刀語 第三話 千刀・ツルギ [西尾維新] ★★★ 講談社 講談社BOX (\1,100) [Amazon]

虚刀流第七代当主鑢七花と、幕府の奇策士とがめ。伝説の刀を狩り集める二人の旅は続いていた。出雲の国へと入った彼らは、一路三途神社を目指す。そこは幕府の統制すら及ばない武装神社。あまたの黒衣の巫女たちを従えるのは、敦賀迷彩。千本にして一本とされる千刀・ツルギとはいかなる刀剣なのか。無刀対千刀。その戦いの帰趨はいかに。
2007年刊行。12ヶ月連続刊行の大河小説の三作目。今回のお相手は出雲は、三途神社神職、鶴賀迷彩さん(女子)。相手が女子でも遠慮は無しか。そして得物は千刀・ツルギ(金編に殺)。千本ある刀という設定をどう使うのかと思っていたら、なかなかナイスな使い方をしてくれてこの点は満足。こういう心理戦に持ち込む展開は大好き。
冒頭。思わせぶりなプロローグにちょっとだけ期待。メタな構成になるのかしらん。で、相変わらずまにわにの皆さんがかませ犬にしかなっていない件。作者もさすがに拙いと思ったのか、自分でツッコミ入れてるし。とはいっても、このシリーズ、一巻あたり300枚しかないから、変態刀のギミック説明を入れて、対戦相手のフォローをして、決戦シーンをきちんと盛り上げようと思うと、まにわにの連中にページ割いている余裕ないんだよな。一巻で一エピソード完結って構成が、少々厳しい制約になってしまっているのかもしれない。十二冊も続くんだから、いい加減対策はすると思うけど。
イマイチ、盛り上がりに欠ける展開ではあるが、次回は早くも日本最強(らしい)錆白兵クンが出てくるので多少は持ち直すだろうか。[2007/03] ⇒次巻

明治維新後の1869年。皇室の藩屏たるべく制度化され誕生した華族階級。数多くの特権を付与され、戦前の政治、経済、生活様式をリードしてきた彼らは、いったいどのような人々であったのか。太平洋戦争の敗戦により1947年に解体されるまで、78年間に1011家存在した特権階級の内実を明らかにしていく。
2006年刊行。筆者は立教大学出身。現在は静岡福祉大学の教授。専攻は日本近現代史。さすが中公新書。そこいらのぽっと出のレーベルとは格が違う感じ。内容充実。最低限これくらいはやって欲しい。久々に読み応えのある新書を読んだ気がする。
華族といっても、旧公卿や旧大名、維新の功による成り上がり、財閥系の富裕層に、日清日露の軍功で栄進した軍人たちとその出自は様々。出雲大社や伊勢神宮の神職まで叙爵されていて驚かされる。琉球王朝や、朝鮮出身の貴族も存在していたのだ。とりわけスゴイと思ったのは、新田、名和、菊地などの「南北朝時の功」で叙爵されてる人たち。何百年前の話だよ。南朝の怨みたるや畏るべしである。
華族の収入体系から、爵位継承の仕組み(皇室と同じで男系男子によるが義務づけられていた)、その特権と義務について判りやすく説明してくれている。華族銀行の存在や、貴族院での世襲終身議員制度(侯爵以上、伯爵以下は互選)、金禄公債による安定した収入基盤。平民の感覚からは隔絶した圧倒的な特権の数々には驚かされる。四民平等なんてお題目が嘘っぱちだったことがよく判る。
とはいっても、維新以前に安定した収入基盤を持たなかった公家系の華族は相変わらず貧乏だったらしい。出自の違い、経済格差等々で、華族と一口に言っても一枚岩とはほど遠い状態だったようだ。 また、所詮、無理矢理作られた階級だっただけに、ヨーロッパ貴族みたいな「ノーブリス・オブリージュ」の概念は薄かった。進んで軍属に入ったものは少ない。が、後に軍属が続々と叙爵されたので、結果的に貴族中の軍人比率は上がっていったのは、笑えない逆転現象である。
78年の歴史を駆け足で見ていくので、どうしてもかいつまんでの説明になってしまっているのが残念といえば残念。まあ、分量を考えると致し方なしか。華族とは何だったのかを、手っ取り早く知りたい向きには最適ではないかと思う。[2007/03]
玄琴打鈴 銀葉亭茶話 [金蓮花] ★★★ 集英社 コバルト文庫 (\476) [Amazon]

