Alice [川崎康宏] ★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\570) [Amazon] ※書影無し
狗頭蘭子(くどうありす)。通称アリス・ザ・ファイアボール(もしくは狂犬アリス)は女子高生ながら超人的な戦闘能力を誇り、サウスエンドでもっとも凶暴と怖れられている女だった。下目黒不動尊前探偵事務所に所属する彼女は、とある猫の捜索を頼まれるのだが、それは危険な冒険行の始まりだった。次から次へと現れる襲撃者たち。猫は某企業の重要機密を握っているようなのだが……。
2004年刊行。川崎康宏は1994年に富士見から『銃と魔法』 [Amazon] でデビュー。その後干されてエンターブレインに。そこでも干されたっぽくて電撃に流れ着いて書いたのが本書。作家専業では無いと思うけど、大きなヒットもなく、10年以上この世界で生きて行けているのはけっこう凄いことなのではないかと思う。
ちょっと物騒で、人死にが当たり前になってしまっている日本国で、薬物被害で生まれながらにして高い戦闘力を持つに至ってしまったヒロインが、いろいろと頑張るお話。女子高生なのに殺しまくりのヒロイン!しかも罪悪感ゼロ。いいのかそれで。イラストのファニーフェイスと内容のギャップが激しすぎるのではなかろうか。
キャラで魅せるのか、ストーリーテリングの妙で魅せるのかどっちかにした方が良かったのではないかと。なんだか中途半端な内容。ヘンなキャラクターばかりで、その辺はそれなりに面白いんだから、下手に構成に凝るよりは、キャラをおもいっきり動かして楽しませてくれた方が良かったように思えた。[2006/12]
マルドゥック・ヴェロシティ 1
[冲方丁] ★★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\680) [Amazon]

ディムズデイル=ボイルドは自軍への誤爆の責を負い、軍研究所で生態改造を受ける。周囲の重力を自在に操る力を得たボイルドには、あらゆるものに変形出来る万能兵器ネズミ・ウフコックがパートナーとして付き従う。戦争が終わり存在意義を失った研究所の被験者たちは悪徳の街マルドゥック市にたどり着く。そこで彼らを待っていたのは意外な任務だった。
2006年刊行。あのウフコックが、あのボイルドが帰ってきた!名作『マルドゥック・スクランブル』の続編、というか前日譚が遂に登場である。11/8、11/15、11/22の毎週連続発売という体裁を取っていたのだが情報入手に遅れ、恥ずかしながら一ヶ月遅れでの対応になってしまった。どうせなら、リアルタイムで読みたかったな。本作単独でも読めるようにはなっているけど、出来ることなら「スクランブル」を先に読むことをオススメする。
カタカナ名前のオンパレードなので、キャラクターを覚えるのには苦労させられた。全キャラクターの絵を出せとは言わないけど、キャラクターリストにはそれぞれの得意技を書いて欲しかったかな。
本作はまだ、ウフコックがバロットに出会う前、未だボイルドとコンビを組んでいた時代のお話。自我が形成されて間もないウフコックの初々しさが愛らしい。ボイルドとの絡みは狙っているとしか思えない。そして主人公はボイルド。味方を誤爆しながらも大量殺戮の歓びに打ち震えてしまった自分。己の心中に潜む悪魔を必死に抑え込もうと苦悩する姿が本作では描かれていく。「スクランブル」がああいう話だっただけに、結末が判っている読者としては、如何にしてボイルドの精神が崩壊に至り、ウフコックと破局を迎えるのかを暗い期待を持って読み進めることになる。
軍研究所の人体実験で改造を施された元軍人たちが、罪深き街マルドゥックシティでそれぞれの特殊能力を武器に特殊任務をこなしていく。彼らの前に立ちふさがるのは、同じく改造済の元軍人グループ。おお、今回は集団VS集団の異能バトルになる模様。この先の燃えるバトル展開に期待である。冲方丁だから、単純なハッピーエンドはもとより期待していないぞ。
ちなみに組織の名称が「09」なのはひょっとして「009」を狙っているのかしらん。[2006/12] ⇒次巻
那須高原卓球場純情えれじ〜
[野村美月] ★★☆ エンターブレイン ファミ通文庫 (\640) [Amazon]

