今月はイマイチ低調かと思いきや後半に来て当たり連発。
特に乙一にはしてやられました。これから乙一派として布教に努めていく所存です。
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コメント |
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| 天象儀の星 | 秋山完 | 朝日ソノラマ | \533 |
ため息の出る美しさ。
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★★★☆ |
| 広瀬正 | 集英社 | \705 |
短編集です。
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★★★ | |
| 栗本薫 | 早川書房 | \540 |
キャラが人格崩壊起こしてます。
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★★★ | |
| 清涼院流水 | 幻冬舎 | \457 |
我慢も残り一冊に。
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★★☆ | |
| 伊豆平成 | 角川書店 | \514 |
シリーズ二作目。もちっとがんばれ。
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★★★ | |
| 恩田陸 | 幻冬舎 | \457 |
これも残り一冊。ちゃんと終わってくれ〜。
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★★★☆ | |
| トップラン 最終話 | 清涼院流水 | 幻冬舎 | \457 |
焚書決定。すさまじい徒労感。
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★☆ |
| 恩田陸 | 幻冬舎 | \1,800 |
再読。細かい描写に恩田作品らしさが発揮されています。
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★★★☆ | |
| 十一番目の志士 上 | 司馬遼太郎 | 文藝春秋 | \485 |
野人の生き様がすごい。
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★★★ |
| \486 | |||||
| 菅浩江 | 角川書店 | \560 |
菅作品にしてはイマイチ。
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★★☆ | |
| 上遠野浩平 | 講談社 | \880 |
これは良いです。前作ダメだった人も読んでみよう。
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★★★☆ | |
| 果てしなき旅路 | ゼナ ・ヘンダースン |
早川書房 | \820 |
古典ながら古さを感じさせない名作。
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★★★★ |
| 乙一 | 角川書店 | \476 |
わたしはこれで乙一にハマリました。
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★★★★ | |
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天象儀の星
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| 巻数 | 1頁当たりの行数 | 1行あたりの文字数 | 1頁の最大文字数 |
| 1巻 | 19行 | 43文字 | 817文字 |
| 78巻 | 18行 | 41文字 | 738文字 |
| 79巻(本巻) | 17行 | 39文字 | 663文字 |
いやしかし改めて1巻とか見てみると字の細かさにびっくりです。この頃に比べるとボリュームは二割近く減ってるのですね。まあ、活字が大きくなっていくのはどこの出版社もやっていることだし(恩田陸の『上と外』は15行×38文字しかない)、確かに字が大きい方が読みやすいのは判る。しかしグインの場合はただでさえかなの多用ぶりがすさまじいだけにより一層展開が遅くなることが懸念され、不安は尽きないのであった。だいたい総ページ数が増えてるわけじゃないから実質的には値上げってことだしね。
まあ、しかし活字が大きくなったことよりも気に掛かるのは更なる後付けの数々。新婚旅行でのマリウスの放埒ぶりは正直いって相当めげました。グインサーガ史上もっとも感動的に結ばれたカップルだと思っていたマリウス/オクタヴィアですらこれかい。いつの間にか昔からバーサーカーのような魔戦士だったことになっているイシュトヴァーン。それをグインの口から言わせるのが更にむごい。ナリス軍の情報化は極限まで達してしまい瞬時に遠方の戦況をリアルタイムで把握し始めるし……。気付いた時には異形の王国と成りはてていたパロのように、グインサーガの水面下の変貌もまたとどまる所を知らない。作者曰くこれからが本番らしいのだけど、キャラクターの精神性を貶めるのはもう勘弁して欲しい。[2001/06] ⇒次巻
「一巻の終わりクイズ」も遂に終盤。最後の勝負に打って出た恋子だったが、少年狼の予想外の反撃に遭い、思いもよらぬ結末を迎える。秘密は明かされず貴船天使は姿を消した。そしてその後を追うように笙造も消息を絶つ。取り残され途方に暮れる恋子の前に狐森ヒカルの秘書と名乗る謎の女が現れる。トップラン・テストに隠されたY3K問題の謎とは?
