2007年12月

書籍名
作家名
出版社
価格
コメント
お薦め度
EDGE4 檻のない虜囚 とみなが貴和 講談社 \600
あらすじ部分で主人公の名前が「錬魔」になっている件。
★★★
EDGE5 ロスト・チルドレン とみなが貴和 講談社 \600
もっと頑張れたのに。
★★★
刀語 第十二話 炎刀・銃 西尾維新 講談社 \1,100
残念でした。
★★★
理由あって冬に出る 似鳥鶏 東京創元社 \580
この人芝居好きなんだろうなあ。
★★★☆
DIVE!! 上 森絵都 角川書店 \552
凡人の無念。敗者の怨念もきちんと描かれているところが◎
★★★☆
DIVE!! 下 \552
リバーズ・エンド after days 橋本紡 メディア
ワークス
\510
無くても良かったような。
★★★
さらわれたい女 歌野晶午 角川書店 \514
携帯の無い時代の誘拐。
★★★
図書館革命 有川浩 メディア
ワークス
\1,600
言うほど柴崎の恋愛スキルは高くない気がする。
★★★☆
誇り
ドラガン・
ストイコビッチの軌跡
木村元彦 集英社 \571
姉妹作『悪者参上』も読まないと。
★★★
扉の外 土橋真二郎 メディア
ワークス
\530
全三巻らしい。
★★★
夜の記憶 トマス・H・クック 文藝春秋 \619
とにかく徹頭徹尾地の底を歩き続ける暗さ。
★★★☆
暁の脱出
グインサーガ117
栗本薫 早川書房 \540
マーロール急にいい人になっている件。
★★☆
クリスタルの再会
グインサーガ118
栗本薫 早川書房 \540
フロリーはいくらなんでもキョドリ過ぎ。
★★☆
99%の誘拐 岡嶋二人 講談社 \695
古き良きパソコン通信の時代。
★★★
マリア様がみてる
キラキラまわる
今野緒雪 集英社 \438
吉乃のしたことはけっこう酷いよね。
★★★☆

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EDGE4 檻のない虜囚
[とみなが貴和] 
★★★ 講談社 講談社X文庫ホワイトハート (\600) [Amazon]

EDGE〈4〉―檻のない虜囚 (講談社X文庫―ホワイトハート)

宗一郎と別れて暮らすことになった錬摩は、もてあました時間を、下町で発生した飼い犬の連続虐殺事件の調査に振り向ける。一方の宗一郎はかつて習っていた空手の稽古を再開する。そこで犬虐殺事件の被害者である桐井という女性と知り合う。錬摩と宗一郎は離れて過ごすことで、互いの大切さを改めて実感するのだが……。

2004年刊行。前作が2001年刊だから待つこと三年。待望の続巻である。プロファイラー大瀧錬摩シリーズの四作目。もう内容忘れちゃったよ。知らない間にイラストレータが変わっていた。イメージを崩さないように似せて書いているけど、ちょっと線が柔らかい感じになっていて錬摩がより女性らしく描かれているのが特徴、かな。以前もっと中性的に描かれていた。

このシリーズは講談社X文庫のホワイトハートから出ていたのだが、いちおうサイコサスペンスとしての側面もあるので、ラノベテイストを廃して講談社文庫版 [Amazon] も刊行されている(現在二巻まで)。それから、去年あたりからコミカライズ [Amazon] も密かに行われていた。原作の一巻分が対象で、書いているのは今回イラストを描いている人と同じ。これで新しい読者が増えると良いのだけど。

宗一郎は数年前に錬摩の事件の巻き添えを食って、半身不随に。更に精神退行を起こし、現在新たな人生を行き直し中の人。事故の影響で特殊能力が備わってしまい、他者の思念が読めたり、半身不随なのに普通に動けたり、瞬間移動が出来たり、過去認知まで出来たりする。ハッキリ言ってミステリ的に反則な能力ばかりなので、必然的に出番が少なくなってしまうのが難しい。もともと引っ張っている主人公と宗一郎の訳ありな関係を描きながら、犯人サイドの描写もやろうとするのはけっこう大変で、その分犯人側、そして今後の重要人物である桐井さんの掘り下げが今ひとつになってしまったのが残念。[2007/12] ⇒次巻

