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コメント |
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| いのちのパレード | 恩田陸 | 実業之 日本社 |
\1,500 |
第三短編集。
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★★★☆ |
| 沈黙ピラミッド ブギーポップ・クエスチョン |
上遠野浩平 | メディア ワークス |
\570 |
そろそろ先の話を。
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★★★ |
| オーデュボンの祈り | 伊坂幸太郎 | 新潮社 | \629 |
デビュー作。
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★★★ |
| ブルー・ハイドレード 〜融合〜 |
海原零 | 集英社 | \571 |
潜水艦バトルがアツイ。
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★★★ |
| ブルー・ハイドレード 〜転移〜 |
海原零 | 集英社 | \552 |
続きは出ないのか。
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★★★ |
| 堕ちた天使と金色の悪魔 | 浦賀和宏 | 講談社 | \900 |
ちょっ、南部ww
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★★★ |
| 木洩れ日に泳ぐ魚 | 恩田陸 | 中央公論 新社 |
\1,400 |
20年前の事件がネットに載っているものだろうか。
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★★★☆ |
| 沙羅は和子の名を呼ぶ | 加納朋子 | 集英社 | \552 |
タイトルが良いね。
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★★★☆ |
| 心の砕ける音 | トマス・H・クック | 文藝春秋 | \581 |
原題はPlace in the dark
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★★★☆ |
| 西の善き魔女外伝2 銀の鳥プラチナの鳥 |
荻原規子 | 中央公論 新社 |
\857 |
今回の主役はアデイル。
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★★★ |
| 西の善き魔女外伝3 真昼の星迷走 |
荻原規子 | 中央公論 新社 |
\900 |
吟遊詩人にバードと名付けるネーミングセンスはどうかと思う。
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★★☆ |
| 天王船 | 宇月原晴明 | 中央公論 新社 |
\590 |
『黎明に叛くもの』外伝。
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★★★☆ |
| 聖女の島 | 皆川博子 | 講談社 | \800 |
舞台のモデルは軍艦島っぽい。
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★★★ |
| 荊の城 上 | サラ・ ウォーターズ |
東京創元社 | \940 |
ディンティ!なんていい子!
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★★★★ |