RHSVO(ロイヤルハーモニースペシャルボイスオーケストラ)の女子大生三人組は松尾芭蕉ツアーの途中、日光東照宮の眠り猫に導かれ怪しげな扉を開いてしまう。扉の向こうで彼女たちを待っていたのは「救世主」を待ちわびる人々の一群だった。何故か鬼退治をする羽目になってしまった三人は、この地に伝わる哀しい伝説を知ることになる。
2002年刊行。『赤城山卓球場に歌声は響く』の続編。前作は女声合唱団R=H=S=V=Oの皆さんが、「ドナドナ」の歌声で支援効果を上げながら、巫女装束のヒロインが卓球の力で世界の危機を救うという想像を絶した物語だった。書いている自分でも何だかよくわからなくなる程の無茶な設定だ。
今回の舞台は那須高原。無茶な状況設定の中で卓球の力で神様と戦うのも同じ。どう考えてもこの設定ヘンだよヘン!誰か突っ込む編集者は居なかったのか。主人公まわりの連中が多少イカれているのは百万歩譲ってアリだとしても、今時鬼のたたりを怖れて逃げまどう一般民衆っているのかよ!感動的なシーンをいくら描こうが、設定がぶっ飛びすぎているので、感情移入のしようが無い。このシリーズを楽しもうと思ったら自らのツッコミ力は封印しなくて駄目なんだろうなあ。高齢読者には辛い一冊だった。[2006/12] ⇒次巻
天使のベースボール
[野村美月] ★★☆ エンターブレイン ファミ通文庫 (\640) [Amazon]

琴宮まりあの人生は順風満帆だった。名門聖クララ女学院に付属幼稚園の頃から在籍。短大を卒業後は織川グループ総帥の長男慶吾の元へ嫁ぐことが決まっていた。しかし、父親の会社が倒産したことからまりあの人生は音を立てて崩れていく。生きていくために、泣く泣く男子校の教師となり、野球部の顧問まで引き受けた彼女だったが、そこは野獣の群れが集う恐るべき学園だった。
2002年刊行。野村美月三作目の作品。お嬢様育ちのヒロインが、家業が傾き、フィアンセには捨てられて、流されるままに男子校の野球部顧問になってしまうという展開。うわー、ありがち。マンガ的な展開で判りやすいが、ストレート過ぎるか。お約束的なパターンの王道を外さずにキッチリ決めるところは決めてくるので、ストレス溜めずにサクっと読めてしまうのはいいところ。あとがきで書いているわりには、野球の楽しさがあまり伝わってこなかったのは残念かな。[2006/12] ⇒次巻
他人を見下す若者たち
[速水敏彦] ★★★ 講談社 講談社現代新書 (\720) [Amazon]

些細な行動や一言が、意外にも人を傷つけ、憎悪や怒りをかき立ててしまうことがある。そしてニートの増加が深刻な社会問題となりつつある。覇気が無くやる気にも乏しい彼らには、他者を見下し軽視することで自らの尊厳を保とうとする傾向があるように思える。「仮想的有能感」の存在を提示しながら、現代日本人の感情の変化について読み解いていく。
最近すぐ怒る人が増えた。年末年始なんて、ホームで駅員に激怒しているオッサンを毎日見かけた。原因は電車が来るのが数分遅れたとか、誰かの肩が当たったとか些末なことばかり。それから飲食店で過剰に自分の要求を通そうとして、見苦しいくらいまでに店員を罵倒している人もよく見かける。周りがドン引きするくらい。確かに現代人は些細な事で怒りすぎなのかもしれない。
社会的な事には無関心。でも自らの尊厳を冒されることには敏感な最近の若者。その上会社組織、地縁社会が崩壊したことで、他者から「承認」される機会が減った。若者の自尊心は満たされることがない。そこで他者を軽視し、確たる実績の無い仮想的な有能感に浸ることで、自らの自尊感情を満足させているのではないかという仮説を筆者は提唱している。
着眼点は決して悪く無いと思うのだけど、こないだの『下流社会』同様に、データは少ないし、仮説だらけでまともな論考になっていない。筆者は1947年生まれ。名古屋大学大学院の教育発達科学研究科の教授。思っていたより年配の人で驚いた。もっと若い人が書いているのかと思った。枚数の制限はあるにしても、もう少し説得力のあるデータを集めてくるべきだろう。思いつきレベル。よくある「年寄りの若い者批判」の域を出ていない。[2006/12]
銀盤カレイドスコープ Vol.8 コズミック・プログラム:Big time again
[海原零] ★★★☆ 集英社 スーパーダッシュ文庫 (\629) [Amazon]

