さみしさの周波数 [乙一] ★★★☆ 角川書店 スニーカー文庫 (\457)
「お前たち、将来結婚するぜ」。未来を視る能力があると自称する友人からこんな予言をされてしまった僕と清水。それ以来二人の関係は妙にぎごちないものになってしまう。二人の未来はどうなったのか『未来予報』。封印されていたフィルムに映る謎の少女にまつわる物語『フィルムの中の少女』。事故により右手以外のすべての器官が麻痺してしまった男の悲劇を描く『失はれた物語』など、4編の短編作品を収録。
2003年作品。乙一12冊目(作品としては10作目)の作品。4編目の『失はれた物語』のみ書き下ろしで、それ以外は「ザ・スニーカー」に2001年から2002年にかけて掲載された作品。今回も羽住都のイラストが素晴らしい。
いつものごとく各編ごとに短評。『未来予報』。いきなり吉田美和のヴォーカルが流れてきてしまう人は同世代(笑)。可能性を示されながら、関係すら築けずに伴侶に成り得たかもしれない異性を失うというシチュエーションがツボ。せつなさ度ではこれが一番ということで。
『手を握る泥棒の物語』。雑誌掲載時は『手を握る泥棒のはなし』。もともとの題の方が個人的には良かったな。今回一番ヘンな話。状況を考えるとかなり笑えるのだが、乙一マジックでほんのりいい話に仕上がっている。
『フィルムの中の少女』はホラーかと思わせておいて、一番ミステリ色が強い作品。描き出されたフィルムの中の情景が非常に美しい。
『失はれた物語』。唯一の書き下ろし作品だが、もし「ザ・スニーカー」に載せていたとしたら対象年齢がぶれてしまいそう。最後にもってくるだけのことはある美しくも哀しい静謐な物語。これ読んでもう乙一はスニーカーでは出さなくていいんじゃないかと痛切に思った。
2002年は快調に新作を発表し続け、『GOTH』ではこのミス国内編の2位まで取ってしまい、飛ぶ鳥を落とす勢いの乙一。しかしながらあとがきによると、本作を最後にしばらく新作の発表を行わないとのこと。ジョジョのノベライズに専念ってこと?無理して書いて駄作を出されるよりはずっといいので、腰を据えてゆっくり書いて欲しい。[2003/02]
星の葬送 グインサーガ88 [栗本薫] ★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540)
アルド・ナリス死す。深い哀しみに打ちひしがれる神聖パロ陣営の面々。残されたリンダは悲嘆に暮れる間もなく、瓦解寸前の反乱軍を立て直すべく立ち上がらなければならなかった。しかし現在の彼らはナリスを弔うための葬儀代すらことかく始末。墓所を巡るフェリシア婦人との攻防。王弟アル・ディーンの突然の登場。葬送が始まるのはいつになるのだろうか。
グインサーガ88巻目。本編のイラストもこの巻から丹野忍に変更。末弥さんの次第に荒れていくタッチをもう見なくて済むのかと思うとホッとした。解放されて良かった。加藤→天野→末弥と続いてこれで4代目かグインの絵師は。100巻までは丹野体制で臨むのであろう。
あまりに内容が薄すぎてあらすじが書けないよお。「葬送」ってタイトルに出ているにもかかわらず、葬儀代が無いわとか、墓所はどこにしましょうとか、フェリシア婦人には頼りたくないわとか、著しくどうでもいいような描写に終始。そもそも葬式が始まっていないという想像を超えた展開に衝撃を受けた。だいたい戦争中なんだから、暢気にそんなことやってる場合じゃないんじゃないか?ナリス一人で背負ってたような国なのに、総大将の死が軽々しく公にされている事実にも萎えるものがある。期待値を常に裏切り続けるのはある意味スゴイ。[2003/02] ⇒次巻
四月は霧の00密室 私立霧舎学園ミステリ白書
[霧舎巧] ★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\760)
霧舎学園の美少女転校生羽月琴葉は霧の立ちこめる校内で殺人事件に遭遇する。被害者は当日赴任したばかりの学園教師。「霧密室」の中で起きた事件。霧によって閉ざされていた殺人現場でいかにして犯行は行われたのか。現場で出会った二人の少年が伝説の名探偵として事態の解明に乗り出す。
