赤目のジャック [佐藤賢一] ★★★ 集英社 集英社文庫 (\571) [Amazon]
十四世紀中葉のフランス。いつ果てるとも知れない百年戦争の中でただ踏みつけにされる日々を送っていた農民たちに転機が訪れた。忌まわしき邪眼を持つ男、赤目のジャックが人々を煽動する。「悪いのは領主だ」と。瞬く間に領主の居城を陥落させた農民たちは略奪の限りを繰り広げる。フランス全土を震え上がらせた中世最大の農民反乱、ジャックリーの乱の顛末を描く。
『ジャガーになった男』『傭兵ピエール』に続く佐藤賢一の三作目。1997年〜1998年にかけて雑誌「鳩よ!」に連載されていた作品が1998年に『赤目、ジャックリーの乱』というタイトルで単行本版がマガジンハウスから刊行されている。本書はその文庫版。文庫への移行に伴ってタイトル名は変更されている。
西洋歴史小説の書き手なんてそうそう日本にはいないので、それだけにサトケンの存在価値は大きい。今回のテーマは「ジャックリーの乱」。渋い。渋すぎるテーマ設定だ。ジャックとは本来特定の人物を指す言葉ではなく、一揆を擬人化した人物、はたまた年代記作者の勘違いと言われている。ちなみに山川の世界史用語集では「土百姓」の意であると記されている。元々存在しなかったジャックという人格を作り上げ、独自の視点でこの事件を再構築したのが本作。
……であるのだが、いかんせん短すぎないか?反乱の顛末をじっくりと読みたいと思っていた読者としては肩すかしを食らわされた感は否めない。サトケンお得意の男女の情念どろどろの相克劇も、ジェットコースター的展開があまりに急すぎてどうもうまく響いてこないのだ。ネタがいいだけに惜しい。[2001/08]
人獣細工 [小林泰三] ★★★ 角川書店 角川ホラー文庫 (\495) [Amazon]
パッチワーク・ガール。継ぎはぎ娘。それが彼女だ。実の父の狂気によって人間ならざるものと次々と臓器を交換されていく彼女。無数の傷跡に縫い込められた狂おしいまでの絶望感を描いた表題作を始め、少年の日の吸血鬼との奇妙な戦いを描いた「吸血狩り」。とある本をめぐって展開する怖ろしい呪いの連鎖を描いた「本」の二編を収録した怪奇短編集。
第二回ホラー小説大賞短編賞を『玩具修理者』で受賞した作者の第二作品集。1997年に単行本化されており、本書はその文庫版。
表題作がやはり一番いい。短編なので当然ネタが命ではあるわけなのだが、細かなディティールの書き込みによって全編に醸し出されるただならぬ不安感が見事。必要な情報を与えられていないというのは常に不安を誘うわけで、ホラー作品たるものいかにネタを割ることなく、情報を小出しにしながら読者ラストへ引っ張っていけるが大事なわけで、その点この作者は巧い。
「吸血狩り」はひょっとしたらこれって本筋とは全然違う、もっと日常的なレベルの事件だったんじゃないの?というブラックな疑問が最後まで残るのが面白い。最後の「本」は登場文物たちの使う関西弁が事件の緊迫感を著しく削ぐのだが、これは関東人の僻みだろうか。[2001/08]
タツモリ家の食卓2 星間協定調印
[古橋秀之] メディアワークス 電撃文庫 ★★☆ (\510) [Amazon] ※書影無し
人類存亡の危機をひとまず免れたものの、タツモリ家にはグロウダイン帝国第三皇女、それに敵対する銀河連邦大尉、そして究極の生命体<リヴァイアサン>の三異星人が同居することに。どう見ても非日常的な事態の中で、無頓着に日常的生活を続けるタツモリ家の人々。しかしその背後では自衛隊の歩行兵器部隊が謎の動きを見せようとしていた。
わらわらと同居人が増えていくという「天地無用」パターンなドタバタSF劇第二作。どう読んでもこれ「つなぎ」だろ、おい!としか読めない第二巻。怪しく蠢く自衛隊の皆さんとか、帝国皇女の隠された過去とか、本筋はぴくりとも動かない状態で、伏線をぴしぴし張り巡らし中。おそらくは既に出ている第三巻では何らかの動きがあるのではと予想。キャラ萌え出来ないと読み続けるのは厳しいなあ。これ。[2001/08]
