2005年03月

3月は12冊。イチオシはやはり『ユージニア』か。

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
Missing 神隠しの物語 甲田学人 メディア
ワークス
\570
悪霊シリーズっぽい感じ。
★★★

トーキョーワッショイ!

後藤勝 双葉社 \1,524
藤山のコメントが泣ける。
★★★☆
君がいる風景 平谷美樹 朝日ソノラマ \495
イラストが地味過ぎる。
★★★☆

それでも警官は微笑う

日明恩 講談社 \1,900
ヌルイ警察小説。
★★★

冒険者・失格!

関根博寿 アスペクト \641
旬を外しすぎた。
★★☆
女王の百年密室 森博嗣 幻冬舎 \900
そろそろ限界かも。
★★★

時の果てのフェブラリー

山本弘 角川書店 \430
フェブラリーには萌えにくい。
★★★☆

追伸・こちら特別配達課

小川一水 朝日ソノラマ \552
綺麗に収束。
★★★

初恋 グインサーガ外伝19

栗本薫 早川書房 \540
今回もナリナリのお話し。
★★☆
新本格魔法少女りすか2 西尾維新 講談社 \880
あえて小学生にしてるんだろうなあ。
★★★☆

ユージニア

恩田陸 角川書店 \1,700
もう一人の主役は都市金沢。
★★★☆

日本全国離島を旅する

向一陽 講談社 \780
地下河川、暗川に萌え。
★★★

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Missing 神隠しの物語
[甲田学人] 
★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\570) [Amazon] ※書影無し

首都圏郊外の学園都市羽間。私立聖創学院の高校生、空目恭一はある日忽然と姿を消した。それは恭一がかつて幼き日に体験した神隠しの再来なのか。残された仲間たちは捜索に奔走するがその行方は杳として知れない。伝承と都市伝説の間に見え隠れする異界への入口。異形のものたちは「物語」を伝って現世を浸食していく。

2001年刊行。作者の甲田学人は「夜魔 罪科釣人奇譚」で第7回の電撃ゲーム小説大賞の最終選考に残り、書き下ろしの本作でデビューを飾っている。人気シリーズとして成長しているらしく現時点で12巻 [Amazon] まで巻を重ねている。

学園ホラーシリーズの第一作。神隠しを主題として、怪談やら都市伝説を絡めて肉付け。「怪異」に対しての独自のアプローチは適度に新鮮味があってなかなか面白い。各キャラクターも典型的パターンが一通り揃えられていて手堅さを感じた。石畳、砂岩タイルの壁、壮麗な切妻屋根の洋風建築群が立ち並ぶ学園都市羽間。この雰囲気からはどことなくラブクラフトの作り出した架空都市アーカムを想起させられるのだけれどもやっぱり意識しているのだろうか。面白かったので続きも読んでみるつもり。[2005/03]

トーキョーワッショイ! [後藤勝] ★★★☆ 双葉社 (\1,524) [Amazon]

トーキョーワッショイ!

1999年にJリーグに登場したFC東京。泥臭い部活サッカーで東京旋風を巻き起こしたJ1初年の活躍。東京スタジアムが完成した2001年。チームの象徴アマラオの東京ラストイヤー2003年。増え続けるサポーター。年代別代表の輩出。そして2004年のナビスコカップ決勝へ。1999年から2004年にかけてのFC東京の軌跡を追うノンフィクション作品。

2005年刊行。筆者はフリーライター。サッカーを中心にサブカル系でいろいろ活躍している人らしい。FC東京関連の書籍としては2001年に出た荒川裕治が書いた『FC東京の挑戦』 [Amazon] 以来だから四年ぶりか。『FC東京の挑戦』はJFL時代から2000年のJ1昇格初年までを追いかけたドキュメント作品。本書は1999年から2004年にかけてのレビュー本だから、丁度その後の部分を補完する形になっている。よって二冊まとめて読むと"東京史"が手っ取り早く身につけられるのでオススメだ。

味スタ以降のサポである自分にとっては『FC東京の挑戦』は知られざる歴史であったのだけれども、本書で書かれている数々の事件は実際の試合をほとんど生で観戦しているだけに感慨もひとしお。ジュビロに真っ向から仕掛けて見事に撃墜された雨の国立。この時は仕事中抜け出して国立行っていたので、会社に戻ってから当時の上司にメチャ怒られたんだよな(遠い目)。2002年ホーム最終戦、福田の溝ダイブ事件。豪雨の中で行われたレアル・マドリード戦。極寒の丸亀でのアマラオラストゲーム。そしてまだ記憶に新しい2004年のナビスコカップ浦和戦。ヤバイ、懐かしさのあまりに目頭が熱くなってきた。

