2004年12月

2004年の年間読書量は131冊。
月10冊の最低レベルはクリア出来たけど、うーん、せめて150冊は読みたかった。

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
歌の翼に
ピアノ教室は謎だらけ
菅浩江 祥伝社 \857
和みの中にほんのりと毒。
★★★

キマイラの新しい城

殊能将之 講談社 \840
稲妻卿最高!
★★★☆

塩の街

有川浩 メディア
ワークス
\550
イラストは合ってないような。
★★★
海底密室 三雲岳斗 徳間書店 \762
地味。
★★★
夏の名残りの薔薇 恩田陸 文藝春秋 \1,857
藪の中タイプ。というか藪以前。
★★★☆
もっと秘境駅に行こう! 牛山隆信 小学館 \533
無性に旅行したくなった。
★★★☆
ライトノベル★めった斬り! 大森望
三村美衣
太田出版 \1,480
ブックレビューだけでも読む価値あり。
★★★☆
魔導物語'98 織田健司 アスペクト \640
可もなく不可もなく。
★★★

空の中

有川浩 メディア
ワークス
\1,600
宮じいの存在感がスゴイ。
★★★☆

南の島のティオ

池澤夏樹 文藝春秋 \437
『ティオの夜の旅』も要チェック。
★★★☆

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歌の翼に ピアノ教室は謎だらけ [菅浩江] ★★★ 祥伝社 ノン・ノベル (\857) [Amazon]

歌の翼に ピアノ教室は謎だらけ

ひなびた商店街の楽器店の二階にそのピアノ教室はあった。有名音大のピアノ科を主席で卒業しながらも子供相手のピアノ講師として日々を過ごしている杉原亮子。おっとりとしたお嬢様然としたイメージとは裏腹に、人並み外れた彼女の観察力と推理力は生徒たちの悩みを次々と解決していく。しかし誰にも言えない心の傷が亮子には……。

2003年刊行。祥伝社の「小説NON」に2001年〜2003年にかけて掲載されていた作品群をまとめた連作短編集。一昔前の東京創元社でやたらに出ていた日常の謎系なお話と考えれば判りやすいかと。ピアノ教室の講師を主人公としているが、作者自身の元オルガン講師という過去から来る体験が多分に盛り込まれているのだろう。ぽわわんとした容貌に似合わず、鋭い推理でまったりと生徒たちが直面する問題を片づけていく亮子先生がとても魅力的。

九つの短編が収録されており、各編ごとに視点が変わる。華々しい経歴の割には地味な仕事をしている謎めいた主人公を、複数のキャラクターの視点で追いかけることで人物像を浮かび上がらせようとする趣向。日常の謎系とはいえ、書いているのが菅浩江なので毒分はやや多め。適度な毒素が、ハートウォーミングストーリーに流れがちなこの作品を引き締めている。謎の設定に無理がありすぎる作品がちらほらあるのが残念なポイントか。[2004/12]

キマイラの新しい城
[殊能将之] ★★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\840) [Amazon]

キマイラの新しい城

千葉県の某地。とあるテーマパーク。中世の古城をそのまま移築したとされるシメール城。750年前の城主に憑依された社長の江原は、かつての自分を殺害した犯人を見つけ出すよう厳命する。途方にくれた役員たちは、探偵石動戯作に依頼を持ちかける。中世のヨーロッパで起きた密室事件の謎は果たして解明されるのか。困惑する戯作をよそに、現実世界でも殺人事件が発生する。

2004年刊行。殊能将之7作目の作品。へっぽこ探偵石動戯作のシリーズとしてはこれが5作目。既刊のネタバレになるような事柄が本編で触れられているので、出来うるならば刊行順に読んだ方が無難。ヨコミゾっぽく本格してみたり、叙述トリックに走ってみたり、はたまたエスエフと、毎回チャレンジフルなこの作家。今回は館モノに挑戦。

ミステリ部分はさておき、中世貴族の死霊に取り付かれた会社社長のオッサンがとにかく最高。現代のドン・キホーテ六本木を行く!って感じ、スピーディでノリの良い筆致で描かれる稲妻卿の冒険行がバカバカしくも面白い。脳内では「ラ・マンチャの男」がエンドレスで流れていた。古城の密室トリックはこの手の作品群としては強引なまでに力業的でアクロバットな解法。ここまで豪快なのは久しぶりに読んだな。嫌いだった石動戯作も、最近許せるようになってきた。でも、アントニオが探偵やった方がいいんじゃないの、ってツッコミはとりあえず無しで。[2004/12]