京都出身の同人作家藤原花奈女が自殺した。創作同人界でカリスマ的存在だった彼女は数ヶ月後にプロデビューを控えており、謎の死に周囲は騒然となる。花奈女を慕う優希は葬儀の為に京都を訪れる。そして花奈女を死の淵にまで追いつめた「ミヤコ」の正体を暴くために。
菅浩江初の本格推理作品。1996年の作品。法月綸太郎の賛辞入り。これまでずっとエスエフ、ファンタジー畑の人だった菅浩江が本格を書くに当たって選んだネタは同人誌の世界。あらすじ読んでもそんなことちっとも書いてなかったからびっくりしたぞお。思いっきり得意分野で攻めてきたか。自分の事を「ボク」と呼ぶ女の子が主人公。という段階で相当引くものがあるのだが、ここは我慢して読んでいく。
創作系同人サークルの世界がこの物語の舞台だ。「創作系のクセに午前中で売り切れなんて許せない」なんて、知っていると笑える部分が随所にあるのだが、ちと普通のお客さんを置き去りにしすぎなのではないだろうか。同人界を扱ったミステリ作品は他にもある。太田忠司の『Jの少女たち』や小森健太朗の『コミケ殺人事件』とかね。前者は部外者の視点で語ることで十分一般の読者への配慮をしていたし、後者に至ってはハナから一見さんお断りの雰囲気を漂わせている。本作で不味いと思うのは普通の本格作品を装いながら、実はかなりマニア度が高くなってしまっていること。同人の世界が良くわからないと素直に入っていけない作品になってしまっていることだろう。出身地という強みを生かした京都の街の描写がとても魅力的で惹きつけられるだけになんとも勿体ない。[2001/08]
ヤーンの翼 グインサーガ80
[栗本薫] ★★★ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540) [Amazon]
遂に長年の不干渉主義を放棄してパロへの進軍を開始したケイロニア軍。グインの元へはレムスとナリスからの使者がそれぞれ訪問しを援助を請う。一方、かつてのクム公子タルーからの急襲を受けたイシュトヴァーンは、その行方を追って別働隊を率い山中に入る。遂に囚われの身となったタルーの口から思いもよらぬ事実が語られるのだが……。
高知、はりまや橋近辺の書店で購入。旅先の宿で熱にうなされながら読了。そういえば表紙のイシュトヴァーン左手になんか持ってるなと思ったら、これってタルーなのか。夫婦揃って首刎ねられて、こりゃ絶対成仏出来そうにありません。最期まで惨めったらしいキャラクターでした。捕まったら拷問されるの分かり切ってるんだから自決しときゃいいのに。でもとりあえず合掌。新たな謎として浮上してきたタルーに兵を貸したのは誰か問題だが、本命ヤンダル、対抗グラ爺、大穴ナリス様ってことにしとこう。[2001/08] ⇒次巻
名探偵石動戯作に持ちかけられた新たなる依頼は9世紀に天台宗の名僧が日本に持ち帰ろうとした謎めいた宝物の探索だった。石動と助手の徐彬は早速福岡県のとある寂れた寺院へと赴く。そこは顔面を削り取られた本尊を「くろみさま」と称して祀る妖しげな寺だった。一方、平行して進行する奇怪な密室殺人。二つの事件は思わぬ形でリンクしていた。
『ハサミ男』で衝撃的なデビューを飾った殊能将之の第三作目。『ハサミ男』は大絶賛。でも『美濃牛』がどうしても好きになれなかったのは石動戯作の饒舌さが気にくわなかったから。根っからの本格ファンでない読み手としては、探偵のキャラクターを愛せないとこの手の作品は読み進めるのが厳しい。そんなわけで長らく読まずにいたこの作品なのだが、読んでみて後悔。あ、詰まらなくて後悔してるんじゃなくて、こんなに素晴らしいバカミスを読まずにいた自分に後悔ね。
徐彬(アントニオ)の「能力」が明らかになるあたりから物語の性質はコペルニクス的大転回を遂げていき、驚愕といえば驚愕というしかない事件の真相が明らかにされたときにはもう笑うしかなかった。こんなのアリかという意見も多いと思うけど、わたし的には十分アリ。こんな究極の禁じ手を使ってしまった作者が今後どんな方向に進んでいくのかとても楽しみなのだった。
四国旅行中。よさこい祭りに湧く高知のしなびたビジネスホテルの一室にて熱にうなされながら読了。[2001/08]
