2007年6月

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
<骨牌使い>の鏡 I 五代ゆう 富士見書房 \560
正統派ファンタジー。
★★★☆
<骨牌使い>の鏡 II \560
<骨牌使い>の鏡 III \620

アイルランドの薔薇

石持浅海 光文社 \781
わりといい感じ。
★★★☆

εに誓って

森博嗣 講談社 \880
今回はちょっとだけ新機軸。
★★☆

刀語 第六話 双刀・鎚

西尾維新 講談社 \1,100
すでにもう「刀」じゃない件
★★☆
国マニア 吉田一郎 交通新聞社 \1,100
大東諸島って企業支配地だったのね。
★★★☆
撲殺天使ドクロちゃん8 おかゆまさき メディア
ワークス
\510
4コママンガ風ドクロちゃんには笑った。
★★★
撲殺天使ドクロちゃん9 おかゆまさき メディア
ワークス
\550
まさかのシリアス展開。
★★★
モバイルSEM 中橋義博 ダイヤモンド社 \1,600
ちょっと我田引水しすぎ?
★★★

前の月←  HomePage  →次の月

<骨牌使い>の鏡 I・II・III
[五代ゆう] ★★★☆ 富士見書房 富士見ファンタジア文庫 (I・II\560/III\620) [Amazon:I/II/III

“骨牌使い(フォーチュン・テラー)”の鏡〈1〉 “骨牌使い(フォーチュン・テラー)”の鏡〈2〉 (富士見ファンタジア文庫) (骨牌使い)の鏡 (3)

望まれぬ子として生まれた少女アトリは<骨牌>を使った占いをしながら生計を立てている。稼ぎ場である娼館<斥候館>で彼女は奇妙な青年ロナーに出会う。彼を占った骨牌の札は死と破滅を意味する<月の鎌>。不吉な結果にアトリは戦慄を覚える。それは世界の運命を賭した過酷な戦いの始まりだった。骨牌の持つ真の力とは。そしてアトリに秘められた驚くべき出生の秘密とは。

2000年作品。もともとは単行本 [Amazon] で出ていた作品の文庫版。ラノベでハードカバーで出るのは珍しいよね。余程の自信作だったのか?文庫版は2006年刊行。文庫化にあたり加筆修正されている。全三巻。大森望と三村美衣が書いていた『ライトノベル★めった斬り!』で推されていたので確保してみた。国産ファンタジーの傑作らしいぞ。

パターンとしては非常によくある話。辺境に生まれたヒロインが実は高貴なお生まれでした。すごい力を持ってましたって『西の善き魔女』みたい。超越的な「真の骨牌」の力を受け継いだ<骨牌使い>がこの世には何人か存在する。通常12枚の骨牌だが、禁忌にして最大の力を持つ13枚目が実は存在し、その力を受け継ぐのがヒロインでしたという設定。典型的な展開ではあるが、心身共に成長し本来の力に目覚めていく過程は読んでいてとても気持ちが良い。

ファンタジーとしてはきわめてまっとうに取り組んだ意欲作。時間の単位に「1時間」とか使って読者を萎えさせたりしない。世界観の作り込みはしっかりしている。それだけに読み始めの頃はなかなか世界観が飲み込めずにもどかしくもあるのだが、この世界ならではの価値観、約束事が理解出来てくると面白くなってくる。魅力的な異世界を構築できたことは評価すべきだろう。惜しむらくは敵側の描写が足りなかったこと。もう少し個々の敵側キャラクターの内面をえぐって欲しかった。モーウェンナの選択とその結果として与えられた運命はなかなかに素敵なエピソードだったのだけど、途中の経過をすっとばしていきなりアレだったので、少々惜しいと思ってしまった。

あまり数は出ていない作品だと思うので見かけたら即確保がオススメ。ファンタジー好きなら読んでおいて損は無いと思う。[2007/06]

▲トップに戻る▲

アイルランドの薔薇 [石持浅海] ★★★☆ 光文社 カッパノベル (\781) [Amazon]

アイルランドの薔薇

1997年。アイルランド共和国スライゴー。アイルランド紛争の鍵を握る抵抗組織NCFの副議長が謎の死を遂げる。アイランド和平を目前に控えた中、その死は決して公開することが出来ないものだった。現場に居合わせた10人の男女は疑心暗鬼に囚われながらも、真犯人を見つけるため動き出す。犯人はこの中にいるのか?それとも外部の犯行なのか?

