2002年4月

今月はやはり『西の魔女が死んだ』@梨木香歩だな。いずれ他の作品も読んでみるつもり。
牛山さんの『秘境駅へ行こう!』は鉄ヲタ&旅ヲタとして血潮がたぎる素晴らしいレポートだった。

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
西の魔女が死んだ 梨木香歩 新潮社 \400
さわやかなラスト。
★★★☆

2典

2典プロジェクト
/編
ゴザンス
ブックス
\960
是非手元に一冊。
★★★☆

劫火 グインサーガ84

栗本薫 早川書房 \540
なんとナリス様死んじゃいそうですよ!<やっとかよ
★★★
アイランド 葉月堅 新潮社 \1,400
意味不明。
★★☆
秘境駅へ行こう! 牛山隆信 小学館 \476
あこがれの人です(笑)。
★★★☆
ランブルフィッシュ
3 場外乱闘恋心編
三雲岳斗 角川書店 \590
ウェルメイドなライトノベル。
★★★

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西の魔女が死んだ [梨木香歩] ★★★☆ 新潮社 新潮文庫 (\400) [Amazon]

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

学校に馴染めずに登校拒否に陥っていた女子中学生まいは両親の薦めで母の実家である祖母の元で暮らすことになる。自らを西の魔女と称する祖母の元で、まいの新しい生活が始まる。自然にあふれた環境の中で、見習い魔女として平穏だが刺激に満ちた日々を送るうちに、いつしかまいの心は癒されていく。

作者は1959年生まれ。本作は1994年に最初の単行本が楡出版より刊行され、続いて1996年に小学館から新装版が出ている。本書は2002年に刊行された文庫版。著者は本作で日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、小学館文学賞をそれぞれ受賞している。

タイトル買いなのだが、ひょっとしてこれって有名作品?経歴を読むと実に華々しい作品である。確かに前から名前だけは聞いたことがあったけど、ずっとライトノベルだと思っていたよ(コバルトに似たような奴あるじゃん)。

都会で育った少女が自信を失い傷ついて田舎住まいをすることになる。そんな彼女が魔女を自称する祖母に導かれ、豊かな自然環境の中でいつしか生きる力を取り戻していく物語。小説ではないのだがゲームであった『僕の夏休み』を想起させられるような一冊。といってもこっちの方が先か……。

短い作品でありながら、田園生活のエッセンスがぎっちり詰まっていて読んでいて楽しい。イギリス人である祖母のキャラクター造形が秀逸で、張り巡らした伏線共々、ラストのサプライズにきれいにつながってお見事。主人公のキャラクターもなんとも清々しい。この作者のほかの作品も是非読んでみたくなった。[2002/04]

2典 [2典プロジェクト/編] ★★★☆ ゴザンスブックス (\960) [Amazon]

2典 〜2ちゃんねる辞典〜

1日1,600万PVを誇る超巨大匿名掲示板2ちゃんねる。しかし広大な取り扱いカテゴリと、膨大なユーザー数故に2ちゃんねるの用語には極めて難解なものが多い。以前からネットスラングとして存在した言葉、2ちゃんねるで生まれた言葉、一見普通の用語に見えながら2ちゃんねるでは全く別の意味を付与されている言葉等々、とっつきの悪い種々の用語を豊富な用例と共に紹介。総数1,000語を網羅した。

2001年の6月頃から2ちゃんねる上で雄志による制作が始まり、当初はネタなのではと思われていたが後に本気であったことが判明。以後芋蔓式に参加者が増え、一気に収録語数を増やしていった。オンデマンド出版として企画され、購入者数に応じて価格が決まるという方式を採用。100万円から公募が始まり(最初に入札した奴は偉い)、結果的に960円に落ち着いた。通常書籍としての販売も予定されているが、こちらは価格も若干上がり装丁もオンデマンド版とは異なるものになるらしい。

時として板が違うと全く何を書いてあるのか訳がわからなくなることがあるくらい、2ちゃんねるならではの俗語は幅広く奥が深い。1,000語という限られた語数ではあるものの、こうした書籍が刊行されることは本気で意義深いことであると思う。出自のスレッドのアドレスが掲載されているのは過去を振り返る意味では非常にありがたい。辞書として使うもよし、一気に通読しても相当楽しめる。

とはいえ、あくまでも2ちゃんねるユーザーであることを前提に書かれている本なので、まったくの一見さんが来ちゃうと心底意味不明だろうなあと思う。「がいしゅつ(既出)」や「すくつ(巣窟)」なんて普通に考えたらただの読み間違いだ。とはいえ、こんな誤用がひょっとしたらそのうち日本語として認められてしまう日が来てしまうかもしれない。それくらい2ちゃんねるの勢いはもの凄い。[2002/04] ⇒次巻

劫火 グインサーガ84 [栗本薫] ★★★ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540) [Amazon]

劫火―グイン・サーガ(84)

ナリス陣営を離れ傷心のまま山野を彷徨うリギアは驚くべき軍勢を目の当たりにする。それはマルガを急襲すべく奇計を巡らしたイシュトヴァーン率いる屈強なゴーラ兵の一団だった。ヴァレリウスとリンダを欠き、未だケイロニア軍の援助も受けられない中、ナリス軍の絶望的な防衛戦が始まる。

