井健太郎] ★★ 角川書店 角川スニーカー文庫 (\533) [Amazon]
王位継承権者マリーナが誘拐された。誘拐犯から突きつけられた要求を女王フレイヤは穀然と拒否する。マリーナ奪還のため、単身城を飛び出したリロイだったが……
続いております。あれ、もう全然内容覚えてないのですが。今回はリロイの相棒こと、魔剣ラグナロクが人間形態を取り比較的活躍するので、理性的に展開する部分が多いのが救い。[2000/05]
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インベーダーサマー
[菊地秀行] ★★★☆ 朝日ソノラマ ソノラマ文庫NEXT (\495) [Amazon] ※書影無し
夏。信州の小都市夕笛市。とある高校のグラウンドに現れた白い少女は瞬く間に男子生徒たちの心を奪ってしまう。彼女への想いに胸を焦がす若者たちは、奇怪な言語を口走り、この世の光景とは思えない絵を描き出す。それは異世界からのささやかな侵略の始まりだった。
こちらも復刊組。ソノラマ文庫ネクスト偉い。ずっと読みたかった作品です。懐かしくも優しく、時には残酷に、叙情豊かに信州の小都市でのひと夏の出来事が綴られていきます。懐かしのジュブナイル小説の香りが、漂ってきてとても嬉しい。史上最強にリリカルな地球侵略ぶりも切ないです。菊地秀行作品とは思えません。
あ、でも、高校生なのに異常に強い主人公ってのはらしくて笑えました。[2000/05]
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最強の路上観察者たちが東海道を行く。名所旧跡に見向きもせず、各所の貼り紙や看板、謎の建築物や愛すべきトマソンを続々と発見していく。その数613点。
路上のヘンなもの探しが大好きで、加えて自転車で東海道走行中のわたしとしては見逃せない1冊。よくぞこんな素晴らしくも下らない企画を考えたものだと感激であります。これからどれだけ自分で見つけられるかが楽しみ。[2000/05]
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記号を喰う魔女 [浦賀和宏] ★★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\820) [Amazon]
自殺したクラスメイトの遺言で、とある島を訪れた5人の中学生。到着そうそう悪天候で帰還もままならず、外部との連絡も絶たれた中で、惨劇の幕が切って落とされる。胸に逆Vの字を刻まれ、次々と殺害されていく島民たち。狂気に支配されたこの島で、最後まで生き残るのは誰か?孤島でのサバイバルゲームが始まる。
気になってはいたけどこれが初浦賀。孤島で中学生がサバイバルゲームって、どうしたって『バトルロワイヤル』を思い出さずにはいられないんですけど、当然のことながら全然違うテイストのお話です。嵐の山荘モノですらないです。というかミステリじゃないみたいです。わたしはOKでしたが、このテイストはかなり好き嫌いが別れそう。
冒頭の「子供は親の食べ物じゃないよッ」って台詞ががあまりに強烈。しかしこの安藤って何者?喰うかそこで??ものすごいキャラクターです。いろいろな意味で強烈過ぎます。
ところで、ほとんどの人物が名字だけで呼ばれているのも不思議なんですけど、これって意味があるのでしょうか。[2000/05] ⇒次巻
◆
いきなりシリーズ最新作を読んでしまったわたし。それほどダメージは無かったけど、せめてどっかに表記しといてよ>講談社。[2000/06]
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九州の水郷箭納倉(やなくら)。むかしながらの掘割が縦横にはりめぐらされたこの街で起った奇妙な連続失踪事件。しかし消えた筈の人々は数日後に皆戻ってくるのだ。一様に失踪中の記憶を失くして。誘拐なのか、それとも洗脳?得体の知れないなにものかに、静かに侵されていく街。残された人々が最後に選んだ道とは。
専業化して、刊行ペースがあがってきたような。そのせいかどうかわからんですが、クオリティ的には不満。あんな終わり方でいいのか。
望んでいたようなカタルシスは得られませんでしたが、水郷箭納倉(モデルは当然柳川なのだろう)の雰囲気は叙情豊かに描かれていて美しかった。あいかわず地方都市の空気を映してくるのが巧いです。しかし結局主人公はいったい何者だったのでしょうか。[2000/05]
恩田陸ファンサイトの読書会に備えて再読。やはり本作はこの季節に読むのがベスト。じめっとした堀割の街の雰囲気を掴むには最適です。この話ってストーリー自体はなんとも宙ぶらりんなまま後味悪く終わってしまっているので実はあまり好みではない。でも、まあせっかくの二度読みなので多聞クンの独特の感覚(オセロゲームってなんだか声がしますよねー、『影に逃げられちゃった』話とか)とか、種々の描写の妙(堀割の田螺の卵、水の檻に包まれる寺院、水に侵された図書館のゴムまりのシーン)なんてのを楽しんで読んでみた。この作風は確かに他の作家にはなかなか真似出来ない境地ですね。恩田作品ならではの不思議な結界がそこに生じているようです。[2001/06]
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その日僕はふとしたことから、同僚の身上話を聞くことになった。冴えない女事務員だと思っていた彼女に隠された狂おしいまでの熱情。前夫への想いを断ち切れないまま、別の男との破滅的な恋に堕ちていく水無月美雨という女。無言電話、嫌がらせ、嘘、妄執の果てに彼女が辿りついたのは……