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EDGE5 ロスト・チルドレン
[とみなが貴和] 
★★★ 講談社 講談社X文庫ホワイトハート (\600) [Amazon]

EDGE5 ロスト・チルドレン (講談社X文庫ホワイトハ-ト)

十五年前。多くの人々を殺害し、追い詰められた末に錬摩の目の前で海中に沈んだ父。「きみに会いたい」とメッセージを送ってきたのはその父なのか。呼び出された場所で、彼女は連続少女誘拐殺害事件の被害者たちの変わり果てた姿を発見する。この事件の犯人もまた父なのか?真相を追う中で錬摩は宗一郎を激しく求めている自分を知ることになる。

2006年刊行。プロファイラー大瀧錬摩シリーズ五作目。これがラストだ。前作からさらに二年。第一巻が出たのが1999年だから、なんとあしかけ七年かけての完結だ。

物語の初期から引っ張っていた、連続少女誘拐殺人犯のお話と、妻とその愛人を殺害して行方不明になった錬摩の実父のお話、こじれていた錬摩と宗一郎の物語の総決算。これを一冊でやろうとするのは相当な力業が必要。ページ数は限られているし、キャラクターの数をむやみに増やすわけにも行かないから、犯人と思える人間はバレバレ。いちおうプロファイラーの筈なのに、偶然に頼りすぎた、いきあたりばったりの展開に落胆させられる。全然プロファイリングしてないじゃん。桜井さんの件も消化不十分で勿体ないなあ。

これだけ長く待たせたのだから、もう少し頑張ってくれても、というのが正直なところ。初期のクオリティを考えればもっと完成度をあげられただろうに。この手の作家の常として、とみなが貴和も兼業作家なのだけど、日常生活が落ち着かない中で今後果たしてどういう方向に進むのか、書き続けて欲しいけど、次回作はいつ読めるだろうか。[2007/12] ⇒感想を1巻から

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刀語 第十二話 炎刀・銃 [西尾維新] ★★★ 講談社 講談社BOX (\1,100) [Amazon]

刀語 第十二話 炎刀・銃 (エントウ・ジュウ) (講談社BOX)

伊賀の地。突如現れた左右田右衛門左衛門がとがめと七花の前に立ちはだかる。手にした十二本目の変体刀、炎刀・銃が火を噴き、その銃弾はとがめを貫く。変体刀十二本の蒐集を完了させ、将軍匡綱への掲見を許された否定姫だったが、そこに復讐に燃える鑢七花が現れる。守るは家鳴将軍家御側人十一人衆。ここに最後の戦いの幕が切って落とされる。

2007年刊行。毎月刊行。全十二巻シリーズの大河小説も遂に最終巻だ。なにはともあれ企画倒れにせずに、毎月一冊刊行という過酷なスケジュールをこなした作者とイラストの人に拍手を。なんだかんだ言って全部揃えてしまった。

しかしながら毎月刊行の偉業に内容が伴っていたかというとネガティブな印象を持たざるを得ない。やはり致命的に時間が無かったのか。逆に毎月一冊のノルマさえなければ、もう少し内容の濃い作品に出来たような気がする。四季崎記紀が何をしたかったのかは、あえて詳しく語らずというよりは、説明不足にしか思えなかったし、幕府側の偉い所が最終刊まで出てこなかったことも構成のミスだと思う。具体的な謎解きをしないのは西尾作品によくあることだけど、今回は読み手の消化不良が大きくて読後に得られるカタルシスも少なかった。メインキャラの魅力だけで引っ張るには、主役カップルが善人過ぎたのも痛かったなあ。

とかなんとか書きながらも、ネットの感想を読んでいるとけっこうな数で絶賛している人もいるようで、単に自分の感性がさび付いているだけなのかもと、少々絶望。「戯言」のクオリティに比べれば全然内容が薄いと思うんだけどねえ。[2007/12] ⇒感想を1巻から

