乙一のホンモノぶりを改めて実感した12月。夜ちゃんが素晴らしい。
久々に読破数が二桁に。この調子で来年は目標100冊でがんばろう。
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コメント |
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| あなたは虚人と星に舞う | 上遠野浩平 | 徳間書店 | \590 |
わけ判らなくなってきた。
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★★★☆ |
| まろうどエマノン | 梶尾真治 | 徳間書店 | \533 |
ええ話です。 |
★★★☆ |
| 四谷怪談 祟りの正体 | 小池壮彦 | 学研 | \1,800 |
真相は面白い説だと思う。
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★★★☆ |
| ヤーンの時の時 グインサーガ87 |
栗本薫 | 早川書房 | \540 |
死んだフリでないことを願う。
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★★☆ |
| 蛇行する川のほとり 1 | 恩田陸 | 中央公論新社 | \476 |
ちゃんと3巻で終わりますように。
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★★★☆ |
| FC東京の挑戦 | 荒川裕治 | 小学館 | \1,300 |
ガスサポは必携。
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★★★☆ |
| 大江戸死体考 | 氏家幹人 | 平凡社 | \680 |
語り口がヘン。
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★★★ |
| 三雲岳斗 | 角川書店 | \533 |
設定渋い。
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★★★ | |
| 乙一 | 角川書店 | \1,500 |
更にレベルが上がった。
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★★★★ | |
| 篠田真由美 岡本賢一 瀬川ことび 乙一 |
角川書店 | \514 |
乙一狙いで購入。
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★★★☆ | |
| ベニー松山 | 創土社 | \1,650 |
名作が復活。絶対買うべき。
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★★★★ | |
| \1,650 | |||||
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あなたは虚人と星に舞う
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| ついでに…… 『ぼくらは虚空に夜を視る』@上遠野浩平 <<1作目 『わたしは虚夢を月に聴く』@上遠野浩平 <<2作目 |
少年時代。夏。父の元を離れ訪れた田舎の町で僕はエマノンに出会った。御所船と呼ばれる父方の曾祖母の住む町では、ましらと呼ばれる妖怪が、今もなお山に棲むと言い伝えられていた。化石探しの探検に出かけた僕は、山中で偶然ましらに遭遇し、エマノンと共にその手助けをすることになる。ましらが守り続けてきた秘密をめぐり、僕は思わぬ人物に出会う。
エマノンシリーズ四作目。前作に続いてまたしても書き下ろし。しかも鶴田謙二のミニコミック付き。薄さの割りに値段が高いのは、カラーページが多いから?人気あるってことなのかな。これ。
少年時代。田舎の町。夏休み。なんかもう、お約束のような状況で、しかもエマノン(美人のお姉さん)まで登場してしまうという。これでいい話に出来なかったら、カジシンはペンを折るべきだね。と、序盤を読み進めていて激しくそう思ったのだが、謎の少女の存在というおまけまで付いてきて、予想を超えて、良質かつハートウォーミングな、ジュブナイルストーリー(片仮名ばっかだな)に仕上がっていて驚いた。タイムスリップネタは、ここぞというところで使うとやっぱり効果的。前作の失敗はこれで帳消しにしてあげてもいいかな。[2002/12]
