2004年9月

なんとはなしにライトノベル強化月間になってしまった気が……。
いちどこっち方面に傾くとなかなか元に戻らないのであった。

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
海を見る人 小林泰三 早川書房 \1,700
リリカルハードエスエフ。
★★★☆

きみとぼくの壊れた世界

西尾維新 講談社 \880
いい感じに壊れてる。
★★★☆

ドールの子
グインサーガ95

栗本薫 早川書房 \540
ドリアンで名前が固定しそう。
★★☆

上司は思いつきでものを言う

橋本治 集英社 \660
終盤の展開がスゴイぞ。
★★★☆
超☆魔導物語
うぇるかむ・とぅ・
ぷよぷよダンジョン
山本剛 角川書店 \500
山本魔導はこれでおしまい。
★★★

超☆魔導物語2
でぃてくしょん・あっと・
ぷよぷよダンジョン

山本剛 角川書店 \520 ★★★

超☆魔導物語3
ばとる・おぶ・
ぷよぷよダンジョン

山本剛 角川書店 \476 ★★★

Φは壊れたね

森博嗣 講談社 \840
うわ。ヒドイなこれは。
★★☆

ビートのディシプリン SIDE3

上遠野浩平 メディア
ワークス
\570
そろそろ終わりが。
★★★
涼宮ハルヒの憂鬱 谷川流 角川書店 \514
謎。
★★★

涼宮ハルヒの溜息

谷川流 角川書店 \514
なんなんだろうこの話。
★★★

涼宮ハルヒの退屈

谷川流 角川書店 \514
文字通り退屈な話。
★★★

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海を見る人 [小林泰三] ★★★☆ 早川書房 Jコレクション (\1,700) [Amazon]

海を見る人

少年の日に出会った想い人を待ち続ける老人の姿を描く表題作。長距離宇宙船内に構築された仮想空間で起きた怪事件「キャッシュ」。人格を持つ宇宙探査機の彷徨を描いた「母と子と渦を旋る冒険」。量子テレポート技術により飛躍的発展を遂げた未来の人類。そんな宇宙の片隅で起きたとある事件の顛末を描いた「門」他、計七編を収録した短編集。

1997年〜2001年にかけて「SFマガジン」誌に掲載されていた五編に、徳間デュアル文庫『少女の空間』収録の「独裁者の掟」、そして書き下ろしの「キャッシュ」を加えた短編作品集。2002年刊行。作者の小林泰三は1995年に第二回日本ホラー小説短編賞を受賞した『玩具修理者』でデビュー。表題作の「海を見る人」は1998年のSFマガジン読者賞を受賞している。また本書はベストSF2002で国内部門の第3位にランクインしている。

小林泰三を読むのは久しぶり。ひたすら救いのない暗黒ホラーな作風の話しか読んでいなかったから、これらのエスエフ作品は非常に新鮮に感じた。こんないい話も書ける人だったんだな。精緻な科学考証により構築されたセンスオブワンダーな世界と、リリカルなストーリーのアンバランスさが良い。最初は伏せられている世界の秘密が、次第に明らかになっていくのはなんとも言えない快感。[2004/09]

きみとぼくの壊れた世界
[西尾維新] ★★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\880) [Amazon]

きみとぼくの壊れた世界

櫃内様刻と夜月の兄妹は順調な勢いで許されざる近親相姦関係に突入中。しかし夜月にちょっかいを出してきた数沢六人が殺害されたことで、その周囲は俄に慌ただしくなっていく。閉鎖された環境下で数沢は誰に殺されたのか。保健室の引き籠もり女生徒、病院坂黒猫と共に事件の解明に乗り出した様刻だったが、事態は意外な展開に……。

戯言シリーズでもなく、JDCトリビュートでもないってことでは西尾維新初の単発作品ってことか。全くの新作を読んでみると、ネーミングセンスのありえなさ加減が、あまりにも衝撃的だ。戯言シリーズではこの辺の感覚が我ながら麻痺してったっぽい。櫃内様刻(ひしうちさまとき)、櫃内夜月(ひしうちよるつき)、迎槻箱彦(むかえづきはこひこ)、数沢六人(かずさわろくにん)ってところまでは、まだ我慢するとしても、病院坂黒猫(びょういんざかくろねこ)って名前として、さすがにそりゃないだろ。こんなところに引っかかるのは、やっぱり読み手としての感性が高齢化しちゃってるってことなんだろうか。