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理由あって冬に出る
[似鳥鶏] ★★★☆ 東京創元社 創元推理文庫 (\580) [Amazon]

理由あって冬に出る (創元推理文庫 M に 1-1)

とある市立高校のうわさ話。芸術棟にはフルートを吹く幽霊が出るのだという。うわさに怯えて吹奏楽部では練習に来なくなる部員が続出する。美術部の葉山はなりゆきから幽霊出現事件の真相を確かめるべく、芸術棟への居残りをする羽目になる。しかしその夜、本当に幽霊が出現!!愕然とした葉山は文芸部の名物部長伊神に助力を請う。

2007年刊行。第16回鮎川賞佳作入選作。ネットでちらほら感想が出ていたので珍しく新本買いしてみた。ラノベテイスト満載な表紙絵は、米澤穂信作品を読むような層に売りたいというアピールなのだろうか。表紙の女の子の方は誰なんだろう。柳瀬さんかな?作者は1981年生まれ。もう少し年上の人かと思っていたら意外に若かった。高校時代に携帯が出回っていないギリギリの世代かな。

芸術棟に出る幽霊のお話。真相を確かめようとすると次々に新たな幽霊が出現する。それぞれの幽霊出現の謎を解き明かしながら、より大きな謎の正体に迫っていく連作短編形式を取っている。殺人は起きないが、閉鎖された教室内で発生する幽霊事件は、密室モノのバリエーションであるわけで、これは学園ミステリならではの素敵な変奏曲。着眼点は悪くない。事件の解法についても、幽霊ネタだからこそ使えるトリックが使われていてなかなかに面白い。

ラノベ系の読者に訴えるなら(作者はそんなこと考えてないと思うけど)、キャラ立てはもう少し頑張った方が良い。伊神さんはともかくとして他の登場人物が大人しすぎ。そしてメインヒロインの不在は読み手の感情移入を大きく妨げるので、そっち方面で売っていくなら要改善事項だろう。

それから細かい事ながら携帯がある時代の設定のわりには、登場人物たちがそれを有効に使っていないのはやはり違和感がある。どうせなら携帯の無い時代の話で押し切れば良かったのに。一つ小技が使えなくなっちゃうからそれを嫌ったのかな。ともあれ、総じて悪くは無かったので次回作にも期待しよう。[2007/12]

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DIVE!! 上・下 [森絵都] ★★★☆ 角川書店 角川文庫 (各\552) [Amazon:/]

DIVE!!〈上〉 (角川文庫) DIVE!!〈下〉 (角川文庫)

弱小のミズキダイビングクラブに課せられた存続の条件はオリンピック出場選手を送り出すこと。一人の女コーチの登場がクラブ内の空気を変えていく。高さ10メートルの飛び込み台から時速60キロでダイブ、演技時間は僅かに1.4秒。刹那の美に魅せられ、次第に才能を開花させていく彼らだったが、最終選考会のその日、運命の女神が微笑んだのは……。

2006年刊行。元々は2000年に四分冊 [Amazon] で刊行されていた作品の文庫版。第一部は平凡な家庭に生まれ、一見普通の少年に見えながらも天性の動体視力(ダイヤモンドの瞳)を持つ知季、第二部は津軽出身。元オリンピック候補の祖父を持つ野生児飛沫、第三部は父母ともにオリンピック選手のサラブレット要一がそれぞれ主人公を務める。そして第四部はこれまでに登場した人物それぞれの視点で多角的に語っていく形式を取る。

誰が言い出したのかわからんけど、三大スポ根小説は『バッテリー』@あさのあつこ、『一瞬の風になれ』@佐藤多佳子 [Amazon] 、そして本作なのだそうだ。この本の上巻はあさのあつこ、下巻は佐藤多佳子が解説を書いている。あさのあつこの解説は無駄に暑苦しいので、正直これだけ読むと買う気が失せるかもしれない。

