2002年7月

なんと今月は3冊ポッキリ。空前の少なさ……。

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
バーチャルネットアイドル
ちゆ12歳
ちゆ12歳 ぶんか社 \1,400
ファンなら買いだが、サイトを見ればそれでいいのかも
★★★☆
ハムレット狂死曲 服部まゆみ 光文社 \552
いつも水準以上。
★★★☆
戦闘妖精雪風<改> 神林長平 早川書房 \700
18年振りに読んだ。
★★★

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バーチャルネットアイドル ちゆ12歳
[ちゆ12歳] ★★★☆ ぶんか社 (\1,400)

ちゆはネット上だけで存在するバーチャルアイドル。実体を持った女性よりも空想の美少女が好きだ!という二次元コンプレックスな方のために生まれた新しい形のネットアイドルなのだ。電子の妖精がヲタクネタから時事問題まで様々な事件を明快な文章でわかりやすくかつ鋭く斬りまくる。

言うまでもない超有名サイトちゆ12歳に掲載されていたコンテンツを書籍化したもの。最近は紙媒体にまで進出してしまい、雑誌の表紙にはなるわ、連載原稿持つわで大人気。おかげでサイトの更新がすっかり止まってしまっているのが現状。って、これ書くためにチェックしてみたら、ちゆ12歳ポータルなる新サイトが出来ていた。今後はこちらをメインに更新していくとのこと。以前のような頻繁な更新が出来るといいんだけど。

ネットのコンテンツを書籍に落とし込んだものではあるのだが、ネタ別に分類して収録されていて読みやすさがアップ。ガオレンジャーネタなんてのは通して読んだ方が絶対面白い。微妙に新規書き下ろしもあるので、ちゆファンなら買っておいても損はないだろう。全盛期のちゆ12歳が本当に面白かったことがこれを読むとよくわかる。「30年前のエロ本」は仕事中に読んでしまい、笑いを押し殺すに苦労したことを覚えている。[2002/07]

ハムレット狂死曲 [服部まゆみ] ★★★☆ 光文社 光文社文庫 (\552)

名門、劇団薔薇(そうび)は新劇場のこけら落としに「ハムレット」の上演を計画する。イギリスから招聘された天才演出家ケン・ベニングは、かつて日本国籍を持つ複雑な出生の秘密を抱えていた。蒼々たるメンバーがキャスティングされていく中で、ケンは歌舞伎役者片桐清右衛門に異常な執着を見せる。清右衛門こそはケンの実の父親だったのだ。母と自分を捨てた清右衛門に復讐の炎を燃やすケンだったが、事態は思いも寄らぬ展開を見せる。

服部まゆみは第7回横溝正史賞を『時のアラベスク』で1987年に受賞。以来、マイペースで作品を発表し続け、著作数は少ないながらも常に水準以上の良作を送り出してきている作家。『この闇と光』が1998年の第120回直木賞の候補にもなり、各方面でも高評価を受け、一気に認知度が上がった。本書はその前年に光文社から刊行された作品を文庫化したもの。

曰くありげな過去を持つ演出家ケン・ベニングと、親の七光りでハムレット役を演じることになってしまった片桐雪雄。この二人のそれぞれの視点から交互に物語は語られていく。本家の『ハムレット』からのモチーフやら、メタファーやらが巧みにちりばめられていてさすがは服部まゆみ作品。なかなか凝っている。ケンの復讐は思わぬ結末を迎える。オチとしては正直予想範囲内で残念なのだが、雪雄の成長物語は素直に楽しめた。

ちなみに解説の江守徹は単なるネタバラシおやじでしかないので、絶対に先に読んではダメだ。解説であらすじ書いてどうすんだ。[2002/07]

戦闘妖精雪風<改> [神林長平] ★★★ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\700)

突如出現した謎の存在<ジャム>。南極に飛来した未知の異星体は地球への侵攻を開始した。これを迎え撃つべく人類は超国家組織FAFを結成。<ジャム>を追って謎の惑星フェアリーへと進駐する。いつ終わるとも知れぬ戦いが続く中、最強の戦闘機スーパーシルフィードを駆る深井中尉は<ジャム>から人類初のコンタクトを受ける。

1984年に刊行された『戦闘妖精・雪風』を増補改訂した新装版。オリジナルの1984年版は高校生の時に読んでいるのだが、続編の『グッドラック 戦闘妖精・雪風』は読まずじまい。ずっと気になっていたので新装版の刊行を機会に再読することにした。全く知らなかったのだが、この話OVAになっているらしく驚いた。何故今になって?

主人公の深井の乗機である雪風は最上位の戦闘機体で、人類の知恵の結晶ともいえるハイテク技術の塊。が、それ故に与えられた任務は「味方が全滅しようとも必ず自分だけは必ず帰還すること」という非情なものとなっている。これは未知の異星人のデータを出来るだけ多く取得しなくてはならないという大前提に基づいているのだが、それ故に生じる様々な葛藤が物語を面白くしている。誰よりも優れた戦闘/運動性能を持ちながら、友軍の敗北を尻目に戦線離脱を図る主人公。当時はこのシチュエーションに燃えた。

<ジャム>が戦いを挑む真のターゲットは人類ではなく、異常なまでに高度に発達した戦闘機のコンピュータ頭脳だったというオチは、初読時には相当のインパクトがあった。あえて手をいれていないのだろうが、20年近く経って読んでみると表現の端々に古さが散見されるのは仕方の無いところか。これでようやく続編が読める。[2002/07]

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