幽霊屋敷 [友成純一] ★★☆ 角川書店 角川ホラー文庫 (\560) [Amazon] ※書影無し
河童の伝説で知られる熊本県国見村。村の山中深くにはいつの頃からか離れ屋敷と呼ばれる広壮な洋館が築かれていた。東京からこの地へ引っ越してきた正樹はこの屋敷に不思議な魅力を覚えるが、村人たちは口を閉ざして決して詳しい事を語ろうとしない。しかし長く無人であったこの屋敷に何時の間にかある一家が住み着くようになってから、村に次々と奇怪な事件が起こるようになる。
1995年書き下ろし作品。処女作『陵辱の魔界』がわりと評判いいので、本当はそちらから読んでみたかったのだが入手困難なようなので、とりあえずこちらから挑戦。謎の転校生+妖怪モノ+クトゥルー神話は渾然一体となったあげく、わけのわからん奇怪な生き物になってしまったようで、ギャグなのか真面目なのかよくわかんないですこれ。荒唐無稽にも一本筋を通してくれないと……。やっぱりギャグだと思うべきなんだろうか。嘉晴クンのその後が気になります。どうやって退治したんだあれを。[2001/04]
軍事大国ボスポラスの侵攻を退け、ひとまず平穏を取り戻した商業国家オルヴィエート。国家元首の父の命に従い意に染まぬ政略結婚を強いられるエレオノーラ。しかし夫なるべき男は原因不明の爆発事故で殺害されてしまう。一方兄である防衛艦隊司令長官ジェラルドにはハシルメル星系への派兵が命じられる。兄と共にハシルメルへ向かうエレオノーラの真の目的とは。
シリーズ二作目です。前作から半年程度しか経たないのにもう二作目。供給ペースという点で言えばこのコンビネーションは正解なのだろう。田中芳樹だけで書いていたら当分この本は出ていない筈。かなり重要そうな新キャラの登場や、「思考体」なる新ギミックも登場して本格的にシリーズが動き出した予感です。
今回の事件の中でエレオノーラがやってのけた大胆きわまりない賭けには正直驚いた。何万人死んだんだあれで。父親のことをあれだけ憎んでおきながらやってることはまるで変わらない訳でしょう。父親にはまだしも国家元首としての大義があるけど、彼女の場合は自身の野望のみのためにそれをやっているわけで。主人公(それも女性キャラ)にここまでエグイことやらせますか。盟友のベアトリーチェもあっさり手を貸してるけど、キルヒアイスなら絶対止めてます。ここいらへんが使用人の限界か。[2001/04] ⇒次巻
神野の学生時代からの友人Aが失踪した。あれだけ雑然としていた彼の部屋にはただ一台のパソコン(PC9801-VM2)が残されていただけだった。インターネットを通じてAの消息を調べようとした神野だったが、「AONEKO」と称される謎の存在がその背後に見え隠れする。ネットを彷徨し、幾多の暗号を解読、地下BBSに接触し、真相に肉薄する神野だったがやがて現実的な危機がその身に訪れる。
第十回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作品。ちなみに大賞は山之口洋の『オルガニスト』。手に取ってまず驚かされるのが左開きの装丁。この本なぜか文章は全て横書きです。その昔、小峰元の本でこういうのあったけど文芸書で横書きは確かに珍しい。パソコン上でテキストを読む感覚を表現したかったのだろうか。作者の涼元悠一は1969年生まれ。1991年に集英社のコバルト・ノベル大賞に入選しており、1992年にはコバルト文庫で処女作(『あいつはダンディライオン』)上梓している。最近ではなんとこの人keyで『Air』のシナリオの一部を書いてるんだそうで驚きです。
普通ノスタルジーなんてものを感じるには二十年とか三十年といった歳月が必要なわけだけど、ドッグイヤーと呼ばれるパソコンの世界、特にネット界では一年前でも一昔。十年も前なら既に大昔の世界である。なにせVMだよVM!98ユーザーにとっては忘れてはならないマシンです。パソコン通信(インターネットじゃないよ)だって既に死語に等しい昨今の情勢からしてみれば、草の根BBSなんて用語もいまや通用しないんだろうなあ。