グリーンマイル方式の文庫書き下ろし作品。全六冊。これで残り一冊。第3話までは正直言って退屈で退屈で……、いっそ焚書にしようかとも思っていましたが第4話で若干持ち直した本シリーズ。とりあえず全巻購入してしまっていることもあり継続して読んでみることにしました。しかしラストを前にしてまたしても大風呂敷を広げてきた清涼院。Y3K(西暦3000年問題)とは一体何なのか?非常に気になりますがおそらく間違いなくまともな謎解きはしてくれないと思われるので、あんまり期待はしないでおきます。[2001/06] ⇒次巻
ルフィは港町ルストの護民官。その助手を務めるワイリーはかつてはロマヌアの悪魔と呼ばれた大泥棒だ。このところうまく噛み合わない二人の前に飛び込んできた殺人事件。事件の第一発見者であったワイリーはそれが元で仮面を付けた少女に命を付けねらわれることになる。一方ルフィは事件に意外な勢力が暗躍していることを突き止める。
PATORNEシリーズ第二弾。ローマ帝国もどきの架空王国を舞台とした銭形平次みたいな話です。これ。密かにプッシュしている作家なので無事に続編が出てくれて嬉しいです。しかしそろそろ人物紹介ページを作った方が良いのではないでだろうか。カタカナ名前を覚えられない駄目人間のわたしとしてはもう誰が誰だが判りません(記憶力なさすぎ)。
このシリーズって実はファンタジーの殻をかぶったミステリであったりもするのだけど、ファンタジー世界の描写をしつつ、ミステリとしての伏線を埋めてって、更にルフィとワイリーの恋のどたばたや、仮面の少女の復讐譚なんてあたりまで盛り込もうとすると、ちと力量不足が露呈してしまうのは否めない。半分くらいにポイント絞り込めばもう少し良くなると思うんだけどなあ。さもなきゃ分量倍!とかね。でもライトノベルじゃ無理かあ。[2001/06]
「成人式」初日。思わぬハプニングから絶対絶命のピンチを迎えた練だったが、持ち前の知恵と勇気で事態を打開していく。そして遂に練はニコの協力の下、「王」を打ち倒すことに成功する。即座に監禁中の千華子への面会を求める練だったが、その頃千華子は地下迷宮の中をあてどもなく彷徨っていた。一方賢と千鶴子はヘリによる本格的な捜索を開始するのだが、G国首都では世界を揺るがす驚くべき宣言が発せられていた。
全五巻。グリーンマイル方式。隔月刊行の文庫書き下ろし作品。……だったのですが、第五巻は二ヶ月の発売延期。更に当初の全五巻構想は全六巻構想に変更されました。というわけなのでまだ終わりません。あと一冊だけ続きます。そりゃ四巻読んでてとてもあと一冊で終わるようには見えなかったので意外感は全くありません。好きで読んでる分には冊数が増えるのは一向に問題なし。
というよりはむしろ六巻でちゃんと完結してくれるのかが心配でなりません。ちょっと家庭環境に事情ありげな少年少女の成長譚としてはこの五巻までで既に結構な及第点が与えられるかと思うのだけど、恩田の大風呂敷はそんなことではとどまらず、マヤの古代文明やら、G国のクーデターやらにまでスケールが広がってしまっている。これを残り200ページできれいに畳んでのけることなんて出来るのだろうか。不安は尽きない。六巻が500ページくらいになってもいいし、全七巻になってもいいのでしっかりケリはつけてね。[2001/06] ⇒次巻
特設ページはこちら。遅れてゴメン。[2001/08]
タイムリミットは2000年12月31日。突如消息を絶った笙造の手がかりを追い求める恋子たち。唯一残された手がかりは「NEWS」を見ること。僅かな手がかりを求め、長崎のハウステンボスへと赴く恋子と銀子。そこで二人はあまりに意外な人物に出会うことになる。明かされるトップランテストの謎。そして最後のトップランテストがスタートする。