ネーミングセンスはさておき、話そのものは悪くない。西尾作品なのでミステリとしての外観は装ってはいるけど、それはあくまでも重要なものではない。近親相姦。学校内での殺人。黒猫の持つ秘密。閉塞的な八方塞がりの状況下で主人公が下した結論にはなんとも痛々しく慄然とさせられる。西尾作品の主人公に共通したこの、諦めてるわけでも、戦ってないわけでも無いんだけど、なんでそっちに行っちゃうのかな的な思考のベクトルが面白い。[2004/09] ⇒次巻

ドールの子 グインサーガ95 [栗本薫] ★★☆ 早川書房 早川文庫 (\540) [Amazon]

ドールの子 グインサーガ95

豹頭王グインとともに魔人アモンは去り、ようやくにして内乱が終結したパロ。しかしあらたななやみの種、アル=ディーン王子の処遇をめぐってリンダとヴァレリウスは頭をかかえることになる。一方、王都イシュタールへの帰還をはたしたイシュトヴァーンは、いまは亡き妻アムネリスがのこした一人息子ドリアンとの対面をむかえることになる。

95巻。どうやら年内の100巻到達は無理っぽい。来年ドカーンと一大キャンペーンやるんだろうけど、得意満面な作者の姿を瞬間想像するだけで気が滅入ってくるな。100巻で完結させるつもりはとうに無いようなので、95巻に至っても物語的な大詰め感は全くなし。

今回はパロ内乱戦後処理編。及び、更にダメダメになっていくイシュトヴァーンとゴーラの皆さんの描写に終始。マリウス、オクタヴィアの夫婦の萎える展開だとか、更に脱力を誘うシルヴィアの不貞描写だとか、時の経過とは容赦の無いものだと痛感させられる。十数年後ってならともかく、たかだか数年しか経ってないのにな。

一方で、あれだけ、ホヒィなイロモノキャラに貶められていたアルミナちゃんは、無理矢理更正させられて常人の域にまで戻ってきているらしい。この強引な力業を見ると、まだまだレムスがパロ中興の祖になる目も無い話ではないな。しかしパロ宮廷がスカスカ。ちょっと殺しすぎだったな。まともなキャラクターがほとんど残っていない。[2004/09] ⇒次巻

上司は思いつきでものを言う
[橋本治] ★★★☆ 集英社 集英社新書 (\660) [Amazon]

上司は思いつきでものを言う

現場にいるあなたが実情に即して提案した画期的なアイディア。それが上司の思いつきによってなんだかわけのわからないものに変容してしまったことは無いだろうか。どうして上司は思いつきでものを言うのか、歴史的な背景と照らし合わせながらその構造的な問題点を洗い出していく。日本人の基本的な思考パターンはどうして形成されたのか。その秘密に迫る。

2004年刊行。タイトル付けが成功しているせいもあってか、かなり売れている様子。うちの職場でも既に数人読んでいた。橋本治っていまこんな本書いてるんだな。『桃尻娘』の頃しか知らない人間にしてみるとこれはかなり意外。文学者にして、現代思想家ってところか。

言いたいことは判るんだけど、言い回しとにかくバカ丁寧でやたらにまわりくどい。一足飛びに結論に飛びつきたがるのが良くないのは判るけど、さすがにこれは読んでいて苛々した。出来るだけ平易に判りやすく書こうとする姿勢はいいと思うけど、いささかやりすぎなのではないかと。

上位役職者が思いつきを語って現場をダメにしてしまう理由。それは元を辿れば儒教伝来にあって、更に遡ると天皇制の存在にまでぶち当たってしまうという展開は、なかなかにスリリングで面白かったが、タイトルに惹かれて購入しであろう、日々上司の思いつきに苦しまされている人間にしてみれば「だから何」と突っ込みたくなる論理の帰結かな。ビジネス書だと思って読んじゃだめ。これは橋本治の日本人論だ。[2004/09]

超☆魔導物語 うぇるかむ・とぅ・ぷよぷよダンジョン [山本剛] ★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\500) [Amazon]
超☆魔導物語2 でぃてくしょん・あっと・ぷよぷよダンジョン [山本剛] ★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\520) [Amazon]
超☆魔導物語3 ばとる・おぶ・ぷよぷよダンジョン [山本剛] ★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\476) [Amazon]

