2003年12月

2003年に読めたのは141冊昨年に比べるとやや回復。
「メフィスト」系っていうか「ファウスト」系にちと偏りすぎたかな。

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
沖縄
時間がゆったり流れる島
宮里千里 光文社 \700
行ってみたい。
★★★☆
クビシメロマンチスト
人間失格・零崎人識
西尾維新 講談社 \980
ええ話だ。
★★★★

逢魔が時

中里和人
中野純:文
ピエ・ブックス \2,400
旅に出たくなる。
★★★★

クビツリハイスクール
戯言遣いの弟子

西尾維新 講談社 \780
映像で見てみたい。
★★★☆
くつしたをかくせ 乙一
羽住都:絵
光文社 \1,200
で、いったいサンタは何を。
★★★☆

いざ言問はむ都鳥

澤木喬 東京創元社 \440
連作短編モノの嚆矢。
★★★

ヴァスラフ

高野史緒 中央公論社 \1,900
想い届かず。
★★★
マリア様がみてる
バラエティギフト
今野緒雪 集英社 \419
お気に入りはショコラとポートレート。
★★★☆

垂里冴子のお見合いと推理

山口雅也 講談社 \514
横須賀市民は嬉しい話。
★★★

サイコロジカル 上
兎吊木垓輔の戯言殺し

西尾維新 講談社 \840
一番好きなのは春日井春日さんだったりして。
★★★☆

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沖縄 時間がゆったり流れる島
[宮里千里] ★★★☆ 光文社 光文社新書 (\700)

日本最南端の県沖縄。琉球王朝、薩摩藩の圧政、明治政府による支配、沖縄戦、米軍支配、そして本土復帰。独自の歴史をたどったこの地では、本土では想像もつかない様々な慣習が残されている。巨大な亀甲墓。新聞を埋め尽くす個人の死亡広告。盛大な結婚披露宴。具体的なエピソードを紹介しながら沖縄の魅力を語り尽くす。

著者は1950年生まれのエッセイストにして、沖縄民族祭祀の録音記録者。光文社も新書出してたのか、知らなかった。2003年刊行。『バガージマヌパナス』@池上永一とか『Twelve Y.O.』@福井晴敏の影響で、なんとなく沖縄愛が高まりつつある中購入。

所変わればなんとやら、とは良く使う言葉だが、沖縄は凄すぎる。本土と比べて特に変わっている点を選りすぐって紹介しているから、珍しくて当たり前なのかも知れないけど、それにしてもビックリだ。特に祖霊に対しての信仰心の篤さとベクトルの違いは、本土に比べてかなり異質。恥ずかしながら沖縄は未踏の地。そろそろ行ってみるべきかな(金無いけどなー)。[2003/12]

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識
[西尾維新] 
★★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\980) [Amazon]

クビシメロマンチスト―人間失格・零崎人識

鴉の濡れ羽島での惨劇から現実世界へと復帰した戯言遣い「いーちゃん」。クラスメイトの葵井巫女子たちとの交流が始まり、平穏な学生生活が始まるかに見えた。しかし、京都市内を徘徊する謎の連続殺人犯の存在が束の間の安寧に陰を落とす。空前絶後の殺人鬼、零崎人識との出会いは彼をどこに導いていこうとするのだろうか。

シリーズ二作目。前作の段階で、既にその雰囲気は濃厚ではあったのだが、本作でハッキリとこの作家はミステリを書くつもりなんててんでないことが理解出来た。二番目の殺人?においての、主人公に関する描写はどう考えても反則技。いわゆるフェアじゃないって奴だ。ま、ミステリじゃなくて「新青春エンタ」なのだからいいのかな。

と、言いながらも本作の魅力はそんなことで全く損なわれない。頑ななまでの傍観者気質を徹底して終始貫こうとする主人公と、そんな不感症男に酬われることのない想いを健気に寄せるヒロイン。西尾維新はキャラの立て方や、萌え要素の盛り込み方が上手い。過剰なまでに書き込まれたヒロインのキャラクター造形。さんざ盛り上げて一気に落とすのは小説的には当たり前の手法でありながらも、それがしっかり効果を上げているのだから評価すべきだろう。ああ、この子死んじゃうんだろうなと思いながら読んでいてもこの展開は衝撃的だった。

一番目の殺人についての動機がちと弱いんじゃないか、っていうか、零崎人識は別に居なくても良かったんじゃない、などなど疵も多い作品ながらあえて★×4ってことで。イラストの入れ方も演出として見事に機能しているので好印象。確かにこのシリーズが売れるのは判るな。二作目の本作で、この作家の方向性が定まった感がある。

ちなみにX/Yの意味についてはこの説が有力(超ネタバレなので注意)。せつなさ度が更にアップしてよろしいのではないかと。でも、普通こんなの考えてもわかんねえだろ。[2003/12] ⇒続巻

ついでに……
『とらわれびと』@浦賀和宏 <<鬼畜なのはいーちゃんだけじゃない。

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逢魔が時 [中里和人/中野純:文] ★★★★ ピエ・ブックス (\2,400)