知る人ぞ知るマイナースポーツ、飛び込み競技の世界が本作の舞台となっている。あさのあつこが絶賛している冒頭部分。過剰な感情移入。とにかく暑苦しい少年美化。これが自分的には全くダメで、このままのノリだったらどうしようかと思っていた。最初から飛沫の章だったら最後まで読み通せなかったかもしれない。まず最初が知季の章で良かった。

作者的に飛沫には特別な思い入れがあるようなのだが、本編に入ってから最低限の自制心は弁えていたようで、熱くなりすぎず、かといって突き放すこともなく、適度な距離感を保った競技描写は好感が持てた。読者置いてきぼりの、自キャラ萌えは作家として致命的な病なので、この程度に留めておいて欲しいもの。

第四部。章ごとに視点キャラを入れ替える構成は、1回の飛び込みの度に順位が入れ替わるストーリー展開と相まって、作品の終盤を俄然盛り上げる効果を上げている。体調不良の要一が見せる猛追撃。祖父からの思いを引き継ぎスワンダイブを決める飛沫。その結果を順位の変動を見せるだけで表現するテクニックが素晴らしい。飛び込み競技について全く予備知識が無いであろう読者を、これほどまでに作中に引き込む筆力はさすが。

ちなみに、サンデーでコミック版 [Amazon] が連載されているらしい。チェックしてみるかね。[2007/12]

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リバーズ・エンド after days
[橋本紡] 
★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\510) [Amazon] ※書影無し

人知れず始まり、人知れず終わった世界の存在を賭けての戦い。あれから一年が過ぎた。"スクール"から解放され、それぞれの場所へと帰っていった彼らのその後を綴る。平穏な生活を取り戻す直人、満たされぬ日々を過ごす七海、未だ暗い闇の中にいる弥生。そして、"スクール"に残ることを選んだ拓己と唯の現在は……。

2004年刊行。全五巻で完結した『リバーズ・エンド』シリーズの後日譚を描いた短編集。メインエピソードは三つで、比較的人気の高かった?直人、七海、拓己にスポットを当てた内容となっている。弥生と唯、遙には若干出番アリ。茂と孝弘に関しては残念ながらほとんど出番無し。各話をつなぐインターミッション的に挿入された掌編でいちおうフォローされてはいる。

世界(というかセカイ)を救った彼らがその後離ればなれになり、久しぶりに再会を遂げるまでのお話。世界の危機(のようなもの)を乗り越えても、人間の本質はそうそう変わるものではなく、その後の成長バイアスは、各人の性格や家庭環境に負うところが大きい。ひねくれているように見えて本質的に素直な直人は、家族の居るところに戻って安定し始めるし、家庭的に恵まれない弥生や七海は相変わらずグダグダしている。一番気になる主人公カップルが、未だに"スクール"という名の繭の中で守られたままなのが不満といえば不満だろうか。その先が知りたいのに。[2007/12]

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さらわれたい女 [歌野晶午] ★★★ 角川書店 角川文庫 (\514) [Amazon]

さらわれたい女 (角川文庫)

夫の愛情を確かめるために狂言誘拐を依頼する女。夫はコーヒーチェーン店の経営者。そして報酬は100万円。犯行を依頼された便利屋は見事に計画を成し遂げるが、部屋に戻ると女は死んでいた。果たしていったい何が起きたのか。不本意ながらも死体の処理をせざるを得なくなってしまった便利屋は真相を解き明かすべく動き始める。

1992年に講談社ノベルズ版 [Amazon] が刊行され、1997年に同社より文庫化 [Amazon] 。本書は2006年に角川書店から刊行された再文庫版。解説の法月綸太郎の指摘にもあるように、新本格系の作家として1988年にデビューした歌野晶午が、非本格寄りのミステリ作品を書き始めた頃の作品となる。素人探偵モノとしては後の出世作『葉桜の季節に君を想うということ』の遠いルーツになっているのかもしれない。

