2006年10月

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
豹頭王の挑戦
グインサーガ109
栗本薫 早川書房 \540
すっかりリギアがオバサン化している件。
★★★

戦う司書と神の石剣

山形石雄 集英社 \571
マンネリ化の傾向が。
★★☆

「世間」とは何か

阿部謹也 講談社 \650
余談ながら井原西鶴のエンターテイナー振りに惚れそうだ
★★★

マリア様がみてる
大きな扉 小さな鍵

今野緒雪 集英社 \419
いい加減祥子が卒業しちゃうぞ。
★★★
八木剛士 史上最大の事件 浦賀和宏 講談社 \950
イラストが意味不明。
★★★

忘れないと誓ったぼくがいた

平山瑞穂 新潮社 \1,400
まさかの純情路線。
★★★☆

図書館内乱

有川浩 メディア
ワークス
\1,600
柴崎は普通に月9ドラマに出てきそうなキャラだね。
★★★☆
山歩きの自然学 小泉武栄 山と渓谷社 \1,800
山歩きがしたくなる本。
★★★☆

戒名と日本人

保坂俊司 祥伝社 \780
内容はともかく誤字多すぎ。
★★★

快楽の都
グインサーガ110

栗本薫 早川書房 \540
しばらくエロトークが続きます。
★★☆

疾走!千マイル急行 上

小川一水 朝日ソノラマ \533
設定は素敵。もう一ひねり欲しかった。
★★★☆

疾走!千マイル急行 下

\552

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豹頭王の挑戦 グインサーガ109
[栗本薫] 
★★★ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540) [Amazon]

豹頭王の挑戦―グイン・サーガ〈109〉

ついにクム領内へと足をふみいれたグインたち一行であったが、人並みはずれた巨体に異形ともいえる豹頭。どうみても目立ちすぎるグインの存在はかれらの逃避行を困難なものにしていた。クム兵の誰何や、謎の傭兵スイランの乱入をあやうくかわしたものの、パロへの道は遠く、一行は困惑にくれる。そこでマリウスが思いついた奇想天外の妙手とはいったい……。

シリーズ109冊目。2006年刊行。クム領内へ入る。黒竜戦役のみぎりに今は亡きタルーさまが活躍した頃や、アムネリスが虜囚だった頃にちょこっと出てきたことはあったけど、本格的にクムの内情が描かれるのはこれが初めて。中原でまだ手つかずの国があったとは意外と言えば意外かもしれない。次巻はタイス編なので間違いなくエロ度がアップする筈。作者お得意のジャンルだが、あんまり下品なのは勘弁して欲しいところだ。

逃避行続けるのはいいけどさ、グインのオッサン、カラダはバカでかいし、顔は豹頭だし目立ちすぎ。なんだか最近自虐モードだしさ、こんなんじゃこの先逃げられないじゃん! ってことで、それならこいつは偉大なるケイロアニア王グインの真似をしている大道芸人にすりゃいいんじゃね!というマリウス大先生のナイスなアイデアで急遽編成されたマリウス一座がクム国民の拍手喝采を浴びるというお話。完全にお遊びエピソードなんだけど、ちょっと面白かった。こういう話なら脱線してもいいや。[2006/10] ⇒次巻

戦う司書と神の石剣
[山形石雄] ★★☆ 集英社 スーパーダッシュ文庫 (\571) [Amazon]

戦う司書と神の石剣

武装司書ミレポックは周囲の反対を押し切り、「本」屋ラスコール・オセロの調査に赴く。神溺教団にまつわる数々の陰謀。その全てに関与しているとされるこの男の正体とは?恩人シガルの復讐を果たすべく、教団の少女アルメもまたオセロを追う。手がかりを追い求め、二人はイスモ共和国フルベックの街にたどり着く。

