2002年2月

若干ペース回復。引越終わって多少は余裕が出来てきたか。
今月は『NHKにようこそ!』に尽きます。ストライクゾーン狭い作品なんだけど、ヲタ属性持ちは読んで損なし。

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
ランブルフィッシュ
1 新学期乱入編
三雲岳斗 角川書店 \590
新鮮味はないけど手慣れてます。
★★★

ランブルフィッシュ
2 中間試験暴走編

三雲岳斗 角川書店 \514
まだまだ先は長そう。
★★★

殺人鬼の放課後
ミステリ・アンソロジーII

恩田陸
小林泰三
新津きよみ
乙一
角川書店 \476
わりとお買い得。恩田ファンと乙ファンは買うべし。
★★★

みつめる女

大原まり子 廣済堂出版 \495
ノレなかった。最後まで。
★★☆

嵐の獅子たち
グインサーガ83

栗本薫 早川書房 \540
対決シーンを表紙にして欲しかった。
★★★
捩れ屋敷の利鈍 森博嗣 講談社 \700
犀川&萌絵シリーズとVシリーズがカップリング。
★★★

狂乱廿四孝

北森鴻 角川書店 \619
ちとカタイ。
★★★

球形の季節

恩田陸 新潮社 \514
細部はいいんだけど……。
★★★☆

NHKにようこそ!

滝本竜彦 角川書店 \1,700
バカ度高し。でもセツナイ。
★★★☆

コールド・ゲヘナ

三雲岳斗 メディア
ワークス
\490
これはハズレっぽい。
★★☆
学園祭の悪魔 浦賀和宏 講談社 \740
安藤直樹容赦無し(涙)。
★★★☆

金糸雀の啼く夜
薬屋探偵妖綺談

高里椎奈 講談社 \780
何故に日本?
★★★

奇憶

小林泰三 祥伝社 \381
いい感じにダメです。
★★★
シアター・ドロップス 岡崎香 青山出版社 \1,500
小劇場好きは買うべき。
★★★

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ランブルフィッシュ 1 新学期乱入編
[三雲岳斗] 
★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\590) [Amazon] ※書影無し

人型兵器RF(レイド・フレーム)。それは従来の戦争概念を根幹から変貌せしめた。やがてRFによる格闘戦「レイド・フレーム・トーナメント」は公営ギャンブルとして定着。日本で唯一の専門学校恵理谷闘専では日夜、若者たちによる熱い戦いが繰り広げられていた。設計士志村瞳子の部屋に突然飛び込んできたヤンキー男。それは瞳子の平和な生活の終焉を意味していた。

第五回の電撃ゲーム小説大賞の銀賞を『コールド・ゲヘナ』で受賞。第五回スニーカー大賞を『アース・リバース』で受賞。そいでもって第一回日本SF新人賞を『M.G.H. 楽園の鏡像』で受賞とライトノベル界のみならず、日本SF界でいま最も注目されている作家の一人と言っても全く過言ではない三雲岳斗。かねてから読んでみたいとは思っていたのだが、古本でゲット出来たのでようやく読んでみた。

見た目は美しいのに、放っておくと共食いを始めてしまう程凶暴な魚「ランブル・フィッシュ」。野人系の男主人公(超強気)に秀才お嬢様(こっちも超強気)の女主人公のカップリングストーリーとしては秀逸なタイトルネーミング。お約束なキャラクター配置をそつなくこなしている辺り、手慣れた感を強く受ける。10人を越える登場人物たちが一読しただけで頭に入っちゃうんだから、まず基本ラインは合格。

謎めいたオープニング。きれいにキャラの立った登場人物が続々と登場。エスエフなマインドもしっかりフォローして、かなりの長編であることを予期させるラストの引き。シリーズモノの第一巻としては申し分なし。続きをすぐに読もう。[2002/02] ⇒次巻

ランブルフィッシュ 2 中間試験暴走編
[三雲岳斗] 
★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\514) [Amazon]