女子フィギュア界に君臨する女帝リア・ガーネット。リア打倒を高らかに宣言した桜野タズサは、ロシア人コーチ、マイヤ・キーフラによる過酷なトレーニングに耐えていた。一方タズサの挑戦を知ったリアの態度は豹変。僅かに垣間見えていた人間的な側面は消え失せ、苛烈なまでにタズサを敵視し始める。運命の日。バンクーバー五輪の開催は目前に迫っていた。
2006年刊行。完結目前。Vol.9と合わせての二冊同時刊行だ。いよいよ次が最終巻かと思うとなんだか読んでしまうのが惜しいような……。目次を見る限りでは、前巻のVol.7からの続きになっていて、最後は三冊で1セットという構成のようだ。ちょっと判りにくい。本巻にはバンクーバー五輪前の特訓エピソードから、本番のショートプログラム部分までのエピソードが収録されている。
いやしかし、科学の時代にそのアナログな『巨人の星』的スポ根トレーニングはどうかと思いますよ>>マイヤコーチ(笑)。いくらなんでも、今時そこまでやらないのでは?まあ、マイヤには彼女なりの思惑があるし、ここで極限まで体を作っておいたことがあとあと効いてくるんだけど、それにしてもちょっとやりすぎに思えた。
これまで友好的な関係を築いてきた女帝リアと、タズサの関係は一気に険悪化。タズサの挑戦を受け、本気で潰すぞオーラを滲ませるリア(年下なのに)の迫力が素敵。プレッシャーに押しつぶされそうになるタズサの心理描写にかなりのボリュームを割いている。一巻の頃の弱いタズサが帰ってきたね。神に愛でられし天才と同時代に生まれてしまった、並の天才の悲劇。果たしてタズサはリアに勝てるのか?さあ、とっとと次に行こう。[2006/12] ⇒次巻
銀盤カレイドスコープ Vol.9 シンデレラ・プログラム:Say it ain't so
[海原零] ★★★★ 集英社 スーパーダッシュ文庫 (\648) [Amazon]

バンクーバー五輪開幕。かつてないプレッシャーの中、ショートプログラムの演技を終えたタズサ。リアを射程圏内に捉えての二位。フリーの滑走順は不運にもタズサの直前にリアが滑ることになる。これまで頑なに秘されてきた女帝リアのフリー演技。その全貌が明らかになったとき、世界は戦慄する。次々に繰り出される神技の連続にタズサはただ立ちつくすしかなかった。
2006年刊行。Vol.8との同時発売。遂に最終巻である。バンクーバー五輪フリープログラム+α編。最後だからということもあるのだろうけど、脇役の至藤、ドミニク、ステイシー、キャンドルにもちゃんと感動的な見せ場が用意されている。いい物語は、いい脇役あってこそ。悲運のスケーター至藤響子27歳での初五輪は泣けたよ。
前巻でショートプログラムの演技までが終わっていて、本巻はフリープログラムの演技から。おお、そうきますかという劇的過ぎる展開。残りのページ数見て、もしやと思ったけどそこまでやるか。タズサのビビリ具合もさることながら、コーチのマイヤが同じように動転しまくっているのがいい演出。近頃見る機会が増えてきたとはいえ、素人の読者相手にフィギュアスケートの滑りの凄さを納得させてしまうハッタリ力はたいしたものだと思う。フィギュアシーンの描写も相変わらず力が入っている。
リアの神演技に完膚無きまでに敗北したタズサは落ちるところまで落ちてしまう。マイヤの気遣いも、子供達の励ましも、キャンドルの挑発も全て不発。そしてもうピートは側に居ない。悶々とした鬱展開が200頁弱続く。350頁弱しかないVol.9の半分以上はこのどん底モードなのだ。あのタズサがである。これは最後に更なる高みに跳ぶために必要な助走期間なわけだけど、やっぱり計算して書いているんだろうなあ。これがラストバトルで効いてくる。
そしてガブリーちゃんだ、ガブリーちゃん。萎え気味のタズサの気持ちに活を入れる。誰もが諦めた神への挑戦を全然諦めていない!鬼気迫る血染めの聖女。読み手のテンションも一気にアップ。熱血スポ根小説とはこうでなくてはなるまいよ。最終エピソードがVol.7からの三巻セットだったということをこれでようやく理解出来た。デフォルトが常に前向きで全力投球。タズサとは対照的な彼女の存在はこの物語を締めくくるのに絶対に必要な要素だったわけだ。このあたりから目から水が……。
赤い靴を履いたリアと、ガラスの靴を履いたタズサ。ここいら辺もそれぞれの運命を暗示させたナイスな仕掛けだった。これからはリアとタズサの二強時代に入っていくのだろうか。全てを投げ打ってようやくたどり着けた神の領域。一度勝ったからといって、才能で劣るタズサがこれからも勝てる保証は無い。この先の物語も読んでみたい気はするけど、ここで終わっておくのが一番美しいのだろう。これほどまでの作品を書いてしまった作者の今後がとても心配(笑)。燃え尽きてたりしてない?『ブルー・ハイドレード』も買ってあるけど、こちらはあまり評判良くないんだよね。[2006/12]
少女には向かない職業 [桜庭一樹] ★★★☆ 東京創元社 (\1,400) [Amazon]