| 荊の城 下 | \940 |
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いのちのパレード [恩田陸] ★★★☆ 実業之日本社 (\1,500) [Amazon] |
| ついでに…… 『図書室の海』@恩田陸 <<第一短編集 『朝日のようにさわやかに』@恩田陸 <<第二短編集 |

高三の春休み。大学進学を間近に控えた館川睦美と小森時枝はかつてのクラスメイト真下幹也に再会する。都市伝説"ブギーポップ"について語り合う彼らは、やがて不思議な能力を持つ少女メロー・イエローと出会うことになる。統和機構内部の抗争に巻き込まれていく中で、睦美の心奥深くに封印されていた忌まわしい過去が蘇りはじめるのだが……。
2008年刊行。一年九ヶ月ぶり。15冊目のブギーポップ。このシリーズは、基本的に刊行順が必ずしも物語の時系列と一致しない。今回は『ブギーポップは笑わない』 [Amazon] とか『VSイマジネーター』 [Amazon] の頃の裏番組の物語。末真さんとか新刻さん、懐かしいな。水乃星透子って誰だっけ、ってよく考えたらイマジネーターその人か?10年近く前の話なんて思い出せないよ。
全てが表面に出てくる時には、肝心な出来事は既に終わってしまっている。上遠野作品ではよくやるパターンなのであまり新鮮味が無い。『オルフェの方舟』も似たような雰囲気の物語だったし。本当はきっとメロー・イエローのけなげさに萌える話なんだと思う。ここで感情移入できないのは、読み手(わたし)の感受性が摩耗しているせいなのだろう。ブギーポップの物語そのものが、過去の盛り上がりの残滓でしかなくなってきているように思えるのが辛い。
そうそう。表紙のブギーポップ(宮下藤花)がやたらに幼く見えるのは、緒方剛志のタッチの変化なのか、それとも中学時代の絵だからなのか?どっちなのだろう。[2008/02]
| ついでに…… ブギーポップ&ディシプリンシリーズ人物用語事典 <<人名辞典、用語辞典だけでなく、シリーズの時系列別展開もまとめてあるサイト。とても便利!! |

仕事を辞めコンビニ強盗にも失敗。逃走中の伊藤は目が覚めると、自分が見知らぬ島にいる知る。宮城県牝鹿半島の沖合南に存在するという荻島は、かつて支倉常長によって開かれ幕末以降外界との接触を一切断ったまま現在に至っているのだという。未来の全てを予見する物を言うカカシ「優午」の存在に衝撃を受ける伊藤。奇人変人が集う島での奇妙な生活が始まった。
伊坂幸太郎の処女作。2000年に刊行された作品 [Amazon] の文庫版。第五回新潮ミステリークラブ賞受賞作品。
とにかく変な話。未来を全て知ることが出来るカカシ優午。しかし彼はなにものかによって"殺されて"しまう。何故彼は自らの死を知りながらそれを防ごうとしなかったのか。そして島のシンボルを殺害したのは誰なのか、というのが物語の基本軸。
通常ではありえない状況設定なので、独自のルールに基づく特殊環境ミステリをやりたかっのか。とても不思議な味わいの作品だ。とらえどころの無い主人公。ちょっとずれてる日々野君。存在感の薄いヒロイン(なのか?)。常に嘘しかつかない画家。唯一外界との行き来を許されている男。島内の法の執行者として殺人を許された男。奇行キャラ盛りだくさんで、伊坂作品といえば実にらしい作品ではあると思う。
処女作ではありながら、相変わらず文章は判りやすくリーダビリティは高い。500頁近いボリュームだがすらすら読めてしまう。伊坂作品らしい独自の倫理観も既に健在でファンなら素直に入っていけるのではないかと思う。リアリティとは無縁の内容だけど、奇妙な魅力に溢れた作品に仕上がっている。[2008/02]

そのとき、士官候補生ソリカ・ハイレンはサザンテトラの戦艦アルファレスの艦内にいた。敵国カソレイア戦艦との遭遇は不幸な偶然と無能な上官の存在故に、最悪の展開をたどる。両艦の交戦は暗転する歴史の転換点となってしまうのか。絶体絶命の死地に立たされたとき、ソリカは重大な決断を迫られる。生き残るために彼女が選んだ手段とは……。