東京サポ以外の人間が読んでもきっと面白くは無いと思う。まあ、元々東京サポ向けかこの本は。こうした本が世に送り出せたことは喜ばしい限り。商売になると版元側で判断して貰えたわけだからね。毎年とは言わないので、数年おきでいいからこの手の本は出し続けて欲しいな。[2005/03]

君がいる風景
[平谷美樹] ★★★☆ 朝日ソノラマ ソノラマ文庫 (\495) [Amazon] ※書影無し

少年の日、自らの無力さ故に死なせてしまった美鈴の命を救いたい。二十五歳の高村哲哉は十年前の世界へとタイムスリップする。しかし過去に戻ったのは意識だけ、肉体はあの日と同じ十五歳のままだった。しかも時間移動の衝撃からか、哲哉の記憶からは美鈴の死に纏わる部分だけが抜け落ちていた。宿命付けられた少女の死。その運命を変えることは出来るのか。

2002年刊行。作者の平谷美樹(よしき)は1960年生まれ。名前で勘違いしがちだけど男性作家。学校についての描写に妙にリアリティがあると思ったら、現役の中学校教師らしい。なるほどね。しかし、2002年にもなって70年代ジュブナイルテイスト炸裂なカバーデザインをやってのけるソノラマって凄いと思う。渋すぎるのはいいけど、これじゃ今時売れないだろ。

時間遡り型ジュブナイル小説。過去に戻った主人公だが、意識は大人、肉体は子供という状態で物語は進行していく。設定として面白いのは肝心要のヒロインの死因について、主人公がさっぱり忘れている部分。美鈴が十五歳の夏に死んでしまうことは判っている、でもいつどこでどうやって死に至るかが判らない。都合が良すぎると言ってしまえばそれまでだけど、それによって生じる緊張感が物語のテンションを最後まで保ってくれていい効果をあげている。

大事なことは覚えていないくせに、比較的どうでもいい十年前の記憶は残っている主人公。二十五歳の目線で見つめる十年前の世界に向けられたまなざしには、過ぎ去った日々をいとおしむ気持ち、郷愁感が満ち溢れていて、高齢読者の涙を誘わずには居られない。さすがは四十代作家。このあたりのノスタルジアの匙加減は見事なもの。

終盤の展開はお約束的な予定調和路線。まあ、この話でアンハッピーだったら読者許さないでしょって気もするので、深く突っ込まずに素直に感動しておくべきかと。二十五歳の自分が培ってきた知識と経験が、十年の歳月を遡り「君のいる風景」を取り戻す。再び元の世界に戻ってきた主人公。過去と現在が一本の環となってつながる瞬間のカタルシスはなかなかのもの。[2005/03]

ついでに…… 
『クロノス・ジョウンターの伝説』 @梶尾真治<<こちらも時間メロドラマ。

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それでも警官は微笑う [日明恩] ★★★ 講談社 (\1,900) [Amazon]

それでも警官は微笑う

年々増え続ける密造拳銃。その流通ルートを解明すべく武本は今日も池袋の街を走る。捜査の過程で出会った宮田と名乗る男は厚生省の麻薬捜査官だった。拳銃と麻薬。国際社会の底知れぬ暗闇の中で二つの事件は繋がりを持っていた。警察組織から切り離されながらも、武本はコンビを組む潮崎と共にその謎に迫っていく。

第25回メフィスト賞受賞作品。2002年刊行。本来であればノベルスで出るのが通常だから、ハードカバーで出ている本書は破格の扱い。それだけ評価が高いということか。なんでも有りのメフィスト賞にしても、本作は珍しい程の社会派路線。あか抜けない街、池袋を舞台に泥臭く展開していく警察小説だ。登場してくるのはほとんど男のみ。熱いぜ。

硬派で生真面目な体育会系刑事と、ミステリ(特に警察小説)大好きなボンボンというミスマッチの妙を楽しむお話なのだが、もう一人の主役とも言うべき宮田の存在が思いの外大きくて主役ペアとのバランス取りに苦労している感がある。潮田の度を超えた脳天気さは重苦しい作品の雰囲気を和らげる存在にはなっているのだけれども、反面で重厚なハードボイルド世界を完膚無きまでにぶちこわしてしまっても居るわけでこれまた存在が微妙。コミカルに振るのか、殺伐に振るのか、はたまた両方やってみたいのか絞り切れていなかった。うーん、ハードカバーで出すほどかね。今後どれだけ筆力が上がるかどうかは未知数だが、続巻も出ているようなので手に入ったら読んでみたい。[2005/03]

