第四巻『神々と死者の迷宮 下』

 ◆

 『上と外』でいろいろに戻る

HomePage

 

第四巻 神々と死者の迷宮 下
  
四巻表紙
幻冬舎 幻冬舎文庫
\419(税別)
2000/2/25 初版発行

ISBN4-344-40064-X

<あらすじ>

ニコと名乗る謎の少年によって監禁された千華子。追い詰められた練は儀式への参加を強要される。王と呼ばれる獰猛なジャガーの徘徊する古代遺跡の中で三日間に及ぶ少年たちの死のゲームが始まる。一方クーデター勢力からの逃亡を果たした賢一行はこの事件に改めて奇妙な違和感を覚えるのだった。

第四巻感想

さて正念場の第四巻。ついに成人式がスタート。恩田陸らしく儀式のシステムも凝ってますね(後述)。とうとう練と千華子も離ればなれになってしまい、ようやく激しく物語が動いてきた感があります。緊張感あふれるサバイバルゲームの描写はさすがに読み応えがあります。冒険小説の本領発揮です。千華子ちゃんの方も大ピンチ。わたし的には練よりこっちの方が心配です(笑)。彼女のことなのできっと思わぬところで登場して練の危機を救うのではないかと思ってます。

相変わらず出番の少ない賢&千鶴子。賢パパはともかく千鶴子に果たして名誉挽回のチャンスはあるのか。作中ではその旺盛なバイタリティが息を潜めているだけにラストでひと花咲かせてもらいたいものです。

少し気になったのが久じーさんの不在。なにやら国際的にすごいヒトだったらしいという仰天の事実が明らかになったわけですが、きっと裏であれこれ動いてるのでは無いでしょうか。

ラスト予想

思わぬ幸運から残り五個のノルマをぎりぎり達成。タイムアウト直前滑り込みセーフの練。そいでもって儀式は二日目に突入。多くの少年たちが王の餌食なっていく中で驚くべき順応を果たしていく練(ここいらでニコとの間に適度な友情エピソードあり)。三日目は遂にニコとの直接対決。最後のノルマを今にも達成しようとした練。しかしそこで王に襲われるニコの悲鳴が!生存への欲求と人道的配慮の間で揺れ動く練……、なんてのはどうでしょう。

結局ニコ救出に向かった練だが二人がかりでも王の優位は動かない。一方地下迷宮を彷徨っていた千華子は遺跡の中に見慣れぬ一室を発見する。その部屋には無数のボタンが壁中に配置されていた。とりわけ目立つ「上と外」とかかれたボタンを導かれるままに押してみる千華子。するとものすごい地響きとともに遺跡の浮上が始まるではないか。地割れに飲み込まれ消えていく王。練とニコは初日に切っておいたロープにつかまることで難を逃れる。

んで、ラストへの展開はこうだ。

練と千華子、そしてニコを乗せた遺跡はそのまま飛行を続け賢と千鶴子の元へ。感動の再会を果たす楢崎ファミリー。折しもそこへは帰還を果たしたマヤの子孫たちが集っていた。マヤの人々を乗せた遺跡はさらにG国首都へ。クーデターの裏にはやはり彼らがいたのだ。偉大なるマヤの王国がここに復活を遂げるかと思われたその瞬間。正体を隠していたミゲルの真の姿が明らかに!ミゲルこそはアメリカから派遣された諜報部員だったのだ(こないだと言ってること違うって)。海兵隊によって制圧されていく王の世界(このあたりで千華子をかばって負傷する千鶴子の描写あり)。もはやこれまでか!と思われたその瞬間中南米の技術者集団を引き連れてなんと久じーさん登場。町工場技術の前に撤退を余儀なくされるアメリカ軍。かくしてG国にはマヤの神聖王朝が樹立家族の絆を取り戻した楢崎一家は晴れて日本への帰国を果たすのだった。めでたしめでたし。

すいません。わたしの想像力じゃこんな程度です。いったいどうやって成人式の落とし前をつけるのか実は想像も出来ません。[恩田作品=詰めが甘い]の旧例もあるので、まともな説明無しに信じられないエンディングに着地してしまう可能性もありますね。そうならないことを祈ってます。

本当に次で終る?

