2000年7月

思ったよりも読めなかったのは『六番目の小夜子』のTV版(再放送だけど)にドハマリしたため。
あれのせいで月の後半は睡眠時間が平均2時間は減った。
恩田の新刊が続々と出ているのは嬉しい限り。

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
中田語録 中田英寿
小松成美
文藝春秋
\476
フツウの人なんだね。
★★★
スィート・リトル・ベイビー 牧野修 角川書店
\533
後味がかなり悪い。
★★☆
神社ウォッチング 外山晴彦 東京書籍
\1,500
神社ファンなら読むべし。
★★★☆
未知谷
\2,400
ある意味トンデモ本。
★★★
早川書房
\540
やおい度アップ。つらい。
★★☆
文藝春秋
\552
相性好くないのかも。
★★★
小学館
\1,700
久々の新刊。今回も泣かす。
★★★★
朗読者 ベルンハルト
・シュリンク
新潮社
\1,800
期待と全く違う内容。単なる恋愛小説にとどまらない。
★★★★
鏡の国のアリス 広瀬正 集英社
\680
切れ味イマイチかな。
★★☆
リバティ・ランドの鐘 秋山完 朝日ソノラマ
\505
メルヒェン。
★★★
忌まわしい匣 牧野修 集英社
\1,900
忌わしくも美しい闇の世界。良いです。
★★★☆
会津斬鉄風 森雅裕 集英社
\514
地味です。好きだけど。
★★★
ネバーランド 恩田陸 集英社
\1,500
うーんグリーンウッド。
★★★☆

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中田語録 [言:中田英寿/編:小松成美] ★★★ 文藝春秋 文春文庫 (\476) [Amazon]

中田語録 (文春文庫)

日本サッカー界の至宝から世界のNAKATAとなった中田英寿。極度のマスコミ嫌いから、彼の発言は常に曲解され物議をかもすことが多かった。本書では彼の信頼する編者により、中田の数々の発言の真意と背景を詳説。フランスワールドカップ予選での日々や、セリアA移籍時の心境などが語られる。

言:中田英寿/編:小松成美。なので、中田は35本の言葉を「言ってる」だけ。それに編者が状況の説明や、当時の中田の心境を補足していく形式を取っています。でも売れるんだろうなあ。これで中田は版権料何パーセント取ってるんだろう。下世話な興味がつのります。

生きかたにしても、考え方にしても、ごくごく普通にまっとうなことを言う人だな、というのが正直な感想。でもこの普通さが今や貴重なのかも。[2000/07]

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スイート・リトル・ベイビー
[牧野修] ★★☆ 角川書店 角川ホラー文庫 (\533) [Amazon] ※書影無し

保健婦の丸山秋生は、ボランティアで児童虐待の電話相談を受け持っていた。ある日寄せられた一人の主婦からの電話が秋生をかつてない恐怖の世界へと誘う。なぜ人は子供を虐待しなくてはならないのか、その戦慄すべて答えとは。

こ、これは確かに戦慄すべき答えだ。後書きで作者もあくまでフィクションだからと言ってるけど、児童虐待の理由をこんなことにされちゃったらたまらないぞ。非常に後味の悪い終りかたでした。[2000/07]

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神社ウォッチング [外山晴彦] ★★★☆ 東京書籍 (\1,500) [Amazon]

神社ウォッチング

あまりに日常的な風景に埋没し、いつも何気なく見過ごしている神社という施設。鳥居の形、狛犬、神殿の建築様式等々、知っていると神社の見方が変わる、神社ファン待望の1冊。

わたしは神社仏閣ファンで観光の際には必ずこれらの施設を徘徊しています。どちらかというと神社の方が好きなのは、勝手に入っても怒られないから、という小心者ならではの理由があるわけですが、この誰でも入れるという点に神社独特のおおらかさが見られて、非常に好感が持てるのであります。

本書では初心者向けに鳥居の見分けかたや、神殿の様々な様式についてわかりやすく解説してあり、かなり受け手は限られるものの、好事家にはたまらない1冊となっています。『チャート式鳥居の見分け方』は秀逸。これからはコピーして持ち歩こうと思っています。[2000/07]

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七賢人物語 [作者不詳] ★★★ 未知谷 (\2,400) [Amazon]