ついでに……警察小説三冊 
『新宿鮫』 @大沢在昌 [Amazon] <<バイオレンス重視ならこれで。
『マークスの山』@高村薫 
[Amazon] <<警察組織の描写が嫌すぎる重苦しさ。
『RIKO 女神の永遠』@ 
[Amazon] <<セクシャル寄り。ここの警察も嫌な組織だ。

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冒険者・失格!
[関根博寿] ★★☆ アスペクト ログアウト冒険文庫 (\641) [Amazon] ※書影無し

城塞都市ヴァンクールに集った八人の冒険者たち。彼らは酒場で出会った謎の男の依頼を受ける。報酬は一人あたり100万GP!破格の条件にパーティは色めき立つ。依頼は三枚の地図を探すこと。かくして迷宮へ海へ辺境へと波乱に満ちた冒険の旅が始まる。TRPG「アドバンスト・ウィザードリィ」初のリプレイ本が登場。

1995年刊行。筆者は1968年生まれのゲーマー兼ライター。今は亡き懐かしのログアウト冒険文庫からの登場だ。『アドバンスト・ウィザードリィ』 [Amazon] はパソコン版の『ウィザードリィ べイン・オブ・ザ・ コズミック・フォージ(BCF)』『ウィザードリィ クルセイダー・オブ・ダークサーパント(CDS)』をベースにしたTRGP。最近はあまり見ない気がするけどリプレイ本って昔は良く出ていたよな。TRPGの競技人口って昔は多かったのかな。

TRPGをやらない人間がこの本を読んでしまう段階で既に間違い。TRPGのウィズって、ファミコンのウィズとはまるで別物なのな。BCFやCDSをベースにしているのもマニアック。呪文の名称からして違うので激しく違和感。終盤の壮絶な突っ走り具合にも驚いた。あんなの有りなのかよ??[2005/03]

女王の百年密室 [森博嗣] ★★★ 幻冬舎 幻冬舎ノベルス (\900) [Amazon]

女王の百年密室

サエバ・ミチルが迷い込んだ街は奇妙な場所だった。その王国は誰にも知られることなく100年もの間存続してきたのだと云う。人民を統べるのは美しき女王。争いもなく、貧困も飢餓もない理想郷での暮らし。ここでは死すらも存在しない。そんなユートピアで発生した「殺人」事件。閉ざされた女王の居室で一体何が起きたのか。

2000年に刊行された作品 [Amazon] のノベルズ版。2001年刊だから僅か一年でノベルズ送りとは幻冬舎も手が早い。その後2003年に幻冬舎文庫 [Amazon] 入り。更に2004年に新潮文庫版 [Amazon] も刊行されている。売れっ子ともなるとやはり扱いが違うのか。

未来の地球。外界から人工的に隔絶された異世界での密室殺人劇を描く。この国では死亡したり治癒不能と判断されると冷凍保存が施されることになっている。これは「永い眠り」と称され、将来の医療技術の発達に望みを託す。従ってこの世界では死は存在し得ず、死がない以上殺人という概念もありえない。という、特殊な限定条件の中での殺人について、外来者である主人公が思索を巡らすというストーリー。

この作者独特の、時折挿入される散文詩のような詩句がとにかく性に合わなくてダメ。ファン的にはここが持ち味なのにってところだろうから、読者として向いていないのかも。本筋としてのミステリ部分、密室殺人の真相はやっぱりというか、そりゃそうでしょというか、予想の範疇を越えない物足りない内容。主人公とその従者のロボットにはちょっとした仕掛けが施されていて、未来世界ならではのエスエフ的なギミックには意表を突かれた。この点は面白かったかな。[2005/03]

時の果てのフェブラリー
[山本弘] ★★★☆ 角川書店 スニーカー文庫 (\430) [Amazon] ※書影無し

1998年。突如として地球上の6ヶ所に発生した謎の重力異常地帯<<スポット>>。重力場の異常は低気圧の発生を促し、世界規模での気象変動が発生する。中心地帯の半径10マイル内外では電磁波誘導現象が発生。ありとあらゆる科学的調査は失敗に終わる。最後の切り札は超感覚知覚を持つ11歳の少女フェブラリーだけ。<<スポット>>の中で一体何が起きているのか。