シリーズ四作目。2006年刊行。今回は今まで脇役だった<思考共有>ミレポックちゃんが主役を張る巻。

物語の狂言回しとして機能していた伝説の「本」屋ラスコール・オセロの謎に迫ってみたりするわけだが、うーん、段々劣化してないか?場面展開の繋ぎ方のぎこちなさとか、テクニック的にショボイのはまだ仕方ないとしても、初期作品に感じられた火傷しそうな程のキャラクターの熱さが失われている。ゴミのような人生を送ってきた神溺教団の肉やら擬人さんが、逆境を糧として頑張っちゃう、というプロットもさすがに四作続けて繰り返されると飽きてくる。物語としての風呂敷がいい感じで広がっているだけに、この辺でもう一踏ん張りして欲しいところ。[2006/10] ⇒次巻

「世間」とは何か [阿部謹也] ★★★ 講談社 講談社現代新書 (\650) [Amazon]

「世間」とは何か

昔から日本人の生き方を規定してきた「世間」。日本人は「社会」の中で生きているのではなく「世間」の枠組みの中で生きているのではないか。古の万葉集から、中世は吉田兼好、真宗教団、江戸期では井原西鶴、明治からは夏目漱石、そして大正昭和は永井荷風と金子光晴と各時代を代表する文献の中から、日本人にとって「世間」とは何であったのかを読み解いていく。

先日物故した阿部謹也の論考。阿部謹也は一橋大学の出身で、学長まで務めた人物。専攻はドイツ中世史で一般人向けの著作が多数ある。中でも『ハーメルンの笛吹き男』 [Amazon] はミステリとして読んでも一級品の面白さなので、未読の人は是非読んでみて欲しい。

明治に入り、キリスト教や哲学といった精神的バックボーンが存在しないまま「社会」の概念だけが輸入という形で入ってきた日本。強固な個人という観念を持ち得ないこの国では「社会」ではなく「世間」こそが生き方を規定してきたのでは?という論点で、古今の名作を例に挙げながら日本人にとっての「世間」を解き明かしていくというのが本書の趣旨。

各年代の名著にツッコミを入れていくわけだけど、一部の文学作品だけ例にとって判断してしまっていいのかという根本的疑問がつねに付きまとう。あとがきで「素材を提供したに過ぎない」とは書いてあるものの、なんだか誤魔化されているようで据わりが悪い。あとは自分で考えろということなのか。著者に取ってこのテーマはまだまだ語り尽くせぬものらしく、関連書籍がその後多数出ているようなのでおいおい読んでみるかね。[2006/10]

マリア様がみてる 大きな扉 小さな鍵
[今野緒雪] 
★★★ 集英社 コバルト文庫 (\419) [Amazon]

マリア様がみてる―大きな扉 小さな鍵

波乱含みの展開となった生徒会選挙も無事終わり、順当につぼみたちが当選。しかし落ち着く暇もなく、山百合会には新聞部から恒例のバレンタイン企画が持ち込まれる。果たして今年はどんな企画が!?未だ心を開こうとしない瞳子に対して、祐巳は不思議な落ち着きを見せる。瞳子が抱えている深刻な問題とは。その秘密が遂に明らかになる。

マリみて22作目。2006年刊行。フフフフ。紅薔薇話はまだまだ引っ張りますことよ。ってことで未だ瞳子問題は決着が着かず。しかしこの巻でようやく瞳子の秘密が明らかになった。マリみて世界にしては比較的重めの設定だ。聖さま以来ですなこんなに重いのは。珍しく祐巳視点が無かった巻で、いつの間にか大人な行動をしている祐巳に成長を見出すか、違和感を覚えるかは微妙なところ。なんかキャラ変わってない?

全体的な進行としては生徒会選挙編が終わり、今回はバレンタイン編に突入。今年も恒例行事をやる模様。祐巳と瞳子のカップル成立はこの辺りか。いくら祥子がエスカレータ組とはいえ、薔薇さま卒業編は今年もしっかりやって欲しいところなのだが……。 ⇒次巻

八木剛士 史上最大の事件
[浦賀和宏] ★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\950) [Amazon]

八木剛士史上最大の事件

頭の出来はイマイチ。口下手でもちろん非モテ。ビジュアル的にも最悪。更にオタクで運動神経ゼロ。いじめのターゲットとして、スクールカーストの最底辺を這い蹲るように生きている高校生八木剛士。しかしそんな彼には"不死"という恐るべきべき特殊能力があった。唯一の心の救い松浦純菜との急接近に不死身の男の心は高鳴る!八木剛士の純情が遂に酬われる日が来たのか。