こんな女やだよう。ほぼ全編が主人公の女性の視点で淡々と描かれているので、一見怖さは感じないけど、他の登場人物の視点で描かせたらさぞかし薄気味悪い存在になるだろう。実際に周りにこんな奴がいて、こんな行動取られたらまじで怖い。
恋愛は一つハマれば、誰だってこうなりかねない表裏一体のものがある、と思うので一概に笑ってられないのだけど。
しかしエンディングも十分怖い、こいつ全然変わっとらん。ジャンル[ホラー]にしてもいいくらい。版元角川だし、文庫化の際には是非[ホラー文庫]でお願いします。[2000/05]
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映像派ドラマの極北『ケイゾク』。未だ様々な謎を残す本作品に、批評的かつ、データ的なアプローチを試みる。
滅多にドラマを見ないわたしですが、見始めたらやはりハマってしまいました。柴田にメロメロのわたしは関連書籍を買いあさってしまうのでした。アニメではよくこの手の謎本って出てますけど、TVのドラマで出るのは珍しいのでは。[2000/05]
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記憶の果て [浦賀和宏] ★★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\950) [Amazon]
父が死んだ。自殺だった。大学進学を間近に控えた安藤直樹の身辺は俄に慌ただしくなっていく。父の書斎で発見されたパソコンには「安藤裕子」という名前の人工知能が宿っていた。機械と言ってしまうにはあまりに人間的な「裕子」。彼女は本当に機械なのか。
これが処女作。本当はこれから読むべきでした。いきなり最新作を読んでしまったようで反省。カバーにストーリー書いてくれていないので、良くわかりませんでした。なんで書いてないの?
第5回メフィスト賞受賞作ですが、ミステリでもなんでもなくて青春小説。ジュブナイルなのです。青臭い説教みたいな文章がだらだら続きますがわたし的にはOK。若い頃に読んでいても、もうちょっと年取ってから読んでいても反感感じてダメだったかも。この作品も評価はばっさり分かれるところでしょう。受賞させた審査員は偉いぞ。
最後のオチもいい落とし方です。この破滅的な終りかたにしびれました。全体的に青春していて非常に○です。浅倉さんとのエピソードは尋常ではない思い入れを感じました。[2000/05] ⇒次巻
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一連のケイゾクシリーズ(TV本編・特別編・映画)の裏設定を紹介。
TBSのコピーライト入っているので公式設定と考えて良いのかな。柴田ファンなら買わずに入られない関連書籍。公式本らしく写真が豊富なのが唯一の救いか。三一書房のに比べるとかなり内容は薄い。しかしファンにとっては、これは解説本というよりはキャラクターグッズなので問題はないのかもしれないけど。[2000/05]
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時の鳥籠 [浦賀和宏] ★★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\1,100) [Amazon]
初対面の少女がそう遠くない将来に自殺することをわたしは知っていた。何故ならわたしは彼女を救うために生まれてきたのだから。
浦賀和宏の一連の作品ってあらすじがとっても書きにくいのですが何故でしょう。
さて、これはやられました。前作『記憶の果て』の続編です。もちろんこれ一冊だけ読んでも独立した物語にはなっていますが、可能な限り前作を読んで時間を置かずに本作を読んだ方が感動は増すでしょう。2冊で1作であると考えてもいいくらい。『記憶の果て』読了時に穴だらけだったジグソーパズルが、ばちんばちん組みあがって、大きな一枚絵が浮かび上ってくるのには戦慄させられます。あの浅倉さんがこんなことになっていようとは。どうりで前作での彼女とのエピソードが異常に美しかったわけです。
あえてカテゴライズすれば、本作は『ターン』とか『リプレイ』の「時間とわたし」系の作品とも言えるでしょう。とても不思議な謎が提示されますが、本作ではその謎は解き明かされることはありません。おそらく今後もこの謎は明かされないでしょうし、逆に下手に説明してしまうと興醒めになってしまうと思います。
しかし従容と運命に流されっぱなしの浅倉さん。それでいいのか。[2000/05] ⇒次巻
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風俗学 [多田道太郎] ★★★ 筑摩書房 ちくま文庫 (\400) [Amazon] ※書影無し
ちゃぶ台の誕生から、ステテコの栄光と悲惨、路上観察、噂の収集等々、筆者の鋭敏な皮膚感覚が現代風俗の陰に潜む意外な本質を浮き彫りにしていく。日々変わり行く風俗を見つめ、日本文化の根底に迫る。
文庫化されたのが1987年で、元々単行本 [Amazon] の初版は1978年なので、今読むとさすがにネタが古いのは仕方の無いところか。民俗学が不動の一点から過去を俯瞰したものであり、風俗学は変化しつづけるものを変化する視点から捉えている、という一文は目から鱗か。[2000/05]
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