殉教カテリナ車輪
[飛鳥部勝則] ★★★☆ 東京創元社 創元推理文庫 (\740) [Amazon]
数年の間に五百を超える作品を描き上げ、そして自ら命を絶った孤高の画家東条寺桂。ほとんどが散逸してしまった東条寺の作品を追い求め、学芸員・矢部直樹は関係者を訪ね歩く。ようやく目にすることが出来た大作「殉教」「車輪」の二作には二十年前の二重密室殺人の真相が隠されていた。東条寺が絵に塗り込めた事件の真相とは。
第九回鮎川哲也賞受賞作品。飛鳥部勝則の処女作品。1998年に刊行された作品の文庫版。宝島社の99年版「このミステリーがすごい!」では国内部門の12位にランクインしている。
以前、ブリジストン美術館で開催されていた「聖書と神話の図像学展」なる展覧会に行ったことがある。図像学(イコノグラフィー)とは美術作品の表現に関して、その中に込められたイメージの原典や意味について研究していく学問のこと。ある種の西洋絵画を読み解くには、聖書や西洋神話についての知識を持つことがとても意義のあるということがよくわかる実に面白い展示内容だった。
この図像学をミステリの世界に取り込んだのが本作で、その発想だけでもスマッシュヒットなんだけど、実際にネタとなる絵を自分で描いてしまっているところがこの作者の更にすごいところ。表紙をめくっていきなり飛び込んでくる流麗な口絵の数々に、読者のワクワク感は高まる。ミステリとしても地味ながらしっかりした造りで、密室のトリックはちと無理矢理な部分はあるにせよ十分許せる範疇。他の作品を是非読んでみたい作家なのだった。
四国有数のローカル線予土線に乗車中、四万十川を眺めつつ読了。しんみりしたラストがセツナイ。[2001/08]
上と外 6 みんなの国 [恩田陸] ★★★☆ 幻冬舎 幻冬舎文庫 (\457) [Amazon]
楔が抜けた。大地震、そしてイサベラ山の大噴火によって事態は一変する。地下水路でニコと別れた練は千華子の行方を追って迷宮の奥深くへと侵入する。また兄妹を捜し求める賢と千鶴子の前にも新たなるトラブルが立ちはだかる。崩壊を続ける古代遺跡。練と千華子は再会出来るのか。そして家族が再び相見える日は来るのだろうか。
『グリーンマイル』スタイルの分冊刊行方式。全五巻。隔月シリーズの第五巻。……であった筈なのだけど、全六巻構成に変更されている。第五巻の発売は更に二ヶ月遅れたので丸一年かけてようやく完結というこことになる。
最終巻は旅行中に四国松山にてゲット。宿に帰るまでとても待ちきれず、松山最大の繁華街大街道にて手近な喫茶店に直行。貪るように読み切った。ピンチに次ぐピンチをくぐり抜けての大団円に大満足!と言いたいところなんだけど、実は不満や疑問がうずたかく積み上がってしまい読後感はあまりよろしくないのだった。
最大の不満点は練&千華子がラブラブ展開にならなかったこと……、じゃなくって練が千華子を置いてニコとの脱出を承諾してしまうことだな。他にも千華子を救出した賢と千鶴子がほとんど練に言及しないこと、親子四人の再会シーンが省略されてしまっていること、日本組の描写がイマイチ中途半端だったこと、等々、首を傾げてしまうような点が多々あったのが非常に残念。裸足の男が何物だったのかとか、なんでマヤの人々は噴火を予知できたのかとか、結局わからずじまいだったしなあ。まあ、全ての伏線を活かしきり、何から何まできれいに説明し切っている恩田陸なんて恩田陸じゃないとも言えるのではあるが。[2001/8]

月末のノルマ達成に血道をあげる関東生命八重洲支所。元刑事たちが集う俳句サークルのオフ会。元暴走族の宅配ピザ屋。東日本ミステリ連合会の面々。子役志望の少女たち。修羅場に突入中のカップル。そして過激派「まだらの紐」のメンバーたち。28のファクターがもつれあい絡み合いながら疾走するノンストップストーリー。
KADOKAWAミステリ2000年5月号〜2001年5月に連載されていた作品を単行本化したのが本書。意外にもこれが恩田陸初の角川作品。装丁は非常に凝っている。思わずウォーリーを探したくなるような細かく書き込まれた表紙。表二、表三部分には舞台となる東京駅の案内図。冒頭には全28キャラクターのイラストまで描かれている。うっ、これはなんだか楽しそうだ。