2004年刊行。『銀盤カレイドスコープ』が有名な海原零の二つ目の作品。
舞台は惑星マム。この星は全体の81%が海。この世界では致命的な伝染病「Uデンジー」が蔓延しており、大気の中では人類は生存が許されず、発病を防ぐには海の中に潜むしかない。地上に住めなくなった人類は海中にドーム型都市やら、地下都市を作って細々と延命。一時は激減した人類だったが、辛うじて持ち直し、現在はサザンテトラとカソレイアの二大国と、小国ブラッカステイツが存在する。というのが基本的な世界設定。
地上の空気に触れると即発病なので、戦争は潜水艦戦がメインとなる(この世界では潜水艦を戦艦と呼ぶ)。主人公は大国サザンテトラの士官候補生。サザンテトラでは長きにわたる軍閥による支配が続いており、能力よりも家柄重視で人材登用がなされている。必然的に上官は無能ばかり。大戦勃発につながりかねない緊急事態に際して、頼りになるのは同期の士官候補生たちのみ。絶望的な状況下でいかにして危地を逃れるのか。うーん、燃える展開ではないか。
設定的には田中芳樹っぽいというか、『銀河英雄伝説』 [Amazon] の香りがする。限定条件下の戦闘という側面を考えると『七都市物語』 [Amazon] っぽい雰囲気もするな。『銀盤カレイドスコープ』が一人称だったのに対して、今回は三人称を用いている。序盤では主人公が誰なのかも明確になりきらないうちに、三人称の視点がコロコロ切り替わるものだから状況が掴みにくくて閉口した。ちょっとまだ作者的に三人称に慣れていないのか。
そして戦況がこれまた判りにくい。潜水艦バトルの描き方が今ひとつ。いちいち用語を説明していてはキリが無いのだろうけど、これ予備知識ないと判らないぞ。『沈黙の艦隊』 [Amazon] を読んでおいて良かった。海中での戦闘では直接敵の姿が見えない。頼れるのは音だけ。そして双方の攻撃がなされてから、結果が出る(敵or自分が死ぬまで!)までに何分ものタイムラグがある。ここいら辺の潜水艦戦ならではの緊張感をもう少し上手く出して欲しかった。
キャラクター的には主人公らしき人物のキャラがちょっと弱いかな。どうしてもタズサのような超強気キャラを期待してしまうのが悪いのかもしれない。あれ、でも真の主人公はトパーズなのかな。最初から登場人物が多すぎるのも難点だろうか。設定的には面白いので次巻にも期待。[2008/02] ⇒次巻
故国サザンテトラに叛旗を翻し、ブラッカステイツの戦艦デッカートを強奪したソリカたちであったが、最初に彼らを見舞った災厄は深刻な食料不足だった。思案に暮れた彼らはブラッカステイツ麾下のザルツバリカ要塞へと進路を向ける。最新鋭戦艦ペルセキュートの奪取を画策するトパーズ。しかしそこには歴戦の勇者カイン・リッチーが待ちかまえていた。
シリーズ二作目。2005年刊行。謎の超人類トパーズちゃんを仲間に加えて、士官候補生たちの逃避行は続く。
指揮官のポジションに収まったトパーズちゃんの作戦がけっこうエグい。捕虜の命は使い捨てだし、協力者すら利用した末に見殺し。なんという13歳。だが、それがイイ。圧倒的に不利な状況の中から、知略(というよりは狡猾の域だが)と各メンバーの特殊技能を活かして、劣勢を跳ね返して勝利するという展開は、王道ながらもやはり気持ちがいい。潜水艦バトルの描写も慣れてきたのか、前巻より格段に読みやすくなっている。
でもこのシリーズ、この巻以降長らく放置プレイ中なんだよなあ。かれこれ三年続きが出ていない。『銀盤カレイドスコープ』にかかりきりだったのかと思っていたのだけれど、海原零は新シリーズ『薔薇色にチェリースカ』 [Amazon] を始めてしまうし。ひょっとして打ち切り?それとも本人にやる気無しなのか。これから面白く出来そうなだけに惜しい。[2008/02]
