銀盤カレイドスコープ Vol.7 リリカルプログラム:Be in love with your miracle
[海原零] ★★★☆ 集英社 スーパーダッシュ文庫 (\648) [Amazon]

ロシア。2009年。翌年にバンクーバー五輪を控えた大事な時期に桜野タズサはコーチを変えた。新しいコーチは女帝リア・ガーネットを育てあげたマイヤ・キーフラ。かつて無い過酷なトレーニングに耐えるタズサ。圧倒的な力で世界に君臨する女王への挑戦権を賭けて、女たちの意地とプライドは静かに燃え上がろうとしていた。
2006年刊行。熱血フィギュアスケート小説の第七巻。世の中的にはトリノが終わったばかりなのだが、こちらの世界では早くも2009年。前巻のあとがきでは次のバンクーバー編で最後と書かれていたけれど、さすがに一冊では収まらなかったらしい。バンクーバー五輪編のプロローグとも取れる内容になっている。久々に一人称視点がタズサに戻ってきた。やはり最終決戦の前には特訓。スポ根モノの基本に忠実な展開だよな。
リアに継ぐ実力者でありながらこれまで出番の少なかったガブリーちゃんに初めてスポットが当たる。究極の自己中女タズサとは正反対に、国のため、ファンのため、そして自分のために滑る博愛主義のガブリー。世界のNo2とNo3を担う対照的な二人が良く書けている。終盤のタズサとの会話シーンは本編の白眉とも言える名場面。静かな決意が熱い。
リアの出番も当然あることはある。でも依然として謎キャラ扱い。この子の内面が描かれることは無いのだろうか。ひょっとしたら笑いを取るために入れているのかもしれないけど、贅を尽くしたお泊まりシーンの描写はちょっとやりすぎで興醒め。別にこの二人の百合的展開を見たいわけじゃないんだってば。
今回はプロローグってことで、結局最後までまともなスケート描写は無し。このまま大人しく終わるのかと思わせておいて最後の最後でドカーンと強烈な打ち上げ花火。スケートシーン無しでここまで盛り上げるとはさすが。タズサはやっぱりこうでないと。いい感じの引きで次回へ続く。あと一冊で終われるかな。[2006/07] ⇒次巻
マリア様がみてる 仮面のアクトレス
[今野緒雪] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\419) [Amazon]

三学期が始まったリリアン女学園。恒例の生徒会役員選挙が始まる。スールの申し込みを瞳子に断られ傷心の祐巳だったが、ロサ=キネンシスの名を受け継ぐべく役員候補として名乗りを上げる。しかし思わぬ人物が対抗馬として現れたことを知り、祐巳は激しく動揺する。昨年に続き波乱の幕開けとなった選挙戦。果たしてその結末は……。
2006年刊行。マリみて22作目。生徒会選挙編。ロサ=カニーナの登場からもう一年経ったのかと思うと、月日の流れの速さにちょっと驚いてみたりもして。去年と較べて志摩子さんの成長が著しい。すっかりお姉さんモードが板について、昨年のガクブルモードが嘘のような落ち着きぶり。やっぱり去年立候補してロサ=ギガンティアを継いでおいて良かったね。
そいでもって、邪悪な縦ロール女こと松平瞳子と祐巳の関係修復(&スール成立)は今回も無し。もう、絶対に編集部から「ここで更に引っ張って」って指示が出ているんじゃないかと。祥子の卒業までにはカタがつくのだろうか。『ドラゴンボール』末期のようなぐだぐだ感だ。もう好きにやって下さいという感じ。
ちょっとだけ入っている黄薔薇カップル継承編は、いつもながら地味にいい話。キラっと光る粋な短編に仕上がっている。小道具(っていうか自転車)の使い方が巧いね。[2006/07] ⇒次巻