肝心の本編は誘拐モノとその変奏曲。テーマがテーマだけに時代の影響を大きく受ける分野で、携帯電話の無い時代の誘拐はいろいろ大変だった(笑)。巨大な自動車電話を持ち運んでの犯人交渉がなんだか微笑ましい。伝言ダイヤルとか、ダイヤルQ2とかも懐かしいなあ。適度にひねりアリ。どんでん返しもアリで、大きな驚きは無いがまずまずの出来ではないかと。[2007/12]

ついでに…… 
『99%の誘拐』@岡嶋二人 
 <<携帯の無い時代の誘拐つながりで。

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図書館革命 [有川浩] ★★★☆ メディアワークス (\1,600) [Amazon]

図書館革命

テロリストによる原発襲撃事件が発生。サスペンス作家当麻蔵人の著作が襲撃の際に参考になったとされ、その作品が発禁に追い込まれそうになる。テロ忌避の世論に乗り、メディア良化委員会は言論弾圧を一気に進めようとする。いち早く当麻蔵人の身柄の確保に成功した図書隊は事態を打開すべく起死回生の反撃に乗り出すのだが……。

2007年刊行。言論の自由、表現の自由を脅かすメディア良化委員会と戦う図書隊の活躍を描く『図書館』シリーズの四作目にして最終作。一作目が出たのが2006年2月だから二年も経たずに完結ということになる。ペースの早さと、人気シリーズを僅か四冊で終わらせる思い切りの良さに驚きである。これまでは中編作品が数作入っている構成だったが、今回は一冊全て使って一つのお話となっている。

なにこの激甘展開。既に前巻でバカップルぶりのオーラを醸し出していた郁と堂上教官。なんかだかもうタガが外れてしまったかのようないちゃつきぶりに衝撃。最初のカモミールティデートのあたりから、後半の銃撃戦から書店でのラブシーンに至るシーンといい全編ラブラブ波動でまくりで目眩がしてきそう。まあ、たまにはこういう甘々なお話しも良しとするか。上司と部下モードをプライベートモードに切り替えた堂上教官がなかなかにS体質でイイ。

特別な権限を有していたわけでも無いだろう柴崎に、そんな重要な交渉任せて良かったのか。手塚兄のあっさり転向する姿にはビックリである。それでは確かに部下も裏切りたくなる気持ちは判る。全体的に主人公側に追い風の展開ばかりで、良化委員会側がなすすべもなくやられすぎで、歯ごたえがなかったのが物足りない。言葉狩りや、出版社側の過剰な自主規制などなど、人目に出にくい問題をエンタメ小説のオブラートに包みながらも、世に提示して見せたことは評価すべきかと思うけど、ここまで踏み込んだのであれば、統制したいと思う側の思想も示して欲しかった。概ね面白かったのだけど、この部分だけは不満。

コミカライズも始まり、2008年の4月からははアニメ化も決定。ってことで今後はメディアミックスで盛り上がりそう。アニメは四巻までやるのかな。いちおう完結しているのでやりやすいかもしれない。引き続きこちらは追いかけていく予定。[2007/12] ⇒感想を最初から

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誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡 [木村元彦] ★★★ 集英社 集英社文庫 (\571) [Amazon]

誇り―ドラガン・ストイコビッチの軌跡 (集英社文庫)

ピクシーこと、ドラガン・ストイコビッチは1965年生まれ。ラドニツキ・ニシェを経て、名門レッドスター・ベオグラードに移籍。代表でも活躍しイタリアワールドカップではベスト8に入る。順風満帆に見えた彼のサッカー人生だったが、祖国ユーゴスラヴィアの内紛が暗い影を落とす。屈辱のユーロ92出場権剥奪から、日本への移籍、そして引退に至るまでの足跡を辿る。

2000年刊行。1998年に出た単行本 [Amazon] の文庫版。『オシムの言葉』 [Amazon] で一躍ベストセラー作家になった木村元彦の処女作。ちなみに元彦は「ゆきひこ」と読むらしい。サッカージャーナリストきってのユーゴ通が、ドラガン・ストイコビッチの人生を綴ったスポーツノンフィクション作品。