夕暮れ。それは昼と夜、光と闇、陽と陰の境界線。黄昏時の仄かな光が作りだし、ひとときだけ現出する異界。そこでは見慣れた光景が不気味に禍々しく見えたり、不思議と荘厳な雰囲気を醸し出したり、現実離れした幽玄さを漂わせたりもする。日本各地を訪れ、魔法の時間の一瞬を切り取った幻想的な写真集。

いつの間にか中里和人の新作が出ていた。少し前に六本木の青山ブックセンターで見かけて、その時は手持ちが無くて買い逃してしまい、あとでAmazonで買おうと思っていたら版元品切れ。困ったなと思っていた矢先に近所の書店で発見。この手の本は見かけたときに買っておかないとダメだな。

いつぞやの『小屋の肖像』も良かったが、この人の視点というか着眼点は面白い。通常の生活では何の気無しに過ごしてしまう黄昏時。日常の中に一瞬だけ存在する魔の時間帯を捉えようという発想がいい。人の目が見ていなくても風景はあるのだろうか(by池澤夏樹)という問いかけに答えを出してくれる一冊。おぼろな光の中で浮かび上がってくる夕暮れの一瞬に、聖なるものを見いだすか、魔を呼び込んでしまうかは、その時の人間の心持ち次第なんだろうね。[2003/12]

クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子
[西尾維新] 
★★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\780) [Amazon]

クビツリハイスクール―戯言遣いの弟子

人類最強の請負人、哀川潤の魔の手にハマリ、私立澄百合女学園への極秘潜入を命じられた「いーちゃん」。首吊高校の異名を持つこの学園から、ある女生徒を救出することが目的だ。無事に保護対象である紫木一姫に出会うことが出来たが、次から次へと現れる刺客が戯言遣いを追いつめる。学園の秘密とは?最強の暗殺者ジグザグとは何者なのか。

シリーズ三作目。ボリューム的には少しダウンして200頁弱。前作の半分程度だな。今回のヒロインはロリ系美少女の紫木一姫(ゆかりきいちひめ)。アルトリコーダー振り回している段階で激しくロリ度アップ(<そうなのか)。確実にクリティカルな萌えツボ突いてくる西尾維新。侮れない。

ミステリ的な流れからは完全に脱却して、西尾的なハチャメチャ学園アクションが展開する本作。いくらなんでもそんな奴、日本にいないだろ、ってなツッコミはもう野暮である。日本刀を振り回す<<策士>>萩原子荻。忍者スタイルの<<闇突>>西条玉藻。そして最強の糸遣い<<ジグザグ>>。この荒唐無稽な世界をここは素直に楽しんでおくのが勝ち組だ。

テーマ的には自分の居場所探し。戦い続け、屍体の山を築くことでしか、自らの存在を表現出来なかったジグザグ。その悲劇を相変わらず「僕は関係者じゃありません」的な態度で生暖かく見守る「いーちゃん」。この無関心振りが、ワカモノ層の共感を呼んでいる予感。深入りしなければ自分は傷つかないで済むわけだが、自分に火の粉が飛んできたときに戯言遣いはどう対応するのか、少しずつ彼の秘密が見えてきたところで、この先の展開に期待したい。[2003/12] ⇒続巻

くつしたをかくせ! [乙一/羽住都:絵] ★★★☆ 光文社 (\1,200)

今年もクリスマスがやってくる。しかし仕事から帰ってきたパパは「サンタがくるぞ!くつしたをかくせ!」と怯えた顔で僕に告げる。怯える親たちと、不思議がる子供たち。雪の降り積もる街で、ヤシの繁る南の島で、砂漠の国で、サンタの来訪を前にして一斉にくつしたが隠された。果たしてクリスマスに何が起こったのか。

乙一、なんと今度は絵本に挑戦。イラストは羽住都ってことなので、スニーカー文庫のコンビだな。人気の乙一の本が出せて、しかも掌編一本でこの価格設定が許されるのだから、出版社的にはウハウハなんじゃないだろうかこの企画。光文社としてはプランニングの勝利と言えるだろう。

羽住都描くところの、淡いタッチの癒し系イラストは、乙一(白)の和みワールドに違和感無く馴染んでいて、この組み合わせはやはり正解なのだなと思った。絵本であるだけに、通常の作品よりも絵の重要さは格段に増しているわけだが、あくまでも文章を主として立てながらも、絵そのものにも挿画の域を超えたメッセージ性が込められていて、ま、それなりに合格点かな、と。

しかしファン的にはあの終わり方でも乙一なんだからと許せるのだが、普通に絵本として本書を求めた読者(いるのかどうかわからんが)にとっては、未消化部分が多すぎるオチなのではなかろうか。[2003/12]

いざ言問はむ都鳥 [澤木喬] ★★★ 東京創元社 創元推理文庫 (\440)

分類学者、沢木敬が出会う不思議な事件の数々。どんな植物でもたちどころにその種別を言い当てることが出来る彼が、唯一見分けることが出来なかった謎の植物の正体は。無人駅で子供料金の切符を大量に買い続ける男の真意。平凡なボヤ騒ぎの背後に潜む暗澹たる真相。咲くはずの無いサザンカの秘密。四季折々の四つの謎に沢木が挑む。