江戸の昔から語り継がれた四谷怪談。しかしその実際のところはあまりに不明な部分が多い。お岩はなぜ祟るのか。どのような者がどんな時に祟られるのか。明治、大正、昭和にいたっても脈々と続いていく祟りの系譜を、具体例を挙げながら概観。事件の発生から変容の過程で起きた意外な真相を探り当てる。
学研の新叢書、「知の冒険」シリーズの一冊。著者は1963年生まれのライターで怪奇系の分野を得意としている人物らしい。あまりに有名な四谷怪談だが、確かにその詳しいことは知られていない。わたし自身、お岩稲荷がどうして二箇所あるのかもよく知らなかったし、お岩さんのことだと思っていた話が、実は番町皿屋敷のお菊さんのエピソードとの取り違えであったことも今回判明したりして、ずいぶんいい加減に認識していたことが明らかになった。
というわけで、四谷怪談に対する状況認識をやり直すにはなかなかよいのではと思うのだが、構成がやや凝りすぎていて、どうにもとっつきにくいのが難点。冒頭に謎めいた挿話を入れるよりも、シンプルに基本的な事実確認を序盤でやってくれた方が、わかりやすかったのではと思う。文献を引っくり返して、予想外の結論を導き出していく過程は、素直に面白かったので、その点は惜しいと感じた。[2002/12]
王同士の一騎打ちに敗れ、グインの説得にイシュトヴァーンはようやく応じる構えを見せ、ケイロニア・ゴーラ間には一時的な和睦が成立する。混迷を深めていたパロ情勢は新たなる局面を迎えることになるのだが、グインは神聖パロ国王である、アルド・ナリスへの面会を申し出る。ここにグインとナリス、二人の英雄が始めて相見えることになるのだが……。
グインサーが87巻。やっとナリスが死にました。あとがきが気持ち悪かったです。おしまい。
というのは、あんまりなので、もう少しだけ書こう。そもそも物語の中盤で死ぬはずだったナリス。あくまでもパロではレムスが主役だと思っていたのだが、作者の寵愛を受けすぎてしまい、不自然なまでに命を長らえてしまった。おかげで、終生のライバルだった筈のヴァレリウスは愛人に昇格。パロ宮廷は謎の動物園に成り下がり、アルミナちゃんは狂気のあまりに色情狂に。レムスのキャラクターとしての再生はほとんど不可能なんじゃないかと思えるくらい、違う属性を付与されてしまった。この罪は大きいよ。次の巻はまるまる一冊ナリスの葬式と見た。ナリスがいまさら死んでくれても、もう歪みきってしまった物語の軸は元には戻らないだろうなあ。惰性読者なので最後まで読むけどね。[2002/12] ⇒次巻
高校1年の夏休み。上級生である香澄の誘いを受け、毬子は彼女の家に泊まりこみで9日間を過ごすこととなった。美しく聡明な香澄の魅力に毬子はもう夢中だった。蛇行する川のほとりの家で過ごす夢のような日々が始まる。だがそんな日々が、毬子の封印されていた過去への扉を知らず知らずのうちに開いていく。
連載作品の単行本化が多い恩田陸にしては珍しい書き下ろし。『上と外』以来か。とはいっても、本作は全3巻の中の1巻目で、2巻目が2003年4月、3巻目が8月に刊行予定となっている。これって、雑誌連載と状況はあんまり変わっていないような気がするのだが。続巻が延びたり、すっごく分厚くなったり、巻数が増えたりしないことを祈っておこう。
本作は『麦の海に沈む果実』のような幻想系学園モノの雰囲気を濃厚に漂わせている。積極的に幅広いジャンルへ挑戦しているこの作家だが、この系統はもっとも得意とし、また支持されているだけに期待は高まるところだ。1970年代の少女マンガテイストとも言うべきか、砂糖菓子のようなふわふわした少女たちと、中性的な少年たちによる、ひと夏の物語が繰り広げられていくのだが、少女マンガ的イメージのストックに乏しいわたしでも、モワッとその時代ならでは繊細なタッチで描かれた登場人物たちが想起されてくるから、さすがである。
個人的思い込みで恐縮なのだが、学園モノは夏が一番美しい。『ネバーランド』は冬の話だったし、『六番目の小夜子』や『球形の季節』は夏の話が少ししかなかったし、『麦の海に沈む果実は』舞台が北海道だった。というわけで、恩田陸作品で徹頭徹尾「夏」の話が読めるわけでこんなに嬉しいことはない。1巻目である本書では、主人公の凄惨な過去を仄めかすような、いかにもな「引き」で終わっている。つかみとしてはバッチリなので、この勢いで最後まで突っ走ってほしい。[2002/12] ⇒次巻