塩の街 [有川浩] ★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\550) [Amazon] ※書影無し

突如人類を襲った大災厄。人体を蝕み、その組成を塩に変えてしまう謎の現象「塩害」。瞬時に数百万人が塩の柱と化し、社会基盤は崩壊。辛うじて生き延びた人々も、いつ訪れるとも知れない「塩害」感染への恐怖に怯える毎日を送っていた。両親を失った少女真奈と、成り行きから彼女を拾った秋庭。終末へと加速する時の中で、彼らが見る様々な人間模様。

2004年刊行。第10回電撃ゲーム小説大賞の大賞受賞作品。有川浩は「ありかわひろ」と読む。男性のような名前だが実際には女性作家らしい。1972年生まれ。正直イラストがイマイチなので、評判は聞きながらも手を出すのを躊躇っていた作品。第二作である『空の中』 [Amazon] の世間的評価があまりに高いので二冊まとめて購入してしまった。

この話、前半と後半でガラリと雰囲気が変わる。前半は滅びの日を迎えつつある世界の中で、主人公たちの前を通り過ぎていく人々の最期の時間を描いた連作短編。オールドなエスエフファンとしては新井素子の『ひとめあなたに…』 [Amazon] や神林長平の短編「抱いて熱く」(『小指の先の天使』 [Amazon] 収録)を足して二で割ったような印象を受けた。終末小説大好きさんな自分としてはここまでは大満足。

これでどう落とし前を漬けるのか、後半への期待は高まるところなのだが、なんとこの二人、世界を救うために自らの命を賭して運命に立ち向かってしまう。あまりに健全過ぎる展開に激しく萎え。しかも作戦に成功して完膚無きまでに美しいハッピーエンドまで勝ち取ってしまう。それでも最後に秋庭が死んでしまうとか、真奈の掌が塩化!みたいな救われない展開があれば納得も行くのだけれども、物語はあくまでも清く正しく美しく前向きに完結。大部分の読み手に取ってはこれで正解なのだろうが、ひねくれ者としてはこの展開は受け入れがたい。前半の重苦しい閉塞感がたまらなく魅力的であっただけに物足りなさが強く残る。まあ、趣味が悪いと言ってしまえばそれまでだが。[2004/12]

海底密室
[三雲岳斗] ★★★ 徳間書店 徳間デュアル文庫 (\762) [Amazon] ※書影無し

水深4,000メートルもの深海に構築された実験施設<<バブル>>。科学雑誌の記者鷲見崎遊(ゆとり)は取材のために現地を訪れる。応対するスタッフの不審な行動から、彼女は謎の死を遂げた研究員の存在を知る。事件は自殺として処理されていたが、外界から隔絶された<<バブル>>の中では新たな死体が発見される。遊は持ち前の探求心から事件の謎に迫っていく。

2000年刊行。『M.G.H』 [Amazon] で第1回日本SF大賞新人賞を受賞した三雲岳斗のSFミステリの第二弾。この時点では9作目の作品。雑誌記者のヒロインが、電子人格の相棒と共に密室の謎に迫るエスエフでミステリな作品。この作者の他作品に較べるとキャラ立ちは皆無で、ライトノベルっぽさは陰を潜めている。SF大賞新人賞受賞後初の徳間作品ってことで、エスエフ寄りの固い内容が求められていたのかも知れない。

密室。そしてその周囲は人間を寄せ付けない深海。二重の意味で密閉された空間で起きた殺人事件。ミステリではお馴染みの嵐の山荘的な状況設定だが、謎解きの過程で科学的なネタがふんだんに盛り込まれているのがとても新鮮。萌絵と犀川センセが出てこない初期森作品のようなイメージ。このオチが本当に実現可能なのかは、どこかで再現して欲しいな。絵としては非常に綺麗で美しい。[2004/12]