霧舎学園シリーズの第一作目。00は「ラブラブ」と読むらしい。うへえ。もううんざりなんだけど。続けなきゃダメ?ライバルはズバリ『金田一少年の事件簿』。コミカルテイスト+アニメ絵キャラで、コミックの読み手から探偵モノファンを呼び込もうという戦略。富士見ミステリ文庫や、角川のスニーカー・ミステリ倶楽部の講談社版といった位置づけなのだろう。ちなみに本書は講談社ノベルズ10周年記念の「密室本」の一冊でもあり、そのせいなのか、ジャスト200ページとボリュームは抑えめ。
こういう前提の上で書かれている作品なので、ノリは終始明るいラブコメ路線を堅持。想定している読者を考えると正しい選択だろう。微妙に『ドッペルゲンガー宮』にリンクしているのはこれ単体で読むと意味不明で蛇足に見える。続巻への含みなのか悩むところだが、とりあえずは保留しておこう。最大の弱点はヒロインの萌え度がイマイチなことかな。ま、続きも読んでみよう。[2003/02] ⇒次巻
月曜日の水玉模様 [加納朋子] ★★★ 集英社 集英社文庫 (\495)
丸の内のとある企業に勤めるOL片桐陶子は、毎朝の通勤列車で必ず出会う男、萩広海とひょんなことから言葉を交わすようになる。それ以来、陶子の元へは奇妙な事件ばかりが持ち込まれることに……。間違えられた薬袋の謎。退職した女性社員の謎。届けられた大金の謎。日常から少しはみ出した不思議な出来事を二人が解き明かしていく。
小説すばるに1995年〜1998年にかけて単発で掲載されていた作品を1998年に単行本として刊行。本書はその3年後に発売された文庫版。加納朋子としては6作目の作品となる。7編からなる連作短編集。
例によって日常の謎に挑み続ける加納作品の主人公なのだが、今回の主人公は丸の内勤めのOL。学生が主人公だった『魔法飛行』や『ななつのこ』に比べると精神年齢もぐっとアップ。謎の対象となる物語世界もシビアな会社社会に目が向けられており、より身につまされる話になっている。陶子は様々な事件をに出会うことにより、コンプレックスとなっていた自らの生い立ちに正面から向き合う勇気を持つことが出来るようになる。この話が入っていることで短編群に一本筋が通って最後にきれいにまとまるようになっている。連作短編の名手であるこの作者ならではの仕掛けだろう。[2003/03]
マリア様がみてる [今野緒雪] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\457)
私立リリアン女学園は良家の子女が集う乙女の園。華族の令嬢のために創設されたこの学園では今時珍しい程の純粋培養の少女が育つのだと云う。高等部1年の福沢祐美は容姿も成績も家柄も平均点。平凡を絵に描いたような祐美が学園一のお嬢様、「紅薔薇のつぼみ」こと小笠原祥子さまから「姉妹宣言」をされてしまう。学園はにわかに騒然となるのだが……。
今をときめきまくっている「マリア様がみてる」シリーズの第1巻。気にはなっていたので古本で見つけたら買おうと思っていたんだけど、どこに行っても全然見つからない。すっかりブームに乗り遅れた感はあるが、ネットでの盛り上がりはスゴイし、同人界でもそれなりの勢力に育っているようだし、実際に書店に行くと全巻が平積みされてるしで、辛抱たまらずとうとう新本で購入してしまった。
リリアン女学園には独自の「姉妹(スール)」制度なるものが存在する。上級生が下級生を教え導くためのもので、姉となる上級生はこれはと思った下級生にロザリオを託し妹とする。そんなわけで学園内には無数の「姉妹」がいるわけだが、その頂点に君臨するのが山百合会と称される生徒会組織。役員の3名は紅薔薇、白薔薇、黄薔薇と呼ばれ学園内に絶大な影響力を持つ。
主人公の祐美を妹に選んだ小笠原祥子は「紅薔薇のつぼみ」と呼ばれており、簡単に言えばこれは紅薔薇である3年生の妹であることを意味している。でもって、「紅薔薇のつぼみ」に妹として指名された祐美は「紅薔薇のつぼみの妹」ということになる。薔薇さまに選ばれると云うことは後々の生徒会長になることを意味しているので、平凡な一生徒に過ぎなかった祐美がこの事態にどう対応していくのか、というのが今回のテーマね。
典型的な妹キャラにして巻き込まれ型の主人公が、超個性的な山百合会のメンバーに振り回されて物語ができあがっていくというのがこのシリーズの基本パターン。本作ではメインのカップルである祥子&祐美のなれそめを描いている。最初の巻だけあって、キャラクターがややぎごちないかな。白薔薇さまだけは別っぽいけど(笑)。個人的には紅薔薇さま萌えなので、今後に期待(何を?)したいところだ。[2003/02] ⇒次巻