遂にナリスが死んでしまいそうなのでこの急展開にはびっくりだ。魔道士軍団によるあれほどの諜報網を持つナリスが何故イシュトヴァーンのこれほどの動きに気づかなかったのかは大いに突っ込みたいところだが、ヤンダルのせいとかにされちゃうんだろうなあ。リギアやマリウスが偶然その場に居合わせるのも非常に不自然ながら、めんどくさいのでコメントなし。

しかしナリナリ&ヴァレリウスを美しく描かんとするあまり、他キャラの没個性化はひどいもので、マリウスの生気の無さにはがっかりした。かつての確執はなんだったんだよ、ってなくらい扱いがひどい。ナリス主従の愁嘆場を描くのに夢中なあまり、元々の設定を踏みにじって欲しくはないところ。だが、ここでしっかりナリスを殺してしまえれば、多少は今後の展開に期待を持ってもいいのかもしれない。やおい小説化が少しは軽減されるのではと期待。肉体は死んだけど精神生命体としてヴァレリウスの中に寄生とか絶対なしね。[2002/04] ⇒次巻

アイランド [葉月堅] ★★☆ 新潮社 (\1,400) [Amazon]

アイランド

作家デフォーはある日、見せ物小屋で一人の黒人奴隷に出会う。彼の名はフライデー。彼の父は南海の孤島で漂着した白人男性クルーソーと共に島を出たのだと云う。ロビンソン・クルーソーは実在するのか?フライデーと共にその足取りを追い始めたデフォーだったが、その前に意外な真実が明らかになる。

第八回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作品。二部構成となっていて前編が「クルーソーの島」これはあらすじにも書いたとおりで『ロビンソン・クルーソー』を著したデフォーを中心として物語は展開。後編は「フライデーの島」これはフライデーの子孫?とされる男が自らのルーツを求めて錯綜していくストーリー。虚実が巧みに絡み合うミステリアス・ファンタジーらしいのだが、どちらにも振り切れずに、消化不良な気分だけが残るのだが、これは読み手の好みの問題なのだろうか。最後まで乗り切れず。[2002/04]

秘境駅へ行こう! [牛山隆信] ★★★☆ 小学館 小学館文庫 (\476) [Amazon]

秘境駅へ行こう! (小学館文庫)

断崖絶壁の直下にある駅。駅を降りるといきなり獣道に突入。見渡す限り平原のど真ん中の駅。雪に埋もれ停車する列車も無い駅。長い歴史の間に当初の目的が失われ、意図せずして誕生してしまった「秘境駅」の数々。この道の第一人者が自ら現地を訪れて語る選りすぐりの秘境駅ガイド全20駅。

『秘境駅へ行こう!』はそもそもネット上の知る人ぞ知る鉄道系カルトサイトで、ある程度鉄分の濃い人間なら一度は訪れたことがあるのではないだろうか。かくいう筆者もこのサイトは大好きでほとんどのページは閲覧済み。丁寧かつ執拗な取材と、膨大なデータ量には激しい羨望の念を抱かざるを得ない。本書はこのサイトの内容を厳選して抽出の上加筆修正。紹介駅を20に絞っている。

改めて読んでみるとこの人は本当にスゴイ!ただでさえ到達しにくい北海道の「秘境駅」を冬期に訪問しているのが既に正気の沙汰ではない。一つ間違えたら生死に関わる大事に至りかねない暴挙なのだが、真の求道者はとはそういうものなのかもしれない。もうこれは尊敬するしかない。

厳選20駅しか収録されていないので、元のサイトを見ている人間にはやや物足りない感はあるかもしれないが、「秘境駅」の概念を世に知らしめる意味では活字媒体での出版は嬉しい限り。自転車による飯田線全駅訪問を生涯の目標に掲げている筆者としては、これで更に血のたぎり(←大袈裟)が高まったことは言うまでもない。[2002/04]

ランブルフィッシュ 3 場外乱闘恋心編
[三雲岳斗] 
★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\590) [Amazon] ※書影無し

人型兵器RF(レイド・フレーム)。その日本で唯一の専門学校恵理谷闘専では日夜、若者たちによる熱い戦いが繰り広げられていた。落ちこぼれ集団D班のガンヒルダも学内トーナメント3回戦に進出。対戦相手は無敵のトップチームA班の誇るベゼリィ。瞳子に仄かな恋心を抱くペゼリィ闘騎手貴城史の挑発を受けた沙樹はリスキィな賭けに挑むことになるのだが……。

「ランブル・フィッシュ」シリーズ第三弾。ウェルメイドなライトノベルなので安心して読める。おでこの広いツンツン系お嬢様ライバルキャラ→実はいい奴。問題児だらけの落ちこぼれ集団→次第に実力発揮。と、まあ、お約束がきれいに決まると気持ちがいいってことだ。適度に埋め込んでいる伏線が今後ちゃんと回収出来るかどうかが腕の見せ所なのではないかと。思ったより早く日本に帰ってきた祭理の今後が気になる。[2002/04] ⇒次巻

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