半人半仙の李月流が亭主を務める仙境の茶屋銀葉亭。突然この地を訪れた老尼僧はその背に大きな葛籠を背負っていた。荷の中身は名門柳家の御曹司の変わり果てた姿。幼少の頃から神童と呼ばれ、一族の期待を担いながら栄達の道を突き進んでいた彼にいったいなにが起きたのか。老尼は二人の兄弟の哀しい物語について語り始める。
2002刊行。朝鮮王朝ファンタジー、銀葉亭シリーズの六作目。出来の良すぎる兄と、凡人の弟の確執のお話。いつもながらにめくるめくまでのジェットコースターストーリーである。展開が実に劇的。しかし見事なまでにいいところでプツンと終わっているので、この巻だけだとわけが判らない。次の「伽椰琴打鈴」 [Amazon] とセットのようなので、なんとか見つけ出して読むしかないな。[2007/03]
「月給百円」サラリーマン
[岩瀬彰] ★★★☆ 講談社 講談社現代新書 (\740) [Amazon]

敗戦を迎えた1945年を境として、日本はまるで別の国になってしまったイメージがある。大正末期から昭和初期にかけての戦前と呼ばれる時代。長期に渡る対外戦争に明け暮れていたこの時代にも普通の人々の、普通の生活は存在していた。都市における俸給生活者たちにスポットを当て、彼らの経済活動の実態にメスを入れていく。
2006年刊行。筆者は現役の共同通信社社員。月給100円なんて書いてあるけど、別に格差社会の話じゃなくて、戦前のサラリーマンのお話。戦前の上流階級について書かれた『華族』をつい先日を読んだばかりなので、今度は庶民の生活を覗いてみようってことで購入。学者先生が書いた本で無いだけに、お堅い学問的な雰囲気は無し。どちらかというと雑学本といったスタイルだ。
庶民というよりは、中流クラス、それもホワイトカラー中心の内容となっている。昭和一桁〜十年代までの物価は、おおまかに言って、現在の1/2000くらい。従って、月給100円は現代では月給20万円。大卒初任給くらいか。これだけもらえればかなり良い方だったようだ。サラリーマン以外の、労働者階級は月100円なんて遠い夢のような状態。まあ、それでも暮らせていけたわけだから、それなりに物価も安かったのだろう。
駆け足ではあるけれども、当時の衣食住、各方面の相場から、学歴ごとの給与・昇給事情、現代を遙かに超える超格差社会の実情などについて簡便にまとめてある。戦前の社会風俗を知るための手がかりとしては格好の一冊だろう。単純に読んでいて面白かった。[2007/03]
少年検閲官 [北山猛邦] ★★★ 東京創元社 ミステリ・フロンティア (\1,700) [Amazon]

