蒲公英草紙 常野物語 [恩田陸] ★★★☆ 集英社 (\1,400) [Amazon]

20世紀初頭。宮城県南部の山村。少女峰子は槙村家の一人娘、聡子の話し相手としてお屋敷に招かれる。古くから続く大地主の家柄で、地元の名士でもある槙村家には様々な人々が集う。ある時突然屋敷を訪れ、邸内に住まうことになった春田家の四人には謎めいた雰囲気が付きまとっていた。「常野」と呼ばれる彼らには不思議な能力があるようなのだが……。
2005年刊行。「青春と読書」誌の2000年1月号から2001年2月号にかけて掲載された作品を単行本化したもの。連載終了から四年を経てようやく出版。『光の帝国』に続く「常野物語」シリーズの二作目。『光の帝国』の「大きな引き出し」で登場した春田家の先祖が登場。家族構成が同じなので、一瞬同一人物なのかと深読みしたくなった。
少女の目を通して明治の一時代を切り取った作品。蒲公英草紙とはかつて少女が綴っていた日記帖の名称。老境に入った主人公が輝ける過ぎ去りし日々を追想する形式で物語は進行していく。長編というにはやや物足りなく、中編+α程度のボリュームか。「常野」一族の扱いはあくまでも事象の傍観者。
なかなか出ないことでファンの気を揉ませていた一冊だけに、改稿がどのくらいあったのかが非常に気になるところだ。現代と異なる時代を描くには残念ながら、表現に重みが無いというか、時代の匂いがあまり感じられなかったことが残念でならない。作者的にもこの出来には未だ納得がいっていないのではなかろうか。それから絶望の中で閉じていくラストも唐突感があった。こういう終わり方をしたからには、峰子の問いに応えるだけの「続き」が欲しいところなんだけど、いずれ書かれる機会があるものと信じたい。[2005/07]
日本の偽書 [藤原明] ★★★ 文藝春秋 文春新書 (\680) [Amazon]

偽書は何故人々の心を惹き付けて止まないのか。記紀以前の書として喧伝されてきた、「上記」「竹内文書」「東日流外三郡誌」「秀真伝」「先代旧事本紀」「先代旧事本紀大成経」の六書を取り上げ、その発生から流布に至る過程、誰が作ったのか、そして現代に至るまで命脈を保ち続けてきたメカニズムを明らかにしていく。
2004年刊行。筆者は1958年生まれのノンフィクションライター。古今有名な六つの偽書を題材に、怪しげな文献が制作者の意図すらも越えていつのまにか一人歩きしていく謎について、新書のボリュームでコンパクトにまとめた一冊。
当然のことながら史学の人たちにとっては偽書なんてものは鼻持ちならない、胡散臭い存在でしかないのだろうけど、小説読み、それも伝奇ファンにしてみればトンデモな設定やハッタリに一筋のもっともらしさを付与してくれる大切なアクセント。でも、名前だけは知っていても、意外にその成立過程や、内容については知らないことが多いよね、ってことで本書を手に取った次第。平安期に作られ、以後数百年に渡って真書だと信じられてきた「先代旧事本紀」の存在には相当ドキドキさせられた。
有名な六書をテーマとして、どうして偽書なのか、なぜ偽物なのかをつまびらかにしていくのだが、結論に至るまでの展開が性急に過ぎる。とにかくこれは偽物なんだ!ってコテンパンにやっつけてしまうのだけど、その根拠が哀しいかな素人には理解出来ない。もう少し丁寧な解説や注釈が欲しかった。偽書そのものの内容についても、ボリューム不足で不満が残るところ。[2005/07]
マリア様がみてる 薔薇のミルフィーユ
[今野緒雪] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\419) [Amazon]