ストイコビッチは旧ユーゴの選手でセルビア人。ここ数ヶ月ユーゴ関連の本を読んできたから判りやすいけど、セルビアはユーゴ紛争の当事国で一方的に悪者扱いされた挙げ句に国際政治的に惨敗した国だ。ユーゴへの制裁措置として、ユーロ92、ワールドカップアメリカ大会への参加権が剥奪される。最盛期のピクシーのプレイは国際大会で披露されることが無かった。

筆者は実際にユーゴを訪問して取材を敢行しており、ユーゴ紛争の戦勝国であるクロアチアの豊かさ、敗戦国であるセルビアの貧しさをつぶさにレポートしている。未だ瓦礫の山だらけの首都ベオグラードの惨状にはショックを受ける。ユーゴスラヴィア連邦の解体に併せて、オシムに率いられ史上最強と呼ばれたユーゴスラヴィア代表チームも崩壊を遂げていく。何のためらいもなく自国の代表チームを応援出来る自分の立場がいかに恵まれたモノであるかを痛感させられた。

本書ではストイコビッチの選手人生を青年期から引退直前まで取り扱っている。が、サッカー人生の前半部分レッドスター、マルセイユ時代についてはわりとあっさり。90年のイタリアワールドカップも描写は少なめ。グランパス移籍以降のエピソードがメインで、どうせなら日本に来る前の話が知りたかっただけにちょっとガッカリ。しかしこの人、いくら治安が良くて給料が良かったとはいえ、1994年当時のJに来てくれたよな。2000年以降のJファンとしては、この選手の活躍をリアルで見ることが出来なかったのが返す返すも残念。ま、来期監督として名古屋に戻ってくるようだけど、名古屋だからなあ。[2007/12]

ついでに…… 
『ユーゴスラヴィア現代史』@柴宣弘 
 <<ユーゴに起きたことについてはこちらで。
『悪者参上』@木村元彦  <<ユーゴ代表メインならこちらを。

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扉の外 [土橋真二郎] ★★★ メディアワークス 電撃文庫 (\530) [Amazon]

扉の外 (電撃文庫 と 8-1)

修学旅行に出かけたはずが謎の施設に囚われの身となってしまった二年四組の面々。そこにはソフィアと名乗る人工知能が現れ、自分の指示にさえ従えば生命と衣食住を保証すると告げる。本能的な嫌悪感から人工知能の保護を拒否してしまう紀之。彼は「扉の外」に何があるのか疑念を感じるようになる。「扉の外」にあったものとは……。

2007年刊行。第13回電撃小説大賞の金賞受賞作品。「このライトノベルがすごい!2008」で27位にランクイン。全三冊で既に完結しているらしい。

修学旅行中に拉致監禁って、『バトルロワイアル』 [Amazon] っぽい出だしと見せかけておいて、実は映画の『CUBE』 [Amazon] っぽい展開。特集空間に封じ込められて集団生活。内部は謎の存在が定めたルールが存在する。小川一水の『老ヴォールの惑星』収録の「ギャルナフカの迷宮」にも近いかな。

クラス単位で囲いこまれた集団がいかに秩序を保ち、または崩壊させ、組織を維持していくのか。第一巻では、委員長タイプ、秀才タイプ、女神様タイプそれぞれのカリスマが率いた組織の成功と破綻を描いていく。しかし最近の話って活躍するのが女の子ばっかりなのな。リーダー三人がみんな女子なんだけど。売るためには致し方なし?インパクトは弱いながらも、人間ってのはこんなもんだよな!ってそれなりに示して見せたのは評価すべき。あとは続きに期待。きちんと風呂敷を畳めるかどうかだな。[2007/12]

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夜の記憶 [トマス・H・クック] ★★★☆ 文藝春秋 文春文庫 (\619) [Amazon]

夜の記憶 (文春文庫)

作家ポールは幼少時に両親を交通事故で失い、その後、姉を目の前で惨殺された不幸な生い立ちを持つ。恐怖の記憶を吐き出すことで作家として世に出ることが出来た彼は、資産家アリソン・ディヴィスから奇妙な依頼を受ける。それは半世紀前に起きた未解決事件に納得のいく結末を見つけて欲しいというものだった。五十年の歳月を経て蘇る事件の哀しい真相とは。