七賢人物語

ある所に王がいた。王には王妃と、そして先妻との間に設けた王子がいた。王子を誘惑しようとして拒まれた王妃は憎悪のあまり王に讒言する。怒った王は王子を殺そうとするが、七人の賢人が王の前に現れ王子の命乞いを始める。中世以来ヨーロッパで伝承されてきた箴言集。最古と言われる1342年インスブルック写本の本邦初訳。

PHPホームページの一言書評コーナーでは、書籍のプレゼントをやっていて、書き込みの時にマイナーな書籍を希望しておくと、かなりの確率で当たります。この本もそのうちの1冊。実はこれでもう3冊目。ありがたい企画です。

日本ではほとんど知られていませんが、ヨーロッパではかなりの数の異本が出ているようなので、あちらでは有名な話なんでしょう。この手の伝承文学って今の常識で読むと首をかしげたくなるような内容が多いのですが、それにしてもこれはすごい。一貫した女性不信もここまで来ればたいしたものです。[2000/07]

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地上最大の魔導師 グインサーガ73
[栗本薫] ★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540) [Amazon]

地上最大の魔道師―グイン・サーガ(73)

囚われの身となったヴァレリウスを助けだしたのは意外なことに<闇の司祭>グラチウスだった。圧倒的なヤンダル・ゾックに対し、黒魔導と白魔導との連合を呼び掛けるグラチウス。一方ランズベール城に立て籠るナリスには更なる脅威が迫る。ついにクリスタルからの撤退を決意したナリスたちだったが、国王派の討伐軍が行く手を塞ぐのだった。

タイトルからいくとあのアグリッパが遂に登場?と思わせておいて、今回は前振りだけなのね。数巻後には登場予定のようです。楽しみ。

で、ここ数巻ずっと思ってたんだけどさ、このホモ臭さなんとかなんないかなあ。モンゴール編なんてハナからホモ臭かったけど、パロ編もいまややおい全開。ケイロニア編だけが心の救いだよもう。ある程度やおい耐性はあるつもりだし、作者がその手の話大好きなのも知ってるけど、元々グインってそういう話ではなかったと思うんだけどなあ。20年近く読んできている大河小説がなんだかわけわかんないところに流されていくのは寂しくてならないです。後書きがこれまた勘弁してくれよ、ってな出来で、きわめてクローズドな世界で勝手に自己発電してて興醒めも甚だしい。

最近の著作には全くシンパシーを感じない。個人的な3大ベストは『弦の聖域』『猫目石』『レダ』。昔の栗本薫は作品も生き方も格好よかったと思うんだけどなあ。はっきり言って老醜さらしつつあると思います。復活の日はくるのか?[2000/07] ⇒次巻

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カノン [篠田節子] ★★★ 文藝春秋 文春文庫 (\552) [Amazon]

カノン (文春文庫)

瑞穂の元に届けられた1本のカセットテープ。それは学生時代の恋人が死の間際に弾いたバッハのカノンだった。チェロ奏者の夢を諦め、平凡な音楽教師として生きてきた瑞穂に、その日から次々と不思議な事件が起りはじめる。執拗につきまとう幻の旋律。その果てにたどりついたある世界とは。

若き日の夢。失われた青春時代。なにかを捨てて、なにかを諦め人は生きていく。でも、それでいいの?、本当によかったの?、と、遠いところから透徹な目線で問いかけてくる作品。しかし、まだ不惑には数年残っているわたしにはあまりピンと来なかった。なぜかわたしは篠田節子作品とは相性が宜しくないようで、何作か読んでるんだけど、どれも今ひとつツボにはまってきません。

それにしても作劇上の都合とはいえ、クライマックスで主人公が素人丸出しの装備で穂高登りはじめた時は緊張感が一気に萎えました。フィクションと思って割り切って読むべし。[2000/07]

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始祖鳥記 [飯嶋和一] ★★★★ 小学館 (\1,700) [Amazon]

始祖鳥記

度重なる天候不順。空前の大凶作。貧困と飢餓に人々の心が暗闇が覆われていた江戸時代天明期。飛ぶことに憑かれただひたすら空を目指した鳥人幸吉。その姿、生き様は各地に語り伝えられ、多くの人々に生きる勇気を与えていく。

飯嶋和一は数少ないハードカバーの新刊をデフォルト買いする作家です。この作家にハズレなしです。ただ、数年に1冊という昨今の作家にしては信じられないローペースでしか作品が出ない為、購入してからももったいなくてなかなか読めません。