限界を超えた虐めに耐えかねた八木剛士は遂に逆襲に打って出る。復讐者となり、圧倒的な力を誇示したことで学園内での立場は逆転する。結果として、更に孤立を深めていく剛士に対して、唯一理解を示し接近を計るマリア・マールベルク。一方、和解したはずの純菜との関係は、依然としてギクシャクしたまま。その背後で坂本ハルの不気味な暗躍が続く。
2007年刊行。不死身の男八木剛士シリーズの七作目。純菜視点だった六作目を、八木視点で捉え直したのが本作の前半分。後ろ半分は新展開になる。
前巻であれだけ劇的な形で純菜を救い出しておきながら、未だに関係を修復できないでいる二人。その一方で、美少女ドイツ人マリア・マールベルク(八木君的にはエル・ビアンカ)が猛アタックを開始。なんと今回こともあろうに八木君が童貞を卒業してしまった!!あああ、非モテの星よなんたる堕落ぶり。でも、これどう考えてもハニートラップだろ。裏切られたと知った時の八木君の反応が楽しみだ。
で、物語本編が進んだかというと、相変わらず思わせぶりな描写がいくつかあるものの、大きな展開は無し。純菜や南部の「力」についても八木君と同様に出生時の秘密が絡んでいることが仄めかされる程度。ファンサイトによると年内完結を目指しているようなのだけど、この状態からどうやってフィニッシュに持って行くつもりなのだろうか。[2008/02]
高橋千浩と藤本千明。一つ屋根の下で暮らしてきた二人は別離を決意する。きっかけは一年前の事件だった。二人が旅行先で雇ったガイドの墜落死。男の死は事故として処理されたが、その背後には確かに何かがあった。それは本当に事故だったのか。それとも……。最後の夜が更けゆく中、彼らは真実に向き合うべく語り始める。互いに疑念を抱きながら。
2007年刊行。「婦人公論」2006年1月22日号から2007年2月22日号にかけて連載された作品を加筆修正の上で単行本化したもの。やたらに2007年は恩田作品が出ていたように記憶していたが、実は長編作品はこれ一作だった。意外だな。装丁は例によってとても凝っていて、半透明のカバー部分には泳ぐ魚。透けて見える地の部分には森が描かれている。タイトルのイメージが美しく表現されたスタイリッシュなデザインだ。挿画は佐々木悟郎。
ある種の人間にとってインセストタブーはたまらない魅力となって映るようで、どうやら恩田陸もその一人のようだ。ちなみにわたしもその同類(だから恩田ファンなのかもしれないが)。恩田陸は既存作品でも血縁関係がある男女の微妙な距離感を、様々なバリエーションで描いてきたけど、今回は異母兄妹でもなく、義理の親子でもなく、まさに実の兄妹同士という禁断の関係。連載をリアルタイムで追いかけていた読者はさぞかしドキドキしたことだろう。
これだけ互いを意識して一緒に暮らしていながら一線は決して越えない。しかし極限にまで張り詰めた糸はいつか切れるように、高い負荷をかけられ続けた二人の精神状態は崩壊寸前のところまで追い詰められていた。そんな状況下で、決定的な事件が起きる。事態の核心に手を触れないまま、別離を決めた二人が最後の一夜に決着をつけるべく対峙する。『木洩れ日に泳ぐ魚』はそんな物語。
恋愛小説度の高さとしては恩田陸作品の中でも屈指で、これまで意図的に避けてきた感すらある中で意外な驚きだった。でも、主人公二人が共に最後まで理性的に過ぎるのが、この人らしくもあり、逆に惜しくも感じさせられた点だろうか。もっとドロドロしたのもたまには読んでみたい。細やかな心理描写。ちょっとした比喩の使い方、言葉の選び方は更に上手になってきた印象を受けた。終幕近く、夜から朝へとうつろいゆく時間の流れの中で二人を呪縛していた恋愛の魔力が解けていく。「否応なしに夜がこじ開けられていく」「朝はいつも何かをあきらめさせる」といった諦観にも似た感慨を二人が抱くシーンは心に残る本作の静かなクライマックスだった。