2002年刊行。石持浅海の処女作。光文社のメフィスト賞とも言える、カッパワン登龍門の一作目。東川クンと同期なのか。

現代を舞台としたミステリ作品で、警察の介入をさせずに登場人物たちだけで事件を解決させるにはどうすればいいのか。石持作品に毎回共通している課題だけど、今回の鍵は「アイルランド」。日本ではない独自の社会情勢を利用したことで、そんなことありえねーっていう、スレた読者のツッコミをうまくかわしている。これは上手い。日本ではない分、そんなことがあってもいいのかも、って納得できてしまう。

というわけで、二重三重の凝った仕掛けを堪能。処女作ならではの渾身の一撃が嬉しい。探偵役のフジの万能振りがややもするとハナにつくけど、総じて気概と志の高さを感じた一作。終盤。ひとり、またひとりと登場人物たちが去っていくシーンが映画みたいで美しい。いまのところ石持作品の中では一番これが好きだな。タイトルのセンスも◎である。[2007/06]

▲トップに戻る▲

εに誓って [森博嗣] ★★☆ 講談社 講談社ノベルズ (\880) [Amazon]

εに誓って

東京を訪れていた山吹早月と加部谷恵美は那古野への帰途、乗車していた高速バスを何者かにジャックされる。バス車内と都内各地には爆発物がセットされ、警察の介入を困難なものにしていた。二人の身を案じる西之園萌絵は犯行グループの足跡を追い始める。乗客名簿には「εに誓って」と名乗る奇妙な団体名記されていた。萌絵は二人を救うことが出来るのか。

2006年刊行。Gシリーズ四作目。何回も書いているけど、何回でも書くぞ!上下スカスカにするくらいだったら、段組にしてページ減らしなさいって。ただでさえ森センセは散文詩ポエムがたくさんあるんだからさ。段組に戻したら一割は上代下げられるんじゃないか?最近、講談社ノベルズはこの手の作品が多くなってきていて非常に不愉快。

いつもの殺人事件ネタから、ちょっと趣向を変えて今回はバスジャックのお話。これは珍しい展開。とはいえ、比較的判りやすいネタなので、オチがバレバレなのはいかがなものかと。しかし、森センセは真賀田四季への自キャラ萌えをなんとかしないと、もうダメかもしれないね。何もかもが彼女を中心に動いているようだ。[2007/06] ⇒次巻

▲トップに戻る▲

刀語 第六話 双刀・鎚 [西尾維新] ★★★ 講談社 講談社BOX (\1,100) [Amazon]

刀語 第六話 双刀・鎚(ソウトウ・カナヅチ)

校倉必の意趣返しにより、絶対凍土の地、蝦夷は踊山に送られてしまった鑢七花と奇策士とがめ。六本目の変体刀「双刀・鎚」を求め、雪中を彷徨する二人であったが、見通しの甘さから行き倒れ寸前にまで追いつめられる。絶体絶命の二人を救ったのは謎の少女凍空こなゆきだった。一方、尾張の地ではとがめの宿敵、否定姫が不気味な蠢動を始めていたのだが……。

2007年刊行。シリーズ六作目。毎月一冊で全12冊構成なのでこれで折り返し点。それにしてもどうしてなのだろう。このシリーズ、それなりにキャラは立ってるのにあまり面白くなってこない。対戦型格闘タイプの小説なのに、本来の戦闘シーンがイマイチだからだろうか。一回一回の分量が決められているから、書きにくいってのはあるのかもしれない。とはいえ、規定の枚数でそれなりに盛り上げて見せてこそプロなのだけどね。