「令ちゃんがお見合い!」衝撃の事実にショックを受けた由乃は有馬菜々を伴って現場に乗り込むことに……。下校時に謎の男に拉致された志摩子。一人残された乃梨子は意外な人物に遭遇して……。「試験休みに、遊園地に行きましょうか」祥子からの突然の誘いに動揺する祐巳。でも久しぶりのデートには思わぬ邪魔が入って……。三つのエピソードを収録した短編集。
2005年刊行。マリみて十九作目。短編集なので本編は進まないのかと思っていたら、案に相違して意外にも新展開あり(黄)、重要エピソードあり(紅)と見逃せない巻だった。その分頁数の関係なのか白の人たちのエピソードがワリを食ってボリュームが薄くなってしまっのがちょっと残念。乃梨子VS聖さまというツーショットが実現したのは喜ばしいけど。
今回の注目はやっぱり柏木さん。当初は祥子の婚約者というキーパーソンだったのに、段々扱いが低くなっていき、いまやいい人だけど変態さん、ってくらいの微妙な扱いだった彼の存在が今回で俄にクローズアップ。最後に残された祐巳の妹選びともネタ的に絡んでくるのだろうか。考えてみると、祥子たちもあと三ヶ月で卒業なんだよな。って、気を揉ませておいて、本編は相変わらずのまったり進行なんだろうけどね。[2005/07] ⇒次巻
世界最大のこびと
[羽田奈緒子] ★★★ メディアファクトリー MF文庫 (\580) [Amazon]

妹、小百合のもとへ迷い込んできたのは正真正銘の"こびとさん"だった。パウエルと名乗った彼女は「世界最大のこぴと」の宿命を背負っているのだという。なりゆきから奇妙な同居生活が始まるのだが、パウエルの命を狙う刺客がこびとの国から差し向けられる。「世界最大のこびと」の宿命とはいったい何なのか?
2004年刊行。MF文庫Jライトノベル新人賞受賞作品。
ハートウォームな癒し系こびとさん物語。のほほんとした優しい雰囲気で、起きる出来事や登場人物もどこかコミカル。ちょっとだけシリアスな要素も盛り込んで適度に緊張感も高めてみました、という具合で無難な出来。パウエルがとにかくかわいいので、こびと萌え属性の人には喜ばれるのではないかと。これはイラストの良さもかなりあるのだろうけど。[2005/07]
激突 キル・ゾーン [須賀しのぶ] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\495) [Amazon]

月と火星の間にあるコロニーE。そこで起きた自衛軍の反乱。機に乗じて脱出を計ろうとするキャッスルたちだったが、彼らは自衛軍の虜囚となってしまう。成り行きから兵士の一人として戦場に投入されてしまったキャッスルは、駐留部隊との戦いの最前線に立たされる。一方、火星政府の元首ユージィンは、自らの息子ラファエルをコロニーEに送りこむのだが……
1998年刊行。キル・ゾーンシリーズの12作目。前巻から始まっている第二部としてはこれが二冊目。
今のところはマックスと共闘関係にあるのだから仕方がないのだろうけど、キャッスルの体内に埋め込まれた爆弾、というせっかくの面白い仕掛けが効果的に使われていないのが残念。このギミックが物語の終盤で効果的に使われてくれることを祈りたい。お話し的には比較的地味な存在だった、キャッスルの母親に注目が集まる。秘められた彼女の過去には今後期待したいところ。キャッスルパパが単なる小物に見えて仕方がないので、ここでもう一捻り欲しい。[2005/07] ⇒次巻
宴 キル・ゾーン [須賀しのぶ] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\457) [Amazon]

