2006年11月

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
下流社会 三浦展 光文社 \780
これはひどい。
★★☆

精霊の女王
竜の眠る海

金蓮花 集英社 \533
一冊では厳しかったか。
★★☆

古書店アゼリアの死体

若竹七海 光文社 \838
お気軽に。
★★★

妖精作戦

笹本祐一 朝日ソノラマ \450
古傷をえぐられるような。
★★★
さよなら純菜、
そして不死の怪物
浦賀和宏 講談社 \950
向こう側へ行ってしまった。
★★★

つきのふね

森絵都 角川文庫 \438
勝田クンのキャラは良い。
★★★☆

ボトルネック

米澤穂信 新潮社 \1,400

Don't be.

★★★☆

グーグル・
アマゾン化する社会

森健 光文社 \700
たまには流行りの本を。
★★★
零崎軋識の人間ノック 西尾維新 講談社 \1,200
いーちゃん別に居なくていいじゃん(笑)。
★★★☆

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下流社会 [三浦展] ★★ 光文社 光文社新書 (\780) [Amazon]

下流社会 新たな階層集団の出現

格差社会という言葉が日常化しつつある今日の日本。グローバル化による社会構造の変革は所得の格差を広げ、一億層中流と呼ばれてきたこの国の人々の生活、意識を大きく変えていこうとしている。新たに形成されつつある「下流社会」とはいったいどのようなものなのか。意欲、能力共に低いとされる下流の人々の特徴とは……。

2005年刊行。『「かまやつ女」の時代』の人が書いた本。タイトル勝ちで売れたような本。このタイミングでこのタイトルの著作を世に出せた商売人としての嗅覚は素晴らしいと思うが、内容はお寒い限り。

相変わらずのチラシの裏に書いてれば?って程度の内容で呆れるしかない。消費社会論と銘打ってあるけど、統計の扱い方が酷い。酷すぎる。都合のいい事象だけとりあげての印象批判の連発で、思い出したかのように統計とは関係の無い著者独自の推論を混入させてくるあたり実にタチが悪い。写真のキャプションも無理矢理で酷い。格差社会ついては幸い他にたくさん本が出ているから、この本は避けておくのが無難。読むだけ時間の無駄だ。[2006/11]

精霊の女王 竜の眠る海 [金蓮花] ★★☆ 集英社 コバルト文庫 (\533) [Amazon]

精霊の女王―竜の眠る海

オディロカナ王国の第一王子リューイは姉のノーイ、傭兵のジェイと共に、祖父ステリウスが治める大国チャリアへ外遊の旅に出ていた。歓迎の舞踏会に突然現れた吟遊詩人シーナは不敵にもオディロカナの姉弟に対して挑発的な態度を取る。翌日チャリアの王子であるカイネの失踪が明らかとなるが、嫌疑の目はリューイたちに向けられる。

うら若き王子様と、荒くれ者の傭兵さんが織りなす、仄かな腐敗臭漂う冒険ロマン「竜の眠る海」シリーズの五作目。1998年刊行。時系列的には第四作の前のエピソード。いかにしてリューイが妖精の女王さまと懇意になれたのかというお話。

今回は一冊でまとめたせいか、放置プレイ気味のキャラが少々。メインの二人以外はどうでもいいのかなあ。女性キャラ、特に重要人物である筈なのに姉ノーイの影が薄い。一国の王子様が、ろくに警備の者も連れないで、冒険に出ていいのかよと問いつめたくもなるのだけれど、まあ、そういう狭い常識で突っ込んでしまうと駄目なのだろう。二人のラブラブ道中を生暖かく見守ってあげよう。[2006/11]

古書店アゼリアの死体
[若竹七海] ★★★ 光文社 カッパノベルス (\838) [Amazon]

古書店アゼリアの死体

やることなすこと全てが失敗続き。夕陽に向かってバカヤローと叫ぶために葉崎の海までやってきた相澤真琴は、あろうことか溺死体の第一発見者となってしまう。死体は街の有力者前田家の御曹司であるらしく、彼女は前田一族の財産争いに巻き込まれてしまう。御曹司は自殺なのかそれとも他殺?古書店アゼリアに身を寄せることになった真琴はそこで新たな死体に遭遇する羽目に……。

