2006年04月

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
マリア様がみてる
くもりガラスの向こう側
今野緒雪 集英社 \419
話進まねえ。
★★★
五人姉妹 菅浩江 早川書房 \700

『永遠の森』の続編も収録。

★★★☆

「感動」禁止!

八柏龍紀 KKベスト
セラーズ
\760
このタイトルは煽りすぎ。
★★★

大人のケンカ必勝法

和田秀樹 PHP出版 \438
基本を判り易く。
★★★
さよなら妖精 米澤穂信 東京創元社 \1,500
「哲学的意味がありますか?」にしんみり
★★★☆

ユダヤ人とドイツ

大澤武男 講談社 \631
ゲットーって中世からあったのか。
★★★

竜の眠る海

金蓮花 集英社 \573
イラストが耽美過ぎ。
★★★
真・魔導物語外伝
金色の勇者
織田健司 エンター
ブレイン
\640
キャラが薄い。
★★☆

写真で読む
僕の見た「大日本帝国」

西牟田靖 情報センター
出版局
\1,600
第二弾が出た。
★★★☆

ブギーポップ・イントレランス
オルフェの方舟

上遠野浩平 メディア
ワークス
\530
しんみりいい話。
★★★
ハードボイルド・エッグ 荻原浩 双葉社 \695
「ヘルプニャー」は笑った。
★★★

夏期限定
トロピカルパフェ事件

米澤穂信 東京創元社 \571
シャルロット食べたい。
★★★☆

ウェブ進化論

梅田望夫 筑摩書房 \740
でもWeb2.0ってよくわからない。
★★★☆

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マリア様がみてる くもりガラスの向こう側
[今野緒雪] 
★★★ 集英社 コバルト文庫 (\419) [Amazon]

マリア様がみてる (くもりガラスの向こう側)

瞳子に告白するも見事に玉砕。ロザリオを突き返された祐巳は傷心のまま年末年始を迎える。お正月の二日目には恒例行事となった小笠原邸での泊まりがけの新年会が開催される。祥子と祐巳、令と由乃、志摩子と乃梨子、三薔薇のスールが全て揃い、楽しくも賑やかに会は進行していく。一夜明けた翌日。祥子は衝撃的な事実を皆に告げるのだが……。

2006年刊行。マリみて21作目。前回、瞳子に振られてしまったブロークンハート状態の祐巳。さてその続きは!と読者に意気込ませておいて、見事なまでに平穏まったりなお正月編が展開。ここまでストーリーが進まないともう呆れるしかないというか、これはこれでもうスタイルとしてアリなのかもと、最近ではまったり肯定派になってきてしまった自分が居て怖い。洗脳されてる?

昨年に引き続いての小笠原家での「なかきよ」エピソード。去年一度やってるだけに新鮮味に乏しいけど、3薔薇カップルのいちゃいちゃぶりを純粋に楽しむ巻と割り切れば許せるか。地味にお姉さんとして成長している志摩子が個人的萌えツボ。この子が一番変わったよね。[2006/04] ⇒次巻

五人姉妹 [菅浩江] ★★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\700) [Amazon]

五人姉妹

幼い頃に人工臓器を埋め込まれた華那子。彼女には四人のクローンが存在した。万が一に備えての臓器のスペアとして……。成長した主人公が姉妹との再会を果たす表題作をはじめ、ネットに蔓延する奇妙なうわさ話の真相を描く「夜を駆けるドギー」、女形であった父親が老いてAIに託した想いを描く「賤の小田巻」他、九編を収録した短編集。

2002年に出た単行本 [Amazon] の文庫版。2005年刊行。ベストSF2002で国内編14位に入った作品。早川からは三冊目の作品って、書こうとしたら帯に二冊しか既刊が書いていなくてショック。おいおい『雨の檻』 [Amazon] が無かったことにされてるよ!あの名作が絶版なのかよ。非道い、非道すぎるよ。