ついでに…… 
『すべてがFになる』@森博嗣  <<科学なミステリってことで。

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夏の名残りの薔薇 [恩田陸] ★★★☆ 文藝春秋 (\1,857) [Amazon]

夏の名残りの薔薇

晩秋。とある観光地のクラシカルなホテル。年に数日だけこの豪奢なホテルは沢渡一族の貸し切りとなる。長老格の三人の老婆に選ばれた者たちだけがここに集うことを許されるのだ。秘められた過去の罪。禁断の不倫。幾重にも重ねられた嘘。わき起こる猜疑心。数多の想いが渦巻くこの場所で起きた殺人事件。一体誰が、そして何故。二転三転する物語の帰結は。

2004年刊行。「別冊文藝春秋」の245号から250号にかけて連載された作品を単行本化したもの。単行本にしてはめずらしくあとがき付き。更に杉江松恋による解説、インタビューまでついてくる。豪華なおまけ三点セットがファンには嬉しい。ちょっと高すぎるかなという価格設定もこれならまあ許せるか。巻末の作品リストもありがたい。

周囲から隔絶された豪華ホテルでの殺人。いかにもいわくありげなクセの強いキャラクターがわんさか登場。だいたい文藝春秋が出しているこのレーベル、その名も「本格ミステリ・マスターズ」ってことで、普通に考えると、おおっ、遂に恩田も本格推理の長編を書く気になったのか!って期待がかかるところなんだけど、そんなノリで読んでいくと第二変奏の序盤でガクっとずっこけることは必至。引用の元ネタの『去年マリエンバートで』 [Amazon] やタイトルの元ネタであるハインリヒ・W・エルンストの『夏の名残りの薔薇』についての知識があれば予想もつくのだろうけど、おいおい桜子生きてるじゃん!って心の中でツッコミを入れたのは絶対にわたしだけではない筈。

そもそも、目次にある「主題」「第一変奏」「第二変奏」と続く流れで判れよってことなのだろう。主題で示されたモチーフ「罪深き女が復讐者によって殺される」が手を変え品を変え繰り返される。明確な解決はいずれのエピソードでも示されることはない。恩田陸作品が明確な着地点を示さないのは今回に始まったことではないが、さすがに何度もやっていることだけに本作ではその手際が洗練されてきている。敢えて作品を閉じないことで醸し出される余韻。物語の揺らぎを今回は素直に楽しむことが出来た。登場人物(特に桜子)が魅力的に描けていたこともあってか、[2004/12]

もっと秘境駅に行こう!
[牛山隆信] ★★★☆ 小学館 小学館文庫 (\533) [Amazon]

もっと秘境駅に行こう!

乗降客もほとんど無く、周辺にも集落は皆無。利用価値が希薄に思える駅<秘境駅>探訪の旅は続く。政令指定都市にもある秘境。眼前に大洋が広がるとっておきの駅。味わい深い駅舎の数々。近隣に温泉がある駅。地下鉄でも無いのにとんでも無い地下に存在する駅。そして往時の栄光が過ぎ去り、ひっそりと秘境化していく駅たち。日本各地の不思議な駅を巡る。

2003年刊行。2001年に刊行された『秘境駅へ行こう!』 [Amazon] の続編。前作は各方面で話題になったようでいつのまにか続きがでていた。気付けばCSとはいえテレビ番組まで制作されており、鉄ヲタ層だけでなく一般層にまで秘境駅の存在はじわじわと浸透している模様。取り扱い駅数はこれまでの20駅に較べて35駅とほぼ倍増している。

際物的な秘境度の高い駅は前作である程度扱ってしまったこともあり、その点ではややインパクトが劣るのは否めない。その分、秘境度にとらわれず、幅広い視点での駅チョイスが行われているので紀行文としての面白さは逆に上がっている。筆者の広島転勤を期に、西日本方面の記事の充実度があがっているのも特徴の一つ。西日本、特に九州のJRにほとんど乗っていない自分としては非常に羨ましい。[2004/12]

ついでに…… 
『秘境駅へ行こう!』  <<著者本人サイト

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ライトノベル★めった斬り!
[大森望・三村美衣] ★★★☆ 太田出版 (\1,480) [Amazon]

ライトノベル★めった斬り!