ちなみに回想の中で登場する場所は白神山地、十二湖近辺。だいたいこの辺↑。GoogleMapの埋め込みを使いたかったので貼ってみる。これは五能線ファンとしては嬉しい。でも恥ずかしながら白神山地は登ったことが無いのだ。実際に山中で携帯が通じるのかどうか確認しに行かなくてはなるまい(笑)。[2008/02]
| ついでに…… 『まひるの月を追いかけて』@恩田陸 <<『木洩れ日〜』が気に入った方はこちらも是非。 |
廃墟となった病院で出会った少女は本来出会う筈の無い存在だった。彼女が伝えたかったこととは「黒いベールの貴婦人」。伝書鳩が運んできた助けを求めるメッセージ。果たしてその本当の意味は「フリージング・サマー」。うらぶれた商店街のシャッターに描かれた絵がもたらす幻想的な世界「商店街の夜」。双子の姉妹を巡る思わぬハプニングを描く「オレンジの半分」他、計10編を収録した短編集。
加納朋子七作目の作品。1999年に刊行された単行本 [Amazon] を文庫化したもの。「小説すばる」「週刊小説」等に1994年〜1999年にかけて発表された作品が収録されている。加納朋子は『ななつのこ』や『魔法飛行』のような連作短編形式を得意としている作家だが、本作に関しては完全に別々の内容の作品の寄せ集めとなっている。
ショートショートのような掌編から、80頁近いやや長めの短編まで内容はバラエティに富んでいるが、いずれも加納作品らしい優しさに溢れた作品群。本作では超自然的な現象、存在が作中に取り入れられていることが多いのだが、物語がファンタジーとして収束するのか、あくまでもミステリの枠の中で落ち着くのか、はたまた両者の混合なのか、いろいろなパターンがあって最後まで飽きる事が無かった。良作。 [2008/02]
1930年代のアメリカ。メイン州の小さな街ポート・アルマで兄のキャルは地方検察官に、そして弟のビリーは家業の新聞社を継いでいた。夢見がちなビリーは、理想の女性が自分に出会う日を待ち続けていると信じ、現実派のキャルはそれを危ぶみながらも天真爛漫な弟を愛していた。この街に運命の女ドーラ・マーチが現れるまでは……。
2001年刊行。オリジナルの米国版は2000年刊行。「このミス2002」の海外部門第五位の作品。日本では監督佐々部清、鈴木京香、吉岡秀隆の主演でドラマ化されている。
舞台となるアメリカのメイン州はここいら辺↓
アメリカの北東部に位置していて、東海岸諸州の中でも一番北、カナダ国境に接している。現在でも人口が130万人程度しかおらず、最大の街であるポートランドですら6万人程度の人口しかない。ありていに言うとド田舎。そして北にあるので、冬はとても寒い。だいたいの情景が想像出来てきたぞ。
実務肌の兄と、ロマンチストの弟。まるで性格が違うが故に互いが互いを想い合いうまくやってきた二人の前に、どう見てもこんな田舎に居るはずがないだろう流れ者の美女ドーラが現れる。物語は既に弟のビリーが死亡していることを前提に始まる。女は何処へともなく消え失せ、一人残された兄のキャルはその行方を追い求め動き出す。
クックお得意の過去と現在を交錯させながら、薄皮を剥ぐように真相に迫っていく手法は今回も健在。巧みな心理描写、詩情に溢れた風景描写がいつもながらに冴えまくっていて、その辺のミステリとは格が違っている。厳冬期メーン州の空気の匂いまで感じ取れる程だ。訳も良いのだとは思うけど、この描写の細やかさ丁寧さはクック作品の大きな特徴だと思う。検索して見つけたエントリで読んだのだが「クックは雪崩すらスローモーションに見せる」という表現は言い得て妙だと感じた。
ムードメーカーであったビリーの死は、微妙なバランスの上で辛うじて成り立っていた家族の絆を崩壊に追い込んでしまう。全ての真相を知った上で、キャルが下した決断の切ないこと切ないこと。ビリーにとっての運命の女は、キャルにとっても運命の女になってしまった。暗転したまま終わるかに見えて、すっかり忘れていた伏線を使って仄かなる救いがもたらされるのが、これまで読んできたクック作品とは大きく異なる点だろう。ブラックなまま結末を迎える事が多かった中でこれは珍しい。
