2006年9月

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
クマムシ?! 鈴木忠 岩波書店 \1,300
キュート過ぎる。
★★★☆

バロック音楽

皆川達夫 講談社 \390
新装版も読んでみたい。
★★★☆

七姫物語 第四章 夏草話

高野和 メディア
ワークス
\590
また一年待たねば。
★★★☆

ヴィラ・マグノリアの殺人

若竹七海 光文社 \848
気楽に読める。
★★★
時をかける少女 筒井康隆 角川書店 \438
まあ!なんておませなんでしょうw
★★★

狼と香辛料

支倉凍砂 メディア
ワークス
\590
着眼点がいい。
★★★☆

愚か者死すべし

原リョウ 早川書房 \1,600
錦織が出てこないのは納得いかん。
★★★☆

パロへの長い道
グインサーガ108

栗本薫 早川書房 \540
ホントに長くなりそう。
★★☆

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クマムシ?! [鈴木忠] ★★★☆ 岩波書店 (\1,300) [Amazon]

クマムシ?!―小さな怪物

ミクロの世界の不思議な生命体クマムシ。18世紀から知られている存在だが未だその生態の多くは明らかになっていない。電子レンジで加熱しても死なない。真空、高温、高圧、放射線にも耐える強靱な生命力。乾燥状態になれば樽型に変形して休眠状態に入り、そして水分が戻ると復活を遂げる。知られざる驚異の生物の存在を世に知らしめる日本初のクマムシ本!

2006年刊行。岩波の本なんて久しぶりに買ったよ。日頃科学の世界からは遠い世界にいる自分だけど、とあるご縁があって購入。クマ「ムシ」と呼ばれるが昆虫ではなくて、緩歩動物門という微生物?の一種。外観は極小ミニチュアのクマにそっくり。これがまたかなりキュートで萌える。別に珍しい稀少生物の類ではなく、その辺の苔をめくると、いっぱい群生しているのだそうだ。顕微鏡があれば自宅でも観察出来るらしい。

古くからその存在は知られながらも、あまり大々的な研究は進んでおらず、もちろん一般人への知名度はゼロに近い。そんなクマムシの生態について、科学素人でも解るように平易な言葉で解説してくれたのが本書。筆者自身による飼育体験記に始まり、18世紀からの研究史を振り返りつつ、その不死身性の謎に迫る(笑)。写真や画像が多いのも嬉しい。

ちなみに挟み込まれているアンケートハガキを返送すると抽選でクマムシぬいぐるみがあたるキャンペーンを実施中(web上のアンケートでもいいらしい。締め切りはう2006年の10月31日までなので未読の人は急ぐべし![2006/09]

バロック音楽 [皆川達夫] ★★★☆ 講談社 講談社現代新書 (\390) [Amazon]

バロック音楽

中世そして、ルネサンスの時代を経て西洋音楽は新たな局面を迎える。17世紀初頭から18世紀半ばまで、この時代の音楽は一般にバロック音楽と称される。その特徴とは。楽器の改良と進化は音楽に何をもたらしたのか。その黎明期から、巨人J.S.バッハによる完成期までを俯瞰。知られざるバロック音楽の世界を詳らかにしていく待望の一冊。

『中世・ルネサンスの音楽』に続く皆川センセイのクラシック音楽入門書。1972年刊行。四半世紀以上も前の本である。ちなみに2006年に講談社学術文庫から新装版 [Amazon] が出ている。

ある意味、中世ルネサンス時代よりも知られていない世界なのではないかと思われるバロック音楽を一般人向けに優しく紹介してくれている。おおお、知らない作曲家がいっぱいだ。音楽の授業ではバッハとヴィヴァルディが出てくるくらいだもんな。

前半部ではバロック音楽の特徴とも言える主旋律と通奏低音の関係に言及している。この時代の音楽の解釈の自由度の高さ(楽譜に書いていないことをいろいろ即興でやってもいいのだ)はとても面白い。この辺、とても興味深かったのだけど、ページ数の都合なのかサラっと流していて物足りない。もっと詳しく!