2000年3月11日。対横浜F・マリノス戦。FC東京はJ1昇格後、初のゲームに臨もうとしていた。Jリーグ参入から驚くべき速さでJ1への昇格を勝ち取ったFC東京であったが、その道のりは決して平坦なものではなかった。プロ化を望まない親企業。脆弱な組織。そしてチーム内の不協和音。J参入前の黎明期から、大躍進を遂げた2000年のリーグ戦まで、その過程を振り返る。
筆者は1967年生まれのスポーツライター。東京スタジアムに行くと、マッチディプログラムと並んでいつも売っているので、買おう買おうと思っているうちに買いそびれていた。ネット書店経由でようやく購入。
初めて東京の試合を見たのは2000年1stのヴェルディ戦で、このときは0-3でボロ負け。ヴェルディ=ヨミウリ=嫌いという意識だけはあったので、東京を応援していたのだが、よもやこんなにハマル事になろうとは。遅れてきたファンとしては、J加入以前のチームのことは伝説上の物語でしかなく、正直知らない選手も沢山……。J1にあがってくるまでに、これだけの選手が東京のピッチを去って行ったのかと思うと、実に感慨深いものがこみ上げてくる。東京サポとしては必携の書であると言えるだろう。願わくは、この手の書籍が定期的に出せるくらい、強いチームに育ってほしいと思う。[2002/12]
死体を見ることそのものが極めてまれになってしまった現代社会に比べ、江戸時代の人々にとって、死体は生活にとても近い存在であった。大都市江戸を中心に、巷にあふれていた死体の数々を概説。多くの需要があったとされる様斬(ためしぎり)に焦点を当て、名高い首切り人として知られる、山田浅右衛門とその周辺について解説していく。
今年は新書をあまり読めなかったので、もうちょっとその量を増やしてみようということで読んでみた。刑吏モノとか死体モノは個人的にツボなのでなるべく読むようにしているのだが、本書は、まずその「です・ます」調の語り口に萎えた。この手の書籍でそれはないだろ、その気はまるで無いんだろうけど、バカにされてるように感じる。少しでも判りやすくして、色々な層の読者に読んでもらいたいってことなんだろうけど、逆効果のような気がする。
とは言いながらも、内容そのものはなかなか良かった。様斬(ためしぎり)の薀蓄は知らないことが多くて面白かったし、屍肉に歯を立てて肝を奪い合う恐怖の風習「ひえもんとり」は正直今でも信じられない程驚かされた。山田浅右衛門への突込みがやや浅いかなと思わないでもないが、この頁数ではやむを得ないだろう。さらっと読めて、手軽に未知の薀蓄が補充できるのは新書ならでは。最低月1ペースで読みたいところだ。[2002/12]
ここは炎界。灼熱の炎と溶岩。過酷な環境の中で人々は要塞都市に篭り、限られた資源をめぐり飽くなき抗争を繰り広げていた。都市の一つ、マグナ・リダウトのシグ・クルーガーは人型航空兵器[天使もどき]のパイロットとして将来を嘱望されるエリートだった。しかし逃亡する敵都市の少女を助けてしまったことからその運命は思わぬ変転を余儀なくされる。
2000年作品。ライトノベル界のプライズハンター三雲岳斗。本書では第五回スニーカー大賞の特別賞を受賞。ライトノベル的意匠の中にハードなSF的仕掛けを内包させるのが、この作家の持ち味なのだが今回もそれは健在。美少女てんこ盛りだったり、巨大人型メカが大活躍したりなお約束事を踏まえつつも、物語世界である「炎界」の設定がものすごく秀逸。ホントならこれだけでハードなSFが何杯もお変わりできそうな気がするのだが、それを敢てやらないのが、スニーカーで出す上での限界かな。[2002/12]
高校生の僕の身の回りで発生した連続猟奇殺人事件。犯人の所有と思われる手帳を拾ったことで、僕はクラスメイトの森野と共に事件に巻き込まれていく。意外な展開を遂げた事件の顛末を描く「暗黒系」。手首だけを切り取り持ち去っていく傷害犯の正体?「リストカット事件」。頻発する犬誘拐事件の裏に潜む真実「犬」など、僕と森野が綴る6編の暗黒系連作短編集。
2002年作品。乙一11冊目(作品としては9作目)の作品。『暗黒系』『リストカット事件』は雑誌ザ・スニーカーに掲載された作品。残る4編はすべて書き下ろし。あとがきによると本来はスニーカー文庫のミステリ・アンソロジー『殺人鬼の放課後』に収録される筈だったものなのだが、構想が膨らみシリーズ化され、めでたく一冊の単行本として上梓されるに至ったのだそうだ。