湘南地域にあるという架空の街葉崎を舞台としたミステリの二作目。2000年刊行。前作『ヴィラ・マグノリアの殺人』と共通して駒持警部が登場。その他のキャラクターはほぼ総入れ替え。時々、前作のキャラがちょい役で出てくるのがちょっと嬉しい。

リーダビリティは高く、気軽に読めながらも、二段三段と終盤にサプライズの仕掛け有りと、サービス精神旺盛な作品に仕上がっている。惜しむらくは、真琴と千秋、ヒロイン的なキャラが二人いるので、焦点がぼけてしまったところだろうか。どちらか片方に絞った方が、視点がぶれずスッキリして良かったんじゃないかと思う。[2006/11]

妖精作戦 [笹本祐一] ★★★ 朝日ソノラマ ソノラマ文庫 (\450) [Amazon] ※書影無し

女子高生小牧ノブには秘密があった。世界屈指の超能力者である彼女を狙い、超国家組織SCFが動き始めた。ふとしたことからノブと出会うことになった高校生の榊裕は、誘拐された彼女を、追って追って追いまくる。原子力潜水艦への侵入、海底基地での冒険、そして舞台は宇宙へ!榊らが知る驚くべき世界の真相とはいったい?

1984年刊行。確か笹本祐一のデビュー作。作品が古すぎて書影が出ないので撮影しておいた。80年代テイストが濃厚に漂うナイスな表紙絵画像はこちらで確認のこと。ちなみにイラストは平野俊弘(平野俊貴)。

若さにまかせ、勢いだけで突っ走ってしまった作品。ストーリー性皆無。設定なんてあとからついてくればいいでしょ的な、熱情のほとばしりのままに最後まで突き抜けてしまった凄いお話。よくこれでデビュー出来たと思う。ソノラマの人偉い!だいたいちっとも終わってないし。説明されていない謎も多すぎる。続きが出ているからいいようなもので、そうでなかったらもの凄い消化不良が残ったことだろう。

まずもって二人称代名詞が「おたく」(笑)。1980年代でしかありえない呼び方である。無駄に行動力が高い高校生と、頭は弱そうだけどとりあえずかわいいヒロイン。バイクとか、宇宙とか、メカメカしいもの全般に対する10代男子の憧憬。とりあえず、頭に浮かんだものを全部放り込んでみましたという内容。今となっては微笑ましい。デビュー作ならではの全力投球だ。続編はPart4まで出ているが実は未読。いまから手に入るだろうか。[2006/11]

さよなら純菜、そして不死の怪物
[浦賀和宏] ★★★ 講談社 講談社ノベルズ (\950) [Amazon]

さよなら純菜 そして、不死の怪物

謎の暗殺者の襲撃を辛くも退けた八木剛士だったが、感極まったマリア・マールベルク(エル・ビアンノ)とのキスシーンを純菜に目撃され絶交を宣言されてしまう。凄惨な苛めを受けた高校にはもはや戻れず、自宅に引き籠もるしかない剛士。しかし純菜の心は冷たく閉ざされままだった。唯一の心の拠り所を失い次第に剛士の心は追いつめられていく。

2006年刊行。不死身の男八木剛士シリーズの五作目。相変わらず中途半端に微妙なテイストのイラストが入っているんだけど、無くてもいいような気が。どうせ書くなら八木クンを書こうぜ。一度彼のビジュアルを見てみたいよ。表紙でもいい。って、売れ無くなっちゃうからだめか(笑)。

ネタなんだろ、釣りなんだろと、思わせぶりな展開でこれまで散々引っ張ってきたこのシリーズ。ミステリなのか、トンデモ小説なのか、微妙に境界線の間を揺れ動いていたこの作品の流れがついに確定。やっぱりトンデモ小説だった。

