六枚のとんかつ [蘇部健一] ★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\880) [Amazon]

ふとした聞き違いから迷走しはじめる児童誘拐事件「音の気がかり」。前代未聞のダイイングメッセージ「パンは知っていた」。盗難された至宝、人魚姫の雫はいずこに?意外な場所にその真相は隠れていた「桂男爵の舞踏会」。世にも無様なオチを迎える鉄道ミステリ「しおかぜ17号四十九分の壁」他、15編もバカミスを収録。
第三回のメフィスト賞受賞作品。1997年刊行。『すべてがFになる』 [Amazon] 『コズミック』 [Amazon] と続いてこれが来てその次が『Jの神話』 [Amazon] なんだから、始まった当初のメフィスト賞がいかに何でもありだったかがよくわかる。作者は1961年生まれ。メフィスト系の作家としては高齢の方だろう。
保険調査員の小野を主人公として、15編の短編が収録されている。タイトルはそれぞれがかつての名作に因んだものとなっているのだが、いずれも一筋縄ではいかないバカミスばかり。読んでいてあまりのバカバカしさに目眩を覚えることは必至だ。近頃ではちょっと無い作風なので逆に貴重かも知れない。タイトルだけでオチが読める話から、いくらなんでもそれは無いだろうと愕然とさせられる話まで、肩の力を抜いて作者と不毛な知恵比べを楽しもう。[2004/10]
マリア様がみてる 特別でないただの一日
[今野緒雪] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\419) [Amazon]

学園祭を迎えたリリアン女学園。山百合会の今年の出し物は『とりかえばや物語』。双子というだけで主役姉弟を演じることを命じられた祐巳と祐麒。花寺高校からは助っ人の男子生徒たちが続々と学園を訪れ、にわかに学園は活気づいていく。しかしただ一人浮かない表情を浮かべる可南子。そして、もう一人の一年生瞳子は演劇部の上級生とのトラブルに巻き込まれる。祐巳は無事に学園祭を迎えることが出来るのだろうか。
マリみて十六作目。学園祭に突入。祥子とのスール関係が成立して一年のメモリアル。そいでもって、ようやく妹選び問題が再浮上してきた。ハイソな女子校の文化祭風景を、優雅に点描しつつストーリーは進行。妹候補の可南子と瞳子を巡って、千々に乱れる祐巳の心。なんて展開にはやっぱりならない。
祥子という絶対的なスールがいる状態で妹を選ばなくてはならないというのは、ちょっと難しい気がする。それって浮気やフタマタとは違うのか?近頃のマリみてに今ひとつ乗り切れなかったのは、このあたりにジレンマを感じていたからかも知れない。果たして祐巳はどちらを選ぶのか、とても気になるところ。さんざ、追いつめられているわりには、まるで進展していない由乃の方も心配。そろそろ話を急がないと拙いのではないか。[2004/10] ⇒次巻
導きの星I 目覚めの大地
[小川一水] ★★★★ 角川春樹事務所 ハルキ文庫 (\800) [Amazon] ※書影無し
宇宙へ進出した人類は各地で知的生命体に出会う。高度な文明への可能性を残しながらも、未開のままで停滞していたこれら異種族に対して、人類は外文明支援省を設立。極秘の内にその援助をスタートした。辺境のオセアノ星系へ派遣された観察官辻本司は、現地の知的生命体スワリスとその亜種ヒキュリジに遭遇。長い長い文明創造の任務に携わって行くことになる。
2002年刊行。知的生命体の保護観察育成という重大任務に対して、観察官は一種族につきなんと一人。主人公は若造で、目的人格(バーパソイド)と呼ばれる人工生命体の美少女アシスタントが三人ついてくる。その職務の重大さに反して、軽いドタバタノリで始まる序盤の展開に、ふとすると騙されそうになるが、実はかなりハードなエスエフ巨編。