現在は使われなくなってしまった古楽器の紹介の部分も楽しかった。この本、実は表紙を外すと裏側に古楽器の写真がたくさん印刷されている。この時代の講談社現代新書ってこんな茶目っ気もあったのね。感心した。あんまりさりげないので気付かずに本棚にしまってしまうところだった。

後半では各国ごとの著名作曲家と知っておくべき作品群をひたすら紹介。そして最後はバロックの巨人バッハとヘンデルを紹介してオシマイ。ホントに知らない人ばかりで、クラシック界の奥深さを思い知らされた。なんだか無性にバロックの音楽を聴きたくなってきた。まずは有名どころからってことで、モンテヴェルディあたりから聴いてみるかねえ。[2006/09]

七姫物語 第四章 夏草話
[高野和] 
★★★☆ メディアワークス 電撃文庫 (\590) [Amazon]

七姫物語〈第4章〉夏草話

ツヅミの街をめぐり一触即発の危機にあった三宮と七宮。両者の和睦がなり、駆け付けていた各宮の軍隊も引き上げを始める。束の間の静かな時間を得た空姫は、久しぶりに市井の少女カラスミに立ち戻り水の都ツヅミを歩く。しかし水面下ではそれぞれの勢力の暗闘が続いていた。五宮六宮の意向を受けて動くサイ家筆頭の商人ハルセは、大胆な提案を七宮に持ちかけるのだが……。

2006年刊行。年一冊ペース。シリーズ開始から四年かけてやっと四冊目。このペースで果たして終われるのか。ここまで徹底して筆が遅いと、読み手としても、年に一度のお楽しみと諦めてじっくりと待つしか無いな。

今回は大きな変動は無し。しみじみとカラカラさん視点で歴史の動乱の中、ついぞ一瞬の凪の状態の一コマを見つめてみた回。見事なまでの展開の遅さでこれから先大丈夫なのかと思いつつも、このまったりモードこそががこの物語の肝なのだということを思い出した。年齢に似合わぬ落ち着きと悟りにも似た諦観を持つヒロインは相変わらず魅力的。流されるにまかせているかに見えて、判断すべきところは自分で判断している強さも素敵。

物語的には強国である一宮、二宮に対して、残余の四宮が、互い腹に一物持ちながらも合従連衡しようぜ!って流れでまとまりつつあり、なんだか中国戦国時代を思わせる「らしい」動きでちょっとワクワク。でも、きっと次が読めるのは来年なんだろうね。こうなったらじっくり待つよ。[2006/09] ⇒次巻

ヴィラ・マグノリアの殺人
[若竹七海] ★★★ 光文社 カッパ・ノベルズ (\848) [Amazon]

ヴィラ・マグノリアの殺人

湘南。葉崎市の海岸沿いに造成されたヴィラ・葉崎マグノリア。瀟洒な邸宅が十棟立ち並ぶこの住宅地で密室殺人が発生。顔と手を潰され、身元が確認出来るものも無し。葉崎署の駒持警部と一ツ橋巡査長は住民への聞き込みを開始するが、ヴィラの住人たちは一筋縄ではいかない変人揃い。そうこうしている間に第二の殺人が発生してしまう。果たして犯人はいずこに??

1999年刊行。ノベルズ書き下ろし。

宅地を造成して家だけは建てたものの、途中でバブルが弾けてしまい周辺の開発はなされず、陸の孤島状態になってしまったショボイ高級住宅地が舞台。10棟+1棟に住まう、個性が豊か過ぎる住人たちが、ああでもない、こうでもないと事件をひっかきまわしていくユーモアミステリ。大作ではないし、名作でも無いけど、肩の力を抜いて気楽に読めるミステリとしては及第点なのではないかと。 [2006/10] ⇒次巻

時をかける少女 [筒井康隆] ★★★ 角川書店 角川文庫 (\438) [Amazon]

