2004年7月

ライトノベルが多かったせいもあるけど珍しく14冊も読めた月。
一押しはやっぱり『アラビアの夜の種族』で。

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
空の境界 上 奈須きのこ 講談社 \1,100
とりあえず笠井潔は空気読め。
★★★
空の境界 下 \1,200

魔導物語
ぷよぷよ大魔王の降臨っ!

山本剛 角川書店 \500
たまにはこういうのも。
★★☆

魔導物語2
ぷよぷよ大明神の復活っ!

山本剛 角川書店 \500
いいかなってことで。
★★☆

魔導物語3
ぷよぷよ大司教の陰謀っ!

山本剛 角川書店 \500
読んでみたよ。
★★☆
Q&A 恩田陸 幻冬舎 \1700
新たな引き出しを発見。
★★★☆

アラビアの夜の種族

古川日出男 角川書店 \2700
アーダム様最高です。
★★★★

冷たい校舎の時は止まる 中

辻村深月 講談社 \800
ちょっと面白くなってきた。
★★★

機械仕掛けの蛇奇使い

上遠野浩平 メディア
ワークス
\610
もっとガリガリ尖って欲しい。
★★★
撓田村事件
iの遠近法的倒錯
小川勝己 新潮社 \1,900
ジュブナイルな横溝オマージュ作品。
★★★☆

太陽の簒奪者

野尻抱介 早川書房 \1,500
このワクワク感が溜まらない。
★★★☆

バラバの方を

飛鳥部勝則 徳間書店 \914
気怠くていい話。
★★★

FULL HOUSE3

栗本薫
岩間リュウ
若菜等+Ki
梅津裕一
同人誌 \-
なんとサイン入り本w
★★

凶星 マルガサーガ

栗本薫 同人誌 \1,619
あらゆる意味で凶星。
★★

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空の境界 上・下
[奈須きのこ] 
★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\1,100/\1,200) [Amazon] [Amazon]

空の境界 上 空の境界 下

両儀式は交通事故による二年の昏睡状態から目覚めたとき、"直死の魔眼"と呼ばれる特殊能力を身につけていた。ありとあらゆる存在を「殺す」ことが出来る式の力は、街に蠢く魑魅魍魎たちを呼び寄せていく。空を飛ぶ少女。闇夜に徘徊する連続殺人鬼。痛みを感じない女子高生。そして魔術師たち。式の存在は日常と非日常の境界線を揺らし続ける。

2001年に同人誌として発表された作品を加筆・訂正の上で講談社ノベルズ版として上梓したもの。2004年刊行。作者は1973年生まれ。ゲーム制作会社TYPE-MOONに所属。大ヒットしたゲームソフト『月姫』の作者としてその筋では超有名人。本書は発売されるなり20万部を突破。通常版とは別に発売された限定版が瞬時に完売したことでも一時期話題になった。

長い。長すぎるよ。蘊蓄込みでも半分で書けただろ、これ。さもなきゃ、章ごとに分冊にして巻数稼ぐとか。その方が儲かったような気もするのだが。リーダビリティももう少し考えてくれないと、今後を考えると厳しいだろう。簡単に書けることを、わざわざ難しく書いている。頻繁に切り替わる視点、時系列順になっていない章構成も読みにくさを促進している。もっとも、既にこれだけファンがついているから問題ないのか。

講談社のプロモーションの勝利は間違いの無いところだが、新伝綺は今後も売れるのだろうか。奈須ファンがどう考えても求めていないだろうタイプの解説をわざわざ笠井潔に書かせたのは、このジャンルをこれから売っていくぞという、講談社的な戦略の一環としての理論武装なのだと思うのだが、果たしてこれで次のタマが出てくるかね。この作家自身は本業ゲーム屋さんだから到底量産が効くとは思えないし、だいたい新伝綺が売れたわけではなくて、『月姫』を作った人の小説が売れただけのことだし。もともと講談社は男性向けライトノベルは弱いから作家のストックが無いだろうし。上遠野浩平みたいに電撃あたりから引っこ抜いてきた方が早いかもね。[2004/07]

魔導物語 ぷよぷよ大魔王の降臨っ!
[山本剛] 
★★☆ 角川書店 スニーカー文庫 (\500) [Amazon] ※書影無し

魔導学校の最上級生に進級したアルル。担任のルシファー先生から与えられた卒業課題は「シュテルン博士のところからあるアイテムを持ち帰ること」だった。お供のカーバンクル、悪友のルルーと共に、どこに居るのかもわからない博士の行方を求め、アルルの探索の旅が始まる。その行く手には幾多ものトラブルが待ち受けていた。