ミステリとしての仕掛けは少なめながらも、最後の大技は意外度十分。とはいえ、特定の人物のその後についての記述が極端に少ないので、勘のいい読者であれば気付いてしまうかな。この作品としては、ミステリ部分にはあまり重きを置いていないので、その部分が事前にわかってしまっても、本質的な面白さは損なわれることが無いと思う。[2008/02]
西の大国グラール。王位継承権者の一人アデイルは、女学校時代の親友ヴィンセントと久しぶりの再会を果たす。折しも東の帝国ブリギオンは不気味な蠢動を見せ始め、中央砂漠地帯へと侵入を開始。事態を憂いたアデイルはヴィンセントと共に砂漠の国トルバートへの旅立ちを決意する。若き傭兵ティガとの出会いが、彼女たちの運命を変えていく。
2000年刊行。「西の善き魔女」シリーズは本編五冊+外伝三冊で成り立っていて、本作は外伝の二作目。作品内部の時系列では本編4巻と5巻の間に入るお話らしい。本編の主人公であるフィリエルが南の国でドラゴン相手に暴れている間に、友人のアデイルはどこで何をしていたのか?という隙間を埋めるエピソード。
で、アデイルって誰だっけ? 二年ぶりに読んでみたらすっかり内容を忘れていた。本編を読み終わって、外伝の1巻までは続けて読んだのだけどそれっきりになっていた。えーと、だんだん思い出してきたぞ。西の大国グラールは代々女系で継承される特殊な国家で、「西の善き魔女」とは代々グラールを治めてきた女王の異称なのだ。アデイルは主人公フィリエルを含めて三人いる女王候補のうちの一人だった。ちなみに特技は同人誌執筆で根っからの腐女子(ホントに)。作者の趣味なんだろうけど、ファンタジー世界なのだからこのあたりの暴走は、もう少しセーブして欲しいもの。
次代の女王候補様ともあろうVIPが紛争地域へホイホイお忍びで出かけられてしまうのはいかがなものかと思うけど、そういうお話なのだから仕方ない。女王としての資質を試すために、わざと好きにさせているのだとでも解釈しておこう。お話的には可もなく不可もなく。概ね予想の範囲内で終了。アデイルやヴィンセントのファンでも無ければスルーしても差し支えない程度の話だった。[2008/02] ⇒外伝3
グラールに迫りつつあった脅威はひとまず去った。しかし世界の謎は未だ残されたまま。異端ヘルメス党が依然として異端審問官に追われる立場であることに変わりはなかった。ルーンはふたたび世界の果ての壁へと旅立ち、そしてフィルエルは一路、北の塔を目指し行動を開始する。古き賢者を抹殺し、新たなる世界の判定を得るために……。
2003年刊行。時間軸的には本編5巻の後のお話。つまり一番最後に読むべきなのがこの巻ということ。外伝2巻のあとがきで「外伝はこれで打ち止めって」書いてあったけど、どうしても書きたかったらしい。故に外伝2巻との刊行間隔が三年もある。本シリーズが単行本化された際、最終巻に余剰スペースが生まれたが故に必要となったという側面もあるようだ。
今回はもともとのヒロインフィリエルが主人公。このキャラクター、無理を通して道理を吹っ飛ばす、台風の目のような存在なので正直苦手だ。理屈が通用しないからなあ。シリーズ最後のお話とはいえ、全ての謎が明らかになるわけでもないし、誰が女王になるか決まるわけでもない。最終巻としてのカタルシスが得られるような内容にはなっていないのは残念。展開がご都合主義に満ちあふれているのも、読んでいて抵抗を感じた。[2008/02] ⇒本編へ
若き日の斉藤道三と松永久秀。傀儡果心との出会いを描く「隠岐黒」。若き日の信長が出会う贅の限りを尽くした豪華絢爛たる祭船「天王船」。本能寺の変直後、毛利の大軍と対峙する秀吉はいかにして中国大返しを成功させたのか「神器導く」。失われし暗殺教団の末裔は元代の福州に居た。その凄絶なる復讐劇を描く「波山の街」。計四編を収録した伝記短編集。