菅浩江はスタイルとして短編の方が合っているように思える。それも耽美系よりもエスエフ系の方が個人的には好み。耽美系の作品はロジカルで割り切れない情念どろどろの部分が重すぎて読んでいて疲れてしまうのだ。今回はエスエフの短編集。ネット、クローン、人工知能、ヴァーチャルリアリティ、ロボットと様々なエスエフ的ガジェットを菅浩江ならではのアレンジで料理してくれている。一番良かったのは「賤の小田巻」。芸の世界と父と子の相克。そして人工知能がもたらす奇跡。まさにエスエフでしか書けない幕の引き方に鳥肌が立った。電車の中で読んでしまったのを激しく後悔したよ。[2006/04]

「感動」禁止! [八柏龍紀] ★★★ KKベストセラーズ ベスト新書 (\760) [Amazon]

「感動」禁止!―「涙」を消費する人びと  ベスト新書

オリンピック、ワールドカップ、冬ソナ、セカチュー、電車男。今の時代は「感動」に席巻されている。だがしかし待って欲しい。みんなで同じモノを見て、感動をありがとう!勇気をもらいました!と口々に叫ぶ姿には違和感を感じないか。大量生産される「感動」を安易に追い求める風潮はいかにして生まれたのか。日本人社会の変遷を「消費」をキーワードに読み解く。

2006年刊行。筆者の八柏龍紀は1953年生まれ。慶大卒の社会学者。60年代の団塊世代から始まる大量消費の時代。日本人が消費してきたのはモノだけでない。感動すらも貪欲に追い求め貪るように消費し続けてきたのではないか、という問いかけの書。

本来感動とは外から与えられるものではなく、自身の裡から発生すべきモノだった。しかし最近ではドラマやスポーツイベントに対して「さあ感動させてくれ!」と受け身になって待ちかまえている人々が多い。それって実は恥ずべきことなんじゃないのって、筆者は説くわけだ。確かに、浅田次郎の本を買ってきて「よっしゃ泣くぜ」と気合い入れて読んでみたり、毎週のように贔屓チームの応援にサッカースタジアムに駆け付けている身としては少々身につまされる内容だった。

でも、日本人の消費行動が変化してきているのは判るのだが、それを感動を追い求める風潮と結びつけてしまうのはさすがに性急に過ぎると思うな。日本人が感動好きなのは今も昔も変わらないのではないだろうか。大勢でうわんうわん泣いている風潮が、この筆者的に気にくわないのはよく分かったけど、この人だったら高度成長期でも同じ考えを持ちそうだ。[2006/04]

大人のケンカ必勝法 [和田秀樹] ★★★ PHP出版 PHP文庫 (\438) [Amazon]

大人のケンカ必勝法―論争・心理戦に絶対負けないテクニック

ビジネスの世界でのケンカは腕っ節ではなく交渉力で決まる。これまでの日本人社会であれば根回し出来る政治力こそが最大の必勝法であったが、競争が激化し、年功序列が崩れゆく昨今ではそんな旧世代の処世術は通用しない。如何にして勝利を収めるのか。勝って恨まれず、また負けても生き残れる必勝法とは。心理学者が説く、大人のケンカテクニック。

2002年に出た単行本『他人に言い負かされないための心理学』 [Amazon] を改題の上で文庫化したもの。2004年刊行。筆者の和田秀樹は1960年生まれ。東大医学部卒の心理学者。Amazonで著作を調べて驚いた。300冊以上も本出してるよこの人。心理学界の中谷彰宏みたいなポジショニングの人なのだろうか。

ケンカと言っても実際にリアルに拳で戦うわけではなく、社内や取引先との社会的なケンカに勝つための方法論をまとめたもの。どちらかというと内部闘争向けのアドバイスが多いかな。相手のメンツを潰すくらい勝ち過ぎちゃうと、後々まで恨まれるから注意しなきゃダメとか、どうせなら説得して味方にした方がいいとか、書いてあることは基本的なことばかり。ま、基本だからこそ難しいんだけど。

負けやすい人の陥りがちな傾向として、相手の思考を先読みし過ぎてしまい、何も言われていないのに脳内で勝手負けてしまうダメパターンが紹介されていた。何もしないで負けてはだめ、ダメ元でも何か言い返しましょうというのは成る程と考えさせられた。勝ち目がないからといって、何も言わずに黙っていると、与しやすしと後々まで舐められるのだ。