懐かし系オールドPCについての昔語りやら、もうすっかり忘れていた草の根BBSへのアクセスシーン、まだかろうじて幼年期といえなくもなかったインターネット描写などなど、黎明期からのPCユーザーのノスタルジーのツボを的確に突いてきており、あまりの楽しさ一気読みしてしまったのだった。
しかし、ちょっと待て、大多数を占めると思われるフツウの人々にとってこのネタは99%理解不能なんじゃないのか?一般人を激しく置き去りにして疾走していくその様はある意味で痛快ではあるのだが、ちょっとやりすぎなんじゃないのかなんて疑問も湧いてくる。が、これもまたファンタジーの一つのあり方なのかもしれないと気が付いて、改めて本作はファンタジーノベル大賞の応募作であったことを思い出す。なるほどこういう手もあるわけか。けど、審査員の顔ぶれを見ていると本気でファンタジーだと信じている可能性も捨てきれない。ネット系弱そうだこの人たち。[2001/04]
江戸時代中期の京都。孤児であった少年イチは肥取りを日々の生業としていた。嫌でたまらなかったこの仕事だったが、田島屋のご隠居との出会いがその運命を変えていく。遊郭を巡って遊女たちの糞尿を集め好事家たちに売りさばく商売は大成功を収める。京の都を舞台に繰り広げられる空前絶後のスカトロ小説。
第七回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作品。「本作以上の作品を書かなければ一生"糞袋の藤田"と言われ続けることになる」と宣ってらっしゃるのですが、最近どうされているのでしょうか。とても気になります。
着想の勝利。というか、着想してもこれをネタにして小説は書かないだろう。書いても賞には応募してこないだろう。そう考えるとこれを通した審査員はいい度胸してます。新潮社なんていかにも堅そうな会社だけど、よくタイトル名を変えずに本が出せたものです。
糞尿集めの縄張り争いに嫌気がさした主人公。それならばとイベント会場に本邦初の公衆便所を設置。労せずして良質な糞尿を集めることが出来、成功の足がかりをつかみます。遊女の糞尿を都のスカトロマニアに販売する計画は軌道に乗り。続いて仕掛けた肥料作りや、品評会も大成功……、うわ、書いててうんざりしてきちゃったよ。でも余人が到底直視しえないであろうネタをとことん追求してきたその勇気は称賛されてしかるべき。
惜しいのは終盤の展開。いささか急ぎすぎというかあまりに唐突です。幕府絡みの話はまだいいとしても、妹の話はいきなりすぎる。あれだけの財産を持っていた主人公が妹の身請けのことを考えないのはあまりに不自然じゃないか?[2001/04]
タツモリ家の食卓 超生命襲来!!
[古橋秀之] ★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\510) [Amazon] ※書影無し
龍守忠介は平凡な高校生。良くできたしっかり者の妹、陽子との二人暮らし。しかし平穏な生活はある日突然破られる。忠介が拾ってきた「なんだかよくわからない生き物」は宇宙を震撼させる超生命体<リヴァイアサン>だったのだ。超生命体を追って次々とタツモリ家を訪れる異星人たち。人類の危機を前にして忠介の採った選択は……。
『ブラックロッド』『ブラッドジャケット』の古橋秀之の作品。本作で五冊目になります。従来作品とはまるで違ったほんわか和みモードで迫る本シリーズ。これといって取り柄も無い主人公にわらわらと群がる美少女たち(非人類含む)と、恥ずかしいまでに王道パターンを狙い澄ましています。王道パターンの踏襲に引き替え、随所に垣間見られるやや過剰とも思えるSF的こだわりはなんともアンパランスな感じがするのですが、これはシリーズ通して読んでから結論を出すべき事なのかもしれない。既に三巻まで続きが出ているのでこちらもチェックしてみるつもり。[2001/04] ⇒次巻
世界の中心で愛を叫んだけもの