「シムアース」 [Amazon] だったり「文明の曙」「アトラス」 [Amazon] や「大航海時代」 [Amazon] みたいな育成系ゲームを知っていると入りやすいかもしれない。原始的な生活をしていたスワリスに火の存在を教え、虐げられてきたヒキュリジに鉄器の製法を伝える観察官。それぞれの種族の勢力の均衡と、発展の方向性の適正化を常に心がけながら、臨機応変な対応が求められる。この魅力的な設定だけで既に勝ったようなものだ。
もちろん、観察官の干渉が必ずしも毎回成功するわけではなく、火の存在を知ったスワリスが焼き畑農法を猛烈な勢いで推し進めて環境問題を引き起こしてしまったり、鉄器の製法を身につけたヒキュリジがスワリスを完膚無きまでに駆逐してしまったりと、もたらされる結果の数々がこれまた面白い。今回は火の発明から、大航海時代まで。この先が非常に楽しみなシリーズだ。[2004/10] ⇒次巻
導きの星II 争いの地平
[小川一水] ★★★★ 角川春樹事務所 ハルキ文庫 (\780) [Amazon] ※書影無し
遠洋航海技術を身につけるまでに至った惑星オセアノの知的生命体スワリスとヒキュリジ。しかし観察官辻本司の干渉失敗により、この二つの種族は相互に憎み合い、絶えることのない抗争を繰り返すようになっていた。戦争状態に終止符を打つべく、司たちは戦地に赴く。スワリスの治める聖統ニチツュイ帝国と、ヒキュリジのトゥワバリ連合軍。両軍の衝突は止めることが出来るのか。
2002年刊行。シリーズ二作目。今回は宗教の発生から近代科学の勃興まで。オセアノの辿る運命が、人類の歴史に被りすぎてるところが判りやすくもあり、都合が良すぎる面もありでなんとも微妙なところ。恣意的に誘導してるから仕方の無い側面もあるけど。今回は種としての活力に衰えを感じつつある人類圏の盟主たちや、独自の商業活動を繰り広げる企業体フェニキア・オーバースペース社の人々が登場。オセアノだけの話に終始するかと思われていた物語の構造が一段と深みを増している。
ちなみに主人公は普通の人類なのだが、通常時は冷凍睡眠で老化をストップ。不死であるお供の三人のバーパソイド(人工生命体)がその間は惑星を監視。なにか問題があった時だけ覚醒させられて観察官が登場してくるという次第。おかげで数百年にも及ぶ文明の発展を一人で管轄出来るようになっている。
代々登場するスワリス側の王族に共通する遺伝的特徴があって、これが実にいい仕掛け。これはあとあと効いてきそうだ。従順に思えたヒロインに実は予想だにしなかった裏の顔があって……、なんてのも中盤で仕込む伏線としては効果的。意外に大きな話に広がっていきそうなので期待しよう。[2004/10] ⇒次巻
導きの星III 災いの空
[小川一水] ★★★★ 角川春樹事務所 ハルキ文庫 (\860) [Amazon]

恒常的な戦争状態からは辛うじて脱した惑星オセアノ。芽生えつつあった科学文明が花開き猛烈な勢いで産業革命が推し進められていく。しかし発展した科学は次第に兵器へと転用されていく。圧倒的な破壊力を持つ軍事力を前にして諸国間の緊張は極度に高まる。そしてこの星では本来採掘される筈の無いウラン235が、ヒキュリジ側にもたらされたとき悲劇は起こった。
2003年刊行。シリーズ三作目。自らの忠僕たるバーパソイドに銃を向ける司。緊張感のある表紙絵からも想像がつくように、ここでストーリーは暗転。エグイなあ、ここまでやるか。曖昧のままに流されてきた、主人公とアルミティの関係が一気に崩壊。紆余曲折ありながらも、順調に発展を続けてきたスワリスとヒキュリジの歴史にも暗い陰が落とされる。
そんな表の流れとは別に、地球本星側の動きもしっかりフォロー。あまりに主人公の権限が強くなり過ぎていて、ちょっとオカシイんじゃないのっていう、読者側のツッコミにもきちんと配慮している。こうした細かい配慮は、全体の整合性を向上させる意味でとても重要だ。よく書けてて◎。フェニキア・オーバースペースの皆さんも着々と第三勢力を育成中でラスト前の仕込みとしては万全のようだ。セントール人の作り込みは面白い。[2004/10] ⇒次巻