それから勝利条件を自分で決めることで、展開を有利に導くってのも感心した。勝利条件が黒字転換なのか、シェア奪回なのか、利益率アップなのか、自分の得意分野に目先を向けられれば、仮に他で負けていも勝ったように見える。これは小技として使えそうだ。目を見張るような衝撃は無いけど、そこそこ仕事の役には立つんじゃないかと思えた一冊。[2006/04]

さよなら妖精 [米澤穂信] ★★★☆ 東京創元社 ミステリ・フロンティア (\1,500) [Amazon]

さよなら妖精

1991年春。高校生の守屋路行は一人の外国人少女と出会う。異国からやってきた少女はマーヤと名乗った。何事にもポジティブで好奇心旺盛な彼女の存在は、平穏で退屈な日常を送っていた路行に大きな刺激をもたらす。二ヶ月余りの日々を過ごしてマーヤは故郷に帰っていく。彼女の祖国ユーゴスラヴィアに。残された謎が指し示すものはいったい……。

米澤穂信の三作目。2004年刊行。2002年の『愚者のエンドロール』から二年の沈黙を経て久々に出た新刊が本作。2005年版の「このミス」で国内20位に入った作品。これが出ていなかったら、米澤穂信はマイナーラノベレーベルの一作家で終わっていたような気がする。昨今のもてはやされ振りはなかったのではなかろうか。東京創元社の人GJ!である。

もうね、タイトルからしてヤバイ。「さよなら妖精」だよ。いきなり泣きそう。古典部三部作(完結してないけど)を読んでからこの作品に来ているので、この作家の学園モノのクオリティに対する信頼感も当然あるわけで、厭が応にも期待度は高まってくる。比較的早い段階で彼女の故国が判って更にテンションはアップ。悲劇的結末を予感させながら静かに流れていく地方都市の時間がなんとも愛おしい。

マーヤの存在感がとにかく圧倒的だ。なんのてらいも臆面もなく「政治家になりたい」と答える少女の凛とした立ち姿のなんと清々しく美しいことか。狭く小さな世界で完結していた守屋路行の世界はマーヤと出会うことで広がっていく。誰にでもあることかどうかは判らないけど、人間ってなにかを体験することでハッと世界が広がる感覚、自分が世界と繋がっているんじゃないかと実感する瞬間って、あるんじゃないかと思っている。得てしてそれは勘違いだったり、単なる思いこみだったりもするんだけど、本人の歴史の中でそれは揺るぎのない大事件だったりするわけだ。「劇的」に惹かれる気持ちは痛いほどよく判る。それだけに、あくまでも冷静で現実が見えているマーヤとの対比が残酷なコントラストになっていて、この物語の悲劇性がより高まっている。ここいら辺の越えがたい民族性のギャップの書き方は巧いなと思った。

単純に「泣かせ」のレベルで考えれば本来なら★×4をつけてしまいたいところなのだが、残念がらこの作品、疵が多い。作品の構成としては米澤穂信お得意の日常の謎系なのだが、結末の重さと較べるとどうしても、ミステリ要素の部分が不釣り合いに見えてしまう。お前ら暢気に国当てパズルやってる場合じゃないだろうと。ミステリフロンティアレーベルだから仕方ないとはいえ、この話はミステリしていてはいかんと思うのだ。ミステリを期待して読んだ人間にとってはこれでもミステリ度が薄いのかもしれないが、ことこの作品に限ってはミステリ要素が話の良さを消してしまっている。ミステリ要素を極力廃した青春小説として読みたかったなあ。

最後にもう一つだけ。ラストシーンの大刀洗は素晴らしい。どんな気持ちで彼女が路行を待っていたのかと思うと読後二週間を経た今でも泣ける自信がある。裏ヒロインの彼女のキャラ造形も見事だった。この子は幸せになって欲しいなあ。[2006/04]

ついでに…… 
『異邦の騎士』 [Amazon] @島田荘司<<ラストの「石岡君を待つ御手洗」の図がなんとなく太刀洗と守屋君の構図に似てない??