タイトルのGOTH[ゴス]とは、GOTHICの略で、殺人や拷問、処刑など、人間の暗黒面を特に嗜好する人々のことを指す。本作の主人公とヒロインは一応普通の高校生として一般人と変わらない生活を送りながらも、人間存在が裡に秘める精神の闇の部分に強く惹かれ、いつしか行動を共にするようになる。彼らはいわゆる通常の倫理観や正義感などは全く持ち合わせていない。純粋に犯罪に対しての興味のみで、それぞれの事件に関わっていく。
では各編ごとに短評。『暗黒系』。夏休みの登校日で主人公がクラスメイトの森野夜に出会うところから物語は始まる。拾った手帳。尋常ならざるその内容。つかみの数ページで、ああこれは乙一の暗黒系なのだと実感させられる。森野を拉致されながらも、冷静な推理で犯人を探し当てる主人公。恋愛感情無し。猟奇犯罪に対する強い好奇心だけで動く特異なキャラクター性に早くも目眩が。比較的ひねりの少ないエピソードながら、導入話としてはいい感じ。
『リストカット事件』。連続手首切断魔を追う主人公。ふとしたきっかけで犯人のヒントを掴み、行動を予測し、罠を仕掛ける。でも、その動機は切断された森野の手が欲しかったから……。素晴らしい、この壊れよう。2編目にして主人公の崩壊ぶりが本物であることが理解でき、本作全体への期待度が一気に高まった。
『犬』。乙一らしい仕掛けが綺麗に決まった一作。これまでの2編は主人公である「僕」の視点で進んできたのだが、この話では正体不明の「私」の視点が交互に挿入される。「私」の正体には正直ビックリした。そんなのありか?ユカちゃん凄すぎ。
『記憶』。森野には双子の妹がいた。この段階で、ミステリなんだし→双子だろ→入れ替わりに決まってるじゃんという、ミステリ読みの性故の、寂しい連想が働いてしまうのだが、そんなことは実はどうでも良くて、森野萌えを促進するために、このエピソードはきっと欠かせないものであったに違いない。本当の名前を呼ばれたときの森野の描写が実に印象的。間の取り方も絶妙。
『土』。この話は犯人視点の三人称になっていて、物語の雰囲気が幻想小説寄りにシフト。ミステリの世界を超えて、文学的境地にまでたどり着いてしまったのではないかと妄想したくなる逸品。人を埋めることに強迫観念を持ってしまった犯人の心理描写が◎。救われないラストも◎。『記憶』の次にこの話が来るのも正解。
最後は『声』。「僕」と「私」のそれぞれの視点からの一人称で交互に進行。主人公の名前が明らかにならなかったのは、最初からこのネタを考えてのことだったのだろうか。神山君の表キャラクターの健全ぶりには笑った。最後に森野をヒロインとして立てて見せて美しく幕引き。ラストエピソードに相応しい落とし方だ。
2003年版このミス国内部門2位は、少々いい点をやり過ぎのような気がするんだけど、幻想的な余韻を残す独特の文体と、ややサービス過剰気味の叙述トリック、ひょっとしたらミステリ界最凶かもしれない、壊れカップルの誕生と、現時点での乙一の総力が結集された作品であることは間違いない。でも毎回思うんだけど、乙一はまだ上に行ける気がするんだよなあ。[2002/12]
王女ジェルソミーナに何が起こったのか。無人の城で繰り広げられる狂気の宴『ふたり遊び』。闇の中から聞こえる不気味な音の正体は?とらわれた人々の無残な運命を描く『闇の羽音』。ラベンダーの香りと共に現れた美少女の真の姿とは『ラベンダーサマー』。幼き日、無限の恐怖と共に過ごした時間。陰惨な記憶を呼び覚ますあの出来事『階段』。俊英四名の競作ホラーアンソロジー。
スニーカー・ミステリ倶楽部でミステリ系のアンソロジーを4冊続けて出してみた角川書店。そろそろネタも尽きてきたし今度はホラーだろってことで、本書の登場である(適当に推測)。ラインナップは篠田真由美、岡本賢一、瀬川ことび、乙一の4名。ほとんど乙一目当ての購入なのだが、真ん中二人は始めて読む作家なので少しだけ期待。
『ふたり遊び』@篠田真由美。あの話(←ネタバレリンク注意)を読んでさえいなければ、もう少し楽しめたと思うのだが……。オチも『エコエコアザラク』に同じのがあったよね。先が見通せ過ぎ。擦れた読み手でゴメン。
『闇の羽音』@岡本賢一。名作の誉れ高い『鍋が笑う』(絶版)を探し続けて幾星霜。こんな形で出会うことになろうとは。リアルに情景を想像すると笑えてしまうのが本作の困った所。
『ラベンダーサマー』@瀬川ことび。角川のホラー小説大賞出身の作家。作中でも書かれているけど、菊池秀行の『インベーダーサマー』のほのかなパロディになっている。かもし出されるおぞましくも美しい夏の情景が素晴らしい。