導きの星IV 出会いの銀河
[小川一水] ★★★★ 角川春樹事務所 ハルキ文庫 (\920) [Amazon]

宇宙へと進出したオセアノ文明は遂に観察官辻本司に対して叛旗を翻す。外宇宙との航法を我が物とした彼らは人類圏に進出。種としての衰退期に入っていた人類はその勢いを留めることが出来ない。しかし第三の勢力セントールの出現により事態は一変する。銀河系の勢力は三すくみ状態に陥る。事態を打開すべく司が進言した究極の選択とは。
2003年刊行。シリーズ完結編。ここに至って作品の構造に更なる底があったことに驚かされる。広げた大風呂敷は相当な大きさで、この段階で人智を越えた超知性体なんて存在を引っ張り出してきて、果たして収拾がつけられるのかどうか最初のうちは非常に不安だったのだが、この作者は見事にこの大風呂敷を畳み切ってみせている。見事な構成力と言うしかない。スゴイよ。
美少女アシスタントを侍らせた、お気軽な惑星文明育成小説の側面を残しつつも、文明の発展と存亡、星間生命体同士の相克、種の繁栄と衰退みたいな重いテーマまでもが過不足なく丁寧に描き込まれていて正直驚嘆させられた。数百年という長い年月を生きる観察官の視点を使うことで、種としての人類が迎えたターニングポイント、その決断の重さが読み手に生々しく伝わってくる。これってやはりエスエフならではの面白さだ。チキに始まりチキに終わる円環的な落とし方も素晴らしい。その瞬間、歴代耳折れちゃんが走馬燈のように脳裏を駆け抜けて泣きそうだったよ。[2004/10]
夜のピクニック [恩田陸] ★★★★ 新潮社 (\1,600) [Amazon]

全行程80キロを一日かけて歩き通す年に一度の伝統行事、北校名物鍛錬歩行祭。受験を目前に控えた最後の歩行祭で甲田貴子はある賭けをしていた。クラスメイトたちとの何気ないやりとり。夜だからこそ話せる恋の話。ささやかな謎とその真実。疲労で朦朧としていく意識。高校生活最後のイベントでそれぞれの想いが織りなす心の軌跡を描く。
2004年刊行。『六番目の小夜子』 [Amazon] 『球形の季節』 [Amazon] に続く恩田陸の高校三部作の三作目。「小説新潮」2002年10月号〜2004年5月号に隔月連載されていた作品を単行本化したもの。作中で描かれる歩行祭は作者の母校で実際に行われていた行事。程度の大小こそあれ、同種のイベントは全国各地で存在する模様。
恩田陸には異母兄弟が登場する作品が多い。『蛇行する川のほとり』 [Amazon] のインタビューによると「家族というよりは、距離感がある関係が好きなんですね」ということらしい。互いに意識しあいながらもうち解けることの無かった貴子と融。既に病没している父を間に挟んで、隔絶したままになっていた二人の関係。設定としては確かに魅力的だ。微妙な緊張関係にある二人を軸に物語は進行していく。
普通に歩いても1時間で4キロ。ということは単純計算で20時間かかるわけで。しかも最後の20キロ走ってるし!実在するのが信じられないほどハードなイベントだ。スタート当初の躁状態。メランコリックな気分の日没前後、盛り上がる深夜の恋愛トーク、疲労のピーク時では惰性で喋ってるし、何もかもが突き抜けて真っ白になっていく早朝。時間の経過による登場人物たちの心情の変化が切なくも瑞々しく描かれていて心に染みる。
僅か1日の出来事でありながらも、この24時間の密度は途方もない程に高く、これは一つの旅であったと言っても過言は無いだろう。貴子と融を中心に様々な登場人物たちがそれぞれの想いを秘めながら共に歩む。二人の距離は一瞬縮まるかに見えて、次の瞬間には離れてしまい読者をやきもきさせる。共に歩く仲間の一人であるかのように、いつの間にか作中に引き込まれている自分を見出し驚かされた読者も多いのではないだろうか。同じようなイベントを経験していなくても、クラブの合宿であったり、修学旅行であったり、遠足やマラソン大会といった読者それぞれの高校生活の記憶の断片がこの作品では、随所でうまくはまるのだろう。いつになく共感度の高い作品になっている。