2006年刊行。不死身の男八木剛士シリーズの四作目。最低最悪の高校生活を送る八木クンになんと初体験のチャンスが!男子高校生の思考の80%は性欲にまみれているという統計もあり(適当)、発散されることの無い青年期の欲望がもたらす妄想パワーは計り知れない。ドロドロとした妄念にまみれながら、微かな光を求めてムラムラと頑張る八木クンが素敵(な、わけねー)。

謎の暗殺者が登場し一気に緊迫感がアップ。そして前の巻あたりから放置もとい、伏線が張られていた、外国人の女の子とか、堕胎しようとした女の子とかがやっと出てきて話が進むかに思えたが、ここで読者の予想の斜め上を行くのが浦賀和宏。これも安藤シリーズみたいにトンデモ系な方向に行ってしまうのだろうか。この物語がまともに完結出来るのか非常に不安に思えてきた。シリーズ放置したまま、別シリーズ始めたりするなよな。[2006/10] ⇒次巻

忘れないと誓ったぼくがいた [平山瑞穂] ★★★☆ 新潮社 (\1,400) [Amazon]

忘れないと誓ったぼくがいた

織部あずさ。彼女のことを覚えているのはもうぼくだけかもしれない。ふとした偶然から知り合い、意気投合したあずさとぼく。しかし彼女には誰にも言えない秘密があった。一定の周期で出現と消失を繰り返すあずさ。友人も両親も、そしてぼくの記憶からも、彼女が存在した事実そのものが消えていく。そしてその先には……。

2006年刊行。『ラス・マンチャス通信』の平山瑞穂が、ファンタジーノベル大賞受賞後一年半の空白を経て上梓した二作目が本書。不条理な運命に引き裂かれていく恋人たち。抗いがたい何ものかに対して、懸命に立ち向かおうとする主人公。その心の葛藤を描いた恋愛小説。前作が前作だっただけに、あまりに正統派かつ清らかな交際に終始する感動系メロドラマでたじろぐ。平山瑞穂よ、どうしてしまったんだ。

特定の間隔で存在が消えてしまうヒロイン。時間が経てば彼女は戻ってくるが、次第にその感覚が短くなって……という展開を辿る。存在が消えることで、彼女そのものに対しての記憶も次第に失われていくというところがミソ。『ターン』 [Amazon] とか『リプレイ』 [Amazon] みたいなストーリーを予想したが、時間モノ的なこだわりはあまり無い。どちらかというと難病モノの変形と捉えた方が解りやすいかもしれない。会えなくなるだけでなく、覚えていることすらも許されないという設定が、泣かしのポイントではないかと。

決して悪くはないと思うけど、平山瑞穂には、こうした昨今流行りの感動系作品はやって欲しくないなあ。他にいくらでも書ける人がいそうだ。こういう話の方が売れるのだろうけど、もっとぶっ飛んだ話を書いて欲しいよ。[2006/10]

図書館内乱 [有川浩] ★★★☆ メディアワークス (\1,600) [Amazon]

図書館内乱

メディア良化法の成立に伴う良化特務機関による恣意的な検閲。その横暴に立ち向かうべく図書隊は設立された。新米隊員笠原郁の奮闘の日々は続く。突然上京した両親に対して、郁は特殊部隊所属という秘密を隠しきれるのか?親友の柴崎にはイケメン君が急接近!そしてエリート隊員手塚は実兄の企てる陰謀に巻き込まれていく。様々な人々の思惑が混ざり合う中、図書隊の明日はどっちだ??