いずことも知れぬ辺境の地に突如として出現した巨大テーマパーク「わくわくぷよぷよらんど」。幾多もの迷宮をくぐり抜けた勇者には、"すっごい魔法のアイテム"が与えられると聞いて、多くの冒険者たちが群がるように集まってきた。ご多分に漏れず、この地へとやってきたアルル、ルルー、シェゾの三人は、そこでサタンの仕掛けたとんでもないトラブルに巻き込まれていく。

1999年〜2000年にかけて刊行されている。前巻の『新魔導物語3』が1997年だから少し間があいている。シリーズとしてはこれが第三弾。今回はセガサターンソフト『わくわくぷよぷよダンジョン』をベースとしている。ゲームは未プレイながら、話を読んでいる限りでは『トルネコ〜』『シレン〜』のようなダンジョン自動生成型のローグ系RPGなんじゃないかと思う。

今回の三冊は話が連続しているのでまとめて紹介(手抜き)。過去の2シリーズと比べて、もっともゲームノベライズ色が強い作品。入るたびに構造が変わるダンジョン、っていう舞台環境が特殊なせいか、状況だとかシステムの説明をしていくだけでそこそこページが稼げてしまう。あまり内容は濃くないのだが、それでも三冊分の長さなってしまったのはそのせいだろう。

というわけで、山本剛の手による魔導小説はこれで終了。版元を変えて、執筆者も変えて、まだしばらく魔導物語のノベライズは続くようだ。そちらも入手済みなので、いずれは感想を掲載したい。[2004/09]

Φは壊れたね [森博嗣] ★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\840) [Amazon]

Φは壊れたね

密閉された部屋の中でその男は死んでいた。しかも宙づり状態で。そしてその一部始終はビデオによる記録が残されていた。死体の第一発見者となってしまった山吹早月は、事件に巻き込まれ、成り行きから男の死の謎について考察を巡らせていくことになる。被害者は何故、どのようにして、誰によって殺害されたのか。そしてその動機は?

S&M(犀川&萌絵)シリーズ、V(紅子)シリーズに続く、講談社ノベルズでの森博嗣の新シリーズ。かつてのヒロインは萌絵は博士課程の二年生として登場。が、彼女は謎解きの一線からは退き、実際に物語を動かしていく牽引役は、山吹早月君とその周囲の面々が担当している。犀川センセの劣化コピーみたいな奴がいたり、紫子さんと練無(Vシリーズ)を足して二で割ったようなキャラが出てきたりと、新キャラの新鮮度は限りなくイマイチ。

だいたいにして、ノベルズで出ているのに段組になってないってのは、どういうことなのかと声を大にして問いたい。『四季』シリーズだけの例外的措置かと思っていたけど、このシリーズこれからずっと段組無しなのか?だったらページ数減らして、せめて値段下げるべきなのでは?いくら人気作家とはいえ、これでは読者の支持を失っていくと思う。

それでも、内容がそれなりに仕上がっていれば文句も出ないわけだが、この巻はその点でも期待を裏切ってくれた。あまりに使い古されたありがちな密室トリックの解法には、瞬時自分の目を疑ってしまったくらい。新シリーズの一巻目からしてこのレベルの低さは拙くないか。誰か森博嗣を止める奴は居なかったのか。あと一冊読んで、ダメだったら新本ではもう買わない。[2004/09] ⇒次巻

ビートのディシプリン SIDE3
[上遠野浩平] 
★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\570) [Amazon]

ビートのディシプリン SIDE3

追撃者バーゲン・ワーゲンの襲撃を退けたビートたちだったが、安息の日々は長くは続かなかった。同行するラウンダバウトとジィド、二人の目的は何なのか。新たなる刺客モータル・ジム。その異様な能力は彼らを圧倒する。数々のピンチを切り抜けていくビートだったが、その行く手に最強の男フォルティッシモが立ちはだかる。

「電撃hp」掲載作品を文庫化したもの。ブギーポップの裏番組的な物語。これで三冊目。ほとんどのキャラクターがブギーポップシリーズとクロスオーバーしているので、両方読んでいないと間違いなく訳が分からない。SIDE2の時にも書いているのだが、久しぶりの奴らが多すぎて、誰が誰だか全然関係が思い出せない。

物語的には終わりの始まりがようやく見えてきたくらい。あと一冊か二冊で終わりそうなペースだ。雑誌連載作品ってこともあるんだろうけど、一冊の本として見た場合にはなんともまとまりに書けるというか、メリハリが無くて盛り上がらないのが難点。上遠野浩平には長編は向いてないよう気もする。[2004/09] ⇒次巻