1994年刊行。あまりに有名なゲームタイトル『ぷよぷよ』。そのベースとなったソフト『魔導物語』のノベライズ作品。懐かし過ぎる。諸般の事情で読んでみたわけだが、世界観そのままに、ほのぼの&適当な物語展開がなんともそれっぽい。実際の戦闘シーンで『ぷよぷよ』をやるのはどう考えても不自然なのだが、作品世界の持つのほほんパワーがそれを許しているのがスゴイ。[2004/07] ⇒次巻

魔導物語2 ぷよぷよ大明神の復活っ!
[山本剛] 
★★☆ 角川書店 スニーカー文庫 (\500) [Amazon] ※書影無し

無事に魔導学校を卒業したアルルだったが、ある日恐るべき知らせが届く。なんと敬愛するルシファー先生が行方不明に!?遙かなる東方の「日出る国」で囚われの身になっているというのだ。お馴染みのカーバンクルに、シュテルン博士、サタンまでも引き連れて、アルルの東方遠征がスタート。恐怖のぷよぷよ大明神の復活は間近に迫っていた。

シリーズ二作目。濃厚な行き当たりばったり感のまま、日本とおぼしき「日出る国」へと乗り込んだアルルとその一行。到着した「日出る国」ではぷよまんが売っていて、元ゲーマーとしては激しく懐かしい気分に。あの頃はコンパイルも元気だったよなあ。よもや、この後数年で倒産するとは思っても居なかった。ノスタルジーに浸りながら、なんとなく読了。[2004/07] ⇒次巻

魔導物語3 ぷよぷよ大司教の陰謀っ!
[山本剛] 
★★☆ 角川書店 スニーカー文庫 (\500) [Amazon] ※書影無し

修行の日々を送っていたアルルに突然の使者が。「ぷよ類あわれみの令」に違反してしまったアルルは謎のぷよぷよ大司教の命令でなんと逮捕されてしまう。ルシファーとサタンはそれぞれの方法で救出に向かう。大司教によって、飛べない鳥に変身させられてしまった、城主アーサーに出会ったアルルは、果敢に脱走を試みるのだが……。

シリーズ三作目。『ぷよぷよ』みたいに、きっちりとしたメインストーリーが無い作品のノベライズは土台からしてムリがあるわけだが、無数にいる、ゲームキャラにきちんと出番を与えて、メーカーや制作者の監修を受け、なおかつファンを満足させなくてはいけないわけだから難しい。もっとも、その反面基本的な設定さえ守れば、書き手の自由に物語を膨らましていけるメリットがあるんだろうけど。ファン向けのグッズの一種としては、それなりの内容に出来上がってる、、かな。とりあえずこのシリーズは、本巻でいったん終了。次からは新シリーズに入る。[2004/07]

Q&A [恩田陸] ★★★☆ 幻冬舎 (\1700) [Amazon]

Q&A

2002年2月11日午後2時過ぎ。都内郊外の大型ショッピングセンターMにて大規模な死傷事故が発生する。死亡者69名。負傷者116名という大惨事に至ったその原因は未だ不明。事故なのか事件なのか。犯人は存在するのか。誰がいったいどうやって、何のために。現場に立ち会った人々の証言から事件の真相は浮かび上がるかに思えたのだが。

幻冬舎の文芸雑誌「星星峡」に2002年4月から2004年3月かけて掲載されていた作品を単行本化したもの。ベージュの地にタイトルと作者名のみと至ってシンプルな装丁で、一瞬どこかの高校の文芸部の作品集かと見間違えそうな程。ただし、本書には全体の2/3を占める程の4色刷りビニルコーティングの派手な帯がついており、こちらを見ることで作品の内容がイメージしやすくなる仕掛けになっている。

タイトルにもあるとおり、Q(質問)とA(回答)だけで構成された異色の作品。物語の中心となる大型商業施設での事故は既に起きてしまった後であり、このトラブルに巻き込まれた人々に対しての質問が延々となされていく。質問者も回答者も次々と変わっていき、主人公は存在しない。様々な証言が積み重ねられていくことで、事件のディテールが次第に明らかになっていく。

この話の怖さのポイントはいくつかある。パニック状態となった群衆心理、平凡に見える人間の心に潜む闇、そして「わからない」ということそのものの怖さだ。本作の面白さとしてはこの三番目の「わからない」恐怖を推したい。あえて主人公をたてず、明快な結末を提示しなかったことで、抜群にこの怖さが引き立っている。オチがイマイチと言われがちな恩田作品なのだけれども、本作に関してはこれで正解。また一つ新たな境地を見ることが出来た。[2004/07]