グリーンマイル方式の文庫書き下ろし作品。全六冊。本巻でようやく最終巻となります。背表紙の紹介文曰く、「あらゆる小説ジャンルと隔絶した方法論でつくられた新しい物語」とか、「清涼院『流水大説』の揺るぎない到達点」だったりするらしいのですが、残念ながら旧人類に過ぎないわたしはついぞ理解も共感もすることは出来ませんでした。退屈きわまりない「NEWS」の羅列。平板な登場人物。読者を光の早さで置き去りにして展開する「そんなこと聞いてねえよ」的な無理矢理なラスト。ある意味徒労という言葉がもっともふさわしい作品群といえるでしょう。久々の焚書級です。
しかし清涼院流水作品って相変わらず新刊が次々と出ているわけで、強固な支持層って奴もきっと存在するんだろうなあ。どのヘンが評価されているのだろう。とても興味があります。しかしこれだけ無駄に時間を使わされながらも『秘密屋』を読んでみたい……、という出来心を押さえることが出来ない自分だったりもするのでした。[2001/06] ⇒感想を1巻から
幕末の長州藩。天童晋助は下層階級の出身ではあったが、稀代の風雲児高杉晋作との出会いがその運命を激変させていく。二天一流を使う晋助の剣技が冴え渡り、京都で、大阪で、そして江戸で暗殺の剣を振るい続ける晋助。しかし突然の政変は長州をして孤立の道を歩ませることとなる。ただひとり残され剣だけを恃みに生き延びていく晋助。その壮烈な生き様を描いた歴史小説。
他と比肩すべくもない圧倒的な強さ。瞬時に危険を嗅ぎ分ける嗅覚。どんな犠牲を払ってでも必ず死地を逃れるバイタリティ。もはや人間ではないというか、動物的ですらある。これも幕末という異常な時代であればこそ、こんな人間も存在し得たのであろう、なんて思っていると解説曰く、このキャラクター完全な司馬遼太郎による創作なのであるそうな。
しかしこれだけ生き生きとした天童晋助像を見せつけられてしまうと、よもやこの人物が架空の人間であったなぞとは到底思えない。現実世界であったなら一瞬たりとも同席は勘弁願いたいタイプだが、強烈な個性が否が応でも印象に残る。なんとも魅力的な男なのだった。司馬遼太郎はお偉い連中を描いた作品よりも、こうした名も無き下っ端連中を描いた作品の方が面白いように思える。制約が無い分好きなように書けたのだろうか。[2001/06]
| ついでに…… 『世に棲む日日』@司馬遼太郎 <<高杉晋作の生涯を描いた作品。長州派なら是非。 |
攫われた王女を救うべく魔物の島へと渡った勇者。しかし勇者は姫の目の前でモンスターと相撃ちに!ありえない筋書きながら、生き残るために姫巫女ミーサは一人剣を取り魔王の島を行く。襲いかかる魔物たち。その背後には圧倒的な存在感を見せつける「神」の姿が見え隠れする。果たしてミーサは無事に島を脱出出来るのだろうか。
その昔PCエンジンという名のゲームハードがあった。、そのハード生命の後期に一本のゲームソフトが発売された。その名も『ゲッツェンディーナー』。内容的にもセールス的にもこけた作品だったのだが、そのノベライズ作品が本作。と、いっても後書きで作者本人が述べているように、原案を書き、ゲーム制作にも関わって、設定もひねり出しと、単なるノベライズ作家の範疇には収まりきれなかったらしく。本作もゲーム本編とはかなり風合いの異なった出来となっている。
「ゲッツェンディーナー」とは偶像崇拝者の意。年若い王女が危難をくぐり抜ける中で、神々と人間の秘められた関係に気付き、更なる成長を遂げる。といった点では前作である『オルディコスの三使徒』に通じるものがあるのだが、いかんせんボリュームが少なすぎたのか、オリジナルとの中途半端な距離感が災いしたのか、設定を十分生かし切ることが出来ず、物語としてもカタルシスに欠けるというどっちつかずの作品になってしまっている。まともな人間キャラが主人公だけっていうのもちときついか。[2001/06]