つい十行程上の文章で、「全ての伏線を活かしきり、何から何まできれいに説明し切っている恩田陸なんて恩田陸じゃない」などと書いてしまったわたしですが、早速取り消させていただきます(あっさり)。こういう奴も書ける訳ね。従来の作風とはがらりと趣を変えてきた。新境地を開いたと言っていいだろう。思いっきりエンターテイメント寄りに振ってきた本作はまさに畳みかけるような怒濤のストーリー展開。『ドミノ』というタイトルの通り転がり始めた物語はラストまで一気に走り抜ける。このごろ映像化が続いている恩田作品だが、本作こそ是非動く絵で見てみたい一作。続き物じゃなくて、二時間スペシャルの単発でどこかの局でやってくれないかなあ。[2001/08]
木製の王子 [摩耶雄嵩] ★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\900) [Amazon]
高名な美術家である白樫宗尚の義理の娘、晃佳が殺害された。切断された首はピアノの鍵盤の上に、一方の胴体は焼却炉で焼かれていた。他者との交流を嫌い、奥地に引き籠もりる奇妙な一家。一人の幼子に収斂するという不思議な家系図を持つこの一族には数々の不審がつきまとう。またしても惨劇の場に居合わせた烏有は途方に暮れるのだが……。
前から読みたかったのだがようやく読んだよ。摩耶雄嵩でベストを一作あげるとするならば『夏と冬の奏鳴曲』だと思っているわたしとしては烏有クンと桐璃のカップルのその後はずっと気に掛かかっていたところ。はからずも妊娠させてしまった桐璃との結婚が決まり、マリッジブルーに揺れる烏有クン。この覇気の無さというか茫洋とした不安感がわたし好みで実に良いです。わかるわかるよその気持ち。
と、いいながら実は事件には全然関係ない烏有クン。事件の発生現場にこそ居合わせたものの、結局本筋にはまったく絡むことなし。そんな烏有クンを置き去りにして事件は悲劇的な結末へとなだれ込む。分刻みのスケジュールで生活する謎の家族。このアリバイ崩しを真面目に考えちゃう読者ってのはかなり少数だと思うのだけど、やっぱり考えなきゃダメ?烏有クンのその後ばっかり気になって読み飛ばしていたわたしは本格ファンではないのかもしれない。[2001/08]
驚異の養毛剤BH85。見る間にぐんぐん髪が生えてくるのだ。しかし画期的製品かと思われたこの薬こそが人類滅亡へのトリガーを引くことになろうとは。爆発的なスピードで増殖し、あらゆる生命体との融合を始めたBH85は日本を、そして世界を覆い尽くしていく。残された僅かな人類は肩を寄せ合って共同生活を始めるのだが。
第11回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作品。表紙イラストは吾妻ひでお。インパクト強いなあこの表紙は。新井素子の懐かしの名作『絶句』を思い出した。ちなみにこの年の大賞受賞作品は宇月原晴明の『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュノス』。
恐るべき勢いで増殖する病原体。滅び行く人類。残された男と女。しかも男は事件の発端となってしまった薬の開発者。というところで熱い展開を予想された方、残念がら大ハズレ。登場人物たちは原因究明に精力を傾けるわけでもなく、人類を救うべく命を張るわけでもない、呆然と自らの種の最期を見つめるだけ。緊迫した状況なのに何故か漂う雰囲気は妙に和んでいる。このあたり実に得難い作風ではあるのだが、ちとほのぼのし過ぎて物足りない。集合意識となった人類を使ってもう一ひねり欲しかったかなあ。[2001/08]

将来を嘱望されながら事故で半身の自由を奪われた天才オルガニスト、ヨーゼフ・エルンスト。九年の歳月を経てブエノスアイレスに現れた謎のオルガニストの正体は彼が奇跡の復活を遂げた姿なのか。しかしその卓越した才能を楽壇の長老ラインベルガー教授は頑なに認めようとしない。謎を解く鍵はバッハのとある曲にあるようなのだが……