時をかける少女 〈新装版〉

放課後の理科実験室。芳山和子はラベンダーに似た香りを嗅ぎ意識を失う。その日から彼女は自らの体調に違和感を持つようになる。死の危険に瀕したとき、発動したのは時間を跳ぶ力なのか。揺れ動く少女の心の機微を捉えた表題作に加え、幼き日のトラウマがもたらす奇怪な現象の顛末を描く「悪夢の真相」、多元宇宙をうつろいゆく少女の物語「果てしなき多元宇宙」の計三編を収録した短編集。

「時をかける少女」の初出は1965年の「中三コース」(←今はもう亡い)の十一月号。なんと四十一年も前の作品なのだ。昔の記録を調べてみたところ、自分がこの作品を初めて読んだのは1983年の6月13日。大林版『時をかける少女』 [Amazon] がブームになっていたころで、おそらく実家には原田知世表紙バージョンの角川文庫がどこに眠っている筈だ。

なにせ1983年時点でも初出から二十年近い年月が経っていたわけで、当時ですら読んでいて古さを感じたことは否めない。リアル中坊だった自分の評価は10段階で6。今に較べると点が甘かったあの頃としてはかなり厳しめの評価だ。既に持っている作品を改めて買い直す気になったきっかけは言うまでもなく細田版『時をかける少女』にハマったせいで、上映が終わった映画館で思わず購入してしまった次第。入手したのは2006年の5月に出た新装版。こちらは細田版に合わせて表紙絵のイラストレータに貞本義行が起用されている。

で、二十三年振りに再読してみたわけだが、さすがに半世紀近く前に出たジュブナイルを読むのはキツかった。後から見た映像作品のおかげで、勝手な思いこみが入りこんでいたせいもあるのだろうが、物語の構造は思っていたよりも遙かにシンプルだった。こんなに短い話だったのかと驚いた。装飾過多に慣れてしまった今の時代に単体でこの作品だけを読んでも、カタルシスを得るのは難しいかもしれない。ノスタルジー性とか、恋愛要素の付加ってのは、後発の映像化作品群によって成し遂げられたことだしね。

とはいいながらも、1960年代に「時をかける少女」という魅力的なタイトルとプロット、モチーフを提示出来たのは十分意義のあることだったと思う。これからもそれぞれの時代に即した「現代語訳」としての映像作品は後継が続々と出てくることだろう。多くのフォローワーを生み出した功績は決して減じられるものではない。エスエフ作品として、ライトノベル的傾向の作品の先駆として、確固たる古典としての地位を獲得していることは疑問の余地が無いだろう。抑えておくべき基本の一冊であることは間違いない。

それにしても、半世紀近く前の作品が今でも書店で気軽に手に取れるというのは本当に凄いことだ。そんな作品そうそうあるものでは無い。作家としての筒井康隆が未だバリバリの現役であるというのも凄い事だけどね。[2006/09]

狼と香辛料 [支倉凍砂] ★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\590) [Amazon]

狼と香辛料

行商人のロレンスはパスロエの村で奇妙な娘を拾った。狼の耳と尻尾を持つ少女は自らの名を豊穣の狼神ホロだと告げる。半信半疑のままホロとの旅を始めることになったロレンスは、謎の商人ゼーレンからとある儲け話を持ちかけられる。トレニー銀貨の改鋳話は本当なのか。パッツィオの港町へ入った二人は交易商人間の抗争に巻き込まれていく。

2006年刊行。第12回電撃小説大賞の銀賞受賞作。剣も魔法もでてこない、画期的な経済小説ファンタジー!無理に例えるならば、ドラクエでトルネコが主人公になったときのような感じ?腕っ節はてんでダメだけど、商才と度胸はちょっとした天分を持ち合わせている主人公。この設定はなかなか渋い。お世辞にも読みやすい文章とは思えないが、ライトノベルの世界に経済の観点を持ち込んだ段階でまずは一歩リードである。

問題はネコ耳ならぬ、狼耳のヒロインに萌えられるかどうか。ここでたぶん評価が別れる。林檎ラブだったり、主人公の前で狼化するのを躊躇ったりと引きは十分作れているのだけど、「あちき」とか「ぬし」とかのたまうヒロインは自分的にはちょっと萌え成分を感じ取れない。イラストが好みで無いせいもあるのかもしれない。既に三作目まで出ているので、おいおい読んでみるつもり。[2006/09]