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ユダヤ人とドイツ [大澤武男] ★★★ 講談社 講談社現代新書 (\631) [Amazon]

ユダヤ人とドイツ

アドルフ・ヒトラーとナチス。極めて特異な集団が政権を担っていたとはいえ、600万人ものユダヤ人を殺害したホロコーストはどうして起きたのか。紀元前6世紀のバビロン捕囚に始まる世界各地への離散。中世期からプロイセンによる統一ドイツの成立、ワイマール時代を経て第三帝国時代での破局に至るまでの、ユダヤ人差別と迫害の歴史を概説する。

1991年刊行。筆者は1942年生まれ。古代教会史、ドイツユダヤ人史が専門の歴史学者。ユダヤ人関連の著作が多い。『ユダヤ人とローマ帝国』は以前に読んだことがあって、この筆者の著作を読むのはこれが二冊目。今回はドイツに焦点を絞ってのユダヤ人史。

ホロコーストに関する小説や映画、歴史映像を見ていて常々疑問に感じていたのが、どうして事ここに至るまで一般のドイツ人がこれほどの大虐殺を許したのかという点だった。ユダヤ人であるが故に、職業、居住地を制限され、唯一許された金融業で富をあげれば妬まれ、隔離されているが故に得体が知れず一般民衆からは怖れられるという負の連鎖。ユダヤ人への差別、迫害はナチスドイツに始まった話ではなく、遙か千年以上も昔から連綿と続く根の深いものであることが本書を読むとよく判る。

気になったのは、少々著者のユダヤ人に対しての思い入れが強すぎる点か。時折垣間見られる感情的な筆致に違和感を覚えた。講談社現代新書からはもう一冊この著者の作品『ヒトラーとユダヤ人』 [Amazon] が出ているのでこちらも機会があれば読んでみたい。[2006/04]

竜の眠る海 [金蓮花] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\573) [Amazon]

竜の眠る海

海の王国オディロカナ。繁栄を謳歌していたこの国を突如異変が襲った。王子リューイが目覚めたとき、全ての人々は緑に覆われ、醒めることのない眠りについてしまっていた。この呪いを解きたければ我が許に来いと囁く魔女。リューイは暁の傭兵ジェイと共に王国を救うために旅立つ。二人が冒険の果てに知る魔女の秘密とは……。

1997年刊行。「銀葉亭茶話」「水の都の物語」「月の系譜」に続く金蓮花四作目の長期シリーズ。

いにしえの魔女の呪いで、一夜にして全ての国民が眠りの世界に囚われてしまったオディロカナ王国。唯一人残された美少年王子リューイ君(14歳!)が、他国の傭兵(これも超美形)ジェイと共にけなげに頑張るお話。年の差カップルの美形コンビが二人っきりで冒険。イラストは耽美系だし、裸で抱き合ったりとか、王子君がめそめそ泣いてみたりとか、傭兵の方にも幼少期のトラウマがあったりとか、その筋のイベントてんこ盛りの清く正しい少女向けファンタジー。細かな心理描写の巧みさが、この作家は相変わらずお上手。[2006/04] ⇒次巻

真・魔導物語外伝 金色の勇者
[織田健司] 
★★☆ エンターブレイン ファミ通文庫 (\640) [Amazon]

真・魔導物語外伝―金色の勇者

ラグナ神殿の伝承「天地揺るがす厄災が訪れし時、金色の勇者が現れる」。突如現れた青年は瞬く間に魔物を撃破し、勇者として町に迎え入れられる。勇者ラグナースの名を授けられた青年は人々を率いて周辺の魔物を次々と退治していく。しかし、その行動にはある秘密が隠されていた。神官見習いのパティと記憶喪失の少年カシムは勇者にまつわる衝撃的な事実を知ってしまう。

2001年刊行。『魔導物語98』『真・魔導物語』の中間エピソード。

主役はラグナス。川から流れてきたアルルを拾う前までのエピソード。今回は兄弟合作らしい。確かにタッチが少し変わっている。擬音の多用が少し減って、改行も控え目になった。アルルみたいな天然キャラがいない分作品の雰囲気も堅め。外伝作品ということで、これまでに出てこなかったキャラクターが登場するのだが、一瞬後には忘れてしまいそうなキャラの弱さが哀しい。[2006/04]