帝都東京・隠された地下網の秘密 [秋庭俊] ★★★☆ 洋泉社 (\1,900)
国会議事堂の庭の藪には地下鉄の出入り口がある。銀座線と丸の内線が発着する赤坂見附駅は何故二重構造になっているのか。南北線の溜池山王駅は建造年代が新しいのに浅い階層にあるのは何故なのか。戦前からの地下鉄敷設にまつわる資料を読み解いた時、帝都東京の地下に眠る恐るべき秘密が明らかとなる。政府、都、営団地下鉄がひた隠しにするその真実とは。
作者はテレビ朝日の元記者で海外特派員としてよくニュースでは登場していたらしい。大麻所持がばれて退社。以後はフリーで執筆活動を行っている。
タイトルが素晴らしい。帯の「東京には秘密の地下網が張り巡らされている!」も実に扇情的。東京の地下には戦前の段階で相当距離の地下鉄道が敷設されており、現在の地下鉄はその一部を利用して建造されている。しかし未だ公開されない隠された地下遺構が、都内には数多く残されているのだという。ワクワクするなあ。
非常に文章が読み難いのが困りものながら、示された数々の「事実」は面白かった。戦前の遺構の一部が、首都高新宿線となり、大江戸線の一部となり、はたまた地下駐車場として再利用されていたりと、ホントかどうは別としても知的好奇心を著しく刺激された。地下施設ともなると、通常の手段では確認のしようがないだけに、妄想を逞しくする余地が多分に残されていて楽しい。
気になったのは本書の執筆姿勢。何でもかんでも「政府の陰謀が!」と調査の壁にぶつかるたびにヒステリックに煽り立てるのは正直いかがなものかと。自分自身を安っぽく、且つ、電波な人に見せてしまっているので逆効果。次回作があるのであれば、この点気を遣って欲しい。[2003/02] ⇒次巻
マリア様がみてる 黄薔薇革命 [今野緒雪] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\419)
祥子からロザリオを受け取り、めでたく紅薔薇のつぼみの妹となった祐巳。慌ただしい山百合会での日々が始まる。しかし息をつく間もなく難題が!学園の「理想の姉妹」に選べる程のベストカップル、黄薔薇のつぼみこと支倉令とその妹である島津由乃が姉妹関係を解消してしまったのだ。影響を受けて関係を解消する姉妹が続出し学園は大混乱に陥る。果たして二人に何があったのか。
『マリア様がみてる』。通称「マリみて」シリーズの第二弾。前巻で一通りキャラクター紹介は終わったってことなのだろう。二冊目からは主人公カップル以外にも焦点を当てて物語を作っていくスタイルを取るようだ。今回は黄薔薇ファミリー編。
何をやらせて人並み以上に出来てしまうんだけど、その分野でトップにはなれない。故にやりたいことが見つからず、常にアンニュイな空気を周囲にまとわりつかせている黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)、鳥居江利子。今年度のミスターリリアンにして剣道部のエース、ベリーショートな髪型が凛々しい黄薔薇のつぼみ(ロサ・フェティダ・アン・ブゥトン)、支倉令。心臓に爆弾を抱え、いつも周囲からは腫れ物のように扱われてきた黄薔薇のつぼみの妹(ロサ・フェティダ・アン・ブゥトン プティ・スール)、島津由乃。と、この三人が黄薔薇ファミリー。
シリーズ二作目なんだけど、読み手が馴染んでいないだけなのかもしれないが、どうもキャラの動きがぎごちなく感じた。祐未視点で話が進むのに慣れていたので、視点が時々切り替わるのに違和感を覚えたせいかもしれない。令と由乃の関係があまりに強すぎるので、黄薔薇さまの扱いがイマイチ控えめになってしまったのももったいない。彼女の謎の行動もあまりにバレバレなのでちと萎えた。ストーリーテリングの妙で魅せる作品ではないようなので、キャラが勝手に走り出してくるようにならないうちは厳しいな。だがしかし、ラストの病室でのシーンは重要な萌えポイント。とても効果的に使えていたので、これからに期待しよう。[2003/02] ⇒次巻
モンティニーの狼男爵 [佐藤亜紀] ★★★☆ 光文社 光文社文庫 (\476)
18世紀中頃のフランス。地方貴族、ラウール・ド・モンティニー男爵は叔父のつてで花嫁を迎えることになる。尼僧院出身の妻、ドニーズは器量は十人並ながら、思慮深く優しい慎ましやかな女だった。ささやかな新婚生活をスタートさせた二人。おだやかな日々は伊達男ルナルダン氏の登場でにわかに暗転する。嫉妬に狂った男爵の身には驚くべき変化が訪れる。