終盤。少しずつ距離を詰めてきた二人が遂に和解に至るシーン。満を持して現れる内堀嬢。憤慨しながらも何も出来ない忍。憮然とする融。呆気に取られる貴子と美和子。駆け込んでくるベイベー高見(こいつ最高!)と拉致される内堀嬢。残された融が振り向くとそこには貴子が……。この流れは完璧だろうと思えるほどに美しい。上質のロードムービーのラストを見ているかのような感動的な情景だった。
ラストは少し引いた第三者の視点で静かに物語は閉じていく。順弥の目を借りながら、過ぎ去ってしまった高校時代を懐かしむ作者の想いがそこはかとなく行間に滲み出す。久々に読み終えるのが惜しいと思える作品だった。これから高校時代を迎える人にも、今まさに高校生である人にも、そしてとうに高校生でなくなった人にも是非読んで欲しい一作。[2004/10]
マルドゥック・スクランブル The First Compression 圧縮
[冲方丁] ★★★★ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\680) [Amazon]
マルドゥック・スクランブル The Second Compression 燃焼
[冲方丁] ★★★★ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\680) [Amazon]
マルドゥック・スクランブル The Third Compression 排気
[冲方丁] ★★★★ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\720) [Amazon]

賭博師シェルによって爆殺された未成年娼婦バロット。マルドゥック・スクランブルと呼ばれる特例措置により、高度な科学技術の提供を受け蘇った彼女だったが、犯行の露見を怖れたシェルは殺人兵器ボイルドを刺客として差し向ける。ネズミ型万能超兵器ウフコックの協力を得、バロットは自らの存在を賭して数々の危難に立ち向かっていく。
2003年刊行。2003年の日本SF大賞受賞作。そしてベストSF2003の国内部門でもダントツの第一位を獲得した作品。ちなみに冲方丁は「うぶかたとう」と読む。「おきかたちょう」じゃないぞ(こないだまでそう思ってた)。1996年に『黒い季節』 [Amazon] で第1回スニーカー大賞の金賞を受賞しデビューしている作家。
全三巻、原稿用紙にして1,800枚を越える程の大作だが、いざ読み始めるとテンポ良くスピーディにストーリィが展開していくので、読み止めるのが惜しいくらい。自分でも驚くほどの速さで読了してしまった。第一巻のクライマックスであるバロット対ボイルドの銃撃戦の格好の良さはエスエフならではの迫真の出来。『マトリクス』 [Amazon] 見てなくて良かった(それよりも前に書かれてはいるらしいけど)。
圧倒的な迫力での見事なガンバトルを堪能させてくれた第一巻なのだが、この物語、第二巻から思わぬ形に戦いの場を変えていく。自らの犯罪記憶を封印した宿敵シェル。その記憶が保存された100万$のコインを巡っての凄絶なカジノバトルが繰り広げられるのだ。無理矢理過ぎる展開に、当初は違和感を覚えたものの、いざカジノシーンへ突入してみるとその思いは一掃された。不幸な人生を送ってきた少女バロットの人間存在を賭けた戦場として、あえてカジノを選んだ作者の本気度は生半可な物ではなかった。全体の1/3ものボリュームを占める長大さでありながら、読み手を決して飽きさせない、終始手に汗握らされるスリリングな展開が圧巻であった。次々と登場する曲者揃いのディーラーたちがこれまた、味のあるキャラクター揃いでお見事。終始高いテンションを保ちながらラストのシェルとの直接対決まで持っていった筆力は素晴らしい。