トンデモ本 [Amazon] の人として知られる「と学会」の山本弘だが本来はエスエフ作家。本作は1990年刊行だが、2001年に徳間デュアル文庫から改訂版 [Amazon] も刊行されている。作者本人の解説サイトによると、こちらはかなり書き直しが入っているらしい。しかし後藤圭二版フェブラリーはイマイチ合っていないような気がする。

もし地球上に重力異常地帯が突然発生したら、という仮定でシミュレートされていく驚異の世界<<スポット>>。その特殊な場所では、重力も光もそして時間すらもねじ曲げられていく。文系人間なので詳しい理屈は全くわからないながらも、精緻な考証を受け構築された世界観はとても魅力的で秀逸。キャラクターの書き込みが甘かったり、ストーリーの進行が強引過ぎたりと惜しい部分もあるのだが、センスオブワンダーの輝きはそれを補って余りあるものがある。[2005/03]

追伸・こちら特別配達課
[小川一水] ★★★ 朝日ソノラマ ソノラマ文庫 (\552) [Amazon] ※書影無し

あの特配課が帰ってきた。過剰な配達設備で迅速丁寧な配達業務に邁進する彼らに危機が訪れる。郵政省が無くなり、新たに郵政事業庁の長官となった水無川統一は機械化を促進することで郵便業務の省力化を計ろうとしていた。行革の波に晒された特配課は最新システムG-NETとの対決を余儀なくされる。圧倒的に不利な状況の中で彼らが最後に選んだ道とは……。

2001年刊行。1999年に刊行された『こちら郵政省特配課』の続編。物語世界よりも、よもや現実世界の方が進行が早くなってしまうとは。郵政省は無くなって、いまや日本郵政公社(だっけ?)だし、更なる組織改革をするとかしないとか揉めている最中。目の付け所としては慧眼と呼ぶべきなのだろうが、書きにくかっただろうな、この話。こんな地味なネタで続編を書かせてくれるソノラマも偉い。

郵政事業庁長官水無川の肝煎りで導入されたG-NETとの対決をベースに、箱根の街道バトルやら、京都での郵便配達合戦、そして主人公とヒロインの恋愛模様に決着もつけたりと盛りだくさん。あちこちに脱線しながらも、最後はすんなり綺麗にまとめてしまう手際は達者なものだと思う。特に京都ならではの特殊事情を背景にした配達競争は面白かった。ラストの雪山登山は明らかにファンタジーだけど、前作よりも明らかにエンターテイメント作品としての出来は良くなってる。[2005/03]

初恋 グインサーガ外伝19 [栗本薫] ★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540) [Amazon]

初恋

クリスタル公爵としてさっそうと宮廷デビューをはたしたアルド・ナリス。不幸なおいたちをものともせず、いかんなくその実力を発揮するすがたに周囲の声望は日に日にいや増すばかり。19歳をむかえたナリスに情人のフェリシア婦人はある賭けをもちかける。さえない田舎貴族の娘クリスティアを誘惑すべくナリスは行動を開始するのだが……。

外伝の19巻。2004年刊行。18巻に引き続きナリナリのお話し。過ぎ去りし日々。若さ故の蹉跌に思い悩むナリスさまの憂いに満ちた日々の徒然を描く。作者の自キャラ萌え炸裂が気にならなければ、ファン的には喜んで読めるのではないかと。しかし、醜いもの、劣ったもの(と作者が判断したもの)に対してはホントに容赦無いね。一話限りの使い捨てキャラとはいえあんまりだ。[2005/03]

新本格魔法少女りすか2
[西尾維新] ★★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\880) [Amazon]

新本格魔法少女 りすか2

五つの称号を持つ魔法使い影谷蛇之を激戦の末に退けた創貴とりすか。ニャルラトテップ水倉神檎の手がかりを得るべく、影谷の残したディスクを追い求め廃病院を訪れる二人。そこで出会ったのは天敵と呼ぶしかない異形の存在だった。ツナギと名乗る少女に秘められた恐るべき能力。彼らは絶体絶命の窮地から逃れることが出来るのか。

2005年刊行。りすかシリーズ二作目。「ファウスト」のVOL.3とVOL.4に掲載された二作品に書き下ろし一編を加えたもの。

ようやくこの世界にも読み手として馴染んできたのでサクサク読めた。お仲間キャラも増えて、手に汗握る少年ジャンプ的魔人バトルを素直に楽しめるようになってきた。小学生離れした野望を持つ主人公。今回は僅かではあるけれども、そのモチベーションの秘密の一端が明かされ、悲劇の予兆を感じさせてくれている。いーちゃんの秘密も相当引っ張っているくらいだから終盤まで当分秘密のままなんだろうな。