魅力的な物語には、先を知りたくて次から次へとページを繰らずにはいられないタイプの作品と、その世界が閉じられてしまうのが惜しくて読み終えたくないと思ってしまうタイプの作品と両方あると思うのですが、この作品はあきらかに後者に属します。読みながら無意識のうちに左手で残りのページの厚みを確認してしまうのでした。

いつもながら史書に残された僅かばかりの歴史的事柄から、豊穣な物語世界を作り上げ、骨太な物語を紡ぎあげるその手腕には感服させられます。丁寧な取材による緻密な時代描写も圧巻で、表具匠の仕事から、江戸時代の海運業、塩の流通の実情に至るまで、積みあげられたディティールの確かさにも脱帽です。

幸吉を軸に男たちの物語が展開されていくのですが、第二部では物語の軸が巴屋伊兵衛編に切り替わってしまい、かと思うと第三部で再度幸吉中心の展開に戻るなど、どちらも若干中途半端に終ってしまった感もありますが、この作品にとっては僅かな瑕疵だと言ってしまってよいと思います(誉めすぎ?)。

ともあれ前作『神無き月十番目の夜』があまりに哀しい物語だっただけに、本作の力強い人間賛歌ぶりにはほっとしました。自分自身も励まされるところ大。次の新作は何年後に出るのかだけが気がかり。[2000/07]

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朗読者 [ベルンハルト・シュリンク] ★★★★ 新潮社 (\1,800) [Amazon]

朗読者 (新潮クレスト・ブックス)

15歳の少年ミヒャエルは親子程年の離れた女性ハンナに恋をした。日ごと彼女の部屋を訪れるミヒャエルだったが、何故かそのたびに彼女は本を朗読して聞かせることを要求するのだった。しかしいつまでも続くかに見えたふたりの時間は唐突に終りを迎える。何の前触れもなく彼女は失踪してしまったのだ。そして数年後。大学生となったミヒャエルは思い掛けない場所でハンナに再会することになる。

読む前の予備知識は「泣ける恋愛小説」。その程度の前情報だけでこの本を読めて本当に良かったと思う。評論という名のネタバレ情報が新聞や雑誌にあふれている。この本読みたいヒトは絶対その手の書評は読まないように。絶対後悔する。

フツウの泣ける系恋愛小説だと思って読みはじめた。そういう話嫌いじゃないし。年上の女性に対する憧憬。夢のような愛欲の日々とか。少年時代の輝かしくも哀しい恋の顛末を甘酸っぱく描いた秀作、、、なのかなと。

でも全然違った。反省してます。なるほどねえそう来るんだ。誇り高きひとりの女の贖罪の物語だった。ハンナが背負ってきたある過去とある秘密。「あなたならどうしますか」というあまりに重い問いには誰もが絶句するしかないだろう。

付き合っていた女の子の事を何年か経って思い出してみると、何故か妙な場面ばかり覚えている主人公。「ああ、あるある」そおいうのあるよな。もちろん恋愛小説としても秀逸です。

努めて感情を抑えた筆致で綴られていく彼女の過去と秘密。書斎に立ち尽くすハンナの姿。ハンナの手紙。すべての朗読者たち。読後1週間経ってなお余韻を引っ張る作品というのもなかなかない。もう一度読むかなあ。[2000/07]

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鏡の国のアリス [広瀬正] ★★☆ 集英社 集英社文庫 (\680) [Amazon]

鏡の国のアリス

銭湯で湯船に浸かっていた木崎浩一はふと気付くと女湯に入っている自分に気がついた。あわてて飛び出した木崎だったが、そこは全ての右と左が入れ代わった鏡の中の世界だった。鏡の国で木崎が経験する不思議な物語を描く表題作をはじめ、他三編の短編を収録。

ネタの切れ味としてはやはり名作『マイナスゼロ』には数歩譲るかな。鏡についての講釈は楽しく読めたけど、さすがにいまとなっては少々古臭さを感じずにはいられない。短編で収録されている『遊覧バスは何を見た』は哀切感漂う都市年代記としてわりと好み。[2000/07]

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リバティ・ランドの鐘
[秋山完] ★★★ 朝日ソノラマ ソノラマ文庫 (\505) [Amazon] ※書影無し

リバティ・ランドは宇宙に浮かぶ巨大遊園地。800万のロボットたちによって運営される夢と魔法とノスタルジーの殿堂だ。しかしその平穏な日々は突然破られた。圧倒的な軍事力を誇る秘密結社ナパージの侵略が始まったのだ。取り残された二千人の観光客を守るため、リバティ・ランドのロボットたちが立ち上がる。