火星からコロニーEへと派遣されたラファエルは圧倒的な力で瞬く間に叛乱を鎮圧してしまう。凱旋を果たした彼を待っていたのは、意外にも民衆の熱狂的な歓迎だった。キャッスルとエイゼンは情報部長官ヴィクトールの監視下に置かれ、ラファエルとは会うことが出来ない。そこでキャッスルは亡き母の過去について知らされることになる。
1998年刊行。キル・ゾーンシリーズの13作目。第二部としてはこれが三冊目。いよいよ火星に到着。前巻が派手にドンパチやらかしたので、今回は陰謀編というか、今後の展開に備えて伏線を地味に貼りまくる巻。ドレスアップモードのキャッスルにも萌えておくべきところだが、呪われた宿命から逃げずに真摯に立ち向かおうとするラファエル君の成長ぶりがほんのり泣けた。物語は再び地球に舞台が移りそうな雰囲気。これでかつてのお仲間たちとの再会(or敵対)へと話が進んでいくのだろう。
平行シリーズの『ブルー・ブラッド』 [Amazon] も読んでおかないとそろそろ話についていけないような気がしてきた。今度ブックオフに行ったときにでも捕獲しておこう。[2005/07] ⇒次巻
聖騎士スパーホーク タムール記1
[ディヴィッド・エディングス] ★★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\621) [Amazon] ※書影無し
聖騎士スパーホークは幾多もの危難をくぐり抜け、危機に瀕したイオシア大陸の人々を救った大英雄。エレニア王女エラナの夫として迎えられ、多忙ながらも幸福な日々を過ごしていた彼だったが、平和な日々は長くは続かなかった。隣国ラモーカンドでの叛乱。各地から寄せられる不穏な噂。聖都カレロスを訪れたスパーホーク一行は、そこで意外な人物に出会うことになる。
1995年刊行。オリジナルの米国版は1992年刊行。「ベルガリアード物語」 [Amazon] 「マロリオン物語」 [Amazon] に続くデヴィッド・エディングスの新ファンタジーシリーズ。 実際には本シリーズに先だって「エレニア記」 [Amazon] なる作品群が存在し、何故かこちらは角川から出ている。「タムール記」単独で読んでも一応問題は無いが、あくまでも「エレニア記」を読んでからこちらにとりかかるのがベター。「タムール記」の冒頭には「エレニア記」のあらすじが書いてあって、ウッカリ全部読んでしまった。途中で気づけよ>>自分。
家族や仲間たちとパーティを組んで各地を放浪。巨大な悪との壮大な戦いを、人間味豊かに雄大な筆致で描いていく。基本パターンは「ベルガリアード物語」や「マロリオン物語」と変わらない。ワンパターンといえばワンパターンなのだけれども、慣れてくるとそれが快感に変わってくるから不思議。
続編なので、のっけから登場人物がもの凄く多い。しかもほとんどがたいした説明もなしに登場するので、誰が誰だか未だに判っていないキャラクターもいる。この点でも絶対に「エレニア記」から読むべき。二巻も既に購入済みだけど、まずは「エレニア記」を探して先に読んでしまおうかと思う。[2005/07]
僕の見た「大日本帝国」
[西牟田靖] ★★★☆ 情報センター出版局 (\1,600) [Amazon]

サハリン、台湾、朝鮮半島、旧南洋諸島、中国東北部。20世紀半ばまで「大日本帝国」と称され、日本の統治下に置かれていた地域は現在ではどうなっているのか。未だ各地に残る鳥居や旧日本時代の建築物の数々。そして目に見えない思想、文化、言語の痕跡。流暢な日本語を操る老人たち。残された日本人。「日本の足あと」を探す旅が始まる。
2005年刊行。筆者は1970年生まれのライター。世界の50もの国を探訪。離島の訪問数も100を越える。タリバン支配下のアフガニスタンや空爆直後のユーゴスラビア、国後島への渡航などにも挑戦しており、旺盛な行動力には驚嘆させられる。一つ間違えればいつ死んでいてもおかしくはなかろうに。今回の著作については足かけ四年にも及ぶ取材の総決算。言葉も通じないサハリンに原チャリ一つで乗り込む度胸には賞賛を禁じ得ない。
その行動力と共に驚かされるのが、その目線のフツウさ。この手の行動をする人間って、過剰に右か左に考え方が偏っている印象が往々にしてあるのだけれども、自虐的になるでもなく、一方的に見下すわけでもなく、この筆者は見たもの聞いたものを淡々と受け入れている。歴史的知識についても至ってフツウの日本人で、戦中戦後の知識はほとんど無し。結果として市井の一般人的な感覚から見た「大日本帝国」探訪記となっていて、妙な気負いがない分素直に読める。戦後60年。戦時を生きた人々が徐々にこの世を去り、往時の建築物も次第に失われていくであろうことを考えると、これは非常に貴重な記録と言えるのではないだろうか。[2005/07] ⇒次巻