[ハーラン・エリスン] ★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\460) [Amazon] ※書影無し
核戦争後の世界。人語を解する犬と少年の日々を描いた『少年と犬』、突然誰からも認識されなくなってしまった男の悲劇を描いた『聞いていますか?』、あまたの星々で虐殺を続ける男の姿を描く『殺戮すべき多くの世界』、宇宙から来た訪問者たちの意外な正体を描く『満員御礼』など、表題作を含む15編の短編集。
すいません。表題作のあらすじ省略です。この作品のあらすじ書くのってものすごく難しいです。わたしの貧弱な筆力では誤解を与えてしまいそうです。
表題作は1969年のヒューゴー賞短編部門の受賞作品。TV版『新世紀エヴァンゲリオン』の最終話タイトルにもなったりして、いろいろな意味で有名な作品。ここしばらく入手困難でしたが、古本で手に入ったので読んでみた。最近になってだけど再版もされたようです。
本作収録作品の発表年代は60年代後半〜70年代後半。ネタ的にも訳にしても古臭さを感じてしまうことは否めない。あらゆる小説は時間の洗礼という奴を受けざるを得ないわけだけど、エスエフというジャンルは特にそのダメージが強いジャンルだと思います。当時は衝撃的だったのかもしれないけど、今更宇宙人の侵略だとか、ハイテクカーでのカーチェイスだの描かれてもなあ。登場人物がこれまたどいつもこいつもクズばかりで泣けてきます。作中に溢れかえる暴力波動もすごい。[2001/04]
第二次世界大戦末期。ユダヤ人強制収容所の囚人シュムエルは信じられない事態に遭遇する。闇の中で作業をしていた仲間たちが次々と銃弾に倒れていくのだ。何も見えない筈なのに!ありえない現実に直面しながらも急死に一生を得たシュムエルは自分たちが新兵器の実験台にされたことを知る。ナチスの新兵器が狙う標的は誰なのか。生き詰まる暗闘が繰り広げられる。
『極大射程』でその名を一躍高めたスティーブン・ハンターの記念すべき処女作。1980年の作品。二十年の月日を経てようやく邦訳が発売されました。実はこの作家読むのはこれが初めてなのですが、邦訳版がなかなか出なかったのは諸般の事情があるのでしょうが、その中の一つとして、作品としての未熟さがあるのではないかと邪推してしまいます。突っ込みどころ満載です。
いくら終戦を迎えて未曾有のお祭り騒ぎの状態になっているからといっても、現場の将校だけの判断で、全く関係のない第三国へ爆撃機を飛ばしてしまって良いの?軍隊ってそんなに甘くないでしょう。これで一気に萎えたなあ。荒唐無稽も程々にしようよ。冷酷なまでに任務を遂行していくナチスの狙撃兵レップ中佐の際だった存在感に比べると、相対するアメリカ人大尉リーツのキャラクターがあまりに弱い。何故そこまでしてレップを追いつめようとするのかがイマイチ伝わってきません。恋人との仲もなんだか中途半端だったし、蛇足としてしか思えないテニス編の存在もまったくもって謎です。
しかしながらこの作家、これから後の作品で大化けするらしい。ボブ・リー・スワガーシリーズをまずは読むべきなのかな。[2001/04]
魔性の子
[小野不由美] ★★★☆ 新潮社 新潮文庫ファンタジーノベルシリーズ (\480) [Amazon]
教育実習生として久しぶりに母校を訪れた広瀬はそこで高里という奇妙な生徒に出会う。「祟る」と畏れられ周囲から孤立している高里だったが、広瀬は高校時代の自分と同じものを見いだし関心を持つようになる。怪現象の原因は高里の幼少時の神隠しにあるようなのだが、次第にエスカレートする「祟り」はやがて彼らを追いつめていく。
1991年に新潮文庫のファンタジーノベルシリーズとして刊行された作品。つまり十二国の第一作『月の影 影の海』よりも早く出ているわけだ。ファンタジーノベルシリーズ亡き後はノーマルの新潮文庫のラインナップとして刊行されています。ファンタジーノベルシリーズの中で最もスムーズに新潮文庫への移行を果たした作品といえるだろう。