それから主人公たる鑢七花が、もともと隔絶された環境で育ったが故に、人間性に乏しいキャラクターとして作られている点もあるか。何を考えているかが判らなくて感情移入が難しい。とがめへの想いも、本心からそう思っているというよりは、成り行きからそうあらねばならないと思いこんでしまっている節がある。七花が様々な試練を経ていく中で本来獲得しているべきであった人間性を取り戻していくのが、この物語の一つの柱だと思ううのだけど、果たしてその時に七花ととがめの関係性はどうなっているのか。最終的にはどちらかが相手の想いを裏切る形になるのではないかとなんとなく予想。ラストは七花VSとがめなんてのは面白いかも。[2007/06] ⇒次巻

国マニア [吉田一郎] ★★★☆ 交通新聞社 (\1,100) [Amazon]

国マニア―世界の珍国、奇妙な地域へ!

国ごと音信不通になった事があるナウル共和国。地球温暖化で本気で水没しかねないツバル。ロシアの極東地域にあるユダヤ人自治州。イギリスの遺棄された海上要塞で独立を宣言したシーランド公国。領土を持たない国家マルタ騎士団。企業が支配していた大東諸島と満鉄付属地。歴史上存在した(もしくは現存する!)不思議な国家、地域の数々を紹介。

2005年刊行。面白そうなネタだったのでAmazonのマーケットプレイス経由で購入。こういう地味な本が出せるのは素晴らしい。文中に地図表記は出てくるがこれだけでは判りにくいので、GoogleMapや、GoogleEarthで確認しながら読み進めると楽しさ倍増である。

ギリシャ国内にある治外法権地域、アトス山はギリシャ正教の総本山。地続きのギリシャ側からは入れない。しかも女子禁制とか、藩王国時代の区分のまま国境線を決めてしまったために、200を越える飛び地が点在するインド、バングラデシュ国境とか、ジャングルの中に現地住民を従えた白人王の国があった!>>サラワク王国とか、世の中にはこんなことがあったのかとひとしきりビックリすること請け合い。地理好き、雑学好きは読んでおいて損はない一冊だろう。[2007/06]

▲トップに戻る▲

撲殺天使ドクロちゃん8
[おかゆまさき] ★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\510) [Amazon]

撲殺天使ドクロちゃん〈8〉

極貧の中でもけなげに桜クンの監視を怠らない羊角少女サバトちゃん。その日々の悪戦苦闘を垣間見る「テイルズオブサバトちゃん 幸せな結末」。中学生の夏の生活を阻む最大の敵"夏休みの宿題"、ドクロちゃんが見出した驚くべき解決法とは「『夏休みの宿題』、天使流の解決法伝授」他、計五編を収録した最新作品集。

2006年刊行。シリーズ八作目。久しぶりにドクロちゃんを読んだよ。メディアワークスの小説誌「電撃hp」の38号、40号、41号に掲載された二作品に書き下ろし二作を加えて文庫化したもの。

オカマ美少女西田の出番が増えている件。あれ、何時の間にステータスアップしてたんだこいつ。自分的には南さんの巫女装束のためだけにあった巻(違。カラー口絵に使うなら静希ちゃんじゃなくて南さんにすべき!と力説しておきたい。しかし、それにしても木工ボンド部の活動は最高だ。わたしも白濁の声を聞きたい(笑)。[2007/06] ⇒次巻

▲トップに戻る▲

撲殺天使ドクロちゃん9
[おかゆまさき] ★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\550) [Amazon]

撲殺天使ドクロちゃん 9 (9) (電撃文庫 お 7-10)

主人公草壁桜に史上最大のピンチが到来。天使による神域戒厳会議ルルティエは事態の抜本的解決を図るべく、"天使の桜くん"(南さん命名)を投入。容姿端麗、頭脳明晰な天使の桜くんの登場により本物であるはずの"影の桜くん"は絶体絶命のピンチを迎えることに。果たして草壁桜は消滅してしまうのか。シリーズ最大の山場を迎えた最新刊。