ランブルフィッシュ〈2〉中間試験暴走編

学内トーナメント1回戦を難なく突破した沙樹の操るガンヒルダ。次なる二回戦は学内きってのエリート林崎要が駆るクリムズン・エッジ。対決の場へ現れたのは、要に兄を殺された少女越智芹架。激闘の末に訪れた予期せぬ異常事態。暴走を始めたガンヒルダに場内は騒然となるのだが……。

「ランブル・フィッシュ」シリーズ第二弾。売れる作家に重要な事は、内容が面白いこともさることながら、早い期間で続けて出せること。僅か三ヶ月で続巻をリリースするとは素早い。早くもコミック版の連載が始まったようで、見栄えのするロボットモノってこともあるので次はアニメ化に?今後スニーカーの柱に育っていきそうな予感。

強敵キャラとの対戦は見応えあり。戦闘シーン読んでいてわかりやすいのは文章が良くこなれているからだろう。『ラグナロク』の戦闘シーンなんて全然わかんなかったからなあ。ストーリーの根幹に関わる背景の事情はまだまだ伏せられていて決着までは長引きそう。今までのところは満足させてもらっているので、次からは新本で購入予定。[2002/02] ⇒次巻

殺人鬼の放課後 ミステリ・アンソロジーII
[恩田陸/小林泰三/新津きよみ/乙一] 
★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\476) [Amazon]

殺人鬼の放課後―ミステリ・アンソロジー〈2〉

殺人鬼こそミステリの華。湿原に聳える謎めいた全寮制学園で繰り広げられる残酷なゲーム「笑いカワセミ」。その謎を追う『水晶の夜、翡翠の朝』。誘拐された三人の少女の悲惨な末路を描いた『攫われて』。死んだはずの少女と酷似した容貌の受講生。その正体を巡る顛末を描く『還ってきた少女』。閉ざされた七つの部屋。閉じこめられた人々。凄惨な死のルール『SEVEN ROOMS』。四編の競作アンソロジー。

昨年末から角川ではスニーカー文庫にミステリの新ジャンルを設けたらしく名付けて、スニーカー・ミステリ倶楽部。こないだ富士見が似たような奴を初めて、評判は散々なのだが、果たしてこちらはどうだろう。長編作品に新人を多く起用している一方で、アンソロジーでは既存作家を競作させている。第一弾『名探偵は、ここにいる』では太田忠司、鯨統一郎、西澤保彦、愛川晶の四人を揃え、名探偵モノを(って読んでないんだが)。そして第二弾の本作では恩田陸、小林泰三、新津きよみ、乙一の四人のラインナップで殺人鬼モノを競作させている。200頁に満たないボリュームなので手軽にこの世界を味わってもらうには良い趣向といえるだろう。では、簡単に各編へのコメントを。

『水晶の夜、翡翠の朝』@恩田陸。そもそもこれを読むために購入したようなもの。瞬間、十二国記@小野不由美の新作かと勘違いしそうなタイトルだが、実は『麦の海に沈む果実』に登場したヨハンを主人公としたショートストーリー。キャラの個性を活かして巧くまとめた一品。ファンなら感涙モノだろうが、このシリーズを未読の向きには少々入りにくいかもしれない。

※『水晶の夜、翡翠の朝』に関しては2007年刊の恩田陸作品『朝日のようにさわやかに』にも収録されている。

『攫われて』@小林泰三。本来の作風通り。期待を裏切らない内容。グログロな内容の中でラストはしっかりオチをつけてくる。しかしライトノベルでこんなえぐい話にしてしまていいのか?でも、まるで救いの無いラストは◎。

『還ってきた少女』@新津きよみ。おいおいそりゃ不味いだろ、ってなくらい平凡な一作。一年経ったら記憶に残ってないだろう。このラインナップの中で、このクオリティでは厳しいぞ。