愚か者死すべし [原リョウ] ★★★☆ 早川書房 (\1,600) [Amazon]

愚か者死すべし

新宿署内部での銃撃事件。撃たれた男の名は伊吹哲哉。鏑木組組長銃撃犯として拘留され、移送の最中での出来事だった。沢崎の機転で伊吹は一命を取り留めるが、逸れた弾丸は若手刑事の命を奪ってしまう。単なる暴力団同士の抗争事件なのか?事件の調査に乗り出した沢崎は、底知れぬ闇の世界に足を踏み入れていくことになるのだが……。

2004年刊行。リョウと表記しているが、実際には「僚」のにんべんがない「つくり」の部分だと思って欲しい。正確な漢字は機種依存文字なので表示出来ないのであしからず。

原リョウは1988年に『そして夜は甦る』 [Amazon] でデビュー。翌1989年に刊行された『わたしが殺した少女』 [Amazon] で直木賞を受賞。1990年に短編集の『天使たちの探偵』 [Amazon] 、その後五年の沈黙の後に『さらば長き眠り』 [Amazon] を上梓。この四作はいずれも私立探偵沢崎を主人公としたハードボイルド作品。本書が出るまでにこの作家が書いた小説作品はこれだけしかない。直木賞作家でかくも寡作な作家も珍しい。『愚か者死すべし』は九年振りの新作となる。もちろん沢崎シリーズ。『わたしが殺した少女』を読んで号泣した時、自分はまだ大学生だった。懐かしすぎて涙が出そうだ。

とかなんとか書いているわりには、刊行されて二年も放ったらかしにしていたわけだから、あまりマジメなファンとは言えないけど、ともあれ沢崎が久々に新宿の街に帰ってきたことは素直に喜ばなくては。相変わらず、武士は食わねどなんとやらな、やせ我慢ぶりで、規定以外の報酬は受け取らないし、美味しい誘いも全部却下。卑しき街を行く探偵たるものやはりこうでなくてはあるまい。作者のレイモンド・チャンドラーへの私淑ぶりは相変わらずのようだ。

この十年で変わってしまったことは、携帯電話の普及。物語の作り方がかなり変わってしまうのだ。当然沢崎のオッサンはケイタイなんて使えない。メールはともかく、通話くらい出来ないとさすがに不味いと思うぞ。間違ってもインターネットとか使えないんだろうなあ。

複雑なプロットをえいやっと最後に収束させてみせる手際に、確かな職人芸を感じるのではあるが、ちょっとややこし過ぎたのではないかと。暴力団の抗争から始まって、戦後の政界を牛耳ったフィクサーの存在まで話を広げたのはちょっとやりすぎの感がある。手を広げすぎた分ヒロインが誰だかわからなくなってしまったのも惜しい。久々の登場ってことでまずは顔見せが大事だとは思うけど。これからはもう少しペースを上げて続きを書いて欲しいところだが、なにせ原リョウなので期待せずに待っていた方がいいかもしれない。[2006/09]

パロへの長い道 グインサーガ108
[栗本薫] 
★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540) [Amazon]

パロへの長い道―グイン・サーガ〈108〉

ゴーラ兵の追っ手をのがれ、赤い街道をクムへむけてひたはしるグインたち一行。しかしおさな子を抱えた彼らの足どりは遅く、遂にその背後にまで追跡の手がのびる。天候はにわかに大あらしと転変し。豪雨の中、追いつめられたグインたちは謎めいた古城コングラスへとさまよいこむ。城主ドルリアンは一行を歓待するのだが、そこにはとある秘密が隠されていた。

2006年刊行。シリーズ108冊目。引き続いてパロへの逃避行編。まだまだ当分この道中は続きそうな雰囲気。思いっきり枝エピソードでおそらく省略して問題ないんじゃね。ってくらいの内容。こないだ物故されたなんとかさんへのオマージュ作品らしいけど、あまり興味なし。たまにはいいかもしれないけど、この手のお話は昔だったら外伝扱いだよな。[2006/09] ⇒次巻

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