2006年刊行。『図書館戦争』の続編。続き書くの早いなこの人。一年経ってないのに。今度の敵は身内。ってことで、派手なドンパチはなくなり、陰湿かつ不毛な内輪での足の引っ張り合い的世界に突入する。国内で火器を用いた日本人同士の戦闘シーンが展開された前巻に較べれば、こちらの方が余程ありそうなお話だ。

同じ作者が別に新潮社から出している『レインツリーの国』 [Amazon] とのタイアップは、出版社の枠を飛び越えた画期的な取り組みなのかもしれないが、やりすぎに思えて少々ウザイ。本文ならともかく、表紙にまで登場するのは興醒めだ。宣伝乙って感じ。逆でもやっているのだろうか。

今回は麗しの柴崎さんが大活躍の巻で、うっかりすると主役を喰っているのではと思えるシーンもしばしば。笠原もこれはうかうかしてられないぜ。シリーズ二作目ということで、ドタバタコメディとしてのストーリー展開も堂に入ったモノ。笑わせるシーンと、キッチリ締めるシーンとのメリハリの付け方が巧い。今回のラストでは憧れの王子様の正体が遂に判明。怒濤のヒキで次回へと続く。いやホントに乙女マインド炸裂でキュンキュンきますですな。笠原可愛いよ笠原。このペースなら半年も待てば次が読めるかな。[2006/10] ⇒次巻

山歩きの自然学 [小泉武栄] ★★★☆ 山と渓谷社 (\1,800) [Amazon]

山歩きの自然学―日本の山50座の謎を解く

標高0メートルの海岸から高山植物が咲き乱れる礼文島。世界遺産に指定された白神山地。この山のブナ林はどうして世界的な評価を受けるに至ったのか。豪雪地の雪崩が作り出す奇観アパランチシュート。鳳凰三山地蔵岳。かの地でひときわ異彩を放つオベリスクはどのようにして形成されたのか。地学的なアプローチから日本の山々を読み解いていく。

1998年刊行。筆者は東京学芸大の教授で専攻は自然地理学、地生態学、第四紀学。山と渓谷社から刊行されていた『新版・空撮登山ガイド』シリーズに掲載されていたコラム「山の風景ウォッチング」をベースに加筆修正したものが本書。日本の山50座を俎上に乗せ、地学的な観点からその成立事情を紹介していくスタイルを取っている。

掲載されている写真がとにかく美麗。航空撮影による山岳写真を豊富に収録している。カラーページが少ないのが残念だが、写真を見ているだけでもかなり楽しい。ああ、なんだか無性に高い山に登りたくなってきた。

標高は3,000メートル台と世界的には決して高くは無い日本の山だが、地理的な事情もあって、その豪雪と強風は世界屈指のレベルらしい。それ故に日本でしか見られない不思議な光景がたくさんある。夏場の雪渓は世界的に見たらとても珍しい存在であるらしいし、植物限界を超えて、ハイマツが優勢となるのは日本だけなのだそうだ。ビックリである。山歩きをする人、地学好きの人にはお勧めの一冊。面白い。[2006/10]

戒名と日本人 [保坂俊司] ★★★ 祥伝社 祥伝社新書 (\780) [Amazon]

戒名と日本人―あの世の名前は必要か

仏式の葬儀には戒名が付き物。しかしその本来の意味は「仏教信徒が出家の際に授かる名前」なのだ。生前に真剣に仏教を信仰していたわけでもない人間が、どうして死後に戒名を授かることが出来るのか。日本独特の仏教の受容形態と、それが変容していく過程を紐解きながら、日本人の死生観に迫っていく一冊。

2006年刊行。筆者は1956年生まれ。麗澤大学の教授で東京大学の非常勤講師。専攻は比較宗教学、インド思想。戒名「行俊」。まず最初に誤植多すぎ。ですます調で書いてあるのに、突然である調になったりと基本的な事がメチャクチャ。編集者とか校正する人いないの?著者校も無かったのだろうか。

帯を見ると、戒名の構造は?、誰がつける?、つけるタイミングは?、相場はいくら?、ないとどうなる?みたいなことがずらっと書いてあって、一見して、実用的な雑学本のように思えるのだが、それは第一章だけ。実際には戒名という切り口から見た日本葬送史。西暦538年の伝来から、神道と習合し日本的な変容を遂げた仏教の姿についてつまびらかにしていく。