『SEVEN ROOMS』@乙一。角川的には一番プッシュしたいであろう乙一だが、ここはしっかり期待に応えて本領発揮。映画の『Cube』を思わせる不条理な状況設定の中での極限の人間心理を描いて好印象。良質な暗黒系ハートウォーミングストーリーに仕上がっている。さすがは「せつなさの達人」(笑)。

全体の感想としては、何故スニーカーなのにイラストが無いの?ってことだろう。ちょっと楽しみにしていただけに残念。表紙のデザインもイマイチなんだが、これで本来のターゲットである若者ユーザーを引き込めるのかは多いに疑問。第三弾も決まっているようで『密室レシピ』は2002年4月発売予定。ラインナップは折原一、霞流一、柴田よしき、泡坂妻夫。[2002/02]

みつめる女 [大原まり子] ★★☆ 廣済堂出版 廣済堂文庫 (\495) [Amazon] ※書影無し

近未来の日本。環境ホルモン汚染から全ての男性がいなくなってしまった世界を描く『ハンサムガール、ビューティフルボーイ』。男女を等価で愛せる女、花村静香の日常を綴った『妖怪デパート』等、ポルノグラフィを目指して書かれた5編に加え、セクシャリティを追求した2編、計7編による短編集。

『エル・ジャポン』『POPEYE』『DEEP』等の各誌に掲載されていた作品をまとめた短編集。2、3ヶ月に一度しか使わない鞄に入れてた本なので、読んだ時期がバラバラで最初の方の話覚えてないぞ。最近の大原まり子らしい作品群なので、物語を求める向きにはきついだろう。ずっと、作者の独り言を聞かされているような気分。[2002/02]

嵐の獅子たち グインサーガ83
[栗本薫] 
★★★ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540) [Amazon]

嵐の獅子たち―グイン・サーガ(83)

無事にリンダを救出したケイロニア王グインは本隊に合流。軍勢を一路マルガへと向ける。一方、ゴーラ軍は早くも対レムス軍への戦闘を開始、煮え切らないナリス陣営への不審を募らせつつも、同じくマルガへと向かう。小集落シランで野営の陣を敷いたイシュトヴァーンを思わぬ軍勢が襲撃する。

相変わらず突っ込んで貰うために書いているとしか思えないあとがきがスゴイ。自画自賛も極まれりといったところ。『源氏物語』だとか「人類の文化遺産」だとか普通の神経じゃ言えないぞ。背表紙のあらすじって前回の奴なんだけどこれも本人の意向なのか。そこまでネタバレに神経質にならなくてもいいと思うのだが。

本編自体はやや復調の兆し。というかヴァレ/ナリの出番が少ないと健全度があがるので読んでいて楽なんだな。特にもうグイン世界最後の良心(グイン本人はもう駄目)ともいうべきスカールが大活躍なので非常に嬉しい。久々にいい意味で裏切られたシーンだった>第三章。[2002/02] ⇒次巻

捩れ屋敷の利鈍 [森博嗣] ★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\700) [Amazon]

捩れ屋敷の利鈍 (講談社ノベルス)

メビウスの環型の構造を持つ捩れ屋敷。そこに奇しくも招かれることになった西之園萌絵と保呂草潤平。世紀の秘宝エンジェル・マヌーバが眠る捩れ屋敷で起きた密室殺人事件。事件の解明に乗り出した萌絵だが、保呂草はその背後で不可解な動きを見せる。犀川と紅子の不在の中、事件は思わぬ結末を迎えることになる。

講談社ノベルズの20周年記念企画は「密室本」。歴代のメフィスト賞授賞作家たちによる密室をテーマとした競作で、一冊丸ごと袋とじになっているのが「密室本」たる由縁。1年かけて順次刊行していくようで、第一回のラインナップは本書に加えて高田崇史と高里椎奈。1冊につき1枚応募券がついており5枚集めれば非売品の『編集部ホンネ座談会』ノベルスが全員に贈られるというもの。応募券は袋とじ部分についているので、これは全て新本で集めていかないと集まらない。古本対策なのだろうか。