書物こそは悪の根元。何人たりとも書物の類を所有することは許されない。隠された書物は見つけられ次第焼かれることになる。日本を旅するイギリス人少年クリスは、とある街で奇妙な事件に遭遇する。相次いで発見される首無し死体の謎。「探偵」と呼ばれ森の中を徘徊する謎の男。そして家々に記された赤い十字印。黒衣の少年検閲官が現れた時、事件の真相が明らかになる。
2007年刊行。物理トリックの鬼、北山猛邦の最新作。東京創元社のミステリ・フロンティアからの登場。初の非講談社作品か?って瞬間思ったけど、そういえば白泉社文庫の『アルファベット荘事件』 [Amazon] があったんだった。ちなみにこちらは未入手。寡作なのと作風が地味すぎるのとで(トリックは派手なのに!)、いまいち業界の主流には乗れない作家だけど、個人的には「だがそれがいい」(笑)。年一冊でいいから作品を出し続けて欲しいよ。
書物=悪とされ、見つけ次第即焚書。そんな時代が続いて、すっかり書物の存在がこの世から消え失せてしまった世界。テレビ放送も無く、あるのは国家による統制の入ったラジオ放送だけ。極度に情報のコントロールが進んだ社会なので、一般人の犯罪に対しての知識は皆無。たとえ密室殺人やクビキリ殺人が起きても、それを犯罪と認識し得ないという素敵な設定がなされている。いかにも北山作品らしい豪快な条件設定である。
とまあ、期待は高まるのだけど、内容的にはかなり物足りない。今回のあまりにもの凄すぎる「動機」を読み手に納得させようとするのであれば、それなりに作品世界にリアリティというか、重みが必要だと思うのだけど、それって北山猛邦に取って一番不得手な領域なんだよなあ。物理トリックのオチも、いつもに較べると切れ味は今ひとつ。っていうか、無理だろそれ、バレるだろ(それ言っちゃオシマイなんだけどさ)。もっと大仕掛けなのを期待してしまうのは、ファンの我が儘になってしまうのだろうか。『ギロチン城』クラスの壮絶なトリックをまた見せて欲しいよ。[2007/03]

帯沙半島の古代国家「再」。この時代に生きた伝説の奇人、戒の墓が発見される。それは史上類を見ない豪華絢爛にして壮麗を極めた堂々たる墳墓であった。人の体に猿の顔。舞踊の才をもって再の王、明公に取り入り国を滅亡の淵に追い込んだ稀代の嫌われ者の生涯とはいかなるものであったのか。史実の陰に隠された意外な真相とは。
2002年刊行。第14回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。ちなみに大賞は『世界の果ての庭』@西崎憲。受賞当時22歳はこの賞の最年少記録。しかしながらこの作家、結局これ一冊きりで、以降新作を書いていない。もったいないなあ。
架空の古代国家「再」。名家の庶長子と生まれた戒は生まれながらの博学才穎。詩歌を詠ませれば達人級。政治経済にも明るいばかりか、武芸にも秀で、舞に至っては神の領域に達する才人であった。しかしながら同じ年に生まれた凡庸な王子のために、臣下としての分を越えないことを生母から固く命じられる。家を継ぐこともなく、王宮の道化として生きることを決意した戒。ありあまる才能と矜持を封印して暗君に仕え続けた生涯を描いたお話。東洋風世界観の架空王朝モノとしては『後宮小説』 [Amazon] に比較的近いテイストだろうか。
妄執に近い母の遺訓に従ってしまったばかりに、戒ばかりでなく、その周囲の人々の運命までもがねじ曲げられていく。初恋の少女は王に嫁ぎ、親友は無惨な死を遂げ、実弟は罪に落とされる。我意を曲げて、良かれと計らったことが滑稽なまでに裏目に裏目にと出続ける悲劇。宿命に翻弄され、煩悶する主人公の姿がなかなかにいい感じ。プライドも自己顕示欲も人一倍強い人間が、あえて自分を抑え続けることで、自分も周囲も不幸にしてしまう展開は切なくなんとも居たたまれない。
天賦の才を隠し続けた主人公が、唯一本領を発揮できたのが遊芸の世界。その後二千年を経てもなお語り継がれたという詩歌の数々は読む手の心を熱くさせる。そして時折見せる神がかり的な舞踏シーンはこのお話の最重要ポイント。迫り来る敵国の大軍を前にして、全ての恩讐を越えて、最後に戒が選択した行動は涙なくしては語れない戦慄の名場面。大ラスにこれほどの見せ場が待っていようとは。
わりとストレートに泣かせにかかる物語なので、ひねった話が多いファンタジーノベル賞系の作品としては異色だろう。まあ、たまにはこういう話もいい。ご都合主義的な展開が多すぎるのが、少々気にかからないでもないけど、許容範囲ってことで。[2007/03]

