2002年3月

1月もひどいと思ったけど今月はそれを上回る読破数。なんと4冊……。
『ムジカ・マキーナ』は意外と読むのに時間がかかった。

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
図書室の海 恩田陸 新潮社 \1,400
ロクサヨの前日譚を収録。
★★★☆
ウェディングドレス 黒田研二 講談社 \840
まあよくかけてるんだが、ちとどうも。
★★★

ムジカ・マキーナ

高野史緒 新潮社 \2,233
ギミックはいいのだが。
★★★☆
ビートのディシプリン
SIDE1
上遠野浩平 メディア
ワークス
\610
かなりライトノベル。
★★★

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図書室の海 [恩田陸] ★★★☆ 新潮社 (\1,400) [Amazon]

図書室の海

「サヨコ」のゲームは続いていく。幾多の謎と伝説を残して来た「サヨコ」たち。しかしその陰には「わたすだけのサヨコ」と呼ばれる存在があった。処女作『六番目の小夜子』、発表十年目にして初の外伝は関根秋の姉、夏を主人公とした書き下ろし作品(表題作)。その他各誌に掲載されていた短編8編に書き下ろしを更に1編収録。計10編の短編集。

各種アンソロジーやらネット媒体、雑誌等に掲載されてきた8編に加え、2編の書き下ろしを加えた短編集。今年でデビュー10周年(げげ)となる恩田陸。あえて10編にしたのはこの辺のゲンかつぎの意味もあるのだろうか。ともあれ、こうして一冊にまとまってくれると嬉しい。以下各編ごとに短評を……。

「春よ、来い」、1999年作品。井上雅彦監修の『時間怪談』@廣済堂出版収録作品。短い中でコンパクトにギミックがまとまっており、尚かつ春の抒情が静かに漂う佳品。しかし頭の悪いわたしは二度読まないと意味がわからなかった。

「茶色の小壜」、2000年作品。津原泰三監修『血の十二幻想』@エニックス収録作品。サスペンスホラーというか、暗澹たるラストが好感触。女同士はやはり怖い。

「イサオ・オサリヴァンを捜して」、1998年作品。Web媒体である、SFオンライン掲載作品。これは300円の有償ダウンロードだったので読んでなかった(<ケチ)だけに嬉しい。オリジナルの方には大森望の解説と田中光のイラストがついてくる。実はこれ、長編SFのプロローグに過ぎないことが判明。今後の展開が待たれる。

「睡蓮」、2000年作品。『蜜の眠り』@廣済堂出版収録作品。『麦の海に沈む果実』のヒロイン理瀬が登場する作品。微妙にキャラクターの印象が違うのは意図的にメタな感じを出したかったってことなのだろうか。

「ある映画の記憶」、1999年作品。『大密室』@新潮社収録作品。本書の中で一番ミステリ寄りの作品。が、本筋よりも引き合いに出される映画の方が強く印象に残る。元ネタの映画『青幻記』を是非観てみたくなる。

「ピクニックの準備」は書き下ろし作品。大長編(と本人が書いている)『夜のピクニック』の予告編として書かれた一編。学園モノラブな自分としてははこれが今回のイチオシ。イベント前日ならではの不思議な多幸感が伝わってくる。

「国境の南」、2000年作品。「週刊小説」掲載作品。タイトルがいい。人の心の底に澱む悪意について描く。あえて本人を登場させないことで、逆に存在感を高めることに成功している。

「オデュッセイア」、2001年作品「小説新潮」掲載作品。移動する都市の年代記。短編のボリュームに圧縮。これも長編化の構想アリ。少々ノリが気恥ずかしいのだが……。

「図書室の海」、書き下ろし作品。ロクサヨファンに思ってもみなかった外伝作品の登場。関根秋の姉にして、「渡すだけのサヨコ」であった関根夏が主人公。タイトルの意味がわかったときの清々しい心地よさが◎。しかし五番目のサヨコはどっちだったのだろう。

「ノスタルジア」、1995年作品。「SFマガジン」掲載作品。今回の収録作品の中で最も古い作品。構造的に『三月は深き紅の淵を』に通じるものがあったり、語り口がどことなく『黒と茶の幻想』を想起させたりと興味深い。