さて本編は犀川&萌絵シリーズとVシリーズの夢の競演。ファンなら大喜びの作品だろう。既に短編では例があったものの長編では初の試み。といってもそれぞれの御大である犀川センセと紅子サンは現場には登場しない。萌絵と保呂草の二人を軸としてストーリーは展開していく。森作品らしい理系蘊蓄(今回はぎりぎり理解出来るレベルだった)が適度に散りばめられていてわりと好印象。オチもきれいだ。

巻末の保呂草と紅子との会話から察するに2つのシリーズは今後も相互乗り入れが続いていきそうな感触。なんか大事なことを見逃しているような気持ちの悪さが残る。ひどい引っ掛けをどこかで仕掛けていそうなきがするのだが、気のせいだろうか。[2002/02] ⇒次巻

狂乱廿四孝 [北森鴻] ★★★ 角川書店 角川文庫 (\619) [Amazon]

狂乱廿四孝 (角川文庫)

明治初期。脱疽により両足を切断しながらも復帰公演に挑まんとする稀代の女形、澤村田之助。しかしその周囲では無気味な連続殺人が発生していく。その背後には狂画師河鍋狂斉が描いた一枚の幽霊画の存在があった。戯作者河竹新七とその弟子お峯は事態の解決を図るべく調査に乗り出すのだが。

第六回鮎川哲也賞受賞作。北森鴻のデビュー作。本作の原形となったオール読物推理小説新人賞候補作「狂斉幽霊画考」を併録している。初北森なのだが本作から入って正解だったのだろうか。最初の作品ということもあり、注釈の入れかたなど、表現の端々がぎごちなく、読んでいて気に障った。

絵を元にしたミステリというと高橋克彦の一連のシリーズが想起されるが、本作は絵の来歴にまつわる謎解き部分よりも、特殊社会である、歌舞伎界について描くことに重きを置いている。江戸から明治へ、激動の時代の中で、不動の名声を遺した数々の名優たちの姿を綴っていく。このヘンを面白いと思えるかどうかが本作の評価の分かれ目だと思うのだが、悲惨なストーリーでありながら、あまり感傷的な方向に持っていかないのは良かったかな。血縁関係が複雑なので出来れば図解して欲しかったぞ。[2002/02]

ついでに…… 
『散りしかたみに』@近藤史恵
 <<本朝廿四考つながりで

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球形の季節 [恩田陸] ★★★☆ 新潮社 新潮文庫 (\514) [Amazon]

球形の季節

東北の地方都市谷津。小さな町の高校生の間で、とあるうわさが爆発的に広まっていく。「五月十七日にエンドウさんが宇宙人にさらわれる」。それは誰かが意図的に流したものなのか。地域の四校で結成されている地歴研のメンバーはうわさの調査に乗り出す。果たして五月十七日、遠藤志穂という女生徒が失踪する。そして新たなるうわさが……

第五回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作。1994年に刊行された単行本を1999年に文庫化したもの。『六番目の小夜子』に続く恩田陸の第二作。前作が学校という存在を主題とした作品とするならば本作は谷津と呼ばれる街を主題とした作品。

8年振りに再読。谷津にある四つの高校の生徒たちを主軸に据えて進行していくのだがなにせ登場人物が多い。主役はやはり坂井みのりなのだろうが、どうも視点がバラついて落ち着かない。数多く登場する個性的なキャラクターを使い切れていないのは残念。地方都市ならではの雰囲気を的確に切り取ってくる感性や、サブタイトルのネーミングセンスの良さ、魅力的な謎の数々と、いいところもたくさんあるだけに惜しい。[2002/02]

NHKにようこそ! [滝本竜彦] ★★★☆ 角川書店 (\1,700) [Amazon]

NHKにようこそ!