サイ国の首都、ファロンは水の都として知られ、砂漠の真珠と呼ばれ讃えられてきた。しかし水の神殿の巫女姫が何者かによって暗殺され、それ以来全く雨の降らない日々が続く。新たな巫女姫を選ぶため42人の舞姫が集められ、親友同士であったサヒャンとリランも候補として選ばれる。舞が披露される大祭を前にして、異常なまでの執念を燃やすリランに不安を覚えるサヒャンだったが……。
1995年の9月と10月に連続して刊行された作品。金蓮花としては初めての無国籍ファンタジー。架空の王国を舞台とした魔法あり、ロマンスあり、アクションありの王朝絵巻。サヒャン、リランの舞姫コンビに、ヨゥンとカイエンの主従コンビを加えた四人がメインキャラクター。
復讐に燃えるリランのキャラクターが鮮烈かつ可憐で圧倒的に目立っている分、第二ヒロインのサヒャン(ほとんど寝てるだけ)の影が薄すぎるのが惜しい。謎解きのためとはいえ、カイエン視点の部分が長すぎて全体のバランスを欠いてしまった感がある。そしてなによりも残念なのは終盤の展開が急ぎすぎなこと。特にヨゥンは重要なキャラクターのわりには出番が少なくて、細部の作り込みが足りない分、ラストの彼の行動に説得力を与えることが出来ていない。続編にもつながる大事な部分であるだけにこれは勿体ないなあ。[2005/07] ⇒次巻

ファロンを襲った大災厄から18年。カイエン王の治世。セナルは牧場を経営するツオラ家の次男坊。牧場を訪れた名門ラ・シッド家の貴公子ヨゥンはセナルの愛馬を譲って欲しいと懇願する。騎射による勝負に敗れ、そのまま従者としてヨゥンに同行することとなったセナル。北の辺境キルリンでの日々が始まるが、次第にセナルはヨゥンに心惹かれていく……。
1996年の2月3月4月と三ヶ月連続で刊行された作品。水の都の物語から18年後の物語。シリーズとしては第二弾ということかな。カイエンは国王になり、サヒャンは王妃兼巫女姫に。前作のラストでの大洪水からも立ち直り、サイ国は新たな繁栄の時を迎えようとしている状態。
超絶美形でしかも名前がヨゥン。それなのに姓はラ・シッドと怪しいことこの上ないヒロイン?に対して、相手は男なのになんで?といぶかりながらもどうしようもなく惹かれていくセナルクンの戸惑いを楽しめるのが前巻。ああ、とうとう金蓮花もそっち系の話書いちゃうのかと思っていた読者を、もの凄い大技どんでん返しでビックリさせるのが中巻。エエエ、そんなのありなのかよ。ちょっとこれには驚いた。
で、ラブラブ確定してからは互いの身分の差に悩みすれ違っていく、王道のすれ違いロマンスに突入していくのだが、ここいら辺は当たり前すぎてやや退屈。下巻はそんな障害をも乗り越えて、その愛を成就させていく大団円な展開なんだけど、ご都合主義が酷すぎてイマイチ乗り切れない。<<邪気>>の存在がお話しの流れから浮いていて、唐突な印象が強かったのも原因の一つかな。ヨゥンの正体がバレルところまでは抜群に面白かったんだけど。[2005/07] ⇒次巻
陽炎の砂宮 月の迷宮 陽の迷宮
[金蓮花] ★★☆ 集英社 コバルト文庫 (\534) [Amazon]