スゴイ敵登場⇒倒す⇒仲間!という由緒正しい少年漫画の王道を着実に歩んでいく第二巻。ツナギのキャラクターは能力的にもビジュアル的にもなかなか秀逸。きっと次巻では「仲間になった途端ヘタレになる」「新キャラに速攻倒されてその強さを引き立てる」「ここはアタシに任せて先に行け!と叫んでその場を守って憤死」というパターンを踏襲するのでは無いかと想像。魔法の国長崎県(笑)に何があるのか興味は尽きない。[2005/03] ⇒次巻

ユージニア [恩田陸] ★★★☆ 角川書店 (\1,700) [Amazon]

ユージニア

それは遠い日の記憶。丸窓の家で起きた惨劇。毒物による無差別大量殺人。犯人と目される男は死に。いちおうの決着を見た事件ではあったが、未だその真実は謎に包まれたまま。あの日、あの時、あの場所でいったい何があったのか。残された人々の証言が、闇に潜む隠された真相を少しずつ明らかにしていく。真犯人は存在するのか。

「KADOKAWAミステリ」2002年8月号〜2003年5月号、及び「本の旅人」2003年7月号〜2004年9月号にかけて連載されていた作品を加筆修正の上で単行本化したもの。書籍化に際して新章の追加と、一部の章の並び替えが行われている。恩田作品の傾向として、凝った装幀が挙げられるが本作はその究極。両面印刷の表紙、微妙に角度がずれた本文、複数フォントの使い分けと、デザイナーや担当者、そして印刷屋は死ぬ思いをしたのではなかろうか。怖ろしいまでに手のかかったデザインなのでそれだけでも手に取る価値がある。

多くの謎を残したまま遺棄されてきた、とある地方都市で起きた無差別殺人事件。生存者。目撃者。刑事。事件に巻き込まれた人々の証言が少しずつその真相に光を当てていく。謎に対して直接的なアプローチを行わず、敢えて多数の視点で間接的な描写を積み重ね、、逆にその真相を浮き彫りにしてみせる手法は『Q&A』で見せたやり方に近い。

様々な可能性を仄めかしながらも、一定の着地点は示してみせて、それでいて全ては語りきらないという、見せる部分と見せない部分のバランスの取り方が絶妙。読み終わっても未だ作中世界に取り残されているかのような不安定感は残るのだが、物語世界から抜け出したくない読み手に取ってはそれは嬉しい仕掛けなのかもしれない。[2005/04]

ついでに……同じく浮き彫り型作品の名作を二作 
『火車』 @宮部みゆき [Amazon] <<震撼するラストシーン。
『白夜行』@東野圭吾 
[Amazon] <<滴りそうな悪意に痺れる。

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日本全国離島を旅する
[向一陽] ★★★ 講談社 講談社現代新書 (\780) [Amazon]

離島を旅する 現代新書1727

島国日本。この国には無数の島々が浮かび、そこでは多くの人々がそれぞれの暮らしを営んでいる。島には、本土の都市部では失われてしまった大切な何かが今でも残されているのだ。沖縄県与那国島からスタートし、奄美、屋久島、甑島、壱岐対馬と時計回りに列島を周遊。伊豆諸島を経て小笠原へと続く離島を歩いた旅の紀行文。

2004年刊行。筆者は1935年生まれ。元共同通信社勤務で日本山岳会の会員。山岳書の著作が多い。

離島への憧れは昔からあって、島好きのバイブルとも言うべき『SHIMADAS』 [Amazon] はもちろん持っている。が、その割には行動力が無くて、未だ島と呼べる場所に足を踏み入れたのは東京湾の猿島くらい(ヘタレ)。資金の問題もさることながら、往復の足の確保も大変だし、ちょっと天気が荒れたら戻って来られないしと、島行はなかなかカタギの人間には難しいものなのだ。そんな、沖縄ですら行ったことのない自分に取っては本書は垂涎の一冊。一章あたりのボリュームが短くて物足りなかったりもするのだが、なるべく沢山の島を紹介しようという意図なのだろうから仕方ないか。年を取ったらこんな風に島巡りしてだらだら過ごしたいものだ。[2005/03]

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