写真で読む僕の見た「大日本帝国」
[西牟田靖] ★★★ 情報センター出版局 (\1,600) [Amazon]

写真で読む 僕の見た「大日本帝国」

「日本のあしあと」をたどる旅は続く。サハリン、朝鮮半島、台湾、中国東北部、南洋諸島、これらの地域は日本の統治下におかれていた時代があった。明治中期から昭和二十年の敗戦までに残された、有形無形の数々の遺構は戦後60年を経た現在でも垣間見ることが出来る。未公開写真を400点を新たに収録し、書き下ろしエッセイも加えた期待の第二弾。

2006年刊行。前著『僕の見た「大日本帝国」』は好評だったようで、新潮ドキュメント大賞の最終候補作にまで残ったらしい。それならば、ということで登場したのが本著。続編というよりは、増補版、拡張版といった趣きだろうか。前著では紹介出来なかった写真が大量に収録されている。ビジュアルの存在感はやはり圧倒的だ。

写真のインパクトに較べると文章が力不足に思えてしまうのが惜しいところ。特に歴史的な経緯をまとめた部分は、参考資料を苦労してまとめたのだとは思うけどたどたどしい筆致が心許なく感じた。プロっぽくないところが初々しくて逆に新鮮なのかもしれないが、これからもこのジャンルでやっていくのであれば、さすがになんとかしたほうがいいと思う。[2006/04]

ブギーポップ・イントレランス オルフェの方舟
[上遠野浩平] 
★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\530) [Amazon]

オルフェの方舟―ブギーポップ・イントレランス

高校生の須磨貞夫は実業家六嶺平蔵の主催する秘密サークル「クレイム・クラブ」に所属していた。それは統和機構に対して異を唱えようとする一団だった。幼馴染みである杉乃浦春海の能力「ワン・ホット・ミニッツ」が顕現したとき、貞夫の運命は帰すべき終局へむけて走り出す。苛烈にして容赦の無い死神は、彼らを次第に追いつめていく。

2006年刊行。ブギーポップシリーズ14冊目。一年ぶりの新刊だ。

表紙や口絵を見て、これは「ワン・ホット・ミニッツ」杉乃浦春海VS「フォーリン・グレイス」六嶺美登里の炎と氷の異能対決なのかと思いきや、本格的な戦闘に入る前に死神ブギーポップにあっさり美登里ちゃんがやられてしまって拍子抜け。今回は戦いの駆け引きを楽しむの巻ではなかったのね。一度死んだものをなおも生きているかのように見せていたモノと、既に死んで罰を受けているモノとが出会い、戦い、そして対になって消滅していくシンメトリカルな構成はなかなかに美しい。第三者目線からのお話の畳み方も好みだな。[2006/04] ⇒次巻

ハードボイルド・エッグ
[荻原浩] ★★★ 双葉社 双葉文庫 (\695) [Amazon] ※書影無し

フィリップ・マーロウに憧れて脱サラ。探偵業を始めてはみたものの、依頼されるのは迷子ペットの捜索ばかり。うだつのあがらない日々の中でもストイックな生き様を貫こうとする「私」の前についに運命の事件が立ちはだかる。地上げで立ち退きを迫られている動物施設と発見された惨殺死体。背後には暴力団の影がちらつく。ナイスバディな美人秘書と共に悪に立ち向かう「私」の活躍を見よ!

1999年に出た単行本の文庫版。2002年刊行。荻原浩は1956年生まれ。1997年に『オロロ畑でつかまえて』 [Amazon] で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビューしている。今時の作家としては遅いデビューだけど、本来作家ってこれくらいの年でなるものだったんだよな。本作品が三作目。『あの日にドライブ』 [Amazon] が第134回の直木賞候補に選ばれ、最近では『明日の記憶』 [Amazon] が映画化されと近頃上り調子の作家だ。

ハードボイルドな人生を指向しながらも、やることなすこと全てが裏目に出続ける主人公。そんな男の七転八倒の奮闘を描くユーモアミステリ。最初の100頁はひたすら地味な動物捜索話が続く。後の話の前振りにもなっているんだろうけどこれはかなり退屈だった。もう少し短くても良かったと思う。それから、これは感覚の問題なのかもしれないが、ギャグが滑りすぎで読んでいて辛かった。1/3を過ぎたあたりからようやく物語が転がり始めてきて、そこから先は一気に読める。