第10回日本ファンタジーノベル大賞の大賞受賞作品。
音楽ミステリであるという段階で既に点が甘くなってしまうのだが、パイプオルガンについての蘊蓄はまず文句なしに面白い。建築物と一体化しており、移動させることが出来ないパイプオルガンは常に必ず一点モノなわけで、演奏方法も音色もオルガン毎に全て異なる。ここいらへんは作者の愛がひしひしと伝わってくる。
充実したパイプオルガンの描写に比して弱いのが人物の書き込み。自ら招いた事故で親友であるヨーゼフを半身麻痺に追い込んでしまった主人公。しかし苦悩とか葛藤がストレートに伝わってこない。復帰に賭けるヨーゼフの執念も並大抵のものではないのだが、描写が全般的に薄くて盛り上がらない。しっかり書き込んであればラストのカタストロフィ場面はさぞや美しかっただろうと感じるだけに惜しい。
ちなみに先日発売された文庫版は大幅改稿が施されているらしい。本書は人称が三人称なのだが、文庫版はなんと一人称で書かれているのだ。全面改稿といっていいんじゃないかそれは。う〜ん、これは文庫版も読めと云うことなのだろうか。[2001/08]
伊予小松藩会所日記
[増川宏一] ★★★☆ 集英社 集英社新書 (\660) [Amazon]
四国伊予の小松藩は一万石。大名としては最下級の石高で城はなく、正式な武士は僅かに数十人、領民は約一万人。過酷な幕藩体制の中で、これといった不始末もなく、幕末まで命脈を保った小藩に残された会所日記。150年に渡って書き綴られた膨大な史料から浮かび上がる当時の人々の生活。武士と領民それぞれの暮らしを会所日記を通じて明らかにしていく。
伊予小松藩(現在の愛媛県小松町)に残されていた会所日記を北村六合光が解読。それを元に主要な事件を筆者が抜粋し紹介したのが本書。折しも松山観光の最中、銀天街の書店にて手書きポップの威力に負け購入。ご当地ものには弱いのだ。
江戸時代、伊予の国は四国の他三国と違って領内が多くの小藩と天領によって分割されていた。その中でもとりわけ小さな藩だったのがこの小松藩。なにせ幕末に外国船打ち払いのために兵馬を出さなきゃならなくなった時に、藩で所持していた馬がたったの一頭しかいなかったという凄まじい記述がある。こういう話を聞くとものすごくワクワクする。小藩ならではのエピソードの数々は実に新鮮だった。もっとたくさん読みたいぞこれは。僅か200ページ足らずで終わってしまうのが新書とはいえ惜しい。続巻を強く希望。[2001/08]
iモードストラテジー [夏野剛] ★★★ 日経BP企画 (\1,905) [Amazon]
「携帯電話でインターネットなんて誰もする筈がない」そんな従来の常識を覆し空前の大成功を治めたiモードプロジェクト。なぜITビジネスの勝利はこれほどまでに圧倒的なのか。iモードの名付けの親、松永真理によってドコモにヘッドハンティングされ、以後、常に第一線で指揮を執り続けた筆者が明かす成功への道筋とその理論。
筆者はNTTドコモのゲートウェイビジネス部、コンテンツ担当部長。業績不振のインターネット系ベンチャー企業、マスターネットの副社長から、松永真理に抜擢されてドコモへ転職。どこを見渡してもいいところの無い日本企業の中で数少ない勝ち組企業のキーパーソンが筆者。まさに時代の寵児の一人といっても良い。
昨年末から入手済みだったのだがようやく読了。八ヶ月もかかってしまった。だって知ってることばかりなんだもん。わたしは失敗には必ず敗因があるが、成功(それも図抜けた大成功)には必ずしも勝因があるとは限らない。と、思っているので本書のような成功体験を書き連ねた本を読むと、ついつい眉に唾をつけて読んでしまう。絶対売れないだろうけど、マスターネット時代の失敗体験をまとめてくれた方が個人的には興味深く読めたと思う。お役所体質のドコモの中で外様の筆者がどんな苦労をしているのか、なんてことにも書いてくれると嬉しいのだがさすがに無理だろうなあ。[2001/08]
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