2007年刊行。シリーズ9作目。メディアワークスの小説誌「電撃hp」の42号、45号に掲載された二作品に書き下ろし二作を加えて文庫化したもの。

おお、ここに来ていきなりのシリアス展開!ちゃんと終わらせる気があったのか。それでもVS光の桜クン編がやっぱりアホな話で笑える。言葉の使い方と、独特の表現方法。ギャグ間の取り方とテンポ感の良さはさすが。帯の新刊予告まで「四月の髑髏予定」になっていた笑った。次は10巻と区切りのいい巻数だけど、これで終わらせてしまうのだろうか。[2007/06] ⇒次巻

▲トップに戻る▲

モバイルSEM [中橋義博] ★★★ ダイヤモンド社 (\1,600) [Amazon]

モバイルSEM―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法

携帯電話の普及に伴い、国内におけるモバイルインターネットの利用者は急増している。しかしキャリア主導の公式サイトの存在感が圧倒的であった特殊事情故に、検索エンジンの進化は通常のインターネットとは異なる発達の経緯をたどっている。SEO対策よりも有効であるとされるモバイルSEM対策とは何なのか?

2007年刊行。筆者はモバイルの世界に検索結果連動型広告を初めて持ち込んだサーチテリア社の社長。SEMとはサーチエンジンマーケティングの略。SEO(サーチエンジン最適化)+検索結果連動広告。が、モバイルの場合は状況がちょっと違っていて、SEOが実質意味がない、というのは言い過ぎにしても費用対効果がまだ出ない状態なので、モバイルにおけるSEMはイコール検索結果連動型広告(Googleで検索すると上や右に出てくるアレ)と考えて良いのではないかと。

モバイルの世界は長らく携帯電話各社(ドコモとか)による支配が続いていて、公式のメニューリストに検索窓が入ったのはつい最近の話。通常のウェブの世界では圧倒的に強いYahoo!やGoogleもモバイルの中では大手の一つでしかないという事実がある。以上の経緯からモバイルでは有益な情報なほとんどが公式サイトに集中しているんだけど、公式サイトは有料サイトなので検索エンジンのクロールを受け付けない。従って、いくら検索してもひっかかるのはゴミばかりという現実が続いていたのだった。

とはいえ、さすがに時代の流れで、モバイルの世界もインターネットの世界に近づきつつあって、auがGoogle、ソフトバンクは当然Yahoo!を導入。最大手のドコモもいやいやながら複数の検索エンジンを導入することに。というのがおおまかな現況。検索エンジンの世界は現在群雄割拠の戦国時代なので、検索のルールも極論すると毎日変わっている状態だったりする。こういう状態でSEOにコストをかけても、ルールが変わるたびに無駄金になってしまう。それだったら、検索結果連動広告に金かけた方がオトクでしょ。というのが本書の趣旨。

ちなみに通常のウェブの世界で、検索結果連動型広告はGoogleのアドワーズと、Yahoo!子会社のオーバーチュア社がやっているスポンサードサーチが両巨頭。いち早くこのサービスを始めたスポンサードサーチは検索ワードを入札で叩き売るというシステム(特許持ってる)がハマって躍進。Googleもこれに準じたシステムだけど、かなりの特許料をオーバーチュアに支払っているらしい。

モバイルの世界では、最初に書いたように筆者の創業したサーチテリア社が草分け。ちなみにこの筆者はオーバーチュア出身。日本はモバイルインターネットの超先進国なんだけど、なにぶんオーバーチュアは外資系なので、日本に特化したモバイルのサービスにはなかなか着手しようとしなかった。それなら自分たちで事業家しちゃおうってことで起業したらしい。

サーチテリアも入札で検索ワードを買うのだけど、オーバーチュアと違って、入札下位でも表示確率が減るだけで、表示の可能性は残る点が違い。これで特許の部分はクリアできるらしい。 と、まあ長々書いてきたけど、半分自社サービスの自慢が混じりながらも、極めて特殊なモバイルの世界の検索結果連動型広告の特質について判りやすく説明してくれているので、業界関係者的には良書かな。この本に書いてあることも一年後には古くなっていると思うので読むなら年内がギリギリってところだ。[2007/06]

▲トップに戻る▲

前の月←  HomePage  →次の月