一連の講談社文庫での十二国シリーズ再リリースのおかげで『黄昏の岸 暁の天』が出る前に全シリーズ再読完了。これで予習は完璧と思っていたんだけど、これを読むのを忘れてました。読む順番としては本書を読んでから講談社のシリーズ全部読んで、それからもう一度本書を再読するのがお薦め。十二国世界について知った上で本書を読むと本シリーズとの入れ子構造が良く理解出来ます。
で、なにはさておき広瀬先生です。彼のその後は描かれるのでしょうか。彼の精神衛生状態がとても気になります。「……おれを置いていくのか」という彼の絶叫はエゴと呼ぶにはあまりに悲痛な魂の叫びです。十年前に読んだ時には思いっきり共振してしまい、相当へこみました。先生って言っても彼まだ二十二歳程度でしょう。初めて同胞だと思った存在をこんな形で失ってしまう。これは辛いです。最後に彼はどうやら生き延びたらしいので再生に期待したいです。まさかとは思うけど、可愛さ余って憎さ百倍。復讐に燃えて十二国世界に海客として流れ着いたりしないよね。[2001/04]
黄昏の岸 暁の天 [小野不由美] ★★★☆ 講談社 講談社文庫 (\714) [Amazon]
戴国の王座についた驍宗は次々と宮廷の旧勢力を駆逐し果断に改革を実行していく。しかし反乱制圧に赴いた文州では思わぬ叛逆の罠が待ちかまえていた。都に残った泰麒にも暗殺者の凶刃が迫る。偽王の登場により急激に荒廃の度合いを強めていく戴。将軍李斎は救援を求め一命を賭して景王陽子の元へ赴く。
シリーズ六作目。なんと五年振りの新刊です。全国の十二国愛好者が随喜の涙を流して欣喜雀躍してのけたのは間違いの無いところ。もうこのシリーズ出ないんじゃないかと半分諦めてたもんね。
話の流れからして戴のエピソードになるのだろうとは思っていたけれど、前もって『魔性の子』を読んでおいて正解。まさしく『魔性の子』と表裏一体をなす作品となっています。なかなか泰麒が戻ってこないので、これはひょっとしてと思っていたけれど、最後まで引っ張るとは。全然終わってないじゃんという魂の叫びがこれまた全国から聞こえてきそうです。驍宗はどうなったんだ〜。この巻自体は来るべき続巻の序章に過ぎないという感触がありありとしております。
待たせたお詫びなのか慶国主従、雁国主従、更に新登場の範国主従と王も麒麟も大盤振る舞いのオールスターキャストで楽しませてくれます。恭国主従と楽俊が出てこなかったのは残念だが、補ってあまりある範国主従の異彩ぶりだったのでまあ、良しとしときましょう。待望の中嶋陽子VS高里要の初対面シーンはなんとも微笑ましい雰囲気で、後ろで景麒が嫉妬の炎を燃やしていたのではないかと心配しています(笑)。延王と対等に渡り合う陽子主上。復帰を遂げた泰麒の成長ぶり。今後このシリーズはこの二人を軸として進んでいくようです。
そして見逃せないポイント。十二国世界の根幹に触れる記述が本巻ではいくつかありました。地理的にも権力システム的にも極めてシステマティックなこの世界。その成り立ちの秘密は非常に気になるところだけど、よもやまともに答えを出すつもりなのでしょうか。てっきり「こういう世界なんです」ってことで世界の謎については触れずに済ますのかと思ってたけどどうやらそうではないらしい。陽子の考え方は遠からずこの世界の禁忌に触れる筈。戴国編が終わったらそっちの話かな。ファンタジーの殻を破ってみたら実はエスエフでしたって安易なオチはやめて欲しいぞ。[2001/04]
光の帝国 [恩田陸] ★★★★ 集英社 集英社文庫 (\495) [Amazon]
常野の民は不思議な力があった。それは時には卓越した記憶力であったり、未来を見通す力であったり、信じられないほどの長命であったりとその力の種類は様々だ。しかし彼らはおしなべて穏やかで、権力への指向を持たず、市井に埋もれて暮らすことを望んでいた。常野の一族を巡る奇妙な出来事を綴る十編の連作短編集。
1997年に単行本として刊行された作品の文庫化。ゼナ・ヘンダースンの「ピープルシリーズ」にインスパイアを受け書かれたもの。『三月は深き紅の淵を』と並んで恩田陸ブレイクのきっかけとなった作品。某所での読書会チャットのお題だったので再読してみた。以下に各編ごとの短評行きます。