本州の西の外れにある、とある小さな島。中学二年生の大西葵13歳は一年間で二人の人間を殺した。夏休みにひとり、それと冬休みにもうひとり。凶器は悪意とバトルアックス。殺人はまったく少女には向かない職業だ。その魂は本来殺人には不向きなのだ。でも、その機会はふいに訪れる。訪れてしまう。これは、ごくごく普通の少女の人殺しの記録。
2005年刊行。ライトノベルの世界では十分にブレイクした桜庭一樹、ミステリ界への殴り込み一作目は東京創元社より。ミステリフロンティアシリーズからの登場。2006年版このミス国内部門第20位にランクインしている。なお、タイトルの元ネタはP.D.ジェイムズの『女には向かない職業』 [Amazon] だと思うけど、恥ずかしながら未読なので内容的な関連性は不明。
山口県下関市の彦島(橋で地続きだけど)に住む少女の物語。下関は行ったことがあるので、ちょっとだけ親近感。島と言ってもド田舎という訳でもなく、かといって都会ではもちろん無い。どこにも行けないわけでは無いけど、どこかに行けたとしてもたかがしれているという暗喩なのかもと邪推してみたり。閉塞感の表現が上手い。
例によって一人称語りがハマっていて、同時代的な生々しさを強く感じた。ローティーン少女の心のゆらぎを抉り込むように鋭く掘り下げる筆致の巧みさ。人を殺したその先には怒りも哀しみもなく、驚きと困惑だけが残る。少女が主人公でしか書けないタイプのクライムノベルを、キッチリ書き上げてきた。やはり侮れないなこの人は。[2006/12]

消費者金融は莫大な利益をあげてきた。長者番付の上位には業界の経営者たちがずらりと並び、地方の寂れた駅前にはサラ金ビルが林立、テレビでは爽やかなイメージのCMがにこやかにキャッシングをアピールしている。グレーゾーン金利という法律上の抜け穴を武器にした、悪魔的ビジネスモデルの秘密について迫る。
2006年刊行。最近話題の消費者金融の実態に迫った本。タイムリーなタイミングでの刊行だ。筆者は1961年生まれの金融ジャーナリスト。
現在日本には多重債務者は350万人いるらしい。とにかく長く貸す。低収入者にしか貸さない(すぐ返されちゃうから)。電話をかけて無理矢理貸す。自己破産者(しばらくは自己破産出来ない)を見つけて更に貸す。ホントに酷い業界。出資法の限界まで利率を上げられると、普通の稼ぎでは利息を返すのが精一杯。一生涯かけて返済を続けなければならない。こんな仕組みが今の今まで野放しだったのが不思議でしょうがない。サラ金大手五社の年間宣伝費は800億にもなるそうで、この莫大な金額はそのままマスコミに流れている。そりゃ大のお得意様なんだからメディアからの批判も甘くなるわけだ。
昨年あたりから、掌を返したかのように、政府は徹底的にこの業界を潰しに来ているけど、やはり儲けすぎたから?これだけ儲けまくった業界が、政治的なネゴを疎かにするとは思えないから、どこかで何かの禁忌に触れてしまったのだろうか。まあ、サラ金大手が衰退しても、メガバンクが待ってましたとばかりにその受け皿になるような気がしてならないけど。[2006/12]
マルドゥック・ヴェロシティ 2
[冲方丁] ★★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\680) [Amazon]