| ついでに…… 『氷結の魂』@管浩江 <<管浩江が別の側面から描いた神の在り方。 |

伝説の魔女リ・カーズと戦鬼オリセ・クォルトが雌雄を決した忌まわしき地、紫骸城。幾百幾万もの人血をすすり、数百年の歳月を経たいまもどす黒い璋気を吹き上げる呪いの地。そんな彼の地で開催される限界魔導決定会。判定員として招かれたフローレイド大佐だっったが、高名な魔導士たちが次々と謎の死を遂げる。それは殺人なのか、それとも魔女の呪いなのか。
『殺竜事件』に続く講談社ノベルズでのシリーズ第二弾。これってシリーズ名ってあるんだっけか?ファンタジー世界でのミステリ的状況を楽しむのが本シリーズの醍醐味。ファンタジーの衣をまといつつも、ミステリとしての(その世界では)合理的な解決が最後には下されなくてはならない。前作『殺竜事件』はこの点あまりに最後のオチがショボかったので、ずいぶんとがっかりさせられたものだったんだけど、本作はその点大丈夫。きちんとラストのオチへつなげるだけの説得力を前半部に持たせてくれているので、安心して終盤を読み進めることが出来るのだった。
キャラ的には前作の三人組の甘々ぶりが物足りなかっただけに、本作ではキレてる双子ミラル・キラル戦地調停士の活躍を存分に堪能。いかにも再登場してきそうなレクター博士もどきの殺人狂もいい味出てました。魔女&戦鬼の二人もこれから先がありそう。ちなみに次巻タイトルは『海賊島事件』。また一年程待つのだろうか。[2001/06] ⇒次巻
クーガー峡谷はさびれた鉱山町。外部との接触を極度に嫌う人々が住み着き、閉鎖的な生活を送っている。そんな町へ赴任してきた女性教師ヴァランシー。子供たちと触れ合ううちに、彼女はやがてこの町の住民の持つ驚くべき秘密に気付くことになる。人智を越えた特殊な能力を持ちながら、決して他と交わらずひっそりと暮らす人々。異種族「同胞(ピープル)」たちを描く連作短編集。
作者のゼナ・ヘンダースンは教職の傍ら執筆を続ける極めて寡作な作家で、この作品は1952年から1959年にかけてアメリカの「ファンタジー・アンド・サイエンス・フィクション」誌に書かれた短編をまとめたもの。日本では1978年に早川書房より文庫化されたが、長らく絶版となっていた。しかし2000年に入って早川書房が企画した「読者アンケートで選ばれた読んでみたいハヤカワ文庫の名作」企画で堂々の第一を獲得。晴れて重版となった。
解説を読む限りでは八編の短編が収録されているらしいのだが目次にはそれを伺わせるような記載は無い。不思議に思って読み始めるがやがて納得。狂言回し的な存在として一人の少女を立て、彼女のエピソードを八編の間にプロムナード的に挿入、全体として一本筋の通るような構造となっている。
最初の作品「アララテの山」、これがいきなり泣かせにかかってくる。息を潜めるように目立たぬようにひっそりと暮らしている人々の間にやってきた若い教師ヴァランシー。種族の秘密をひたすら隠そうとする彼らだったが、実は彼女にも決して人に言えない秘密が……。ネタはとっとと割れてしまうんだけど、孤独な人生を歩みながらも凛とした気概を忘れないヴァランシー。その魂の高潔さが涙を誘う。掴みの一作目としては最適。これで一気に最後まで引き込まれてしまう。
いずれも珠玉の名作揃いだけど、あと一つ挙げるとすれば「囚われびと」。虐げられてきた子供のただ一つの望みは音楽を奏でること……。子供と音楽。この二つを同時にネタにしてくるなんて反則だってば。幻想的な深夜の演奏シーンは屈指の名場面。これだけでも十分読む価値はある。