2000年刊行。オリジナルの米国版は1998年刊行。「このミステリがすごい!2000」の海外ミステリ部門第七位にランクインした作品。

クックお得意の記憶の中の殺人モノ。ディヴィス家の領有する保養地リヴァーウッドで起きた少女の死を巡る物語。少女は何故死ななければならなかったのか。真相を解き明かして欲しい。但し、それは事実では無くても良い、もっともらしい物語を遺された者達に与えてくれれば良いというのがミソ。

次から次へと発見される証拠品、重要証言、それにつれて変わっていく容疑者たち。新たなる仮説と可能性。可能性の試行錯誤を楽しむアントニイ・バークリーの『毒入りチョコレート事件』 [Amazon] 的な面白さがあり、そしてそこに主人公の抱える少年時代の悪夢がフラッシュバックしてくる。二つの事件の絡め方、読ませ方が相変わらずの職人芸。再三蘇る悪夢の描写が本当に怖い。

いずれの事件も既に終わってしまった物語で、その悲劇的な結末は生き残った者達の人生に暗い影を落としている。リヴァーウッドの事件に関わることで、主人公は直視することを避けていた自らの心の闇に向き合わざるを得なくなる。暗澹たるラストに一抹の救いを与えたところはこの作家の良心なのだろうか。これまでに読んできた記憶シリーズの中でもとりわけダークな一作だった。[2007/12]

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暁の脱出 グインサーガ117
[栗本薫] 
★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540) [Amazon]

暁の脱出 (ハヤカワ文庫 JA ク 1-117 グイン・サーガ 117)

タイスの水神祭もついにおおづめをむかえる。闘技大会の決勝で、グインは不敗の大闘王ガンダルにからくも勝利するが、代償として重傷をおってしまう。そのとき、騒然とする場内に剣闘士マーロールが現れる。彼は、タイス伯爵タイ・ソンの旧悪を暴露し、その罪を告発する。周囲が大混乱に陥る中、グインたちはタイス脱出計画を実行にうつす。

2007年刊行。シリーズ117冊目。ようやく。ようやく、これで長かったタイス編がオシマイになってくれた。一番お下劣なタイス水神祭最終日夜の狂騒を描かずに終わるとは思わなかった。

とりあえず、ガンダルさんの勇姿に合掌。なむなむ。しかし、タイス脱出をあれだけ大変そうに思わせておいて、ここに至ってオールマイティカードヴァレリウスを切ってくるってのはどうなのよ。魔導使ったらなんでもアリじゃん。だったらタイスに入る前になんとかしてやれよ>>ヴァレリウス。[2007/12] ⇒次巻

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クリスタルの再会 グインサーガ118
[栗本薫] 
★★☆ 早川書房 ハヤカワ文庫 (\540) [Amazon]

クリスタルの再会 (ハヤカワ文庫JA ク1-118 グイン・サーガ118) (ハヤカワ文庫 JA ク 1-118 グイン・サーガ 118)

ヴァレリウスの助けをえてタイスからの脱出に成功したグインたち一行は、一路パロの首都クリスタルをめざす。一報、カメロンの間諜であったブランは、グインに別れをつげ、ひとりゴーラへ向けて旅立つ。長い旅を終え、クリスタル入りしたかれらをパロ女王リンダが出迎える。失われたグインの記憶ははたしてもどるのだろうか。

2007年刊行。シリーズ118冊目。

魔導師パワーでこれまでの苦労はなんだったのってくらい簡単にパロ入りするグインたち。ホント、もう少し早く出てきて欲しかった。幸いにも自由国境地帯の風俗とか、サラエムの街並みなんかを微に入り細をうがって説明されることもなくクリスタルに到着。相変わらずマリウスのぼやきがウザイけどそれはスルーで。