アラビアの夜の種族 [古川日出男] ★★★★ 角川書店 (\2700) [Amazon]

アラビアの夜の種族

聖遷暦1213年。カイロ。迫り来るナポレオン艦隊を前にして、エジプトの知事(ベイ)たちは決戦の準備に明け暮れていた。しかし知事の一人イスマーイールの側近アイユーブは禁断の秘術を用いてナポレオン軍を屠る妙策を進言する。世界に一冊しか無い災いの書。読む者を虜にして果てには狂気へと導く闇の物語とは。夜の種族が紡ぐ幻想のサーガが語られていく。

2001年刊行。ゲームボーイソフト『ウィザードリィ外伝2・古代皇帝の呪い』のノベライズ版として刊行された『砂の王』(ログアウト冒険文庫/未完)を下敷きに、全く別の物語として再構築し直したのが本書。第55回(2002年度)の日本推理作家協会賞長編部門受賞。このミステリーがすごい国内部門(2002年)で12位。ベストSF2002国内部門で4位。ミステリチャンネル国内ミステリー部門(2002年)第1位。等々、エンタメ系の作品としては方々で非常に高く評価された一冊。

リアルで攻めてきているナポレオン軍を、書物の力で追い払おうってのはいくらなんでも無理がある話で、素直に部下の献策を受け入れているイスマーイールはちょっとお前そこに座れよって、説教したくもなるくらいあり得ない。でもそんな些細なことはどうでもいいと思えるくらいに、この災いの書が魅力的なのだ。

夜の種族ズームルッドを語り部として、夜な夜な語られる幻想譚。それは原型がゲームのウィザードリィなので、元々ウィズ好きだった人間としてはたまらないものがあるわけだが、全く予備知識無しで読んでも十分楽しめる。三人の主人公の織りなす奇想天外な物語は、いざ頁を繰り始めたら容易には読み止めることが出来ない。テンポが良く、些か乱暴とも思えるような独特の語り口調が、実はこの小説ならではの玄妙なリズムを作り出していて、知らず知らずのうちに読み手は引き込まれていく。

実際のナポレオン侵攻と、語られる物語がもう少しシンクロしてくれれば面白かったのにというのが惜しいといえば惜しい部分。虚構の世界の圧倒的な吸引力を前にして、災いの書作成をもくろんだアイユーブは物語世界に飲み込まれていく。虚構に浸食されていく現実を仄めかしつつこの作品を幕を閉じているのだが、どうせそこまではやったのなら、虚実がひっくり返るくらいの大どんでん返しを見せて欲しかった。魔王アーダムに瞬殺されるナポレオン軍って絵になると思うのだが。それってやりすぎかな。[2004/07]

ついでに…… 
『隣り合わせの灰と青春』@ベニー松山  <<ファミコン版ウィズ1のノベライズ。
『風よ龍に届いているか』@ベニー松山  <<ファミコン版ウィズ2+3のノベライズ。

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冷たい校舎の時は止まる 中
[辻村深月] 
★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\800) [Amazon]

冷たい校舎の時は止まる 中

校舎に閉じこめられてしまった8人の高校生たち。8人のうちの誰か1人が秋の文化祭で自殺している。自殺者の想いが彼らを縛り付けるのか。自分の事を思い出して欲しいと願う「犯人」は彼らの心に揺さぶりをかける。片瀬充が、清水あやめが、そして藤本昭彦が奇怪な形で校舎内から姿を消していく。残された者たちの間に戦慄が駆け抜ける。

第31回のメフィスト賞受賞作品。上・中・下の3分冊で6月〜8月にかけて連続刊行されている。本編はその中編部分。が、わざわざ巻を分けている意義があまり感じられないのは残念。ラストの引きも弱い。長いので三等分してみましたぐらいの意味しか感じ取れない。あとは商業的な理由かな(ってあるのか?)。このクソ暑い季節に出てしまったのは不運だと思うけど。

これまで描かれなかった、キャラクターそれぞれの個人的事情が丁寧に書き込まれ、これで少しは面白くなってきたかな、というところ。もう少し若い時に読んでいれば、心に響く作品であったのかもしれない。半分の人間が消えて、これで残りは四人。普通に考えれば鷹野と深月が最後に残ると思うのだが、この二人意外に直接会話するシーンが少ないので、仲がいいのかどうかよくわからない。一向に現れないサカキクンの存在も気になる。オチがまるで予想がつかないのでこの点はどう片を付けるのか楽しみだ。[2004/07] ⇒次巻