ライトノベルって何?30年にも及ばんとするその歴史にメスを入れた画期的なガイドブックが登場。黎明期から発展期、そして現在に至るまでの流れを対談形式で紹介。大森望と三村美衣、このジャンルを語らせれば向かうところ敵無しの二人がライトノベル史をめった斬る。既刊数万にも達する膨大な作品群の中から100タイトルを厳選。

2004年刊行。『ライトノベル完全読本』 [Amazon] や『このライトノベルがすごい!』 [Amazon] が出て、俄に脚光が当たり始めたライトノベルについてなんか言わなきゃっムーブメント。前二作はランキング本でもあり、最初に出たライトノベルガイドという側面もあって、その歴史についての記述も、取り扱い書籍のレビューについても総花的な印象がどうしても拭いきれなかった。その点本書はライトノベルの歴史について語ること、厳選された100タイトルのみにレビューすることの二点にポイントを絞っているだけに内容が濃くて非常に読み応えがある内容に仕上がっている。

筆者の二人は40代前半。その始まりからリアルタイムでライトノベルを読み続けている最初の世代。なおかつ、現在でも書評で飯を食っているだけあって着眼点が卓越している。自分の場合だとライトノベル(と後に呼ばれるようになったもの)を読むようになったのは80年代の初頭。そのころは既にソノラマもコバルトもあって、物心ついたときに既にその手の読み物は存在していたわけで、発生以前の状況ってのがどうもピンと来ない。ライトノベルの特質を明確にしながら、その起源は『超革命的中学生集団』 [Amazon] である!なんてぶちかますあたりは、ああ、なるほどなと目からウロコな思い。リアルタイムで創世記に立ち会えているのは羨ましい。

それから興味深かったのは『ロードス島戦記』 [Amazon] 前後から始まったコンピュータゲームやらRPGからの影響について触れている部分。ゲーム的な概念が読み手に浸透してきた頃から始まる文体の変化。ヲタ的な文化の影響をモロに受けやすいこの手のレーベルの特徴は、既にこんな時期から始まっていたわけだ。あえてこの本では詳しく扱っていないけど、ノベライズの受け皿、メディアミックスの一媒体としてのライトノベル。という捉え方も真面目に考察してみると面白そうだ。また書いてくれないかな(他力本願)。

筆者が男性、女性二人存在することでそれぞれの不得意分野が補完出来ているのがいいところ。特に女性向けレーベルは『十二国記』 [Amazon] 『マリア様がみてる』 [Amazon] みたいな超ヒット級しか読んでこなかったので非常に参考になった。ちなみに本書で紹介された100冊の既読率は46%。コバルトやホワイトハートもちゃんと読まなきゃダメだな。食わず嫌いは良くないなと反省。今度探してみよっと。[2004/12]

魔導物語'98 [織田健司] ★★☆ アスペクト ファミ通文庫 (\640) [Amazon]

魔導物語’98

謎の次元生命体ヨグスの出現はアルルたちの世界に大異変をもたらした。相次ぐ天変地異、各地で人々を襲い始めた魔物たちの群れ。別世界からやってきた、勇者ラグナスと共に世界を救うためにアルルは旅立つことになる。お馴染みのルルー、シェゾをパーティに加え神秘のベールに包まれたヨグスの正体に迫っていく。

1998年刊行。あとがきから推察するにセガサターン版の『魔導物語』 [Amazon] をベースに書かれたものらしい。魔導シリーズのノベライズはこれまでずっとスニーカー文庫から出ていたのだが、何故かファミ通文庫からも作品が出るようになる。スニーカーの『新魔導物語3』 [Amazon] が1997年の刊行。本書が1998年。それでいて、スニーカーの方は1999年から2000年にかけて『超魔導物語』 [Amazon] が出ているので、この時期は平行して2レーベルから本が出ていたことになる。立ち上げ直後でタマが無かったファミ通文庫が無理しちゃったのかな(邪推)。

内容は、普通にノベライズ。このレーベルでは初のお目見えってことで、主要キャラクターそれぞれに見せ場を用意して、ゲームならではの世界設定やイベントも随所に織り込んで無難にできあがり、って感じ。元のゲームをプレイしていないので推測でしかないけど、それなりな体裁は整っているのではないかと。[2004/12]