皇太子領での多忙な日々を送っていたリランはある晩不思議な夢を見た。金の砂の上で泣いている銀の髪の女……それは凶夢なのか。そして水の都ファロンでは、水の巫女姫サヒャンが奉納舞の最中に突如倒れ意識不明に陥る緊急事態が発生していた。事件の謎を解く鍵は草原の国ソマルにあり!ヨゥンに姿を変え、リランはセナルと共に旅に出る。
1996年11月刊行。『月の迷宮 陽の迷宮』の続編。前巻ではめでたく相思相愛のハッピーエンドを迎えたリランとセナル。この二人のその後を描いた作品。
が、どちらかというと彼ら二人は脇役的な扱いで、メインのカップルは別にいるという、重心がぶれがちでどっちつかずな内容になってしまっている。リランとセナルの関係にそれなりの解決をつけてしまっただけに、話の作り方が難しかったのだろうか。結局このシリーズは以後続巻無し。一つ前で止めておけば良かったのにと思わないでもない。[2005/07]
定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?
[三戸裕子] ★★★★ 新潮社 新潮文庫 (\590) [Amazon]

一列車辺りの遅延は1分未満。世界でも稀な精度で運行している日本の鉄道システム。定刻通りに発車し、定刻通りに到着することを前提に動いている社会では、僅か数分の遅延すら許されない。膨大な数の車両を遅滞なく運行させる巨大システムはどのように作られているのか。そして過剰なまでの正確さを求める社会はどのようにして成立したのか。システム、環境両面からその謎に迫る。
2001年に交通新聞社より『定刻発車 日本社会に刷り込まれた鉄道のリズム』 [Amazon] として刊行されていた作品の文庫版。文庫化にあたり改題、加筆、改稿が施されている。前から決まっていた事なのだろうけど、折しもJR西日本の脱線事故があっただけにタイミングの良すぎる文庫落ち。鉄道を通して見た日本人論としてなかなかの力作。
本書は二部構成となっていて、第一部では定刻発車という日本独特の文化を生成するに至った環境について述べている。時間を守って行動することが当たり前の生活規範になっている日本人。参勤交代制度や、時鐘、梵鐘等による時報システムの存在、その根元を江戸時代以前にまで遡って捉えようとする着眼点がとてもユニーク。
そして第二部では、秒刻みで正確さを争う鉄道システムがどのようにして作られ、維持されているのかを明らかにしていく。日本の鉄道が正確さと安全を守るためにどれほどの膨大な手間とコストをかけているか。保線、ダイヤ作成、車両整備、人員育成、本書で紹介されている具体例はその一部に過ぎないのだろうが、そのあまりの奥の深さに読んでいて気が遠くなってきた。
今回のJR西日本の事故については乗務員の教育がどうだとか、利益追求の企業姿勢がどうだとか、JR西日本もバカスカ叩かれていたけど、根底には数分の遅れすら許容出来ない日本人の国民性があるわけで、これは一朝一夕になんとかなるものではないだろうな。[2005/07]

種子島の遙か西、南洋の孤島伊栗島。多くの隊員たちが揃う中で、訓練中に忽然と消え失せた小銃。自衛隊史上空前の不祥事を解決すべく、僻遠の駐屯地を訪れた朝香二尉と野上三曹。優秀な指揮官。生真面目な隊員たち。人当たりの良い島民。犯人はどこに居るのか。事態を完璧に秘密裡に解決せよとの難題に、朝香二尉はある結論を導き出す。
2001年刊行。第14回メフィスト賞受賞作品『UNKNOWN』に続く自衛隊ミステリの第二弾。
ワトソン役である野上三曹の一人称視点と、主に基地側の人間をみつめる三人称の視点とが交互に描かれて物語は進行していく。戦えない軍隊「自衛隊」が抱える様々な問題点、矛盾、隊員たちの憤懣やる方無い心情をつぶさに描きつつも、謎解きはあくまでもロジカル。事件の背後に横たわる巨大な社会問題まで浮き彫りにしてみせるという達者な書きっぷりには前作と較べても進歩を感じさせられた。上手くなってるね。[2005/07]