窃盗犯の黒澤は新興住宅地の高層マンションに侵入し一仕事。神を求める青年河原崎は塚本という男から奇妙な依頼を持ちかけられる。不倫の泥沼の中にいる京子は愛人と共に互いの配偶者を殺害する決意を固める。そしてリストラされた中年サラリーマン豊田は野良犬の世話をする羽目に。仙台の街で繰り広げられる四人の人生の物語。交錯しもつれ合う運命の軌跡が織りなすタペストリー。
2005年刊行。2002年に刊行された単行本 [Amazon] の文庫版。今をときめく伊坂幸太郎二作目の作品。このミス2003年版の国内部門第11位にランクインしている。
相変わらず流行には疎いので今頃ようやく読んでみた。泥棒、リストラされたオッサン、夫を殺そうとしている女、カリスマ教祖にハマる青年、まったく面識の無い四人の登場人物が、それぞれのトラブルに巻き込まれながら、一枚の複雑な物語の騙し絵を形作っていく構成となっている。登場人物は多いし、時間軸は複雑にもつれているし、共通して使い回されるモチーフ(外国人女性とかバラバラ死体)があったりと、これはかなりの芸達者で無いと企画倒れに終わってしまいそう。本当にプロットがよく練られていて感心させられる。巧い。人気が出るのは判る気がする。そろそろ本腰入れて伊坂作品を読んでみるかな。[2006/07]
虚飾の檻 竜の眠る海 前編・中編・後編・完結編
[金蓮花] ★★☆ 集英社 コバルト文庫
(\419/\400/\457/\438) [Amazon:前編/中編/後編/完結編]

カディア皇帝ダーシャがオディロカナ王国を訪問する。それは暴風雨に遭いエシャンテ王国に漂着するという苦難の末の来訪だった。リューイはジェイを伴い出迎えに駆け付けるが、久しぶりの再開を果たした年長の友の姿にふと違和感を覚える。最愛の女性タニミナを捨て、ノーイ王女を妃にと望むダーシャ。果たしてその真意は何処にあるのか。
竜の眠る海シリーズ四つ目のエピソード。1998年から1999年にかけて刊行されている。前・中・後で決着がつかず、完結編が四冊目に出るという恥ずかしいパターン。お前は桑原水菜かと。
いつにも増して物語の整合性を取るのは後回し。リューイとジェイ主従のラブラブ珍道中を描写するのがとにかくメインなのは相変わらず。四冊も使っているわりには終盤の展開は性急に過ぎるし説明も足りな過ぎる。ダーシャとタニミナ、カズサとアサノ、この二人の関係描写にもう少しボリュームを割いても良かったのでは無いかと思うのだけれども、男女の恋愛シーンは主たる購買層には求められてないのだろうか。
どのカップルに焦点を当てるかという問題もさておき、今回はストーリーが相当ハチャメチャ。首謀者クンは、暢気にオディロカナなんかに行くべきじゃなくって、とっととダーシャの本国に帰って足場固めをするべきだったと思うし、他国の王を拉致監禁した上に身分詐称までしておいて罪も問われずにのうのうとアサノと結婚出来るなんてありえないでしょ。何がどう間違えばそんな結末がやってくるのだろう。恋愛脳だけで国家間のやりとりを決めてはいけないのでは、、ってツッコミはきっと無粋なんだろね。愛だよ愛。ハイハイ。[2006/07] ⇒次巻
中世・ルネサンスの音楽
[皆川達夫] ★★★☆ 講談社 講談社現代新書 (\390) [Amazon] ※書影無し
ベートーヴェンよりもモーツァルトよりも、そしてバッハよりも以前のヨーロッパ音楽はどのようなものだったのか。グレゴリオ聖歌に端を発する単旋律音楽。各地に現れた吟遊詩人たちの存在。多声音楽の誕生は音楽をより高度に複雑化させていく。ノートルダム楽派の登場。そして多種多様に開花していくルネサンスの音楽。ヨーロッパ音楽の淵源はここあった。
1977年刊行。今から30年も前の本。皆川達夫は1927年生まれ。来年で80歳か。この世界の押しも押されもせぬ大重鎮。東大文学部出身で、当時は立教大学の教授。まだ50歳で著者近影の若いこと若いこと。この方には是非とも長生きして欲しいものだ。
現在では絶版。近所のBookOffで偶然捕獲。定価390円って……。もちろん初版だ。今でこそ中世・ルネサンスの音楽はリスナーも増えたし、演奏者もプロからアマチュアまでたくさんいるけど、当時はまさに知る人ぞ知るマイナージャンルだった筈。よくぞ出版までこぎつけたものだと思う。ちなみに最近学術文庫から出た『バロック音楽』 [Amazon] は姉妹編。こちらも元々は現代新書 [Amazon] から出ていた。
古代からルネサンス期までのヨーロッパ音楽の流れを概説しながら、オススメ作曲家を片っ端から列挙していく初心者向けのガイドブック。今でも十分通用する内容なので『バロック音楽』同様に是非ともこちらも再刊して欲しいところだ。それでも曲の素晴らしさはなかなか文字だけでは伝わらないので、どうせならタイアップCDが出てくれたりすると最高なのだけど。[2006/07]
流れゆく雲 グインサーガ107
[栗本薫] ★★★ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540) [Amazon]