22歳無職。大学中退。友人無し。彼女無し。そしてひきこもりと、先の見えない暗いトンネルを一人行く男佐藤達広。しかし佐藤は気付いてしまう。NHKの恐るべき陰謀に。悪の組織NHKへの闘志を燃やしている最中、一人の少女が現れる。岬と名乗る少女はある宗教組織からの刺客だった。状況に流されるままに「ひきこもり脱出と、そのサポートに関する契約書」に判をついてしまう佐藤は新たなる難題を抱えることになる。

Boiled Eggs Onlineにて2001年1月29日から4月16日まで連載されていた作品を加筆修正し単行本化したもの。前作『ハッピーネガティブ・チェーンソーエッジ』でデビューを果たした滝本竜彦の第2作。

滝本竜彦ってやっぱり素晴らしい。前作の段階で既にたまらなく惹かれるものを感じつつも、「いや単なるバカなのでは」と、正直推しかねていたところだったが、本作で決まり。単なるバカではなく「すごいバカ」だこの作家。今後は強力にプッシュしていくことで決定。

NHKとは日本放送協会の略では無論なくって、日本ひきこもり協会の略。妄想の果てに自らのすべての不幸はNHKのせいであると結論づけた主人公が虚しい戦いを挑むのがこのNHK。この主人公はホントに見事なまでにダメダメクンで、ひきこもり→対人交渉能力ゼロ→ネットに溺れる→エロ画像収拾→エロゲー制作→合法ドラッグの世界へと、転がり落ちるように人生を踏み外していく。この過程が実にテンポ良くスピーディに且つコミカルに描かれており飽きさせないのだ。

ひきこもりが現代社会の深刻な社会問題と呼ばれて久しい。でも、わたしに取ってひきこもりは憧れの職業なのだが、それって異常だろうか。ひきこもりって最高に贅沢な境遇だと思うんだけどなぁ(金さえ続けばだが)。この主人公を決して笑えない学生生活を送ってきた身としては、この話は単なるギャグストーリーではないわけで。ダメ人間でも生きててもいいじゃんと、多くのヒッキーたちを元気づけてくれる一冊に本書はちょぴっとだけなっている。あ、基本的にしょーもない話なので、わりと健全な人生送ってる向きは、サクっと笑い飛ばして、こいつバカだよ、ああすっきり。という読み方をしてくれてもちろんかまわない。[2002/02]

コールド・ゲヘナ
[三雲岳斗] ★★☆ メディアワークス 電撃文庫 (\490) [Amazon] ※書影無し

砂漠の惑星ゲヘナ。この星で最強の兵器、デッドリードライブを駆る男<なまくら>バーンは、仕事のなりゆきから一人の少女を救いだす事になる。その時から謎の組織に追われるようになるバーン。過酷な自然環境の中、襲い来るドラゴンたち、そして正体不明の追跡者。「教団」と呼ばれるこの星の影の支配者の姿が明らかになるとき、惑星ゲヘナの真実が白日の下ににさらされる。

第五回電撃ゲーム小説大賞の銀賞授賞作品。三雲岳斗のデビュー作が本書。あとがきで本人も書いているけど、長編作品の第一話としか思えないような話をよく入選させたものだと思う。未回収の伏線がてんこもりで非常に気持ち悪い。無理に一冊にまとめた分、展開を急いでしまっている部分も多く、この点でもちといただけない。巨大ロボット、ありがちなキャラクター配置、お約束のエスエフ的裏設定と、正直これ一冊だけではこの作家を読みつづけていこうとは思わない。最初に読んだのがこれでなくて良かった。[2002/02]

学園祭の悪魔 [浦賀和宏] ★★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\740) [Amazon]

学園祭の悪魔 (講談社ノベルス)

学園祭で出会った陰気な男は安藤と名乗った。その日から「私」の平穏な日々は少しずつ壊れはじめた。クラスメイトとのいさかい、両親の不和、悶々とした毎日を送っていた「私」に次々と訪れる奇妙な出来事。無残に内臓をえぐられて死んでいく猟奇殺犬事件の真相を解き明かしたのは、笑わない名探偵安藤直樹だった。