研究所を追われたボイルドたちは、三博士のひとりクリストファーの呼びかけに応じ、マルドゥック市に腰を据える。そこは新旧勢力の抗争が激化しつつある悪名高き犯罪都市だった。彼らは自らの特殊能力を活かし、証人保護システム「マルドゥック・スクランブル09」の任務に命を賭けていく。巨大な陰謀渦巻くこの街で、彼らは自らの有用性を示すことが出来るのだろうか。
2006年刊行。名作『マルドゥック・スクランブル』の前日譚。三冊毎週刊行の中の二冊目。一巻の序盤、物語の世界観に馴染めるまでに少々手間取ってしまったが、後半からは俄然面白くなってきた。マルドゥック市に入ってからのテンポの良さ。疾走感は目を見張るものがある。カタカナ名前ばっかりなので、登場人物がやたらに多いので巻頭のキャラ紹介ページはいつでも開けるようにしておくと吉だ。
この巻で、これまでベールに包まれていた敵チーム、カトル・カールの面々が遂にお出ましになる。ああ、なんて素晴らしい百鬼夜行の世界。ゴキブリ野郎に、噛みつき魔、火吹き男に、一輪車男、角が生殖器の大鹿女。いやもう、ビジュアル的にも性格的にも逝っちゃってる連中ばかり。素晴らしい! ちょっとだけヤマフウの『甲賀忍法帖』 [Amazon] を思い出しちゃったよ。繰り広げられていく数々の異能バトルは無条件に楽しい。
運命の女ナタリアとの出会いで、人生の転機を迎えるボイルド。「スクランブル」での壊れ具合が予想出来ないくらい幸せそう。この後がどうなるか判っているだけに、3巻を読むのが辛いところだ。街の利権を巡る争い。政財界、暗黒街をも巻き込んだ世代交代の波濤の中で繰り広げられる血みどろのな権力闘争。本筋のプロットもかなりよく練られていて感心。未だ黒幕が誰なのか予想がつかない。[2006/12] ⇒次巻
死ぬまでにしなければならない101のH
[中谷彰宏] ★☆ 大和書房 (\1,000) [Amazon]

この本は3人のために書きました。その1、エッチに興味があるけど、何をすればいいかわからない人。その2、イクというのを経験してみたいけど、イッたことがない人。その3、エッチの先生に、めぐりあっていない人。恋愛の達人、中谷彰宏が秘密の「個人的メニュー」を大公開。楽しい二人になれる恋愛ワークブック。
べ、別に読みたくて読んだわけじゃないんだからねっ(笑)。諸般の事情で仕方なく手に取る。ホントに!(どういう事情だよ)。オッサン中谷彰宏の中学生的妄想というか、とりあえずやってみたいセックスのパターンを101個列記してみましたという内容。会社の中でとか、セーラー服着せてみたり、アイマスクしたりとかそんな感じ。1コンテンツあたりの分量はとても少ないので、全部読み切るのに30分かからない。
装丁や、前書きを見る限りでは女性向けに書かれていている本のようなのだが、全編に漂う雰囲気がとにかくオッサン。というか、エロのベクトルが女性的でない。男の願望なんだよね。それぞれのページに、そのプレイを実行したかどうかチェックボックスがついていて笑えるのだが、この本を実用的に使っているカップルって存在するのだろうか。こういう事はこっそりやってるのが楽しいわけで、あけっぴろげにこんな本で説明してもらうようなものでは無いだろう。本棚に刺さっているのを他人に見つけられたら、死にたくなるタイプの本であることは間違いが無い。[2006/12]
マリア様がみてる クリスクロス
[今野緒雪] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\419) [Amazon]