と、いうわけで駆け足でコメントしてきたのだが、ファンなら当然買いレベル。長いこと読めなかった作品が読めて書き下ろしまで付くのだから感涙モノであろう。が、意外と恩田作品の未読者が読んでみてもいいんじゃないかと思う。恩田作品の様々な側面を垣間見ることが出来てお買い得の筈。[2002/03]

ウェディングドレス [黒田研二] ★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\840) [Amazon]

ウェディング・ドレス

もっとも幸福な日である筈の結婚式当日に凄惨な陵辱を受けた祥子。続けざまに最愛の人であったユウ君の死を告げられ絶望の淵に突き落とされる。一方「僕」はついに恋人である祥子にプロポーズ。めでたく承諾の回答を得て結婚式に臨む。しかし式の当日祥子は突然失踪し、教会には同じく祥子と挙式を迎える筈だったという二人の男が現れる。

第16回のメフィスト賞授賞作品。黒田研二のデビュー作品。

祥子の世界と「僕」の世界が交互に語られてストーリーは進行していく。両者のエピソードは全く話が食い違うので、どう読んでもこれは叙述モノなんでしょ、ってひねくれて読んでしまうのがスレた読者の駄目なところかもしれない。陵辱シーンやらアングラAVやらを絡ませて来るところもちとアピールポイントが下世話過ぎていかがなものかと。タイトル名ともなっているウエディングドレスのギミックはけっこう美しいだけに残念に思える。[2002/03]

ムジカ・マキーナ [高野史緒] ★★★☆ 新潮社 (\2,233) [Amazon] ※書影無し

1870年のウィーン。いわくつきの麻薬「魔笛」の謎を求めこの地を訪れたベルンシュタイン公爵。そこで公爵はかねてから目を掛けていた音楽家フランツに再会する。ウィーンフィルで不遇な日々を過ごすフランツはより自由な音楽活動の道を求め悪名高来プレジャードームを訪れる。そこは「機械の音楽(ムジカ・マキーナ)」の殿堂だった。瞬く間にムジカ・マキーナに溺れていくフランツ、しかしその背後には「魔笛」の影がちらついていた。

第6回の日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作に加筆修正したもの。高野史緒の処女作。ちなみにこの回の大賞は『バガージマヌバナス』@池上永一で優秀賞が『鉄塔武蔵野線』@銀林みのるようやく購入することが出来た。7年前に出た本で文庫落ちもしてくれないので長らく入手困難だったのだ(復刊ドットコムによると近々復刊されるらしいが)。

第二作である『カント・アンジェリコ』に比べるとやはり硬さやぎごちなさが目立つ。ムジカ・マキーナのギミックは高野史緒ならではのアナログメカ炸裂で実にいい味出ているのだが、謎めいた少女マリア、そいでもって実は最重要人物のサンクレールとキーとなるキャラクターについて書き込みが少なくて後半の急展開がかなりビックリ。最終章はもっとボリュームがあっても良かったと思う。[2002/03]

ビートのディシプリン SIDE1
[上遠野浩平] 
★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\610) [Amazon] ※書影無し

統和機構の合成人間ピート・ビートはフォルティッシモの依頼により未知なる存在「カーメン」の探索を始めた。それ以来ビートの前には次から次へと刺客が現れるようになる。ふとしたことがきっかけで知り合った女子高生浅倉朝子もまたビートに巻き込まれるかのように運命を変転させられていく。

あらすじだけ読んでもブギーポップシリーズ読んでないと何が何だかまったく意味不明だろう。電撃HP9号〜15号までに連載されていた作品をまとめたもの。ブギーポップ本人は登場しないものの、フォルティッシモや統和機構などお馴染みの連中はぞろぞろ出てくるので、シリーズの外伝的なポジションの作品になるのだと思う。イラストも上遠野浩平だしね。

ディシプリンとは試練のこと。決して腕っぷしが強いわけではないビートが知恵と技で数々のトラブルをかわしていくストーリー。無理矢理たとえてみると二代目ジョジョみたいな感じだろうか。ブギーポップが出てこないせいか、文体が微妙に軽い気がするのは気のせい?どうやらまだ話は続くようなのでとりあえず続けて読んでみる予定。[2002/03] ⇒次巻

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