ランブルフィッシュ 4 伝説崩壊編
[三雲岳斗] ★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\533) [Amazon]

学内トーナメントも佳境に突入。最強の闘騎手、藤真蒼威の操るプロトシグリッドとの準決勝戦に臨む落ちこぼれ軍団D班の面々。破壊的な攻撃力を持つ特殊武装ゲイボルグへの対策に頭を悩ませる瞳子たち。そこにガンヒルダ本来の設計者である深見祭理が現れる。祭理のもたらすプロトシグリッド戦への秘策とは。
「ランブル・フィッシュ」シリーズ第四弾。コミック版も始まってメディアミックス化が着々と進行中の本作。スニーカーは電撃に押されてて、ここんとこ大当たりが無いような気がするので、ここいらで勝負賭けてきたってことだろうか。しかしこのコミックの絵柄はいかがなものかと思うのだが……。
で、本編。四巻目ということで、やたらと多いキャラクター群の収まり具合がしっくりしてきて非常に読みやすくなってきた。既存キャラのエピソードを積み上げながら、新キャラ登場、意味ありげな伏線バラマキ、そしてラストは迫真の戦闘シーンと、毎度のことながら上手い。学内トーナメント編も今回で終了ということで今後の展開が楽しみ。そろそろ張り巡らした伏線を回収し始めてもいい時期だ。[2002/09] ⇒次巻
とある南の島で続けられる野球試合。たった2チームだけで延々と続けられるこの試合は何故か一方のチームが常に勝ち、もう一方は常に敗れることになっていた。「海上委員会」からの依頼を受け、この島に渡りただひたすら試合を観戦し続けることを強いられたわたし。この島でかつて何があったのか。そしてこれから何が起こるのか。
第九回ファンタジーノベル大賞の大賞受賞作品に加筆修正したもの。ちなみにこの年の優秀賞は『競漕海域』@佐藤茂。
ネタの秀逸さといい、帯に書いてある椎名誠、荒俣宏、井上ひさしら審査員の絶賛ぶりといい、読む前から期待は高まっていたのだが、物語の世界に入り込めずにいるような虚しさを終始感じさせられ、結局のめり込むことが出来ずに読了。妄想と現実の境を行ったり来たりしながら、自分自身さえも突き放した目線で進んでいくストーリー。荒俣宏言うところの「乾いたファンタジー」という例えはまさに正しくて、この乾きっぷりを愛せるかどうかが本作の評価の分かれ目だろう。[2002/09]
銀河帝国の弘法も筆の誤り
[田中啓文] ★★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\580) [Amazon]
人類が史上初めて、地球外生命体から受け取ったメッセージは「ブラックホールの中にホトケはいるかおらぬか、そもさん」という、およそ信じられない内容の文章だった。答えられなければ人類存亡の危機が迫る。首脳たちの苦悩の末に召喚されたのは伝説の高僧弘法大師空海。ここに空前絶後の禅問答が始まる。
SFマガジン1997年8月号、2000年2月号、、SFマガジン1999年9月臨時増刊号に掲載された作品に加え、表題作を含む書き下ろし二作を加えたSF短編集。バカミスというジャンルがあるように、SFにもバカSFというジャンルはきっとあるのだろう。『SFバカ本』も順調に巻数を増やしているようだしね。この作品にまともなSFを決して期待してはいけない。
タイトルからして、胡散臭さ爆発であり、あらすじだけ読んでも、どうして空海が禅問答なのかまったく得心がいかない。そんなわけだから、読んでみても腑に落ちるどころか怒りは高まるばかりである。その上くだらないダジャレがオチになっている作品まである位で、もうこのやりきれなさをどこにやればいいのか途方に暮れるばかりだ。振り上げた拳をどこにも下ろすことが出来ないというもどかしさを感じたいのであれば、本書を手に取るべきだろう。表紙からしてバカ度満点である。[2002/09]
赤緑黒白 [森博嗣] ★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\980) [Amazon]
全身を真っ赤に染め抜かれて殺されていた男の名前は赤井寛。その婚約者であったという女性から事件の捜査を依頼された保呂草だったが、調査に乗り出してすぐに第二の被害者が発見される。今度は体中を緑に染められて……。連続殺人の様相を呈し始めた事件に、阿漕荘の面々がまたしても巻き込まれていく。
Vシリーズ10作目。森博嗣の講談社でのシリーズは10作で区切りがつくものらしくとりあえず本作で一応の幕引きとなるらしい。密室殺人の謎解きがほとんどであったこの作品群にあって、今回は珍しく正体不明の連続殺人者を追いかけるシリアルキラーモノ。それって『黒猫の三角』以来か?最初と最後に同じ傾向の作品を持ってくるのは、ラストの趣向としては面白いと思う。
とはいえ、カルトがかった不条理な動機設定は後味悪し。保呂草さんさよなら編というだけで、他のキャラクターには全然決着ついてないしなあ。きっとまだまだ続くのではないかと……。で、本編の謎なんてのは実はどうでもよくて、問題はずっと気に掛かっていたシリーズ通しての引っ掛けの方。