主なトピックスとしては、これでグイン×リンダのラブラブフラグがようやく立ちはじめたかしらんというところか。ここしばらく、完全スルーされているシルヴィアちゃんのその後もそろそろフォローして欲しいものだ。あ、それから丹野さん、どうせイラスト入れるならコスプレリンダの絵を何故描かない!!もうすこし読み手の欲求を汲み取って欲しかった。[2007/12] ⇒次巻

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99%の誘拐 [岡嶋二人] ★★★ 講談社 講談社文庫 (\695) [Amazon]

99%の誘拐 (講談社文庫)

会社社長生駒洋一郎は一人息子の慎悟を誘拐され、なけなしの会社運転資金を脅し取られてしまう。息子は無事に戻ったものの、会社は大手に吸収合併され、生駒は失意のうちに人生を終える。十二年後。成長した慎悟はかつての犯人たちを相手取り、同様の手口での誘拐事件を実行にうつす。最新技術を駆使した、前代未聞の誘拐劇は果たして成功するのか。

1988年に徳間書店から刊行され [Amazon]後に1990年に徳間から文庫化 [Amazon] 。本書は2004年に出た再文庫版。第十回の吉川英治文学新人賞を受賞した作品。岡嶋二人往年の名作である。

この手の話で毎回突っ込んでる気もするけど、やっぱり携帯電話が無い時代の誘拐犯罪にはもの凄い違和感を覚える。本作品ではハイテク(当時)を駆使した誘拐描写がウリ。なにせ、1988年なのでインターネットも普及していなくて、まだパソコン通信の時代なのですな。ラップトップパソコン、音響カプラ、通信ソフトに、草の根BBS。ああ、なにもかもが懐かしい。今となっては、逆に解説が必要になってしまうかもね。

誘拐犯自らが、金の受け渡し役として自らを指名するので、究極の次作自演劇が必要。警察や被害者家族が聞いている中で、電話で会話するシーンまであったりして、本来どう考えても無理なところをハイテク装備で乗り切っていく。でもやっぱりこれ、ちょっと冷静な人がいたら変だと思うだろ。特にスキーの部分は主人公自身の突っ込みが作中で入ってるけど、瞬時に指示を出すのはどう考えても第三者には無理。警察が疑わないのはいくらなんでもオカシイよ。[2007/12]

ついでに…… 
『さらわれたい女』@歌野晶午 
 <<こちらも携帯の無い時代の誘拐モノ。

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マリア様がみてる キラキラまわる
[今野緒雪] 
★★★☆ 集英社 コバルト文庫 (\438) [Amazon]

マリア様がみてるキラキラまわる (コバルト文庫 こ 7-56)

卒業式を間近に控えたリリアン女学園。「三年生を送る会」を終えた翌日。祐巳たちは祥子の呼びかけで遊園地に出かけることになる。迎えに来た柏木さんの車に同乗していざ出発!しかし祥子の様子がおかしい?ここ数日祐巳の頭を悩ませてた、一つの謎の答えが明らかになる。三々五々、遊園地に集うリリアンの少女たち。冬の日の一日は瞬く間に過ぎていく。

2007年刊行。年末恒例のマリみて最新刊。いつもながらペースを落とさずによくも出るもんだ。主要キャラ勢揃いの遊園地編。祥子たちが卒業する直前回。薔薇さまたちのいる最後のひとときを美しくもまったりと描く。

祥子、謎の猛勉強はそんなオチだったか。さすがにこの時点から他校を受験して、展開をシリアスにはしないか。その分、志摩子さんに更にハードな秘密があってビックリ。蔦子さんの話も地味ながら進展しててイイ。カメラ関係の小ネタとか、いつもながら枝エピソードの作り方が上手。久々に出てきた可南子ちゃんは、役割がツンデレドリル翻訳機として落ち着きそうでちょっと嬉しいな。
数多くの登場人物たちに、きちんとした見せ場を与え、過去の伏線を回収し、新たな伏線を貼り、関係を深化させ、それでいて祥子たちとの最後の時間を限りなく綺麗に描いてみせた神巻、と、個人的には高く評価したい。[2007/12] ⇒次巻

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