涼宮ハルヒの憂鬱 [谷川流] ★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\514) [Amazon]

涼宮ハルヒの憂鬱

平凡な高校生活を送るはずだった主人公の目の前に現れた、天上天下唯我独尊女涼宮ハルヒ。恵まれた容姿を持ちながら、その口から飛び出す毒舌は周囲を瞬時に凍り付かせる。ただの人間には興味がない。ただし宇宙人、未来人、超能力者であればその限りにあらず。入学早々飛ばしまくるハルヒの強烈なパワーに、いつしか巻き込まれていくのだが……。

2003年刊行。第8回スニーカー大賞の大賞受賞作品。スニーカー大賞は1995年から始まっているがなかなか大賞の出ない賞で、これまでに大賞を取ったのは吉田直安井健太郎の二人だけ。かれこれ五年も受賞者が出なかったので、そもそもスニーカー大賞は金賞が最上位なのではと誤認していた自分。久々の大賞該当者出現に、昨年はネット各地でも話題になっていた記憶がある。

というわけで、期待して臨んだ本作だったのだが、なんとも名状しがたい味わいを持つ怪作だった。電波出てませんかお嬢さんとツッコミたくもなる、アイタタちゃんのヒロインに、これと言って取り柄の無い平凡な(でも実は重要な役割が)主人公、お色気&萌え担当のほんわか系未来少女に、メガネ系不思議宇宙少女、意味深な二枚目超能力者クンと、役割分担は明確。なにせ未来人に宇宙人に超能力者まで揃っているんだから、いくらでも派手なドタバタ劇が作れる筈なのにそうはならない。

非日常への強い憧憬を持ちながら誰よりも現実に縛り付けられているハルヒ。さまざまな怪異は紙一重の差で彼女をすり抜けていく。本人の秘めている恐るべき力に反比例して淡々と進行していく物語。この辺がなんとも違和感でもあり、気味が悪くて落ち着かない。ハルヒの持つ力の得体の知れ無さは、本人が意図しないところで顕現するだけに、無邪気なまでに冷酷で容赦がない。読み終えて残るのは、消化不良な後味の悪さ。面白いんだか、面白くないんだか、自分でもうまく説明出来ない奇妙な感覚なのだった。[2004/09] ⇒次巻

涼宮ハルヒの溜息 [谷川流] ★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\514) [Amazon]

涼宮ハルヒの溜息

知らず知らずのうちに、宇宙人、未来人、超能力者をメンバーに加えていたSOS団。ハルヒの次なる野望は文化祭だ。みくるをヒロインに据えた、今年最大の話題作「朝比奈ミクルの冒険!?」がクランクインする。行き当たりばったりで、衝動的な映画撮影を続けるハルヒ。彼女の潜在意識は、世にも怖ろしい現象を引き出してしまう。

2003年刊行。シリーズ二作目。前作で感じた得たいの知れない不安感というか、どこか騙されてるんじゃないかという据わりの悪さは今回も健在で、お気楽ノリで進む映画撮影ストーリーが、いつの間にかホラーな話に見えてくる。深読みのしすぎで、単なるまったり系萌え小説なのではという気もしないでもないので、もう何冊か読んでみてから判断したい。ホントに変な話だと思う。[2004/09] ⇒次巻

涼宮ハルヒの退屈 [谷川流] ★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\514) [Amazon]

涼宮ハルヒの退屈

「次は野球大会に出るわよ!」ハルヒの我が儘から結成された草野球チームの活躍を描く表題作に、七夕をめぐる、ハルヒとキョンの意外な接点を描く「笹の葉ラプソディ」、突然の失踪者を追い求める「ミステリックサイン」、絶海の孤島で起きた密室殺人の謎。初の本格ミステリ?「孤島症候群」。四編を収録した短編集。

2004年刊行。「スニーカー」誌に掲載された三編に書き下ろしとして「孤島症候群」を加えた初の短編集。短くなった分、毒が薄まったというか、普通の萌え小説としての側面が強く出てきている。各キャラの掘り下げをしながら、本筋からこぼれた話を補足。このシリーズの持つ、なんだかよくわからない怖さという、あるんだか無いんだか判らないものにひっかかっている読者としては、物足りなさを感じる。[2004/09]

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