「大きな引き出し」。のっけから泣かします。お前は浅田次郎か!というくらい泣かします。シリーズのつかみとしてはバッチリです。この春田家(特に記実子)は今後も重要な役割を果たすので要注意。信じられない話ですがこのエピソード、ビジネスジャンプでコミック化されています。
「二つの茶碗」。なんとなく北村薫を思わせるほのぼのとした恋愛話。ほんのお手伝いだった筈の三宅篤がなぜ自ら代議士になってしまったのかは是非知りたいところ。
「達磨山への道」。三作目は人ではなく場所のもたらす怪異譚。主人公の荒涼たる心象がまざまざと伝わってくる一作。これは寂しい。
「オセロ・ゲーム」。異色作。戦う常野一族の物語。この拝島親娘ってなんだか『上と外』の千鶴子と千華子みたいですね。娘を愛おしむ視線が素晴らしい。
「手紙」。これもある意味かなり異色作。雑誌でこれだけ読んでしまった人はさぞかしとまどったのでは。どことなく遠野物語を思わせる不思議な書簡集。この作品でツル先生を登場させたのは巧い。
「光の帝国」。本作中最大の悲劇ともいえる作品。なんとはなしに宮沢賢治っぽい『お祈り』の文句は涙なくしては読めません。ツル先生は単に長命なのでしょうか。それとも不死なのかな?
「歴史の時間」。記実子再登場。そして常野一族最強の力を持つ亜希子の登場譚。まずは顔出し程度かな。本作中で最もイメージ性の高い作品。
「草取り」。これまた常野の敵対勢力についてのエピソード。しかしこの取材の人、こんなネタを記事に出来るのだろうか。これを読んで以来西武新宿駅を見るたびに蔦を探してしまいます。
「黒い塔」。亜希子再登場。記実子や篤、美耶子も登場。亜希子のとてつもない能力が明らかになります。養父母との絡みがこれまた泣けてきます。
「国道を降りて……」。ラスト。これ以上は無い程の見事な締めくくり。こういう音楽の悦びを高らかに謳う作品はツボ直撃で、わたし的には全エピソード中これが一押しです。ツル先生の出迎えがこれまた号泣モノ。
連作短編をその都度異なるキャラクターで勝負するというのは、作者は後悔してるみたいだけど、話が格段に立体的になってくるので苦労してるだけの効果は十二分に出ています。個々の作品が束ね合わされることでより大きな物語が浮き彫りにされていくというのが、連作短編の楽しいところ。第二作の『蒲公英草紙』は雑誌連載は未読ながらも今年中には単行本が刊行されそうなので期待大。[2001/04] ⇒次巻
メルサスの少年
[菅浩江] ★★★☆ 徳間書店 徳間デュアル文庫 (\648) [Amazon] ※書影無し
異形の女たちの暮らす街メルルキサス。人とも獣ともつかない遊女たちが春を売る螺旋の街で生まれた少年イェノム。唯一の男である彼は<街の子供>として育てられ今年で十五歳になる。いつまでたっても子供扱いされることに苛立ちを覚えるイェノムだった、そんな彼の元へトリネキシア商会から追われる少女カレンシアが現れる。
菅浩江の第六長編作品。1991年に新潮文庫ファンタジーノベルシリーズの一冊として刊行された作品。1992年の星雲賞国内長編部門受賞。十年の歳月を経て徳間デュアル文庫で復刊です。やはりこのシリーズ侮れないなあ。
これも再読。ファンタジーの衣装を剥がしてみたらエスエフでしたって奴は、やり方によってはとてつもなく陳腐に感じられてしまい興冷めしてしまうことがある。その点『<柊の僧兵>記』はちょっとやり過ぎで残念だったんだけど、本作はエスエフ的要素を散りばめながらもファンタジーの領域にしっかり踏みとどまっていて好感触。醸し出される繊細かつ豊穣なイメージの奔流に圧倒されます。少年の成長物語であり、ボーイミーツガールとしてのポイントもしっかり押さえてます。これは再読に耐えうる作品。[2001/04]
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