安藤シリーズの第六作。今回は直樹の方のお話。飯島や、穂波留美といった従来のメンバーも登場するが、主人公の少女(シリーズ初登場)の一人称視点で物語は進展していく。

あいかわらずというか、更に磨きがかかったと言うべきか、登場人物たちに容赦の無い末路をたどらせることに関してはこの作者の底意地の悪さは徹底している。そこまで突き抜けてしまっていいのか>安藤直樹。どう最終的な落し所をみつけてくるのか非常に楽しみではある。ちなみにこのシリーズを読んでいない人間にとっては、全く理解も納得もできないオチなのでその点要注意。[2002/02] ⇒次巻

金糸雀の啼く夜 薬屋探偵妖綺談
[高里椎奈] 
★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\780) [Amazon]

金糸雀(カナリア)が啼く夜―薬屋探偵妖綺談 (講談社ノベルス)

アメリカの実業家マッケンマイヤーが持つ巨大なサファイアを巡り、おなじみの薬屋三人組が巻き込まれたトラブル。サファイアを守る秋と、そしてそれを奪わんとする座木とリザベル。奇しくも競い合うことになった三人だが、訪れた館では巨大なシャンデリアに推し潰され、あえない最期を遂げたマッケンマイヤーの姿があった。

薬屋探偵妖綺談シリーズの四作目。いつもは一緒に行動している三人(って人でいいのか?)が、はからずも対立構造に、という、キャラ萌え系な作品では一度はやっておいて損は無いシチュエーションなお話だろう。何故にして舞台が日本なのに外人ばかり?まあ、これは理由があることなのだが、ものすごい違和感。軸となる過去のエピソードが、やや唐突なのは残念。[2002/02] ⇒次巻

奇憶 [小林泰三] ★★★ 祥伝社 祥伝社文庫 (\381) [Amazon] ※書影無し

虚しいひきこもり生活を続ける藤森直人。大学は落ちこぼれ、恋人は去り、遂には仕送りも途絶え、劣悪な環境下での貧窮生活の日々が続いていた。現実界に希望が持てない直人は不思議と夢を見ることが多くなっていく。そこで現れた「よもつしこめ」と名乗る老婆は直人に言い知れぬ不思議な言葉を囁きはじめる。

祥伝社文庫創刊十五周年記念特別書き下ろしの400円(税込)文庫シリーズの中の一冊。

いかにも小林泰三らしい救いの無いどんよりドロドロ系なお話。同じ駄目人間のひきこもり生活を描いていても『NHKにようこそ!』が陽だとすれば、こちらはぶっちぎりで陰の方。これはあまりに嫌すぎる。[2002/02]

シアター・ドロップス [岡崎香] ★★★ 青山出版社 (\1,500) [Amazon]

シアター・ドロップス―小劇場の友

芝居とは観るものなのか演じるべきものなか。101の演劇団体のデータを収録。大人計画の松尾スズキ、新感線のいのうえひでのり&古田新太、HIGHLEG JESUSの川原雅彦、阿佐ヶ谷スパイダースの長塚圭史まで、現代を代表する小劇場界のエッセンスを抽出。初心者からマニアまで幅広く網羅する21世紀最初の小劇場ガイドブック。

筆者はかつて『ぴあ』の演劇欄のメインライターを務めていた人物。本書には数多くのインタビュー、対談記事が収録されているが、全て書き下ろしとなっている。現代の小劇場界の有名人たちが綺羅星の如く登場してきており、この点非常に豪華な仕様といえるだろう。

十年以上前のことになるが、恥ずかしながら年間50本以上観ていた小劇場ヲタの過去を持つわたし。最近では年に2、3本観るのが精々な状態なだけに本書は実に刺激的な一冊だった。半分近く知らない人たちだし、ほとんどメンツが年下だ。年取るわけだよなあ。どうしても芝居の本は対象が都市部限定になっちゃうし、そうそう出せるものではないだけにこの本は貴重。あえて要望をあげるとすると、通史的なくくりで小劇場界の歴史を振り返るような企画があってもよかったかな。[2002/02]

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