秋山完の長編2作目。森岡浩之の『星界の紋章』に出てくる遊園地にイメージだぶった人多いんじゃないでしょうか。どことなく藤田和日郎の『からくりサーカス』を思わせるようなところもあるな。

遊園地ロボット(もちろん非武装)たちによる空前の抵抗作戦が本作の肝。人間を守るため従容と「オフ」されていくロボットたち。静かに燃えるロボット魂が感涙を誘うのであります。人間よりもロボットの方がよっぽどキャラ立ってます。佳作。[2000/07]

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忌まわしい匣 [牧野修] ★★★☆ 集英社 (\1,900) [Amazon]

忌まわしい匣

日本ホラー小説大賞佳作入選後初の短編集。『SFマガジン』『異形コレクション』等、各誌に発表された13作!を収録。

先日読んだ『スィート・リトル・ベイビー』がいま一歩だった牧野修。気を取り直して読んでみた本作だがこれは良かった。カバーデザインも○。ばらばらに書かれた短編を1冊にまとめている作品なんだけど、ちょっと構成で趣向をこらしていて巧くまとめている。

毒電波出まくり。この「イッちゃってる」感じがたまらない『電波大戦』。三人の老人(よぼよぼ)が老体に鞭打って邪悪なる敵と闘う『翁戦記』。闇の黒と血の赤のコントラストが鮮やかな『B1公爵婦人』。がわりと好みかな。この作家短編の方が向いているのではないでしょうか。[2000/07]

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会津斬鉄風 [森雅裕] ★★★ 集英社 集英社文庫 (\514) [Amazon]

会津斬鉄風 (集英社文庫)

二枚の鍔の真贋をめぐる奇妙な人の縁を描く表題作を始め、幕末の刀匠和泉守兼定が妖刀とされた自作の謎を追う『妖刀愁訴』など、会津から京都、そして函館へ、幕末を駆け抜けた男と女。その一瞬の煌きを描く連作短編集。

森雅裕は好きな作家の一人。このごろでは刀剣を扱った時代小説を主に書いてるみたいです。ストイックな男の生き様をべたべたさせずに描かせたら天下一品。地味な作風なのでいかにも売れなさそうなのが残念なんですが、これからも頑張って欲しいです。初期の音楽ミステリも好みだったんだけど、もう書かないのでしょうか。[2000/07]

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ネバーランド [恩田陸] ★★★☆ 集英社 (\1,500) [Amazon]

ネバーランド

地方の名門進学校の寮、松籟(しょうらい)館。年末を目前に控え多くの寮生が帰郷する中、菱川美国はあえて寮に残ることを決意していた。様々な理由を抱えて同じように寮に残った三人の少年たち。他に誰もいない無人の寮。少年達の七日間の物語。

もったいなくて読めなかったんですが、新作『麦の海に沈む果実』が出たこともあって、ようやく読む気になりました。作者は『トーマの心臓』をやるつもりだったと書いてますけど、『ここはグリーンウッド』になっちゃったな、と。こう思った人とても多いのではないでしょうか。

帯には「青春ミステリの金字塔」なんて書いてありますが(この帯の惹句イマイチ)、これといって大きな謎があるわけでなく、四人の登場人物それぞれが抱えている、深刻な過去や悩みが徐々に明らかになっていきます。ミステリというよりは、学園小説、青春小説の類でしょう。登場人物の四人は元々仲が良かったわけではなく、今回の七日間を通じて心を通わせていき、互いに心を許すようになっていきます。

女性ばかりが登場する『木曜組曲』のB面、少年版でもあるわけだけど、男性、それも少年を描いている分、大人の女性を描いた『木曜組曲』よりも、作者の異性に対する幻想というか、かくあって欲しい少年像が託されているのかな、と感じました。あとがきで作者も書いてますけど、実態は「あまりにも美しくない」からなあ。[2000/07]

ドラマ化を機に一年振りに再読。なぜか前回読んだときよりも感動してしまったのはドラマのせいなのだろうか?冬休みの学校。男子寮。鍋パーティ。酒と煙草。告白大会。なんてありきたりの素材を用いながらも、ここにしかありえない静謐な空間を現出せしめてしまうのはやはりこの作家ならではだろう。[2001/07]

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