空の中 [有川浩] ★★★☆ メディアワークス (\1,600) [Amazon]

空の中

200X年。四国沖200キロの上空で起きた二件の航空事故。その真相は思いもよらぬものだった。高度20,000メートルの高々度世界で、人類は全長数キロにも及ぶ未知の知的生命体に遭遇する。事故によって父親を失った斉木瞬は、海岸に打ち上げられた不思議な生物を拾い家に持ち帰る。失意の底にあった瞬は、謎の生き物との交流を通じて次第に活力を取り戻していくのだが……。

2004年刊行。『塩の街』 [Amazon] で第10回電撃ゲーム小説大賞を受賞した有川浩の第二作が本書。なんとハードカバーで登場だ。これまでも高畑京一郎の『タイムリープ』 [Amazon] みたいにここぞと決め込んだ作品はハードカバーで出してくることが無かったことでは無いわけだが、本書は思い切りよく表紙にすらイラスト無し。版元がメディアワークスってことを除けば、一般の文芸書と見た目では全く区別がつかない程。帯の推薦者も恩田陸に橋本大二郎!とインパクト十分。これは勝負に出たね。

未知の生命体と友情を育む少年と、未曾有の驚異に真摯に立ち向かうオトナたち。少し読んですぐに感じたのが濃厚に特撮テイストな雰囲気。あまり特撮は得意でない自分でも感じるくらいだから、その筋に詳しいひとなら琴線に触れる部分がたくさんあるのではないかと思う。この本が売れたら、アニメ化でなく特撮映画化を目指すように>>メディアワークスの人。

人智を越えた異種知性との邂逅を子供と大人の二視点で描きながら、ジュブナイル小説としての輝きや、ミステリ的な謎解きの面白さ、エスエフ的なセンスオブワンダーなワクワク感をも併せ持ち、更に破壊的に萌え度の高い武田三尉のようなキャラクターまで用意されている。これらの要素が互いを阻害することなく、渾然一体となって読み応えのある快作に仕上がっているのが素晴らしい。ネイティブな高知弁の存在がこれまたお見事。この独特の言い回しだけで、瞬を取り巻く世界が瑞々しく活気のあるものになっている。モノクロの絵がいきなりカラーになったかのような鮮烈さ。本当に本人が全部読んだのかどうかは、嘘くさいが橋本大二郎が推挙したくなる気持ちも判るな。[2004/12]

ついでに…… 
『星虫』@岩本隆雄  <<こっちもジュブナイルなファーストコンタクト。

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南の島のティオ [池澤夏樹] ★★★☆ 文藝春秋 文春文庫 (\437) [Amazon]

南の島のティオ

とある南の島にその少年はいた。ホテルを経営する父の手伝いをしながら、島の少年ティオはさまざまな人々に出会い、数々の出来事に遭遇していく。受取人が必ずその場所を訪れたくなる魔法の絵はがき。謎めいた男と共に消えてしまった少女の話。舗装されてしまった島の道路に埋まっていたものは。描き出された十の光景。連作短編集。

「飛ぶ教室」や「青春と読書」「詩とメルヘン」に発表されていた諸作品をまとめたもの。単行本版が出たのが1992年。第41回の小学館文学賞の受賞作品。文庫版の本書は1996年刊行。作者は1945年生まれ。『スティル・ライフ』 [Amazon] で中央公論新人賞と芥川賞。『マシアス・ギリの失脚』 [Amazon] で谷崎潤一郎賞を受賞している。

連作短編とされてはいるが、それぞれの話は独立しているので単独で読んでも問題は無い。南の方にあるどこかの国のどこかの島。気候は穏やかで、風光明媚。あくせく働かなくても暮らして行ける。そんな島で生まれ育った少年ティオが見たり聞いたり体験したりすることの数々が詩情豊かな筆致で紡がれていく。楽園のような場所に見えても、人間が暮らしている以上、哀しいことややるせないことは決して無くならない。子供向けに書かれた作品らしいが、適度に散らされた棘のような毒がいいスパイスになっている。沢山借りてきたので2005年は池澤夏樹をガンガン読むつもり。[2004/12]

ついでに…… 
『バガージマヌパナス』@池上永一 <<こんな南の島も話も。

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