機械仕掛けの蛇奇使い
[上遠野浩平]★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\610) [Amazon] ※書影無し

若くして皇帝となったローティフェルドは鬱屈した日々を過ごしていた。封印されていた闘争と破壊の化身ルルド・バイパーの復活に手を貸してしまった時、彼の平穏な生活は終焉を迎えることになる。陰謀による暗殺者の手をからくも逃れてたローティフェルドは、奪われた皇位を取り戻すべく立ち上がる。しかし復活した超兵器はルルドだけでは無かった……。

上遠野浩平23作目の作品。電撃から出ているがブギーポップ系のシリーズとは異なる、が、全くリンクしていないわけでも無さそう。緩やかに他シリーズとリンクしているのが上遠野作品の特徴と言えば特徴。本作は、高度文明の崩壊後に成立した魔法文明という建前で描かれるファンタジー作品。ルルド・バイパーが男?でガッカリした人(推定10万以上)。これはイラストに騙されたなんとかさんの部類に入るのかもしれない。紛らわしく包帯巻いてるんじゃねえよ。

って、怒りはこの辺で鎮めておいて、本編の感想をば。成り行きから皇帝になってみたものの、全ては人任せでお飾りの自分。そんなローティフェルドがルルドとの出会いをきっかけとして自らの存在意義を見いだしつつ、人間的成長を遂げていく。わりかし普通といえば普通過ぎるタイプのお話。この作家にしては、尖っていないと言うか、痛さが少なくて物足りない。凡作。長年の読者としては、他はもういいからともかくブギーを終わらせてくれってところだな。[2004/07]

撓田村事件 iの遠近法的倒錯 [小川勝己] ★★★☆ 新潮社 (\1,900) [Amazon]

撓田村事件 iの遠近法的倒錯

中学三年の春。阿久津智明の平穏な日々は突如として終わりを迎えた。東京からの転校生桑島佳史の無惨な死。その死体は村の伝承を見立てたかのように、下半身を噛みちぎられた姿で発見される。過疎の村に突如として巻き起こった猟奇殺人事件。そして新たな犠牲者が。事件の淵源は30年前にこの村で起きたある出来事にあるようなのだが……。

2002年刊行。『葬列』でデビューした小川勝己の五作目の作品。撓田村は「しおなだむら」と読む。岡山県の寒村を舞台とし、古来より続く旧弊やら言い伝えと、現代的な風俗とがバランス良く配合された佳品。ヨコミゾ的なおどろおどろしさが、今の時代でもアレンジ次第では違和感なく使い物になることを見せてくれた。

『葬列』を読んだときにも感じたのだが、読ませる力はあるのに妙に視点がばらついて落ち着かないのは本作でも改善されておらず残念。過去の事件を複数絡めてくる構成は刑事役として、主人公の祖父と、藤枝刑事の二人を登場させてしまったことで、話が膨らみすぎてしまい、広げた風呂敷を畳むのに苦慮しているように見えた。どうせなら智明視点に絞って書いてみても良かったかな。少年の日の終わりを描いた作品としては、なかなかの出来だけに勿体ない。[2004/07]

太陽の簒奪者 [野尻抱介] ★★★☆ 早川書房 Jコレクション (\1,500) [Amazon]

太陽の簒奪者

西暦2006年。太陽系第一惑星水星に異変が生じた。そこで発見された謎の建造物は次々と資材を射出。遂には太陽軌道を覆う直径8,000万キロもの巨大なリングを形成するに至った。日照量が激減した地球では天変地異が発生し人類は破滅の危機に陥る。事態を打開すべく、原子力宇宙戦艦ファランクスが就航する。乗員となった白石亜紀が水星で見たものとは。

2002年刊行。1999年〜2000年にかけて「SFマガジン」に掲載された短編作品「太陽の簒奪者」「蒼白の黒体輻射」「失われた思索」をリライトした上で長編作品に改稿したもの。2003年星雲賞・日本長編部門受賞。またベストSF2002の国内部門で第1位にランクインしている。

ライトノベル畑での作品発表が多かった野尻抱介が、腰を据えてハードエスエフをとことん追求してみましたってのが本作。元々『ロケットガール』シリーズにしても『ふわふわの泉』にしてもエスエフ的ガジェットはたっぷり内包されていただけに、ファンとしては嬉しい試みだろう。魅力的な謎の提示とセンスオブワンダー且つ科学的な解法。全編に溢れる宇宙への憧憬。各方面から高い評価を受けているのも納得。読み手に与える高揚感はなかなか得難いものがある。[2004/07]

バラバの方を [飛鳥部勝則] ★★★ 徳間書店 徳間ノベルズ (\914) [Amazon]