今日は2月14日。今年もリリアン女学園にバレンタインデーがやってきた。昨年に引き続き開催された「次期薔薇さまのお宝さがし大会」はまたしても大盛況。祐巳、由乃、志摩子の三人はそれぞれ思案を巡らせ校内にカードを隠す。祥子の挑発を受け、イベントに参加することになった瞳子だが、その思いは何処に?
2006年刊行。マリみて23作目。このサブタイトルの被り具合は高畑京一郎に謝るべき。って、高畑京一郎の『クリスクロス』 [Amazon] が世に出てからもう12年も経っているのか、忘れられる筈だよなあ(ちなみにこれは名作なので見かけたら読むべし!)
さてバレンタイン編だ。サブタイトルにもなっている「クリスクロス」は×印の意味。次期薔薇さまとのデート権をかけたカード探し大会と、春くらいから延々延々延々引っ張っている、祐巳×瞳子のスール問題とを絡めたタイトル付けなのではと想像。しかし、期待させておいて寸止め状態で中断。次巻に続いてしまう。相変わらず酷いヒキである。
枝ストーリー的には、由乃とのデート権を獲得してしまった田沼ちさとのその後が楽しみ。この話が読めるのは次の次あたりだろうか。[2006/12] ⇒次巻
ケータイの未来 [夏野剛] ★★★ ダイヤモンド社 (\1,800) [Amazon]

「iモード時代は終わった」。NTTドコモの執行役員。かつてiモードを立ち上げた男は最近こんな話し方をしている。世界にも稀な携帯電話によるネットビジネスは新たな局面を迎えようとしていた。市場の成熟化。競合するKDDI、ソフトバンクの追い上げでじりじりとシェアを減らしているドコモが次に打つ手とは何なのか。キーマンが語るこれからのケータイの姿。
2006年刊行。著者はNTTドコモの現役執行役員。松永真理に引き抜かれてドコモに入った人で、iモードを立ち上げた「七人の侍」の中の一人。本書はドコモみたいな保守体質の強い会社に外様で入って執行役員にまでなった人のプロバガンダ本。
通話料で儲けて、パケット代で儲けて、そろそろ収入源が先細りになってきたドコモが、次はクレジット事業で儲けますよというお話。idとDCMXの違いがやっと分かった。あっさり三井住友と提携を決めてしまうあたりはさすがだが、クレジット業界では後発になるドコモがどこまでやれるかは見物だ。
国内では技術的にも、戦略的にも当面ドコモの優位は動かないと思う。いくらKDDIが伸びていてもね。半分のシェアを握っている先行メリットは大きい。問題は圧倒的に後れを取っている海外でどう巻き返すか。日本のサービスや端末は高機能過ぎて、実は世界ではまったく戦えていないのが現状だったりする。このままだと日本特殊論で終わっちゃいそうで、十年二十年先を考えると不安は尽きない。あくまでも夏野さんは強気だけどね。[2006/12]
レインツリーの国 [有川浩] ★★★ 新潮社 (\1,200) [Amazon]

高校生時代に熱中した作品の感想が読みたくなって、向坂伸行はインターネットでとあるブログサイトにたどり着いた。ブログのタイトルは"レインツリーの国"、そして開設者のハンドルネームはひとみ。メールのやりとりを経て二人は意気投合していく。しきりに会いたがる伸行だったが、ひとみは頑なにそれを拒み続ける。それはどうしてなのか……。
2006年刊行。有川浩の六作目。初の非メディアワークス作品。同時期に刊行された『図書館内乱』とは出版社の枠を越えたコラボレートが実現している。内容を考慮すると、本作⇒『図書館内乱』と進んだ方が、ネタバレが回避出来るのでオススメ。逆の順番で読むと、ひとみの秘密が想像ついてしまうので、出来れば避けた方がいい。
ネットで知り合った男女が主人公の恋愛小説。いきなり気があって、トントン拍子に仲良しになってはみたけれど、なかなか会ってくれなかった彼女には秘密があって……という展開。とにかく最初から最後までなかなかうまくいかなくて、もどかしい思いにさせられる。とりあえずのハッピーエンドで物語は幕を下ろすが、その後の前途多難さを予想させて終わっているところは、安易に流れていなくて宜しい。相変わらず難しいテーマをこの作家はよく取り上げる。個人的に社会派ライトノベラーの称号を贈りたいところだ。[2006/12]
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