ここまで四冊かけて堪えに堪えてきた八木クンの怒りが遂に爆発。越えてはいけない一線を越えてしまった。炸裂する哀しみの咆吼が切ない。なんてったって「があああぁぁぁ」ですよ「があああぁぁぁ」。この先の展開が全く読めないなあ。でも、ハッピーな終わりは無さそうだ。現代のフランケンシュタインみたいなお話になるのだろうか。どんなオチでもいいからちゃんと完結させような。[2006/11] ⇒次巻

つきのふね [森絵都] ★★★☆ 角川書店 角川文庫 (\438) [Amazon]

つきのふね

1999年。世紀末の日本を生きる女子中学生さくら。彼女は将来に対しての希望を持てず、鬱屈した日々を過ごしていた。万引きグループに引き込まれた挙げ句、親友の梨利とは断絶状態。心の救いであった智さんは次第に精神を病に蝕まれていく。街で頻発する放火事件と、梨利がハマった売春疑惑。ままならない日々の中で、懸命に生きていこうとする少女の魂の軌跡。

1998年に刊行された単行本 [Amazon] を2005年に文庫化したもの。野間児童文芸書受賞作品。遅まきながら初森絵都である。こういう有名作家を今更読むのは結構恥ずかしいなあ。どれから読むべきか迷ったけど、一番薄っぺらいのからチャレンジしてみた。森絵都は1968年生まれ。1990年に『リズム』 [Amazon] で講談社児童文学新人賞を受賞してデビュー。その後児童文学系の賞を片っ端から取りながら一般向けの作品も書き始め、2006年に『風に舞いあがるビニールシート』 [Amazon] で直木賞を受賞している。

いい話だ。しかしやりきれない話でもある。最後にうわっと盛り上がって美しく物語は閉じたかに見えるけど、智さんみたいな人は何度でも死にたがるだろうし、梨利みたいな子はこの先どんな誘惑に屈するかわからない。聡明なヒロインにしても、この閉塞環境の中でいつまで心折れずに頑張れるかなんて判らない。感動的なイベントのあとも人生は延々と続いていくし、これから先も問題は山積みだ。

決してめでたしめでたしでは終わっていない。ずいぶんと含みを持たせた幕の引き方だけど、読後感は不思議に爽やかだった。どんなにつらくても空から救いの船は降りてこない、でも身近な地上に救いは残されている。壊れたバレッタを最後に見出すのが智であったのは微かな救いの兆しなのだろう。象徴的に使われていた銀のバレッタを通してのメッセージは、この作家が物語に託した想いだ。完全な救いなどはありえない、だがそれでも希望はあるのだ、と。[2006/11]

ボトルネック [米澤穂信] ★★★☆ 新潮社 (\1,400) [Amazon]

ボトルネック

高校生の嵯峨野リョウは、今は亡き同級生、諏訪ノゾミの菩提を弔うべく東尋坊を訪れていた。強い目眩と落下感覚の後、再び彼が目覚めたとき、そこは似て非なるパラレルワールドだった。自宅に戻ったリョウを待ちかまえていたのは、本来生まれていなかった筈の姉。自身の存在しない世界で知らされる、ありえたかもしれないもう一つの未来……。

2006年刊行。米澤穂信最新作。サイン本だ(自慢)。着実に売れっ子作家への仲間入りを果たしつつ米澤穂信。角川、東京創元社と続いて三社目の版元は新潮社である。自分が生まれておらず、本来生まれていない筈だった「姉」が存在していた、、という並行世界に紛れ込んでしまった「ぼく」の物語。パラレルワールドモノのかと思って、もっといろいろな世界を放浪していくのかと思ったけど、最初から最後まで彼が居たのは「姉」が居た世界のみ。ちょっと予想と違った。

今回の主人公は奉太郎とか小鳩クンあたりから、生気と探偵能力を抜き取って、コンプレックスと自意識を二乗したようなキャラクター。高二病全開のキャラクター設定が痛々しい。同世代前後の読者には受けそうだが、高齢読者にはかつての自分を見せられているようでなんだか、むずがゆい気分。「お前いなくてもいいんじゃね」と世界から言われてしまった主人公はその後どう生きるのか。Amazonのレビューを見ていると、ラスト一行に希望を見出している人がいるんだけど、それってアリ??ポジティブなその後はとても想像出来ないんだけど。[2006/11]

