プリズム [貫井徳郎] ★★★ 東京創元社 創元推理文庫 (\640) [Amazon]
小学校の女性教師の死体が発見される。死亡していた彼女の傍らには、落下したアンティーク時計が。それは事故なのか、それとも他殺なのか。睡眠薬入りのチョコレートが発見されたことから他殺説が濃厚となるが一向に犯人像は明確にならない。教え子たち、同僚、かつての恋人、愛人関係の男、それぞれの立場から各人が思いを巡らせていくのだが……。
貫井徳郎11作目の作品。1999年に実業之日本社より単行本として刊行された作品の文庫版。被害者を巡る四人の関係者の視点から推理がなされ、一つの事件を多面的に考察していこうというスタイルの作品。全体は四章に分かれており、各章ごとでまったく違った真相が垣間見えてくるところがタイトルの所以だろう。
連作短編というわけではなく、最終的にただ一つの真相にたどり着くわけではない。この趣向を面白いと取れるか、決着が付かずに気持ち悪いと取るかは微妙なところだ。深く物を考えないタイプ(わたしみたいな)に取っては消化不良の感がどうしても残ってしまう作品。次々と繰り広げられていく、推理の連鎖が収束しないで拡散していくのは確かに新鮮と言えば新鮮。[2004/02]
楯経介には不思議な能力があった。夢の中で望んだ絵画の中へと入り込むことが出来るのだ。彫刻家、洲ノ木正吾のコラージュロマン『冬のスフィンクス』の世界へと彷徨いこんだ楯は奇妙な洋館を訪れることになる。そこは画家、団城謙三の屋敷だった。失踪した親友。不可解な連続殺人。全ては夢の中の出来事なのか、それとも現実?
飛鳥部勝則の五作目の作品。2001年刊行。
芸術家崩れのかなり屈折した主人公が、鬱々と活躍。陰のあるヒロイン。どことなく淫靡な雰囲気。オリジナル絵画+西欧絵画。飛鳥部作品ならではの特徴は健在で、メタミステリっぽくもあり、幻想小説のようなテイストを併せ持つ本作ではうまく馴染んでいるように思える。ミステリ要素取っ払って、そっちの系統に進むと、この人もっと面白くなるんじゃないだろうか。万人向きにはならないのできっと売れないだろうけど。[2004/02]
ナイトフォーク ブラックキャットII
[新井素子] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\533) [Amazon]
不器用なスリ、広瀬千秋。虫も殺せぬ殺し屋、黒木明拓。走れない泥棒、キャット。それぞれに致命的なハンディを背負った怪盗団ブラック・キャットの面々が次に狙う獲物は前代未聞の代物だった。超能力少年、南勝博の持つサイコキネシス(PK)を奪おうというのだ。しかも、全国放映番組がオンエアされている最中に!驚天動地の大作戦は成功するのか。そしてその背後に隠された真の狙いとは。
ブラックキャットシリーズ第二作。1985年作品。新井素子としては14作目の作品。18年前の作品。作者がこれを書いた年齢が24歳らしいので、自分がその年齢よりも遙かに年を取ってしまったことを考えると暗澹たる気持ちになるな。ガックシ。
再読。あまりに短すぎてプロローグにしかなっていなかった一作目と比べると、さすがにこちらはそれなりにまとまったエピソードになっている。登場人物の台詞や、主人公の語りの部分に古さを感じてしまうのは致し方ないにしても、まあ読めると思う。計画の適当さ加減も、山崎ひろふみが刑事やっているような世界なんだと思えば許せるし。[2004/02] ⇒続巻
宇宙のみなもとの滝 [山口泉] ★★☆ 新潮社 (\1,400) [Amazon] ※書影無し
惑星参(カラスキ)、北風共和国の町<<冬の森>>に巡回劇団がやってきた。地元出身の天才子役ベラーコの凱旋公演だ。しかし貧しいステーロは周囲からの迫害を受け学校を追われてしまう。ステーロの不在のまま、上演されるミュージカル『宇宙のみなもとの滝』だったが、その終幕を迎える部分で思わぬアクシデントが発生する。
第一回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作品。ちなみに大賞はあまりに有名な『後宮小説』@酒見賢一。ちょっと相手が悪かったね。1989年作品。長らく入手出来なかったのだがようやく読むことが出来た。
おとぎ話のようなエスエフ的設定で展開される宮沢賢治テイストの物語。戯曲が入っているからどことなく「ポラーノの広場」風。作中に充満する作者の思想があまりに前に出すぎていて辟易させられる。「俺の考え聞いて聞いて」じゃ、読んでいてあまりにシンドイ。もっと、ストーリーで楽しませて欲しかった。ラストの主人公の行動もいささか突然過ぎて説得力に欠けるのも残念。[2004/02]
キャスリング 前編・後編 ブラックキャットIII
[新井素子] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\400/\420) [Amazon:上巻/下巻]
怪盗ブラック・キャットの新たなるターゲットはサティ王国、ララベス王妃のネックレス"海の涙"。明拓の指導の下、厳しい訓練に耐える千秋は周囲の予想を遙かに超えた成長を遂げていく。宿縁浅からぬ様子のキャットと王妃。見えてきた最強の敵の存在。厳重警戒の中、遂に作戦は敢行された。三人を待ち受ける運命は。遂にキャットの秘密が明かされる。
ブラックキャットシリーズ第三作。1994年作品。この段階で前作からなんと9年。待たせすぎだってば。この段階で主人公の年齢を読者の方が上回っちゃってるし。まあ、世の中には続編書くのとうに諦めて、別の若手作家に書かせてる奴や、上巻だけ書いておいていつまで経っても下巻を書かない作家なんてのもいるわけだから、まだ良心的な方なのかもしれない。カバー絵だけ今風の人になっているのも致し方ないことではあるのだが、前作、前々作と並べると著しい違和感が。
IVが出たのでこれも再読。ライトノベルというよりは、一昔前のジュニア小説と呼んだ方がしっくりくるような、どこか懐かしい雰囲気が漂うお話。一言で書いちゃうとユーモアサスペンス。イラストのせいもあるかな。深く突っ込まずに素直に楽しむのが吉かと。
下巻の半分は別シリーズ『星へ行く船』の外伝「αだより」になっていて、すっかり存在を忘れてたオールドファンを喜ばせてくれる。おっそろしい程の多幸感に満ちあふれた、甘々な作品に仕上がっているので要注意(笑)。だが、シリーズ通して読むとエピローグ的にこの話がラストに追記されるのは十分アリかな。いい感じの余韻になっている。[2004/02] ⇒続巻
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