不況に強いと言われてきたアダルト業界。しかし、この業界に異変が生じている。相次ぐ成年向け雑誌の休刊&リニューアル。少子化と読者の高齢化。インターネットの普及による「なんでも無料」化の波。知らず知らずのうちに、この業界は先細りの袋小路にはまっていたのだ。果たして「エロの敵」とはなんなのか。
安田理央は1967年生まれのフリーライター。風俗、AVに関しての造詣が深い。撮影系の仕事もこなす。もう一人の筆者、雨宮まみは1976年生まれのフリーライター。AVのレビューを中心に活動している。全体は三部構成。第一部と第三部を安田が、第二部を雨宮が担当している。
最初の第一部エロ本編。いやー、エロ本の歴史がこんなによくわかってしまっていいのだろうか。ヘアが解禁になり、モデルの女の子の容姿は昔と比較にならないくらいレベルアップ。DVDだってついていて当たり前。それでも売れないのは何故なのか。やはり少子化とインターネットの影響はあなどれないのだろう。誌面のレベルアップは、売れないが故の企業努力の賜物なのかもしれない。
エロ雑誌がB級サブカルネタの受け皿であったという指摘は面白かった。末井昭ってこの世界ではやっぱり神だったんだな。
第二部はエロビデオ編。これまた、こんなに詳しく歴史を紐解いてもらっていいのですかと感涙モノのAV通史。最近ではレンタル以外に、セル(販売専用)モノが幅を利かせているなんて、清らかな人生を送ってきたわたしには想像も付かなかった。この業界の有名人やら、金字塔的な作品がたくさん紹介されていて、ちょっと気になる(笑)。モザイクの発達の歴史の奥深さには正直感動した。あくなきエロを追い求めるエネルギーの怖ろしさよ。
最後に第三部はインターネットの影響を踏まえた今後の展望編。海外サーバにある無修正画像が誰にでも見られてしまうこの時代。これからのエロ業界はどうなっていくのだろう〜と疑問を投げかけて終了。結論は出していない。というか、結論が出せるくらいだったら困ってないってことだな。いずれにしても、一部のコレクター以外は、金を出してまでエロを求めたりはしなくなるのでないかという指摘は妥当な線。それでも、このエロが世に溢れている時代の中から、新たな世代が台頭してくるのでは、とちょっとだけ希望も持たせている。それはそれで是非見てみたいと思ってしまうのは男の性だろうか。
一部三部と二部でライターが違うために、微妙に内容のトーンが違っていて「エロの敵」というコンセプトからはややずれてしまっているのは惜しい。それから敢えて、無視しているんだろうけど、エロマンガとエロゲーに言及しないのは片手オチなのではないかと。この手のサブカル系の人はやっぱりヲタ文化は嫌いなのかねえ。[2007/03]
少女は踊る 暗い腹の中踊る
[岡崎隼人] ★★★☆ 講談社 (\1,143) [Amazon]

連続乳児誘拐事件で非常事態を迎えていた岡山市。犯人の手がかりすら掴めず、遂に四件目の犯行が行われ、市中は狂騒状態に陥る。19歳の青年北原結平は、中学生の少女蒼以に出会い戦慄を覚える。彼女は四肢を切断された赤子の死体を持ち歩いていたのだ。ウサガワと名乗る猟奇殺人鬼の登場。結平がいまなお悔いる幼き日の罪。全ての事件が繋がった時、真の悪夢が訪れる。
2006年刊行。第34回メフィスト賞受賞作品。作者は1985年生まれ。若っ。「舞城王太郎大好き〜♪」なリスペクト心が全編から漂ってくる戦慄のノワールノベル。うーん、しかし二番煎じの誹りからは逃れられないかしらん。読み始めたら止まらない、圧倒的な負の吸引力は新人としては立派だと思うけど。これも一種のセカイ系かな。ほんのりゆやたん(佐藤友哉)の影響もある感じ。
舞城は福井県だったけど、岡崎君が選んだのは岡山県。岡山弁で繰り広げられる大量殺戮劇のエグいことエグいこと。軽々と殺人の禁忌の壁を乗り越えてしまう主人公も逝っちゃってるなと思うけど、それに輪をかけて出てくる奴がどいつもこいつもキチガイだらけだったという酷いお話。特にウサガワクンは逝き過ぎです、はち切れ過ぎにも程がある。岡山県怖いよ岡山県……。[2007/03]
新本格魔法少女りすか3
[西尾維新] ★★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\800) [Amazon]