1991年に単行本として刊行された作品の文庫版。連作短編モノとしてはかなり初期に出た部類だろう。植物についての蘊蓄が相当な分量を占めているので、てっきりそちらが本業の人なのかと思っていたがこの作者は法学部卒であるらしい。

植物ネタペダントリが、ややもすると過剰に思えるのと、沢木クンの視点がふらふらしているのが気持ち悪く、リーダビリティはあまり高いとは言えない。が、全編に漂う柔らかな雰囲気と、その割にはダークな結末は買い。この人、これ一作で以後書いていないようなのだが、どうなっちゃったんだろうね。[2003/12]

ヴァスラフ [高野史緒] ★★★ 中央公論社 (\1,900)

20世紀初頭。ロシア帝室マリインスキー劇場バレエに忽然と彗星の如く現れた天才ダンサー、ヴァスラフ。他の追随を許さない圧倒的な存在感は観客を魅了してやまなかった。しかし彼の正体は、ネットワーク上でだけ存在する、ロシア帝国の生み出したヴァーチャルダンサーだった。人々を狂わせるその魔力の秘密とは何なのか。

1998年作品。高野史緒としては四作目の作品。芝居の台本風の体裁を取っているのが特徴的。

女性作家に時折あるパターンだが、萌えの対象への愛が高まりすぎて作品を壊してしまうことがある。『架空の王国』にもその傾向はあったけど、憧れの対象に感情移入するあまり、読者が置き去りにされてしまっている。ヴァスラフというダンサーの価値をいくら作者が理解していたとしても、それを読み手に納得させるだけの努力をしていないのは拙いだろう。あとがきを読む限りにおいては、それも承知の上での事のようだが、期待していただけに残念。[2003/12]

マリア様がみてる バラエティギフト [今野緒雪] ★★★☆ 集英社 コバルト文庫 (\419)

先代のロサ・フェティダこと鳥居江利子からもたらされた贈り物に込められた意味は。降誕祭を巡る過去と現在、ふたつの出来事を描く「降誕祭の奇跡」。バレンタインデーの宝探しイベントに隠された姉妹の物語「ショコラとポートレート」。リリアン名物白ポンチョの正体は?「羊が一匹さく越えて」。卒業後久々に出会った江利子と聖は……「毒入りリンゴ」。四編のエピソードを収録した短編集。

マリみて十四作目。雑誌の「コバルト」に連載された三本に書き下ろしの「毒入りリンゴ」を追加。それぞれのエピソードは独立した作りになっているのだが、各編の間にプロムナード的にミニエピソードが挿入され、時系列的には前作『レディ、GO!』の直後の設定であることが判る。

マリみては意外にもメインキャラクターが出てこない脇エピソードが面白い。山百合会に入るような事もない、目立たない一般生徒のお話がなかなか切なげに書かれていて良い感じなのだ。本編が進行している裏で、普通の生徒たちの知られざる物語が展開されている……、作品世界の奥行きを広げる意味でもこれは上手いやり方だと思うな。さて、次はいよいよ妹選びが佳境に突入か。祐巳と由乃、先に妹を見つけるのは果たしてどっちだ。[2003/12] ⇒続巻

垂里冴子のお見合いと推理 [山口雅也] ★★★ 講談社 講談社文庫 (\514)

垂里家には畏るべき言い伝えがあった。祖先の悪行から、この家の女は結婚することが出来ないと云うのだ。長女の冴子は今年で33歳。美しくて聡明、それでいて控えめな彼女は何故か縁遠く、持ち込まれる縁談は信じられない形で破談に追い込まれていく。お見合いの席上で起こる数々の難事件を冴子は次々と解き明かしていく。

1996年に集英社より単行本として刊行され、後に講談社よりノベルズ化。2002年にようやく文庫化されたのが本書。続編には『続・垂里冴子のお見合いと推理』がある。山口雅也は1989年に『生ける屍の死』でデビュー。以降、年1〜2冊ペースで作品を発表しており、本作は9作目の作品となる。

自分的には初山口雅也となるわけだが、横須賀出身なんだなこの人。知らなかった。作品の舞台は観音市という架空の街なのだが、これがまんま横須賀。同郷人としては非常に作品に入りやすかった。垂里冴子(すいりさえこ)という主人公のネーミングからして、人を食った作りになっているのだが、本作は垂里家の人々を中心としたユーモアミステリの体裁を取っている。本流の探偵士系の作品とは違って、肩の力を抜いて楽しめるのではないかと想像。って、読んでないけど。何故か縁がなくてこの作家読めずにいたので、そろそろ読んでおこうかな。[2003/12]

サイコロジカル 上/兎吊木垓輔の戯言殺し
[西尾維新] 
★★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\840) [Amazon]

サイコロジカル〈上〉兎吊木垓輔の戯言殺し

感想は下巻のページにまとめてあります。

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