最後にちょっぴり意外な真相。でも、まあ想定内なんだよな。それなりの満足感は得られたけど、こういうテイストの作品ばかりだと自分には向いて無さそう。とりあえずもう二、三冊読んではみるけど。[2006/04]

夏期限定トロピカルパフェ事件
[米澤穂信] ★★★☆ 東京創元社 創元推理文庫 (\571) [Amazon]

夏期限定トロピカルパフェ事件

小市民として平穏な高校生活を送るべく、諦念と儀礼的無関心を心中にて養い、ささやかにひっそりとつつましく日々を送っていた小鳩クンと小佐内さん。高校二年の夏を迎えた二人だったが、小佐内さんの大胆な行動に小鳩クンは強い戸惑いを覚える。<小佐内スイーツセレクション・夏>を制覇すべく、街中の甘味処を行脚する二人。こ、これはもしかして男女交際?いったい小佐内さんの心境にどんな変化が訪れたのだろうか。

2006年刊行。『春期限定いちごタルト事件』に続くシリーズ第二弾。前作では高校一年生だった二人も無事進級して二年生に。いきなり一年後だ。思ったよりも時間軸が進んでいる。そろそろ受験ってことも意識しないといけない頃合いだから、高二の夏休みってのは高校生活を素直に楽しめるギリギリの時期かもしれない。表紙の小佐内さんがとても可愛くて◎。片山若子のイラストは今回も素敵だ。

小鳩クンVS小佐内さん。いつかはあるんじゃないかと予想はしていたけれども、こんなに早くこの構図が見られるとは思わなかった。エヴァンゲリオンで例えるなら、いきなり第二話で参号機との同型機対決があるようなもの(って、変な例えでゴメン)。小市民の仮面を被りながらも、本性を押さえきれない二人。緊張感溢れる対決シーンが燃える。ラストの喫茶店のシーンもいい。

復讐鬼モードの小佐内さんが半端なく怖ろしいことはある程度判っていたけれど、さすがにこの仕打ちはちょっと酷い。しかし彼女の過去は未だ明らかされず。中学時代にいったい何があったのか。ここいら辺は秋期と冬期で描かれるのだろう。というか、こうなったら絶対続き出るよな。この状態で一年待つのは辛い。早めの続巻リリースを切に願う。[2006/04]

ウェブ進化論 [梅田望夫] ★★★☆ 筑摩書房 ちくま新書 (\740) [Amazon]

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる

インターネットの登場から10年が経過した。IT関連コストの劇的な低下によりネット人口は爆発的に増加し、リナックスに代表されるオープンソースの概念は集合知という新たな可能性を切り開き、グーグルは世界中の情報を再編成し続けている。Web2.0は人々に何をもたらすのか。本当の変化がいままさに始まろうとしている。

2006年刊行。筆者は1960年生まれ。慶応の工学部を出て東大大学院の情報科学科を卒業。その後シリコンバレーに渡りコンサルティング会社を企業。2005年からははてなの取締役も務めている。詳しくは本人サイト参照のこと。

ネットのあちこちで言及されていた話題の本。ブログ、SNS、ソーシャルブックマーク、Amazonアフィリエイト、ウィキペディア、グーグルアドセンス等々について解説。チープ革命、インターネット、オープンソースを「次の10年への三大潮流」と位置づけ。これからのウェブ世界がどのように進化していくのかを予見していく。

なんとなくは知ってはいたけれど、うまく人には説明出来ないでいたことを分かり易くまとめてくれている。ゴメン。「だってグーグルのビジネスモデルって広告でしょ(プ)」って、わたしもそう思っていたよ。なんだかスゴイことが出来そうな予感がひしひしと伝わってくる刺激に満ちた内容で、煽動の書としてはなかなかよく出来ている。この変化をどう商売に落とし込んでいけるかってのが、出来る人と出来ない人との分かれ目なんだろうな。[2006/04]

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