繋場いたちを仲間に加え、三人チームとなった創貴とりすか。水倉神檎の送り出した「六人の魔法使い」たちとの死闘の日々が続く。二人目の地球儀霙を退けた彼らであったが、最後の魔法使い水倉鍵の登場で戦況はにわかに一変する。魔法を一切使えない鍵の能力は「魔法封じ」。完全閉鎖の密閉空間に閉じこめられてしまった創貴たちの運命は……。
2007年刊行。りすかシリーズ三作目。ファウストのVOL5〜7に収録されていた作品をまとめたもの。個人的には『刀語』よりも、こっちの方がよっぽど面白いなあ。作品のボリュームと書くべき内容のバランスがきっちりうまく取れている印象を受ける。『刀語』は最初に決めた物語の構造に縛られてしまって、西尾維新らしさが出せなくなってしまっている。
どう見ても小学生には見えないひねくれ主人公の創貴クンが、けっこう格好良く見えてきた。「つなぎ」を加えてパーティとして機能し始めている三人。ジョジョ第二部的な頭脳戦優位の異能バトルが面白い。それにしても「六人の魔法遣い」が早くもかませ犬にしか見えなくなっている件。まにわにの皆さんと同じ境遇かよ。でも焦点を水倉鍵一人に絞ったのは正解。物語的には次巻で完結らしい。となれば分量を考えてみるとここいらで中ボスを出しておくのは正しい判断だろう。しかしまだ神檎クンは登場していなんだけど、残り一冊で終われるのだろうか。[2007/03]

京都。夜の四条木屋町。魅惑の大人世界へと足を踏み入れていく彼女と、その姿を追い求め右往左往する私。偽電気ブランが振る舞われ、三階建ての電車が走り、天空から錦鯉が降り注ぐ魔法のような春の夜の冒険譚を描いた表題作を始め、計四編を収録した連作短編集。四季折々の京都風俗を織り込みながら綴られる、世にも愛らしい恋愛小説。
祝☆本屋大賞落選(次点だったね)。『太陽の塔』の森見登美彦の四作目。2006年刊行。出始めの時に買いそびれて、しばらく店頭から在庫が消えていた。気付くと話題の本になっていて今年二月の時点で既に四刷。おそらく本作が世の中的に森見登美彦のブレイク作品になるのだろう。ストーカー行為を続ける先輩の異常さを、ギリギリ許せるレベルまで引き下げたことで、一般人もついていけるような内容になった(笑)。
京都の大学(京大)を舞台にした、非モテ系男子「先輩」と、天然系不思議女子「黒髪の乙女」の恋物語。いちおう現代の京都を舞台としているようだけど、不思議な人たちが多数登場してくるせいで現実感は希薄。ファンタジーノベル大賞系の作品としては納得かな。春の先斗町。夏の糺の森。秋の京大学園祭。そして冬……。京都属性の作中への落とし込み方が絶妙で、京都好きにはたまらない感じ。京都が舞台でなければ成立しなかったお話だ。これだけのファンタジーを許容する懐の広さはやはり千三百年の王城の地。そんな不思議な事が起きてもいいんじゃね?と、なんだかよくわからないうちに納得させられてしまうのはこの都市の持つ力だろう。これで舞台が東京だったらこんな話は作れない。
若干(というか、かなり)ストーカー気味な先輩はまだアリだとして、ふわふわ天真爛漫系のヒロインを許容出来るかどうかが、この話にハマれるかどうかの分かれ目。「なむなむ!」とか「おともだちパンチ」とか萌え記号満載で破壊力は相当強め。およそ浮世離れした恋愛小説ではあるけれども、こういった夢のある恋物語も悪くないのではないかと。ご都合主義万歳である。[2007/03]
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