「いま、うまくいっていることはなに」「くだらないアイデアを5個言ってみて」「正しい答えを探そうとしてない?」「悩んだら質問で解決する」「いま、言わなかったことはなに?」。若くして単身アメリカに渡りシリコンバレーでのITビジネスで成功を収めた筆者によるコーチングマニュアル。単純かつ明快な31個のすごいやり方。
2004年刊行。『すごい会議』に先立って出ていた本。大橋禅太郎のプロフィールは本人サイトでも見て貰うにして(胡散臭そうだが)、もう一人の筆者、倉園佳三は元(現?)ミュージシャンにして、元編集者で、現在は独立してフリーライター。本作での二人の役割分担は、大橋が考えていることを、倉園がまとめて判りやすく綺麗な文章で書くという形。
『すごい会議』のプロトタイプとでもいうべき内容。あちらを読んでいるとあまり目新しいことは出てこない。その分エッセンスが抽出されているのでやることが明確で良いのかも知れない。奇数頁でテーマ設定、裏の偶数頁でその解法が提示されている。これもシンプルで判りやすい。[2005/07]
呪禁局特別捜査官 ルーキー [牧野修] ★★★ 祥伝社 ノン・ノベル (\838) [Amazon]

養成過程を終え、新人呪禁官としての第一歩を踏み出した葉車創作(ギア)は、慣れない任務の中で未だ本来の力を発揮できないで居た。<クトゥルー>と名付けられた世界初の霊的発電所での相次ぐ呪的災害。発電所の崩壊を目論むサイコムウに、狂信的な科学信奉者集団、科学戦隊ボーアマンの介入。ギアたちは空前の大災害を防ぐことが出来るのか。
2003年刊行。『呪禁官』の数年後。晴れて新人呪禁官になったギア君の活躍を描く。前作でのお友達グループは呪禁官にはなれなかったものの、立場を変えて再登場。悪役軍団の皆さんもちゃんと出てくるので前作から読んでいるとより楽しめると思う。それにしても龍頭先生の扱いはいかにも牧野修らしい。鬼だよあんた。イッちゃってる科学信仰の皆さんも健在で、科学戦隊ボーアマンの暴走ぶりは見事すぎる出来。歌まであるし(笑)。二年に一冊は少ないので、出来れば年に一冊は出して欲しいところだ。[2005/07]

15世紀のイタリア。聖遺物、奇跡の香炉を巡るミラノとフィレンツェ両教会の暗闘。高名な建築家アッラマーニが、自ら設計し建造した城館で事件は起きた。城の外壁に吊されたアッラマーニの遺体。それは犯罪なのかそれとも神の怒りなのか。ミラノ宰相ルドヴィコは事態を打開すべく一人の男を送り込んだ。その男の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。
2003年刊行。「小説推理」誌の2002年7月号から2003年4月号にかけて連載されていた作品を加筆修正の上で単行本したもの。ライトノベル書きかと思っていたけれども、一般誌にも連載持っていたのか>>三雲岳斗。
歴史上の有名人物を探偵役にという趣向はよくあるパターンだけど、今回は若き日のレオナルド・ダ・ヴィンチが登場。万能の天才という名に恥じない変人ぶりを期待したいところだが、御手洗とか京極堂みたいなひねくれ者を見慣れてきてしまうと、あれ、意外と普通の人って感じでちょっと物足りなかった。せっかくダヴィンチを使ったのだから、美術ネタやそっち方面の蘊蓄をもっと充実させて欲しかったな。オチとしての物理トリックは大がかりに過ぎて、誰か気付けよってツッコミを入れたくなるところだけど、宗教>>>>科学の時代としては、こんなものだろうか。それから城の立面図が最後に欲しかった。平面図だけだと納得度がイマイチだ。[2005/07]
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