バラバの方を

高名な画家山田明の私設美術館開館を祝して開催されたパーティ。集められた人々は山田に対して様々な悪意を持つ者たちだった。開館のその日、展示室は惨劇の場と化していた。一人は腸を引き出されて殺され、また一人は矢を突き刺されて、そしてまた一人は歯を抜き取られて……。凄惨な大量殺人にはいったい何の目的があったのか。

飛鳥部勝則7作目の長編作品。2002年刊行。いつもながら退廃感漂いまくりの飛鳥部作品である。人間失格寸前のエキセントリックな登場人物たち。性的モラルが崩壊してる女性陣。微妙に負け組陣営の主人公。ちょっと他に真似が出来ない境地に達してしまっている。正直売れ筋にはならないと思うんだけど自分としては好みの作家。

ちなみにバラバというのは聖書に出てくる人物で当時の極悪人。処刑されるところを恩赦で命拾いをする。どちらの命を助けるかと問われた民衆は「バラバの方を」と口々に叫んで、イエスの死を望んだとされる。

新聞記者の主人公が事件の謎を追いかけていくのだが終盤で別に探偵役が登場。悪いキャラクターでは無いと思うけど、これはちょっと唐突。この人物の個性が強すぎて作品のトーンが変わってしまっているくらい。警察は一体何やってたんだよという疑念もあって、どうして犯人が放置されていたのかが謎。雰囲気重視でもいいけどね。[2004/07]

FULL HOUSE3 [栗本薫/岩間リュウ/若菜等+Ki/梅津裕一]  ★★ 同人誌 (\-)

マルガで病気療養中のアルド・ナリスを訪問した魔導師宰相ヴァレリウス。しかしその相貌には色濃い焦燥感が滲み出ていた。深夜の訪問の目的とは。二人の関係に大きな変化が訪れる一夜の出来事を描いた「凶星」。暗黒オイヤ神の力を得たリンダによって、囚われ人となったアムネリスはそこで陰惨な陵辱を受けることに「アムネリアの蜜」他、四編を収録。

1996年発行の同人誌。その筋には有名な悪書でグインサーガ凋落の転回点とも言える一冊。これまで縁が無くて読むことが出来なかったのだが、諸般の事情で強制貸し出しされてしまったので読んでみた。

問題の「凶星」はソフトバージョンなので、意外にもそれなりに読める。知らずに読んだら何が起こったのか判らないくらい描写を控えているので、なんでノーマルのヴァレリウスがナリスを襲わなきゃならないのかという、大前提さえスルー出来ればなんとかなる(それが無理なんだけどな)。全四編のうち辛うじて読む必要があるのはそれくらい。何分同人誌なので作家が好きなように書いているわけで、ついていける読者だけが読めばいい。なのでツッコミはこの程度で。[2004/07]

凶星 マルガサーガ [栗本薫] ★★ 同人誌 (\1,619)

マルガで病気療養中のアルド・ナリスを訪問した魔導師宰相ヴァレリウス。しかしその相貌には色濃い焦燥感が滲み出ていた。深夜の訪問の目的とは。二人の関係に大きな変化が訪れる一夜の出来事を描いた「凶星」。運命の夜を越えて結びついた二人のその後を描いた「マルガ/夜明け前」「ふたり」他、五編を収録。

こちらも同人誌。2000年刊行。『FULL HOUSE3』に収録されていた「凶星」がパワーアップして再登場。あれでやめておけばいいものを、信者にそそのかされて書く気になってしまったらしい。直接的な性描写を出来るだけ避けていた旧版に比べてると、生々しくも品の無い描写が頻出し、非信者系読者を大いに萎えさせてくれる。

「マルガ/夜明け前」「ふたり」は"強姦"⇒"真実の愛"に目覚めたらしい、ナリナリとヴァレリウスの相互賛美がだらだらと続く脱力エピソード。「恋知らず-カイ-」「楽士の恋」は儚げなナリナリに人生を狂わされてしまった下々の皆さんの悲劇を描く短編。こっちの方がまだマシだったかな。メインキャラで無い分、どういじっても抵抗が少ない。

刊行タイミング的には正伝の72巻73巻の頃かな。かねてから、ちょっとヤバイんじゃないの、ってな位やおい化&内容の空疎化が進行していた本編が、本格的にどうしようもなくダメになっていった時期。自分の感想読んでいてもこの頃からアンチに変わってる。ダメなのは同人誌だけで止めておいてくれれば良かったんだけど、栗本薫は老醜という言葉が今最も相応しい作家だろう。[2004/07]

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