先日読んだ『黎明に叛くもの』の外伝。2006年刊行。分冊で出たノベルズ版4冊にそれぞれ入っていた外伝作品を文庫一冊にまとめたもの。単独で読んでも楽しめるとは思うが、やはり本編を先に読んでしまうことをお奨めしておく。以下、簡単に各編についてコメント。
「隠岐黒」は本編の時間軸よりも少し前。少年時代の久秀初の暗殺仕事と、そして生涯のパートナーとなる果心との邂逅までを描く。久秀の兄者ラブラブな気持ちが、この時点で既に溢れんばかりで腐女子な皆さんには悦ばれそうなお話。
表題作にもなっている「天王船」は、尾張有数の古社津島神社の大祭、津島天王祭で使われる船のことを指す。表紙カバーの写真はよく見ると現在の天王船を撮影したもののようだ。この祭は日本三大川祭の一つにもなっている。祭礼の夜に天王川を往く、天王船の壮麗さ。妖しくも幻想的な情景が美しく描き出されている一編。なお、津島神社については『信長、あるいは戴冠せるアンドロギュノス』も参照。すごいよ牛頭天王。
三作目「神器導く」。これは久秀死後のエピソード。意外に秀吉が普通の人で拍子抜けした。死してなお戦国の世を惑わす久秀の妄念に惚れる。信長の仇を討つべく、戦線から撤退する秀吉を何故、毛利が追撃しなかったのか。戦国屈指のミステリーの一回答例ともなっているが、この手の戦国モノにはありがちなオチでいささか宇月原らしくない。この後の秀吉が堕ちていく闇については『聚楽 太閤の錬金窟』参照のこと。
ラスト「波山の街」。これは完全に別のお話というか、そもそも時代がまるで違う。元の時代。フビライ治世下の福州での物語。いずれ日本に受け継がれ、久秀が習得するに至る失われし暗殺術波山の法。この時代の伝承者たちが、いかなる数奇な運命をたどったのかを描く。狂言回しはなんとマルコ・ポーロさんだ。 話の流れは読めるのだけど、いかにもな妖しげな舞台設定、アイテムの使い方、描写のいかがわしさが素敵なので、俄然読んでいて燃えてきてしまう。ジパーノ爺さん最高! [2008/02]
とある修道会によって孤島に建設された、少女のための更正施設。そこには窃盗、売春、恐喝、傷害、数々の犯罪を犯した少女たち31人が収監されていた。反抗的な彼女らに手を焼く大人たち。島を抜け出そうとして海に溺れた者が3人。ところが何度数え直しても少女達の数は31人と変わらなかった。隔絶した環境下で起きる異常事態の真相とは。
2007年刊行。オリジナル版 [Amazon] は1988年刊行。講談社ノベルズ25周年記念、綾辻・有栖川コレクションとして復刊された作品の一つ。同コレクションは、これまでに刊行されてきた講談社ノベルズの諸作品の中から、埋もれてしまった名作を発掘して再び世に問い直していこうという企画らしい。
解説が恩田陸なのでとりあえず買ってみた。閉鎖環境にいわくつきの少女達が集められている。なんとなく『麦の海に沈む果実』っぽいイメージではないか。とはいっても、麦海の残酷ながらもノーブルな子供達に較べると、こちらはかなり蓮っ葉な子たちだなという印象は拭いがたく、それぞれの個性も弱い。麦海のようなものを求めて読んでいくと期待を裏切られる。200ページも無いような中編程度のボリュームなので、それぞのキャラクターを掘り下げる手間もかけられなかったかな。
復刊の理由として当時としてはこのトリックは斬新だった、ってあたりが評価されているようだ。だが、さすがに今読んでみると冒頭の一章だけで、内容が予想出来てしまうのが辛い。最近の皆川博子だったらもっと上手く書けるだろう。退廃的でエロティカルな空間。そこはかとなく滲み出てくるヒロインの異常性。次第に現実から乖離していく物語の横滑り感は現在の作風へとつながる部分かもしれない。[2008/02]
19世紀のロンドン。泥棒一味の中で育てられた女掏摸スゥは詐欺師「紳士」の片棒を担ぎ、田舎貴族の娘モードを誘惑し全財産を巻き上げる計画に加わることになる。侍女として首尾良くブライア城へ潜り込むことに成功したスゥだったが、根っからの悪に染まりきれない彼女は次第にモードへの同情の念を深めていく。「紳士」の計画は?そしてスゥ、モードの運命は?