自然発生的で系統立った理論が無いだけに死穢に対して非力であった神道。高度に洗練された理論と、埋葬に対しての複雑なノウハウを持つ仏教は、死穢におののく古代の日本人に取って画期的な救済者であったという序論。本来は出家して真面目に修行をしなくては救済が無かった筈なのに、そんな金も暇も無い庶民に教えを広めるためにはそれでは駄目。それでも仏教は広めたい。それならば代替措置として、葬儀の前に戒名を授けてしまえば出家扱いで僧籍に入れることが出来、立派に成仏できるじゃん!という画期的アイデアの元で日本独特の死後の戒名授受は始まったらしい。

ユニークな視点での仏教史で読んでいてとても興味深かったが、いかんせん仏教側の立場からの指摘なので、神道側の人間からはかなり文句が出そう。キリスト教やイスラムの人も怒りそうだなあ。根拠の無い断定も多いので、そのまま信じるのは危険。自分的には死後の救いも、輪廻思想も信じていないので、戒名イラネ派だったりして。[2006/10]

快楽の都 グインサーガ110 [栗本薫] ★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540) [Amazon]

快楽の都―グイン・サーガ〈110〉

中原最大の歓楽都市。快楽の都タイスへと足を踏み入れたグインたち一行。かれらの興行はおもわぬ評判をとってしまい、そのうわさをききつけたタイス領主タイ・ソン伯爵はグインたちを自らの館に招いてしまう。好色にして冷徹な支配者タイ・ソンを前にして、彼らは無事に興行を終えることが出来るのだろうか。

グイン110巻目 クムの吉原というか、歌舞伎町というか、雄琴というか、新宿三丁目というか、すすきのというか、金津園というべきか、ともかくその手の風俗産業が渾然一体となった悦楽の都タイスに一行が到着。いかにも温帯の好きそうな下品な街で、しばらくこの手の下ネタトークが続くのかと思うとうんざり。RPGのノンプレイヤーキャラよろしく、次から次へと都合よく出てくる設定説明用の地元民キャラクターの饒舌ぶりがこれまた腹立たしい。しばらくはここに逗留するのだろうけど、せいぜい1、2巻で終わらせて欲しいところ。パロへの到着まだ〜??[2006/10] ⇒次巻

疾走!千マイル急行 上・下
[小川一水] 
★★★☆ 朝日ソノラマ ソノラマ文庫 (\533/\552) [Amazon:/]

疾走!千マイル急行〈上〉 疾走!千マイル急行〈下〉

ジオール大陸随一の栄華を誇る都市エイヴァリー。この街を起点として東の大都市采陽までの1000マイルを駆け抜ける夢の超特急がTME(Thousand Miles Express)だ。エイヴァリー都市鉄道の社長令息のテオはTMEに乗り込み向学の旅に出る。しかし、不気味な装甲列車「メイドン・カースル」が連結された時、彼の人生は大きな軌道修正を強いられる事になるのだが……。

2005年刊行。夢の超豪華特急を舞台とした架空世界モノ。この手の架空世界の設定造りがこの作家はホントに大好き。19世紀のイギリス的な世界観をベースに、故国を失った少年少女たちが、国の命運をかけて大国と張り合う冒険活劇。

レールの上を走るしかない列車を使ってどうやって逃亡劇を成立させるのか。車両ごと船で運んじゃったり、時には軌道の幅まで変えてしまったり、はたまた幻の支線を探してきたり、果てには線路が無かったら工兵が敷設までしてしまうというバリエーションの豊富さ。尽きることのない豊穣なイマジネーションにいつもながら脱帽させられる。

そしてなんてったって列車砲!装甲列車!!これは燃えるしかないだろ。航空兵器も自動車も存在しないこの世界では鉄道は最速にして最強の存在なんですな。第二次大戦ではたいして活躍出来なかったこの兵器も、このシチュエーションであれば十分に能力を発揮できる!列車砲VS列車砲とか涙が出そうなナイスな展開。燃えるぜ。

が、TMEや列車砲の素敵過ぎる設定に較べると、物語としての出来は今ひとつ。国家の存亡レベルのお話に対して、その命運を子供に託してしまうというというのがよくわからない。それは責任放棄でしょ>>大人の人たち。死んで詫びてどうすんの。そもそもエイヴァリーは滅亡まで追い込まれるまでに、もっとすることがあったんじゃないの?と、ついつい無粋なツッコミをしてしまいたくなるのだった。[2006/10]

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