イシュトヴァーンの庶子の存在はしずかに、しかし確実に中原に波紋をおよぼしていく。おもわぬ事実に驚愕するカメロン。そこに、グインとの戦いで瀕死の重傷をおったイシュトヴァーンが帰国する。一方、宰相ヴァレリウスを欠く中で、けなげにもパロ復興に力をつくすリンダ。そこに廃位されたかつての王レムスからの書状がとどけられる。パロの真珠は恩讐のはてに再会をとげるのだが……。
2006年刊行。107巻目。追憶にまかせてページ数を増量しちゃえ作戦。今回はリンダの回。この作戦はいろいろなキャラで使えるから便利かもしれない。長い話だとこういうことが出来るのね。あとがきの電波が最近減少気味で、ヲチャーとしては不満。ネット上でも最近暴れてないのかな。久々にあぐら(※注※リンク先要注意。心して見るように)でも見てくるか。って、ハッ、これって誘い受け?
で、本編。内戦で完膚無きまでに旧キャラを再起不能にしてしまったパロ宮廷は、あんた誰?という個性の無い新キャラたちのオンパレード。この状態から、まともにキャラを育てていく気力が作者にあるとは思えないので、当分パロの話はリンダとヴァレリウスしかまともな人間は出てこないものと考えて差し支えないだろう。ベックくらい残しておけば良かったのに。命乞いモードのレムスは王者の威厳もへったくれもない情けなさで、かなり幻滅。ここからどうやってパロ中興の祖まで持ち上げるつもりなのだろうか。さらに風呂敷が広がっているけど、その前に作者の寿命が尽きそうな気もする。[2006/07] ⇒次巻
銃とチョコレート [乙一] ★★★ 講談社 ミステリーランド (\2,000) [Amazon]

大富豪からしか盗まない神出鬼没の怪盗GODIVA(ゴディバ)。それを追うのは若き名探偵ロイズ。リンツはこの二人の対決に心躍らせる少年の一人だった。ある日、父の形見の中から奇妙な地図を発見した彼は、それがGODIVAの盗んだ財宝の隠し場所であることを知る。憧れのロイズと共に地図の謎に挑むリンツだったが、それは危険な冒険の始まりだった。
2006年刊行。乙一、超久しぶりの新刊は講談社のミステリーランドから。このレーベルはお高いのでなかなか買えなくて、もう何冊も前から刊行されているにもかかわらず小野不由美の『くらのかみ』以来これでやっと二冊目の購入。今回も2,000円の価格に恥じない豪華な装丁。箱装にカラーイラスト。布製の背表紙にタイトルは金押し。全部集めちゃう大人買いしているファンっているんだろうなあ。シリーズ全部集めて自分もニヤニヤしてみたい(笑)。
かつて子どもだったあなたと少年少女のための、という趣旨で書かれた作品にしては、描写がやたらに暴力的なんだけどこれって有りなのか?今時これくらいは普通の小説なら当たり前だけど、建前的にレギュレーションって無いのだろうか。とはいえ、そんなきれい事にこだわっていたら、あの素晴らしいドゥバイヨルの存在は無かったであろうから深くこだわらないことにする。
ドゥバイヨルはホントに最高!貴族のような顔立ちにそぐわない下品極まりない粗野な言葉遣い。自信家で利己的。一瞬たりとも殺人を躊躇わない冷酷さ。それでも自分なりの掟は持ち合わせているという実に子供らしくないキャラクター。リアルでは絶対に付き合いたくないタイプだが、完全に主人公を食ってしまっていた。こいつのためだけに別シリーズを一本作ってもらいたいくらいだ。
乙一作品としては、黒過ぎもせず、かといって白成分も少なめで、最初を少し読んだだけだったら彼の作品だとは気付かなかったかもしれない。張り巡らされた伏線の数々が、少々あからさま過ぎて、ある程度先が読めてしまったのは、スレ切った読者としては物足りないところだった。そろそろ乙一には本格稼働して欲しいのだが、またしばらく新刊が出ない日々が続くのだろうか。[2006/07]
上手なミステリの書き方教えます
[浦賀和宏] ★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\990) [Amazon]