2004年刊行。オリジナルの英国版は2002年刊行。「このミス2005」海外部門第一位の作品。サラ・ウォーターズは「このミス2004」では『半身』で一位を取っているのでなんと二年連続一位の大偉業となる。ちなみにイギリス本国では、英国推理作家協会賞の歴史ミステリ部門、エリス・ピーターズ・ヒストリカル・ダガー賞を受賞している。
面白すぎる。850頁を一気読みさせる筆力に愕然とした。『半身』同様に、今回もヴィクトリア朝時代のイギリスが舞台となっている。『半身』でなかなか作品の世界に入り込めず読了までにかなり時間がかかってしまったのとは対照的に、こちらはスイスイ読めた。主人公のキャラクターの違いだろうか。
ヒロインのスゥは17歳の少女。絞首刑で処刑された殺人犯の母親を持つ。その後は「かあちゃん」と慕うサクスビー婦人によって育てられ、盗品売買を裏家業とするイッブズ親方、粗暴な犬殺し家業のジョン、ちょっと「足りない」けど気はよい女掏摸のディンティらと共に暮らしている。サクスビー婦人は暗黒街の住人でありながら、スゥにだけは優しく、おかげでスゥは悪党になりきれないまま現在に至っている。
そして本作にはヒロインがもう一人存在する。スゥが暗黒街のヒロインであるならば、ブライア城の令嬢モードはさしずめ陽の当たる世界のヒロインというところか。モードには両親は亡く、伯父が一人。両親が残した莫大な財産の相続権を持っているが、その権利は結婚するまで有効にならないという設定。
物語はスゥとモードの二人を軸にして展開していく。全体は三部構成になっていて、まず第一部はスゥの一人称視点で進められていく。直情径行型の彼女の、下町言葉での元気のいい語り口が物語に活気を与えていて、これが楽しいこと楽しいこと。慣れない上流階級の暮らしの中でドギマギしながら役割を果たそうとする姿、次第に騙される側のモードに肩入れしてしまい煩悶する姿がとにかくカワイイ。
詐欺師「紳士」の計画はいよいよ実行段階に入るのだが、この時点でまだ全体の1/3。ここでいきなりものすごい大どんでん返し。序盤からこれほどの大技を繰り出すか。この作品にはいろいろなサプライズが仕掛けられているのだけど、インパクトはこのシーンが最大だった。よく読み返してみると伏線はたくさん貼ってあるのに、まったく気づけなかったよ。
そして第二部。今度はモードからの視点に切り替わる。何の不自由もなく育った令嬢に見えたモードだったが、それがまるで違っていたことが判明する。財産は自由に出来ず、変態きわまりない伯父の、マニアック趣味(これホントにスゴイよ!)の手伝いをさせられる日々。抑圧された毎日を過ごしていたモードの乾坤一擲の大勝負とは何だったのか。いわば、第一部の謎解き編ともいうべき内容となっている。第一部で一度描写された場面の裏側を、再度読み直していく構成なので、この部分はやや冗長というか、くどく感じてしまうのがちょっと惜しい。もう少し端折ってしまってもよかったと思う。
最終章となる第三部では再びスゥ視点のお話になる。絶体絶命の窮地に陥れられたスゥがいかにしてピンチから逃れていくのか。元気のいい語り口が戻ってきたこともあって、ここからテンポも良くなり、ラストまではまさにノンストップ。この作品を読むときは絶対に時間が確保出来る時に読むべきだと思ったね。スゥの出生にまつわる秘密。全ての仕掛けを操っていた黒幕の存在。逆転する光と影。息をもつかせぬ怒濤の終盤の見事さには、ただひれ伏すしかない。
大ラス。嵐のような喧噪が去り、残されたスゥは再びモードに会う決意を固める。静寂に包まれたブライア城で再会する二人。えー、ここから先はなにせサラ・ウォーターズなので、そっち系の展開がNGな人はダメかもしれない。けど、自分的には全然オッケー。こういう話の畳み方をするとは思わなかった。思わぬ形で芸が身を助ける形になってしまったモードには笑ったけど、いちおう大団円と呼んでいいのかな。[2008/02]