なんだかカジノへ行ってみたくなった一作。もちろんウフコック必須で(笑)。[2004/10] ⇒続編
アザゼルの鎖
[梅津裕一] ★★★☆ 角川書店 スニーカー文庫 (\495) [Amazon] ※書影無し
両手足を鎖で緊縛され、唇と眉を削がれ、石積の中に埋められていた女子高生の惨殺死体。埼玉県警の特異殺人専従班「特専」に所属する持田直樹は、持ち前の能力を発揮し事件の意外な真相に迫っていく。ネットの情報の渦の中から、聖書の儀典エノク書に記された、堕天使アザゼルの処刑方法と本事件との共通点が浮かび上がってくるのだが……。
2002年刊行。スニーカー文庫なのにイラスト無しかよと思っていたら、それはスニーカ・ミステリ倶楽部の仕様っぽい。購買対象を考えると表紙はもう少しキャラクターを全面に出したワカモノ向けの装丁にした方が売れるんじゃないかと思う。もっとも、作品の内容を考えると仕方のない事なのかもしれないけど。地味なカバーデザインは少々気の毒。
過去に古傷を抱えた一匹狼タイプの刑事が、独自の能力を使って猟奇殺人犯を追いつめていくというタイプのお話。どことなくとみなが貴和の『EDGE』 [Amazon] シリーズを想起させられる。枚数制限の問題もあるのだろうが、主人公の相棒の羽崎の描写が中途半端でその役割の重要さのわりにはおざなりな書かれ方になってしまっているのが惜しい。主人公の過去についても勿体ぶらずにぶちまけてくれた方が良かったんだけど、ひょっとして続編を意識していたのかも。多少先は読めてしまうのだが、叙述トリックも美しく決まっているのでなかなかの佳作。オチの救いの無さもいい。[2004/10]
「アリス・ミラー城」殺人事件
[北山猛邦] ★★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\840) [Amazon]

日本海に浮かぶ孤島江利ヵ島。そこに建造された「アリス・ミラー城」。ルイス・キャロルの作品をモチーフとしたこの城に探偵たちが集められた。女主人ルディは告げる「最後に生き残った者がアリス・ミラーを手に入れることが出来る」と。かくして凄惨な殺人劇の幕は開いた。不可能状況での連続殺人の数々。最後に残った一人とは一体。
2003年刊行。北山猛邦の城シリーズ三作目。従来作品に比べると、少しは読めるようになったか。依然として粗い書き割りを背景に、2Dの人型がぎごちなく動き回っているような文章力の欠如は強く感じるけど、あえてステロタイプなキャラクター造形を各登場人物に割り振った分判りやすく読めるようになった気がする。観月クンのキャラなんて、けっこう面白いので出来ればこいつの話だけで一作読みたいくらいだ。
物理トリックへの徹底したこだわりも相変わらずで、近年この手の作品は少ないだけにまだまだ頑張って欲しいところ。考えるの大変だろうな。もっとも前作、前々作に比べると物理トリックのゴージャス度がイマイチ。なんて、終盤思っていたわけだが、最後の最後でしてやられた。全然気付かなかったよ。最初から読み返しちゃったくらい。物理トリックの作家という読み手の先入観を利用して、別の仕掛けを施してくるとはさすがは三作目。
犯人への手がかりは周到に隠されている、というか全く隠されていないわけで、ここまであからさまに書かれているのは珍しいくらい。『そして誰もいなくなった』 [Amazon] の新たなアプローチの一つとしても秀作(一歩手前)と言ってもいいだろう。もっとも読み手の我々はともかく、作中の登場人物がこの事実に気付かないのはどう考えても無理があるわけで、この点までフォローで来てればお見事だったんだけど、難しいかなやっぱり。[2004/10]
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