恩田陸作品『光の帝国』はこの「ピープル」シリーズにインスパイアを受けて書かれた作品。さてオリジナルの方はいかがなものかと思って読んでみたけれど、さすがはオリジナル。時の洗礼を経てなお色褪せない名作なのだった。[2001/06]
他者とのコミュニケイションを苦手とする「私」には友達がいない。だから携帯電話も持っていない。誰ともつながっていないと思い詰める「私」。ところが持っていない筈の携帯からの呼び出し音が鳴り響く。それはもう一人の孤独な魂からの呼びかけだった。(「Calling You」)。他、他人の傷を自らに移し替えるという不思議な能力を持つ少年の哀しみを描いた「傷 -KIZ/KIDS-」。恋人を失った主人公と不思議な植物の交わりを描く「華歌」。三作の短編を収録した作品集。
角川の小説雑誌「ザ・スニーカー」に掲載された二作品に(「Calling You」「傷 -KIZ/KIDS-」)に、書き下ろし一作(「華歌」)を加えて文庫化したもの。以前に読んだ『失踪Holiday』ではハートウォーム系のヒーリングストーリーである「しあわせは子猫のかたち」と、ミステリ系エンターテイメント作品「失踪Holiday」と、作風の異なる二編が収録されていたのだが、本書では前者の傾向の強い作品を収録している。
まず一作目「Calling You」。一行目からもう駄目。見事に乙一世界へ拉致されてしまう。頭の中でだけ鳴り響く着信音なんて、センスが悪いと単なるイタイ電波少女の妄想話になってしまうところなんだけど、それがちっともハナにつかないのはやはり作風なのだろうか。小さなエピソードの積み重ねは不自然なくまとまり、主人公の少女のキャラクターに共感を持たせることに成功している。この作家のすごいところは、こうした短かい作品の中でもしっかり一ひねり入れてくるところ。ラストも予想通りのオチではあるが、きれいな幕引き。
二作目「傷 -KIZ/KIDS-」。特殊学級。児童虐待。貧困。暗い要素がてんこ盛りでともすれば引きがちになってしまいそうな作品なんだが、これがまたイヤミにならないんだな。まぁ、既に一編目で擁護モードに入っちゃってるってこともあるんだろうけど。ひしと伝わってくる痛みの切なさはこの作品が圧巻。
で、三作目「華歌」。このHPは原則ネタバレありなのだが、それでも一応書いておくけど、この先をうっかり読んじゃっても怒らないように。
最後にサプライズが仕掛けられていてあらびっくり。え、そんな筈は。だってあのイラストは何だったのよ。って、あれ、それじゃ主人公が女だってだけじゃなく、里美は男だってことかい。改めて読み直してみて二度びっくり。本文の仕掛けの見事さもさることながら、これはイラストにも騙された人多いだろう。里美は姓なんだろうなきっと。こうなると病室の中川とハルキの性別も怪しくなってくる。だいたいこの病棟、外科か精神科なのかと思っていたけれど、ひょっとしたら産婦人科なのではないだろうか。
なんて驚いているうちにせっかくの「いい話」を忘れてしまっているというのがこの作品のよくわからないところ。本編にはこの性別逆転の構図は全然絡んでこないわけで、出来の良い仕掛けにこだわった反面、メインストーリーの感興が削がれてしまっている。これは評価の別れるところだろう。個人的には面白かったからいいんだけど。
これまで二冊読んできて、心惹かれながらも強烈にプッシュするには今ひとつインパクトに欠けていた乙一。しかしこの「せつない」系の三作連続攻撃+αで遂に陥落なのだった。これからは熱烈に支持させていただきます。スニーカーで書いてる場合じゃないぞ。[2001/06]