あ、ネタバレありが原則の当サイトだけど、この先犀川センセ(S&M)シリーズ、Vシリーズ両方通じて重度のネタバレが続くので一応警告。
ラストの少女はどう考えても真賀田四季博士の幼かりし頃の姿なわけで、ということは、VシリーズはS&Mシリーズよりも20年近く前の物語であったことが判る。従って『今夜はパラシュート博物館へ』収録の「ぶるぶる人形にはうってつけの夜」に登場する西之園嬢は『今はもういない』の方の西之園嬢で、『捻れ屋敷の利鈍』に出てくるのは本来の西之園嬢ってことだろうか(つまり保呂草は20年後の姿)。
そいでもって慌てて読み返してみると紅子の元夫である林刑事の「林」は姓ではなく「名」であることが判り、明言は避けているものの、どうやら姓は「犀川」であることが予想出来る。なんと!へっくん=犀川センセだったのかよ。ネットで検索していると、かなり前の巻から伏線は貼ってあったようなので、最後の最後で気付くのは相当バカな方なんだろうなあ。次巻タイトル既に提示されてるけど、やはりこの傾向で続いていくのだろうか。[2002/09] ⇒Gシリーズへ
ほしのこえ [大場惑] ★★★ メディアファクトリー MF文庫 (\580) [Amazon]
2039年。火星にまで探査の手を伸ばしていた人類は正体不明の存在「タルシアン」による突然の襲撃を受ける。圧倒的な科学力の前に脆くも敗れ去った人類だったが、「タルシアン」にもたらされた技術はその後の地球の歴史を変えていく。平凡な中学生だったノボルとミカコ。しかしミカコが「タルシアン」を追う選抜メンバー選ばれた日から、二人の長い長い離れ離れの日々が始まる。
『ほしのこえ』は新海誠によって作られた個人製作アニメ。およそ信じられない話だが、監督・脚本・演出・作画・美術・編集をすべて本人が一人で担当。さすがに主題歌は他にやらせているものの、主人公の声も本人。ヒロインの声は婚約者が担当している。わずか25分の短編作品ながらそのクオリティはきわめて高く、2002年を代表するアニメーション作品の一つとして評価されている。
で、本作はそのノベライズ。大場惑は本業はSF作家なんだけど、どちらかというとノベライズの書き手としての印象が強いかね。『イース』シリーズは確かこの人が書いていたと思う。
アニヲタに絶大な支持を受けてヒットを飛ばした作品のノベライズなので、内容どうこうというよりは、キャラクターグッズの一環と思った方がいいだろう。本編では明かされなかった裏設定(なぜミカコは宇宙でも制服着てるの?とかね)が披露されていたり、キャラクターの心情がきめ細かに補完されていたりとそれなりにサービスしてくれてはいるが、本編を見ていないとその効果も半減。当たり前のことではあるが、先にこちらを読むべきではないだろう。アニメ本編→ノベライズの順番ならばそれなりに楽しめる。長峰萌えな向きにはラストはたまらんだろう。[2002/09]
イリヤの空 UFOの夏 その3
[秋山瑞人] ★★★☆ メディアワークス 電撃文庫 (\570) [Amazon]
伊里野と晶穂は互いに認める恋のライバル。微妙な緊張関係を維持してきた二人の間についに決定的な崩壊の時が!戦いの場は「鉄人屋」未曾有の大食いバトルの顛末を描く「無銭飲食列伝」。園原基地近辺で起きた原因不明の大爆発。にわかに緊張の度合いを増していく浅羽の周囲。そして水前寺が消えた。シリーズのターニングポイントなる「水前寺応答せよ前編・後編」。そして本編をさかのぼること数年前の浅羽と水前寺の姿を描いたショートストーリー「ESPの冬」の四編を収録。
シリーズ第三弾。『電撃HP』掲載の作品をまとめたもの。まずは「無銭飲食列伝」から。浅羽をめぐる恋の鞘当てからなぜか大食い対決をする羽目になってしまった二人。仰々しい語り口と内容のギャップのバカバカしさが笑えるとにかく楽しいアホ話で、この後に続くエピソードが悲惨なだけに、救われる思いがした一編。
そして「水前寺応答せよ」。遂に来るべきものが来たというところだろうか。前作、前々作と続いてきた平穏な日常が終わるときが来てしまった。秋山瑞人作品のヒロインに一般人の安らいだ生活は許されないのか。一夜にして白くなってしまった髪、大量の吐血と、相変わらず仕打ちが惨い。のほほん系主人公に腹括らせるためにはここまでしないと、やっぱりいかんのだろうね。でも伊里野の悲劇はまだ序の口の予感がする。
今回のハイライトは覚悟を決めた浅羽が、自らに埋め込まれた発信機を激痛に耐えながらカッターナイフで抉り取る場面だろう。みっとも無いけど最高に格好いい。こうしたシーンをさらりと流さないところがこの作家の偉いところ。息詰まる緊迫感に圧倒された。「少年」から「男」へのステップを一歩登ってみせた浅羽。どう見ても大人たちの手のひらの上で弄ばれているようにしか思えない状況の中でどんな愛の逃避行を見せてくれるのか?続巻がいつになく待ち遠しい。[2002/09] ⇒次巻
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