八木剛士は悩んでいた。醜悪な容貌に引っ込み思案な性格。成績も良くなく、スポーツはまるでダメ。そして無類のガンダム好き。心の恋人はZガンダムのファ・ユィリィ。日々苛められ、蔑まれる。何の希望すら見いだせなかった剛士の高校生活は美少女松浦純菜との出会いで一変する。しかしそれは新たな苦悩の始まりだった。自分にも人並みの幸せが掴めるのか?剛士の妄想は暴走し始める……。
2006年刊行。不死身の男八木剛士シリーズの三作目。ずっと最低最悪の環境下で生きてきたから希望も夢もなく地べたを這いずり回っていれば良かった主人公に、何の間違いでか標準以上に美人の友達が出来てしまったことから始まる物語。いちおうミステリの体裁は取っているけど、大部分は妄念と劣等感に充ち満ちた悪臭漂う暗黒青春小説。
一度手にしたものを失いたくない気持ちと、もっといい目に遭えるのではと期待する気持ち。でもスクールカースト最底辺の男にポジティブな思考が出来るはずもなく、と、冒頭から延々と八木クンのネガティブモード炸裂のどろどろした心理描写が続く。過去二作に較べてもその分量、暗黒度は磨きがかかっていて読んでいて心底げんなりさせられる。いい加減、嫌になってきたところで、ここでなんと更に頭を抱えたくなるようなエロ小説家の独白がスタートする。これは何かの罰ゲームなのか。
八木クンパートと、エロ小説家パートが交互に描かれていき、二人は同一人物なのかとミスリードに誘っておいて実は……。という叙述トリックオチがあったりもするものの、どんよりとしたオタク男の心理描写があまりに多くてドン引き。長らく浦賀作品を読んできた自分でもダメなのだから、普段読み慣れていない一般読者は完全にポカーン状態だろう。どうしてこんな話を書いちゃったかなあ。とってつけたようなラストの爽やか青春感動シーンも、よく考えてみればけっきょく弱者再生産かよとスッキリしない幕切れで読後感はきわめて宜しくない。
未回収の伏線が残っているので次回作への壮大な釣りなのか、と、微かな期待を残るが、あまり期待をかけすぎると裏切られそうな予感。次もこんなだったらもう新刊買いは辞めるのでそのつもりでね>>作者の人。[2006/07] ⇒次巻
撲殺天使ドクロちゃんです!
[おかゆまさき他] ★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\550) [Amazon]

教室に駆け込んだ桜クンが見たものは着替え中のドクロちゃん。いつものありがちな展開だけど、でも今回は少し違う。幾たびもリピートされていく平穏とは言い難い奇妙な日常。果たしてその原因とはいったい?おかゆまさき自ら編集長に就任。ライトノベル界のそうそうたる面々を集めて綴るドクロちゃんのトリビュート作品集。遂に登場。
アニメ版『撲殺天使ドクロちゃん』 [Amazon] のセルDVD用封入特典「隔月刊ドクロ本」に掲載されていた短編四編(高橋弥七郎・ハセガワケイスケ・成田良悟・時雨沢恵一)に、新たに書き下ろし四編(築地俊彦・釜池和馬・谷川流・水島努)を加えた競作ドクロちゃん作品集。2006年刊行。
更にCLAMP・いとうのいぢ・駒都えーじ・渡辺明夫・しゃあ・若月神無・氷川へきるらのカラーイラストまでおまけに付いてくるという豪華版。おかゆクンも偉くなったものです(笑)。というか電撃の商売の巧さを讃えるべきか。ドクロちゃんファン、もしくはトリビュートしている作家のファンなら買い?かな。
八編の物語はいちおうそれなりのつながりは持っていて、それ相応のオチもついてはいるのだけど、だから何?という程度の出来。企画先行の本だから仕方ないけど。それぞれの作家本来の文体の癖と、おかゆまさき的ドクロちゃん文体をどう混淆させているかがきっと見所の一つなのでは無いかと思う。でも時雨沢恵一と谷川流くらいしか読んでいない電撃依存度の低い自分としてはイマイチついていけなかった。これくらいのラインナップは読んでいろよというレベルなんだろうけど。[2006/07]