1995年に朝日新聞社より単行本として刊行されていた作品の文庫版。第3回の日本ファンタジーノベル大賞を『バルタザールの遍歴』で受賞。以後、寡作(10年で6冊)ながら質の高い文筆活動を続けてきた作者の四作目に当たる長編作品。順序が逆になってしまって五作目『1809』の方を先に読んでしまった。編集者が分類に悩んでしまったのか、少しでも売り上げを伸ばしたいと考えたのかは定かでないが、表紙にある歴史小説というくくり方は大間違い。裏表紙に書いてある通り、恋愛小説として捉えるのが正解だろう。
老境を迎えた主人公が語り部となり、かつての若き日の思い出を回想していく。初期の佐藤作品を読んだ時にはその難解さに戸惑った記憶があり、かなり構えて読み進めてみたのだが、意外にもそれは杞憂に終わった。硬さが無くなったというか、洗練されたというべきか、ストーリー云々以前に、この軽妙で洒脱な文章を読むことそのものが単純に楽しかった。この勢いで最新作『天使』へとつなげたい。[2003/03]
マリア様がみてる いばらの森 [今野緒雪] ★★★☆ 集英社 コバルト文庫 (\514)
二学期末。期末試験を前にして慌ただしい空気の漂うリリアン女学園。試験勉強に励む祐未の元へ衝撃的な噂が飛び込んできた。須加星という作者によって発表された自伝的な少女小説「いばらの森」はリリアン女学園を舞台としており、しかも主人公は白薔薇さまこと佐藤聖なのだという。それはタブーとされてきた聖の過去をモデルにした作品なのだろうか。またしても事件に巻き込まれていく祐未は意外な真相にたどり着く。
シリーズ三作目。今回は白薔薇ファミリーというか、白薔薇さま(ロサ・ギガンティア)、佐藤聖がメインのお話。濃厚な百合フェロモンに、禁断の恋に身を焦がした過去。ざっくばらんな性格と、下級生(っていうか祐未のみ)に抱きつくのが大好きなおやじキャラ的ノリ、それでいて深い包容力。まだ全作を読めていないので断言は出来ないと思うのだが、マリみて史上最強キャラは間違いなくこの佐藤聖だろう。
本書は二本立の構成となっており、前半は表題作の「いばらの森」。こちらはミステリ仕立て。祐未&吉乃&令の3人が聖の過去を追いながら謎の人物、須加星の正体を突き止めていくというお話。このエピソードでは由乃の本性が明らかにされており、無敵の内弁慶ぶりを縦横無尽に発揮。これが大成功で、物語が一気にうまく転がるようになっている。ボーイッシュな見かけに反して、内面は乙女チックな令が完全に由乃の尻に敷かれているってのもお約束ながらいい感じ。
後半の「白き花びら」は一年前の聖の悲恋を描いた外伝的な短編。おふざけ無し。潔いことにイラストも無しのシリアスストーリー。白薔薇さまへの愛が一気に高まることは必至なメロメロ物語に仕上がっている。サブキャラとして本編では出てこない先代の白薔薇さまや、紅薔薇のつぼみ時代の紅薔薇さま(ややこしい)が登場し、このシリーズに立体的な奥行きを持たせることに成功している。
本書を境として、それぞれのキャラクターが活き活きと自己主張し始め、「マリみて」のエンジンがフルに動き始めた感がある。ロサ・ギガンティアのキャラができあがったのも大きいかな。二作目までは正直、これほどまでに受けている理由がピンと来なかったのだが、ようやく判ってきた気がする。[2003/02] ⇒次巻

殺戮と収奪を繰り返し、いつしか国家に匹敵する力を持つに至った海賊ムガンドゥ一族。根拠地である海賊島は治外法権の賭博場として莫大な収益をあげていた。その海賊島を軍事大国ダイキ帝国の戦列艦が取り囲む。「この世でもっとも美しい死体」の殺人容疑者がこの島へ逃げ込んだというのだ。海賊の首領、ムガンドゥ三世は事態を打開すべく、驚くべき決断を下すのだが……。
『殺竜事件』『紫骸城事件』に続く講談社ノベルズのシリーズ第三弾。シリーズ名決まってるんだっけか>これ。とりあえず調停士シリーズとでも呼んでおこう。ミステリなんだかファンタジーなんだか、どっちに進むのか、それとも両方頑張るのか、やや迷走していた感がなくもなかった本シリーズだが、本書ではファンタジー方面に大きく針が振れたようだ。
ミステリ的な部分は飾りでしかなく、ムガンドゥ三世というキャラクターを強烈に印象付けることに今回は主眼を置いている。ラストの魔法紋章の発動シーンは格好良かったので、それなりに成功はしていたか。上遠野浩平のファンタジー世界に関してのネーミングセンスが、小恥ずかし過ぎてイマイチ素直にこの世界に嵌れないんだが、この話、どうやらまだまだ続くらしい。次回作『禁涙境事件』。今度は二年後かな。[2003/02] ⇒次巻