読者の誰もが抱いた疑問なのではなかろうか。だって成人式の初日だけで一冊使ってるのに、あと残り一冊で残りの二日分を描ききれるのだろうか。なにせクーデターの落とし前をつけて、千華子と千鶴子の母娘問題もケリつけて、ついでに日本の楢崎チームのフォローもしなきゃならんときてる。とても残り200枚で片が付くと思えません。四巻の「著者のことば」でも思わせぶりな書かれ方をしていてとても気になります。

とうわけで最終巻についての妄想。

1)実は次が第四巻
→だって三巻と四巻の『神々と死者の迷宮』は上下巻構成なので実は二冊で一巻。だからまだまだ続く。

2)最終巻は400ページ以上ある。
→そんくらい無いと終わらないでしょ。どう考えても。

3)中途半端なまま次で終わるが、再来月から『上と外2』が始まる
→出版社的にはこの出版形態けっこう儲かりそうに見えるので……

4)ラストのオチは単行本出版時に加筆
→最悪パターン。でも全部が一冊にまとまった単行本版って絶対将来出ると思う。

個人的には1)を推したいところだけど、ありそうなのは2)かな。五巻が従来並の分量でラストまで描かれて見事に完結してたらこりゃびっくりです。

おまけ

様々な謎についての妄想
成人式
さてやたら複雑なマヤの成人式システム。現在までに判明しているのは下記の事実。

・期間は三日間
午後六時から午前六時まで。始めと終わりに点呼がある。王(ジャガー)の活動時間帯に合わせてあるらしい。
・参加できるのは
14歳の男子。全部で十二名
「祈りの部屋」と名付けられた十二の壺が置かれた部屋が六十ある。各自の番号の壺に最初に渡される六十個の黒曜石を入れていく。他人の壺に入れてしまうと、それは他人のポイントとなってしまう。
・石には毒が縫ってある(飲み込んで数を誤魔化すことが出来ないようにするため)。
・他の参加者への妨害、また共謀、会話、接触は禁じられている
一番多くの石を入れたものが栄誉。一日十個入れられないものは失格(殺される)従って三日で三十個は壺に入れないと生き残れない。
・一日に幾つ入れたかは残りの石の数を数えることで判定。
・ルールに違反した者はは生贄の泉に投げ込まれる。
・壺は鉄製でとても重い。持ち上げられず、穴も開けられない。
・どの壺が自分の壺になるかは当日くじ引きで決められる。人の番号は判らない。
・道具は持参可。ただし石を隠してないか帰りにチェックされる。
王を殺せたら英雄。王を倒したものが王。但し素手で。銃は不可。

いろいろ突っ込みたいことが満載です。重い鉄の壺(60×12で720個!)をどうやって運び込んだのかとか、参加者の一人(ニコ)が審判者を兼ねてしまっていいんだろうかとか、どうして子供しかいないのかとか、そもそもどうやって王の世界に王(ジャガー)を放ったのか等々、謎は尽きません。

王の世界

謎多き王の世界。こちらも判っていることを列記。

・天井近くの四角には穴が開いていて通気孔となっている。
・王の世界には隙間がたくさんある。
・何層にもなった地下都市。自然の造形に人工物を加えた形となっている。
・「祈りの部屋」と呼ばれる儀式のための壺が置かれた部屋が六十ある。
・郊外にあるショッピングセンターくらいの床面積はありそう。人工物と自然の造形を長い年月の間に組み合わせてきたことが窺える。
・天井は藤棚か水栽培のヒヤシンスを下から見上げた格好。
・地面に筒が一本埋まっている形になっている。
・一番上が地上に少しはみだしている。その部分がジャングルを歩いていたときに見えた巨大な石造りの二階建ての回廊。天井にあたる部分は地上では回廊に囲まれた中庭部分。
・地下の円筒の内側に、中央の十メートルほどの幅の通路を挟んで天井まで延びる通路が都市が向かい合わせにそびえている。
・都市の背にあたる部分は円筒の壁と一体化している。
・地上の回廊から円筒の底へ降りる入口、つまりこの地下都市への入口は一ヶ所しかない。
・その扉から石段を降りて円筒の底に降り立ち、壁に沿って進んだところに千華子が閉じ込められていた洞窟のような部屋がある。
・その部屋に近くに王のねぐらがある。つまり王のねぐらは円筒の底に近い。
・都市の断面は垂直でなくゆるやかな傾斜がある。
・都市は二つに別れている。王のねぐらに近いほうをA。反対側をB。それぞれの都市は五層に分かれ、上の方が床面積は狭い。下の二層をa、上の三層をbとすれば、一番危険度が高いのはAaだろう。
・照明の油は一日分しか入れていない。

勝手に
次回予告

マヤの成人式。それはあまりに過酷な儀式だった。
ジャガーの咆吼は僕のなけなしの勇気を吹き飛ばすには十分だった。
千華子のことも心配だ。僕たちは無事に日本へ帰ることが出来るのだろうか。
次回、最終回『楔が抜けるとき』
マヤの風が吹き抜けた。(∀風)

『上と外』でいろいろに戻る

HomePage