三月。強豪横手二中との再戦が決まり、意気あがる新田東中野球部。巧と豪は屈辱的な敗北の中から人間的な成長を遂げ、新たな絆を築き上げようとしていた。巧との対決に向けて執念の炎を燃やす横手二中の天才スラッガー門脇と、それを屈折した思いで見つめる親友瑞垣。さまざまな人々の想いを乗せ、運命の再戦の日は近づきつつあった。
2006年刊行。シリーズ五作目。教育画劇より2003年に刊行されていた単行本 [Amazon] の文庫版。文庫化に際して短編「THE OTHER BATTERY」が書き下ろしで追加されている。文庫版は年末に出るのが最近のお約束となっている、って前の巻の時に書いたけど違ったみたい。適当書いて申し訳ない。この分だと年末には最終巻が読めるかな。
横手二中に負けてボロボロになった巧と豪カップルが、試練を経て絆を再生&強化させていくまでのお話。そろそろ瑞垣がウザイよ。お前ちょっと変だろさすがに。この執着は気持ち悪い。児童文学の域を超えている。あり得たかもしれない豪の暗黒バージョンが彼ということなのだろうか。初期の頃はそうでもなかったけど、この人の描く男同士の友情って、妙に粘着質な愛憎が絡まっていて湿度が高すぎるように思える。爽やかに感動なんかさせないぞっていう、ありがちなスポーツ小説へのアンチテーゼなのかもしれないが、男にはこういう話は書けないだろうなと思った。[2006/07] ⇒次巻
夏の滴 [桐生祐狩] ★★★☆ 角川書店 角川ホラー文庫 (\743) [Amazon]

N県の県庁所在地にほど近い小さな街。藤山真介と河合みゆら、徳田芳照、そしてジョンこと桃山ヨハネは仲の良い四人組だった。不可解な理由でジョンが転校していくまでは……。いじめられっ子八重垣潤が持ち込んだ植物占い。次々と失踪していくクラスメイトたち。街に伝わる奇怪な伝承。楽しい筈の夏休み親子キャンプは悲劇的結末を迎えることになる。
2001年に出ていた単行本 [Amazon] の文庫版。2003年刊行。第八回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作品。作者の桐生祐狩は1961年生まれ。本作がデビュー作となる。紹介を読む限りでは演劇畑出身の人らしい。
夏休み。転校していった友人の行方を探し求め、旅立とうとする三人の小学生。彼らが体験する一夏の悪夢。 瑞々しくも爽やかで、ちょっとほろ苦い、そんな夏のいい話かと思っていたら大間違い。タイトルが似てるけど『夏の庭』 [Amazon] なんかとは大違い。とにかく間違ってもハートウォーミングな話を読もうと思ってこの本を手に取っちゃダメ。
ミステリでもファンタジーでも、ジュブナイルでもない、ホラーの法則性に乗っ取った展開。そう、ホラーにロジックはいらないのだ。しばらく忘れていた感覚だ。比較的ゆったりと進行していた物語のペースが、ラスト1/3で猛烈にスピードアップ。予想の斜め上を行きまくる展開にしばし呆然。仄かな恋心も、確かなものに思えた友情も、親子の愛情すらも無惨なまでに踏みにじって恥じるところのない爆走ぶりはお見事。ここまでやりますか。スゴイ。[2006/07]
夏休みは命がけ!
[とみなが貴和] ★★★ 角川書店 スニーカー文庫 (\648) [Amazon]

自殺するとの書き置きを残し、猟銃を携えて東京へと逃亡した旧友五郎丸。高校生の瓜生は五郎丸の妹、綾の頼みで仕方なくその行方を追うことになってしまう。しかし五郎丸はいつの間にか犯罪組織に追われる身に!上野、お茶の水、そして秋葉原へ。二人の高校生の追いつ追われつの24時間。タイムリミットは終電車。瓜生は我が家へ無事帰り着くことが出来るのか。
2002年刊行。「EDGE」シリーズが有名なとみなが貴和の、初めての非ホワイトハート作品。角川のスニーカー・ミステリ倶楽部からの登場。
特殊能力を持つわけでもない普通の高校生同士が街中で拳銃をぶっ放すという、ぶっ飛んだ展開の割には、無理を無理でなく思わせるだけの勢いが物語に足りない。テンポがゆるんだ時に、そんなわけないだろ、とふいに醒めてしまう瞬間がある。うまく物語が転がらなかった感が強い。ここいら辺はやはり筆力の問題だろうか。[2006/07]
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