マリア様がみてる ロサ・カニーナ [今野緒雪] ★★★☆ 集英社 コバルト文庫 (\476)
三学期に入ったリリアン女学園。薔薇さまたちが館へ姿を現すことも稀になり、三年生の「卒業」を改めて実感する祐巳たち一年生。一月は生徒会役員選挙のシーズン。誰もが現在の薔薇のつぼみたちだけによる信任投票を確信していた中、ロサ・カニーナと呼ばれる謎の二年生が名乗りを上げる。ターゲットは次期白薔薇の座。一年生でありながら白薔薇の名を継がなくてはならない志摩子は思い悩む。
シリーズ四作目。表紙絵は志摩子とロサ・カニーナこと蟹名忍(この由来ひどすぎ)。中身読むまで紅薔薇さまだと思っていた自分が恥ずかしい。
薔薇さまの姉妹になると薔薇のつぼみになるのはいいとしても、生徒会役員に自動的になれちゃうのは、民主主義の世の中的にどうなのよと、密かにツッコミを入れていた読者は決して少ないと思うのだが、ちゃんと改選選挙があるわけね。権力の世襲はヨクナイので、形式的なものとはいえ安心した。
この世界では薔薇のつぼみ→生徒会役員の構図は規定コースらしいので、本来は役員選挙は形骸化した出来レースのようなものだと思うのだが、この年はそうじゃなかったというのが今回のお話。白薔薇さまを絡めると、いい話度がワンランクアップするなあ。今回もモテモテ絶好調で大人物ぶりを発揮。結局明かされずに終わった志摩子の秘密が気になって仕方がないのだが、後の楽しみにこれは取っておこう。[2003/02] ⇒次巻
マリア様がみてる ウァレンティーヌスの贈り物 前編・後編
[今野緒雪] ★★★☆ 集英社 コバルト文庫 (各\476)
二月に入ったリリアン女学園。バレンタインデーを前にして皆の気持ちは浮き足立ち気味。憧れの祥子さまに相応しいチョコレートを渡すべく奮闘する祐巳の姿を描いた「びっくりチョコレート」。そして念願の初デート?にこぎつけた二人を巡るドタバタを描いた「ファースト デート トライアングル」など、五つのエピソードを収録。
シリーズ五作目。表紙絵は前編が祥子と祐巳。後編が一年生三人組。後者の方は十代少女ならではの無敵キラキラオーラが出ていて秀逸。学園モノに付き物の行事の数々を着々とこなしていく「マリみて」。本作ではバレンタインデーがテーマ。女子校でもやっぱりあるのか。潔いまでに男っ気がないところが見事なところだ。
どんどんキャラクターが増えているこのシリーズなのだが、一応の主役である祐巳(&祥子)ばかりでなく、他姉妹のお話がしっかりフォローされているところがポイント高しだ。豊富な外伝を擁していることが「マリみて」の成功要因の一つと言ってもいいだろう。
特に推すのはラストの二編。「赤いカード」みたいに超脇役にスポットライトが当たるサイドストーリーは、地味キャラ好きにはたまらないものがあったし、「紅薔薇さま、人生最良の日」はまじめに頑張ってきた三年生が最後に報われた話萌え(長えよ)の自分としては著しくツボ直撃なエピソードだった。こうなると蓉子と祥子の馴れ初めも知りたいのだが、これって描かれているのだろうか。[2003/02] ⇒次巻
緑陰の雨 灼けた月 薬屋探偵妖綺談
[高里椎奈] ★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\840)
お馴染み深山木薬店の面々に新たな依頼がもたらされた。次から次へと超常現象に巻き込まれる女子高生車谷エリカにはやはりなにかが憑いているのか?居候の柚之助と共にリベザルはエリカをつれて東北の温泉地へと避難。秋と座木は事件を解決すべく、彼女の通う三科台高校へと向かう。そこではここ数年、不可解な行方不明事件が頻発していた。
薬屋探偵妖綺談シリーズの第五作目。前巻を読んでから一年も間隔が開いてしまったが続きが入手出来てしまったので久々に読んでみた。リベザルのへたれっぷりにも、座木の狙っているとしか思えない原型返りもいい加減慣れてきたぞ。ヒロイン?として読み手の感情移入を誘うには、エリカのキャラクターが乱暴過ぎて惜しい気もするのだが、真のヒロインは秋だから問題なしか。[2003/03]
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