『階段』@乙一。贔屓目なしにしても一番面白かった。子供の世界は狭くて閉じているから、恐怖や抑圧から逃れる術が無い。幼年期ならではの無限大の絶望を、丁寧な心理描写で最後まで一気に描き切っている。上手い。
相変わらずこのシリーズ、スニーカー文庫なのにイラストが表紙と口絵以外無いのがひっかかる。スニーカーで出すからには若い子向けなんだろうし、敢てそれで価格を抑えているのかな。[2002/12]

世界は破滅の危機に瀕していた。絶対の魔法障壁を誇るはずの古都リルガミンにすらその災厄は及び人々は恐慌状態に陥っていた。五種族の長老たちは告げる。異変の謎を解く鍵は聖なる龍ル’ケブレスの守る宝珠にあるのだと。かくして名だたる冒険者がリルガミンに集い、スケイルと呼ばれる迷宮に挑むことになる。
今は亡きゲーム雑誌『ファミコン必勝本』。かつて宝島社から出版されていたこの雑誌はなぜか異常なまでに『ウィザードリィ』という特定のRPGをプッシュしていて、コミックが連載されていたり、常設の投稿コーナーがあったりと、実に盛りだくさんだった。本作は同誌に連載されていた小説をまとめたもので、最初のバージョンは1994年にノベルズ形式で宝島社から刊行されている。ウィザードリィ系創作小説の最高峰とされながらも、諸般の事情から発行から間もなくして絶版となり、長らく幻の作品とされてきた。8年の歳月を経て、なんとハードカバー上下巻組での復活である。しかも更に幻の短編とされてきた『不死王』まで収録されているのだ。創土社の人の類まれな決断にカルキを(笑)。
ウィザードリーを強く推していただけあって、この時期の宝島社から出ていたウィズ関連の攻略本の出来は他の追随を全く許さないクオリティを誇っていたのだが、作者のベニー松山はこの攻略本を作っていた人間だった。というわけで、ウィザードリィの第一人者が書いたウィザードリィ小説が本書である。というわけだ。
本作はファミコン版の『ウィザードリー2』(PC版だと3)をベースに、微妙に『ウィザードリー3』(ややこしいけどPC版だと2)の成分を配合して構成されている。ウィザードリィというゲームはドラクエやファイナルファンタジーなどと比べて、極端にストーリー性が希薄なゲームで、ゲームクリアに至るまでのストーリーはプレーヤーの妄想の数だけ存在する。従って物語の骨子の部分は当然オリジナルの設定を用いて書かれているのだが、それ以外のほとんどの部分の肉付けは作者が独自で創作している。
背景説明だけで終わってしまいそうなので先を急ごう。8年振りに再読してみたのだが、やはり面白いよ、これ。主人公ジヴラシアの登場、主要キャラクターの紹介と進んで、ゲームでは絶対に味わえないド派手な地上戦に突入。街中で最強呪文のティルトウェイトを使うのはいかがなものかと思うのだが、とにかくスピーディな展開が読み手を引き付ける。上下巻二段組、合計700頁強もの長編なのだが、終盤に至るまでダレることなく、読み通さずにはいられない筆力は今読んでもたいしたものだと思う。
ゲームをやりこんでいる人間であれば、ニヤリとするような表現がそれはもう随所に取り入れられていて、オールドファンには嬉しい限り。一番好きなシーンは、エアジャイアントのクリティカルを受け即死したジヴラシアを見るや、瞬時にディーがマハマンの呪文の詠唱を始めるシーン。マハマンの呪文は唱えるとランダムで蘇生の効果を呼び出すことが出来る(ドラクエで言うところのパルプンテ)のだが、代償として1レベル分の経験値を失ってしまう。ファミコン版の2は経験値稼ぎにとにかく苦労するゲームで、1レベル上げることの困難さを考えると、マハマンなんて呪文は普通絶対唱えない。それだからこそ、躊躇うことなくマハマンの詠唱を始めたディーの行動に、ファンはその愛の深さを知り涙するのだ。このシーンは泣けた。
特殊な呪文システムや、多岐にわたるアイテム、種族や職業も色々あって、ゲームをやっていない向きには若干とっつきにくい部分もあるとは思うのだが、未プレイ者のことも当然考慮して判りやすく書かれているので、本当はウィザードリーを知らない人間にこそ読んで欲しい一作。単なるゲームの小説化という域を超えて、国産ファンタジーの秀作に仕上がっている。高いけどそれだけの価値はあるぞ。[2002/12]
| ついでに…… 『となり合わせの灰と青春』@ベニー松山 <<ウィザードリィ1のノベライズ |