グーグル・アマゾン化する社会
[森健] ★★★ 光文社 光文社新書 (\700) [Amazon]

グーグル・アマゾン化する社会

Web2.0という言葉が取り沙汰されるようになって久しい今日。ユーザーの力を利用することで飛躍的な発展を遂げることになった二つの企業。グーグルとアマゾン。この二社は先進的なシステムを提供したことで莫大な先行者利益を獲得した。人間の思想、ライフスタイルが多様化していく一方で、圧倒的な一極集中という現象が起きるのは何故なのか。静かに進行しつつある変化に着目した一冊。

2006年刊行。筆者は1968年生まれのジャーナリスト。この手の本は最近たくさん出ているのだけど、誰にでも判りやすく書くために、グーグルやアマゾン、web2.0の説明にかなりのスペースを取られてしまっている。知ってる人間にはちょっともどかしい。正味読めるところが半分以下になってしまうんだよね。なんとかならんものか。

流行りの一冊。多様化、個人化が進む現代社会にあって、どうして一極集中という現象が起こるのか、という問題提起の書。パーソナライズが進み、自分に取って便利な機能、取得したい情報ばかりを集めていると、いつの間にか入ってくる情報が偏ってしまうのではという指摘は確かにその通り。特定キーワードで抽出したRSSフィードを細かく設定していたり、MyYahoo!やgoogleニュースをカスタマイズして使いまくっているはてブヘビーユーザーの自分は、実はちょっとヤバイのではと反省。いつの間にか、読んでいて心地よいと感じる情報しか受け取らないようになっていた。これからは我慢して報道ステーションや朝日新聞もちゃんとチェックしなきゃね(違。[2006/11]

ついでに…… 
『ウェブ進化論』@梅田望夫<<Webで今何が起きているかについてはこちらを。

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零崎軋識の人間ノック
[西尾維新] ★★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\1,200) [Amazon]

零崎軋識の人間ノック

"殺し名"第三位、零崎一賊。血に淫する殺人鬼の集団として忌み嫌われる集団。鋼鉄の釘バット、"愚神礼賛"ことシームレスバイアスを操る一賊きっての使い手零崎軋識はターゲットを殲滅すべく、某都市の超高層マンションに乗り込む。同行するのは若き零崎、人識。最上階に達した二人を待ち受けていたのは、周到に張り巡らされた罠だった。二人はこの死地から逃れることが出来るのか。

2006年刊行。前作の『零崎双識の人間試験』より五年程前のお話。雑誌「ファウスト」に掲載された「零崎軋識の人間ノック1 狙撃手襲来」「零崎軋識の人間ノック2 竹取山決戦」に書き下ろしの「零崎軋識の人間ノック3 請負人伝説」を加えた構成。零崎シリーズのお約束、不毛なオマケとして今回は特製のトレーディングカードセットが同梱されているのだが、単価が上がるだけなんだからこういうのは限定版だけにして欲しいなあ。

前作の「人間試験」はオリジナルキャラがほとんどでかなり独立性の高いお話だったけど、今回はあちらのシリーズでお馴染みの連中が勢揃い。子荻ちゃんに玉藻ちゃん、双識と人識。メイド三人娘に赤い人に青い人と、それなんて戯言シリーズと突っ込みたくなる程の見事なまでのオールスターキャスト。この作品を読む人間に、そんな奴は居ないと思うけど、戯言シリーズは先に読んでおいた方がいい。

タイトルになっているわりには零崎軋識の影が薄い件。終始驚き役に徹する軋識。メッチャ弱いし。「焼きたてジャぱん」の河内(なんやて!)みたいな位置づけだよね。その一方で作者の偏愛著しい子荻ちゃんには出番も見せ場も豊富に用意されていて、どうせなら「戯言シリーズ外伝 萩原子荻のなんちゃらかんちゃら」ってタイトルでも良かったような気がする(笑)。 ⇒次巻

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